2023-12-17 @みなとみらいホール
ヤン=ウィレム・デ・フリーント:指揮
読売日本交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
ソプラノ:森谷真理
メゾ・ソプラノ:山下裕賀
テノール:アルヴァロ・ザンブラーノ
バス:加藤宏隆
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125
ちょっと残念な点を先に言うなら、独唱が舞台前で歌えばなお良かった。3-4楽章の休止をもっと短く、半呼吸で終楽章になだれ込んで欲しかった。
しかし、こんな不満など、軽く吹き飛ばしてしまう快演・名演だった。
「第九」は今日で今年の4回目。年内にN響を含む6オケが残っているが、おそらく、今日の読響を超える演奏は聴くことができないだろう。
そういえば、昨年は12回聴いたが、僕の採点表では、鈴木優人+読響と飯守泰次郎+シティ・フィルが同点で、N響を僅差で抜いて1番だった。どうも、今年もそういう展開が予想できる。
初めて聴くヤン=ウィレム・デ・フリーント氏の音楽は、遠い昔から馴染んだ、全く正統派で、独自色がないのが独自色か。下手に個性を発揮してくれないでいい。喉にも胃にも閊(つか)えるところがない完全消化できる、とても好感度の高い音楽だった。
今日の読響の弦編成は12型。昨年多くのオケを聴いた中でも16型はN響と<なんでも16型の>都響だけで、他のオケは14型が一つ、10型が一つ、その他は全て12型だった。
大編成ではないが、各部が明瞭に鳴るのがいい。特に、みなとみらいホールは弦を明瞭に際立たせる。それゆえ下手なオケでは悲劇が生まれることもあるが、読響クラスになると、一糸乱れず、まるで一本の楽器が発するような透明感を維持しつつ、共鳴・共振・反響が作り上げる弦の響が見事に美しい。こういう音を聴きたい、といつも願っている、その音が舞台から繰り出される充実感と幸福感。
管打の乗りも良く、ほぼ非の打ち所がない。
配置は、Vn1に対抗するのは珍しくVc(首席は遠藤真理)だった。読響に限らず、プロオケではVcは中に入るのが通例だが、今日は違った。フリーント氏の狙いは、当然、終楽章のレシタティーヴォを明確に歌わせたかったのだろう。この狙いも見事に当たった。6本のVcと4本のCbは息を合わせて歌った。音量のバランスも良く、低音楽器コンビでは音程が正確であればあるほど調子外れに聴こえがちだが、Vcがリードすることで旋律が浮かび上がった。聴きながらもったいないと思うくらい美しいユニゾンだ。
新国立合唱団は、昨日・今日と「一千人の交響曲」にも出ているはずで、総勢何人いるのか知らないが、うち男声・女声合わせて60人が読響の舞台に立った。この数も今年の「第九」で目下最少。おそらく全回聴き終えても最少だろう。それでも迫力に何の問題もなかった。
音楽的感動は規模がもたらすものではないという当たり前のことを実感した。
こんなに見事な合奏力を味わったのは、数年ぶりではないだろうか。
読響、恐るべし。