2019年9月29日日曜日

名曲全集第149回 イギリス音楽界 旬な二人

2019-09-29 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ライアン・ウィグルスワース:指揮とピアノ**
東京交響楽団
ポール・ルイス:ピアノ*

ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 op.56a
モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲 K.365*-**
ベートーべン:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 op.19*
エルガー:エニグマ変奏曲
-------------
シューベルト:アレグレット ハ短調 D915*

指揮兼ピアノのライアン・ウィグルスワースも、独奏ピアノのポール・ルイスも、なかなかの人気者らしいが、2人とも初聴き。

前半は、正直なところ睡魔と戦っていて入魂できなかったが、おぼろげに聴いた印象は、前半の2曲は美しくなかった。昨日の日フィルの幸福な音色がまだ耳に残っていて、つい比べてしまい、残念感は拭えない。

また、2台のピアノの為の協奏曲はプログラムに入れることはなかった。4曲も演るのは多すぎる。

それに2台のピアノは、横方向に2台を向かい合わせるのが普通だが、今回は指揮者が弾き振りをする為に、ステージに縦方向に向かい合わせで並べられ、当然反響版は取り外してある。
見慣れないスタイルによる違和感のせいだったのかもしれないが、ピアノの音が聴き分けられないような部分もあったが、ここで寝ていたのだろうか。

後半のベートーベンになると、今度はオケのせいではなく、見事なくらい記憶が飛んでしまっているので、ノーコメントにしておこう。ただ、ピアノ・アンコールのシューベルトが美しかった。

最後のエニグマは、僕の睡魔も劣勢になったせいか、音も演奏も盛り返してとても良かった。
主題自体に惹き込まれるが、有名な第9変奏も心地良く、もう一眠りしたいところだった。

♪2019-147/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-20

2019年9月28日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第350回横浜定期演奏会

2019-09-28 @みなとみらいホール


井上道義:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

アリス=紗良・オット:ピアノ*

伊福部昭:日本組曲から第1曲「盆踊」、第3曲「演伶」、第4曲「佞武多」
井上道義:メモリー・コンクリート
リスト:死の舞踏 S.126*
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調(ミュラー=ベルクハウスによる管弦楽編曲版)
-------------
サティ:グノシェンヌ第1番*
アーレン:オーバー・ザ・レインボウ

前半は和物?2曲。
まず、伊福部昭の「日本組曲」が傑作。全部で4つ作品から構成されているそうだが、今日はそのうち第2曲が省略された。3曲とも脱西洋音楽風で面白い(14分)。全曲を聴きたかったが、次の作品が長め(30分)なので尺に収まらなかったのか。

それはともかく、その和物2曲めは指揮者井上道義自身の作品「メモリー・コンクリート」でこれも傑作…と言うか、おかしくて楽しいと言う意味で傑作だった。彼自身の生まれてから少年期が中心?の、いろんな思い出が、断片的に音楽化されている。そこがクンクリート(具体化)と言う意味らしい。

多種多様な打楽器を登場させ、管弦楽器にも特殊な奏法をさせて、かなり派手めのタペストリが織り上がる趣向のようだ。飲んべえだった父親の思い出には黒田節が引用されているが、打楽器奏者4人がビールのジョッキを打ち鳴らすと言うお遊びも。

また、カデンツァというのは本来、協奏曲で独奏者が一人で即興的にその至芸を披露する場所だが、この作品では<指揮者のカデンツァ>が用意されている。
バイオリン1挺の不気味な連続音型を背景に、指揮者は釣竿を持ち出し、ステージから客席に釣り糸を垂らして、ブツブツ一人芝居。釣れなくて切り上げようとした時に大きな(ぬいぐるみのようだったが)釣果を得て音楽続行。もう、この辺ではさすがに客席からは笑い声と拍手喝采。

後半はアリス=沙良・オットを迎えてリスト:「死の舞踏」。
彼女の病気は快癒したのか、とても気合が入って快調そのもの。有名な曲だが、これがなかなか生で聴く機会がなく、多分今日初めてだったかも。

メインはリスト:ハンガリー狂詩曲第2番ハ短調(管弦楽版)だ。原曲のピアノによる演奏(「トムとジェリー」で超有名になった!)はたまに聴くことがあるが、管弦楽版〜それもこの第2番だけを編曲したミュラー=ベルクハウスによる管弦楽版は実に珍しい。
有名な冒頭の旋律は弦楽合奏だ。これが厚くていい響きだ。途中、クラリネットのソロも小気味よく、後半はチャールダッシュのように急速展開で痒いところに手が届くような音楽で十分なカタルシスを味わった。

井上師はいつものように熱く手抜き無し。これに応えた日フィルも申し分の無い熱演で盛り上げてくれた。
最後のオーケストラ・アンコールは、井上師曰く「アリスの健康を祈念して<星に願いを>」。平服に着替えたアリスがステージの下手で聴き入っていた。全く胸が熱くなるよ。今日も幸福な演奏会だった。

♪2019-146/♪みなとみらいホール-43

2019年9月27日金曜日

新日本フィル:#25ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

2019-09-27 @すみだトリフォニーホール


ミシェル・プラッソン:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
小松亮太:バンドネオン*

シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
ピアソラ:バンドネオン協奏曲*
ベルリオーズ:幻想交響曲 op. 14
-------------
ビゼー:「カルメン」前奏曲

今季から新日フィルの愛称?Rubyの定期会員になった。
新日フィルはみなとみらいホールでも聴いているけど、ほとんど失望することがないので、聴く機会を増やしてみた次第。

で、今日はその第1日め。
念入りに選んだ席は他に替えようがないくらい好みのロケーション。
すみだトリフォニーホールは(今春の室内楽コンサートを別にすれば)数年ぶりだった。かねてから響きの良いホールだという印象を持っていたが、あらためて実感した。

尤も1階席はスロープが緩くて前席の頭が邪魔でしょうがない。音楽は目で聴くところあり。見えないのは聴こえないに等しい。
前の席の人も定期会員ならこれからあのデカイ頭と1年付き合うことになるが、これは辛い。

さて、肝心の演奏も、巧い…と言うか、文句の付けようもないものだった。
が、こういうのは危険。
もう少し前列を選んで、原音の割合が強い目の方がオケの実力が出て良かったかもしれない。

本日の演目のどれを聴いても、管も弦も美しい。
技術的な面でもまったくどこにも破綻がなく(気がつかなかっただけかもしれないが。)、まるでCDを聴いているようで、これはこれで困ったものだ。

このホールのこの席、美しく響くが音楽の生々しさに欠ける…そんな気がした。気のせいだったらいいが。

♪2019-145/♪すみだトリフォニーホール-02

2019年9月22日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第71回

2019-09-22 @ミューザ川崎シンフォニーホール


リオネル・ブランギエ:指揮
東京交響楽団

アリーナ・ポゴストキー:バイオリン*

ブラームス:バイオリン協奏曲ニ長調 作品77*
プロコフィエフ:交響曲第4番 作品112
--------------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番からロンド風ガボット*

指揮のブランギエもバイオリン独奏のポゴストキーも初聴き。
ブラームス協奏曲の出だしの管楽器が綺麗で、そこに弦がふわーと混ざり好調な滑り出し。加えて独奏バイオリンの音も明瞭。少なくとも第1楽章は理想的な展開でブラームスの爆発寸前の屈折した抒情がよく表現されて久しぶりの幸せ感。

が、2楽章以降、進むにつれ、明瞭さがだんだん失われてゆく気がした。
第2楽章Adagioの天国的な美しさは長くは続かず、だんだんと音楽がざわついてきた。
これは演奏家のせいだけではなくてオーケストレーションの問題ではないか、と偉そうに考えたが…。

一番、心踊る終楽章ももっと弾んで欲しかった!

メインはプロコフィエフの交響曲第4番。なんと初聴き。
1、5、6番は機会は少ないもの何度か聴いたことがあるのだけど。
いずれにせよ、数日を経てもうどんな音楽だったか思い出せない。聴いている最中は退屈するような音楽ではなかったが、さりとて初聴きのせいもあるとしても、楽しめるような音楽ではなかったな。

…とかなり欲張りなことを書いたが、全体として上出来ではあった。

♪2019-144/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2019年9月21日土曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年09月公演 第2部

2019-09-21 @国立劇場


嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
 花菱屋の段
  織太夫/清介
 日向嶋の段
  千歳太夫/富助

 人形役割
  花菱屋女房⇒文昇
  花菱屋長⇒玉輝
  肝煎左治太夫⇒簑二郎
  娘糸滝(花菱屋)⇒簑紫郎
  悪七兵衛景清⇒玉男
  娘糸滝(日向嶋)⇒簑助
    ほか

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
 酒屋の段
  靖太夫/錦糸
  藤太夫/清友
  津駒太夫/藤蔵
 道行霜夜の千日
  睦太夫・南都太夫・咲寿太夫・
  碩太夫・文字栄太夫/
  勝平・清馗・友之助・清公・清允

 人形役割
  半兵衛女房⇒簑一郎
  美濃屋三勝⇒一輔
  舅半兵衛⇒玉志
  親宗岸や玉也
  嫁お園⇒清十郎
  茜屋半七⇒玉助
    ほか

①嬢景清八嶋日記(むすめかげきよやしまにっき)
忠義一徹が仇で日向嶋に流された平家の武将・景清の元に父の仕官の費用を持参する娘糸滝との再会。しかし景清は武士の矜持が邪魔をして娘を蹴散らすように追い返す。

後で、そのお金は我が身を売って拵えたものであると知り既に岸を離れた糸滝の船に向かって「ヤレその子は売るまじ。娘よ、船よ返せ、戻せ」と慟哭。

このくだり、千歳大夫の叫びとも聞こえる渾身の義太夫が日本人DNAを鷲掴みにして胸を締め付ける(日向嶋の段)。

前段の「花菱屋の段」も、身を売らなければならなくなった糸滝の話に、店の面々が厚い情愛を寄せるところが、これまた胸が熱くなる。

②艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
茜屋の若主人半七は女房お園を迎える前から芸者三勝に入れ上げ子供まで設けていたが、ひょんなことから恋敵を殺してしまう。その罪を被った父半兵衛、心ならずも離縁されたお園、行き詰まった半七と三勝は我が子をそっと半兵衛らに託し、霜の夜、自害する。

冒頭「酒屋の段」。店の留守を任された丁稚の能天気さ。そこに酒を買いに来た子連れの女。頼まれて酒を運んでやる丁稚。この謎めいた場面から始まる。

半兵衛が代官所から戻り、丁稚がなぜか子供を背負って店に戻る。そこに離縁されたお園が父親とともに茜屋を訪ねてから話は急展開し、引き込まれる。

ただ、この時点でも半七・三勝は登場しないというのが凝った作劇で面白い。

実話に基づいているというが、誰一人真の悪人はいないのに、歯車が少し欠けたか、登場人物の人生を狂わせてゆく人間の情のおかしさ。

♪2019-143/♪国立劇場-12

2019年9月20日金曜日

小笠原伸子 J.S.バッハ:無伴奏バイオリン全6曲演奏会 Vol.16

2019-09-20 @みなとみらいホール


小笠原伸子:バイオリン

J.S.バッハ:無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)
 ソナタ:第1番ト短調 BWV1001
 組 曲:第1番ロ短調 BWV1002
 ソナタ:第2番イ短調 BWV1003
 組 曲:第2番ニ短調 BWV1004
 ソナタ:第3番ハ長調 BWV1005
 組 曲:第3番ホ長調 BWV1006
 -----------------
 ソナタ:第2番イ短調 BWV1003からAndante


J.S.バッハの無伴奏バイオリンの為のソナタとパルティータ(組曲)各3曲全6曲をバッハ作品番号(BMW)の順番で演奏。

この作品は、これまでもいろんな人で聴いてきたが、まずもってこれほど鮮明な演奏は初めて。何しろ最前列中央だもの。

それで発見したことはいくつもあった。
実に精密・巧緻を尽くした奇跡のような音楽だという事も平凡ながら再確認の一つ。

彼女の無伴奏演奏会は今年で16回目だそうだ。
これ迄機会が無かったが、今季から横浜バロック室内合奏団の定期会員になったせいで、ほかにも彼女の演奏を色々聴く機会が増えたが、正直言ってこんなに上手な人だとは思っていなかった。
かぶりつき席のせいもあるが撥音明瞭。音色も美しく自然なフレージングが心地良い。

バイオリン1挺で2時間強を弾き続けると人格も顕になってくるようだ。彼女の場合、そこがまた魅力でもあった。
無伴奏を演る人の中には、個性を発揮して独自な節回しや技巧を聴かせる事を好む人もいるが、彼女の演奏は不思議なくらい僕の呼吸と同期して、我が鼻歌の如く自然だった。

長時間の立奏だし、アンコールはもうないだろうと思っていたが、ソナタ2番からのアンダンテが心に沁みた。

---余禄---
これまで、ボーッと聴いていたので気がつかなかったが、今回、作品番号順に聴く事で気づいた事を記しておこう。どうせすぐ忘れるだろうけど。

●3つのソナタは、いずれも
4楽章構成で、緩徐楽章で始まり、第2楽章にすべてフーガが置かれて、終楽章はアレグロ・プレストなど早いテンポの楽章で終わる。
●3つの組曲は、当然舞曲の組合わせだが、
第1番は4曲構成〜第2番は5曲構成〜第3番は6曲構成とだんだん曲数が増える。
●因みに無伴奏チェロ組曲は<組曲>のみ全6曲で構成されているが、それぞれの楽曲数は全て6曲構成だ。

♪2019-142/♪みなとみらいホール-42

2019年9月19日木曜日

人形浄瑠璃文楽令和元年09月公演 第1部 心中天網島

2019-09-19 @国立劇場


心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)
 北新地河庄の段
  三輪太夫/清志郎
  呂勢太夫/清治
 天満紙屋内の段
  津国太夫/團吾
  呂太夫/團七
 大和屋の段
  咲太夫/燕三
 道行名残の橋づくし
  芳穂太夫・希太夫・小住太夫・亘太夫・碩太夫/ 
  宗助・清丈・寛太郎・錦吾・燕二郎

 人形役割
  紀伊国屋小春⇒和生
  粉屋(こや)孫右衛門⇒玉男
  紙屋治兵衛⇒勘十郎
  女房おさん⇒勘彌
    ほか

妻子有28歳紙屋治兵衛が曽根崎新地の19歳遊女小春に入れあげ、女房おさんは苦しみつつも亭主の顔を立て、小春もおさんと治兵衛の情の板挟みで身動き取れず。
恋・金・義理・人情が絡んでほぐれずどうにもならぬと落ちてゆくも哀れなり。

「道行名残の橋づくし」の義太夫に乗せて、難波の川端彷徨って遂には網島・大長寺で情死する。治兵衛と小春は身から出た錆とは言えるが、おさんがあまりに可哀想。4時間近い大曲だが救いのない話に悄然と劇場を出る。

♪2019-141/♪国立劇場-11

2019年9月17日火曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後〜 カルメン VS カヴァレリア・ルスティカーナ 〜二つの物語で奏でる、愛とヴェリズモの賛歌〜

2019-09-17 @みなとみらいホール


城宏憲:テノール
城えりか:ソプラノ
今井俊輔:バリトン
中桐望:ピアノ

【第1部】マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から
前奏曲
シチリアーナ
馬車屋の歌(駒は勇んで)
ママも知るとおり
ここにいたのかサントゥッツァ(二重唱)
主が貴方を導いて下さったのだわ
間奏曲
万歳!泡立つ葡萄酒よ(乾杯の歌)
決闘の約束
母さん、あの酒は強いね

【第2部】ビゼー:歌劇「カルメン」から
前奏曲
ハバネラ
セギディーリャ
シャンソン・ボエーム(モシュコフスキ編)
闘牛士の歌
花の歌
愛しているのなら、どこまでも
決闘の二重唱
愛の小デュエット
あんたね?俺だ!(二重唱)

クラシック・マチネシリーズ。
今日は歌手3人とピアノで前半は「カヴァレリア・ルスティカーナ」、後半は「カルメン」から前奏・間奏曲を含め各1時間、10曲ずつでコンパクトに楽しませてくれた。
出演は城宏憲Tn、城えりかSp、今井俊輔Br、中桐望Pf

「カルメン」は何度も経験済みだが、「カヴァレリア・ルスティカーナ」はビデオでは何回か観ているものの本舞台の経験がないので話の中身はウロ覚えだったが、プログラムの解説に加えナレーションもあったので字幕無しでも十分理解できた。

みんな上手だけど、なんたって、2時間休みなしでピアノを弾きまくったお姉さんが凄い。

小ホールなのでとてもよく響いて心地良い事。

歌手は客席後方から歌いながら出てきたり、舞台奥でも歌ったりと、制約の多い空間を工夫して楽しませてくれた。
終わった頃には舞台と客席は親密な情で結ばれた感じもして幸福な音楽会ではあった。


♪2019-140/♪みなとみらいホール-41

2019年9月16日月曜日

華麗なるコンチェルトシリーズ 《熱狂!ラフマニノフ》

2019-09-16 @みなとみらいホール


船橋洋介:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

及川浩治:ピアノ

≪オール・ラフマニノフ・プログラム≫
 パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
 ピアノ協奏曲第4番ト短調 作品40
 ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
---------------
ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調 遺作

「華麗なる協奏曲シリーズ:熱狂!ラフマニノフ」。
初聴きの及川浩治の楽壇での位置付けは不知。
しかし、チラシの惹句<やっぱり音楽家は、こうでなきゃ!>を大いに納得させる熱い!幸福な演奏会だった。
大曲3曲を熱狂的に弾き切った。只者ではないな。

今日は雨上がりのホール。僕の仮説どおりホールはいつもに増して良く鳴った。特にピアノの音はピュアで明瞭で、低域はビ〜ン、高域はカ〜ンと抜け、中域は甘い。

神奈川フィルもコンマスの石田兄ィほか主力メンバーを揃え上出来。柔らかい弦に柔らかい管が交わるシンフォニック(交響的)な音の素晴らしさ。特に今日のホルン4重奏の弦との溶け込みが見事だった。

よく聴く機会のあるパガニーニの狂詩曲も、滅多に聴けない協奏曲4番も、ああこんなに名曲だったのかと骨の髄まで味わえた感あり。
シメは人気の2番。終盤、お疲れを吹き飛ばしての入魂の熱演に、会場はどよめきと歓声。

アンコールにショパン夜想曲20番は、もちろん美しい音楽だけど、不満だ。ラフマニノフでまとめて欲しかったが。
ま、ともかくもとても幸福な音楽会であった。


♪2019-139/♪みなとみらいホール-40

2019年9月14日土曜日

N響第1918回 定期公演 Aプログラム

2019-09-14 @NHKホール


パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
NHK交響楽団

ジョシュア・ベル:バイオリン*

オール ・ ポーランド ・ プログラム
 バツェヴィチ:弦楽オーケストラのための協奏曲
 ヴィニャフスキ:バイオリン協奏曲第2番*
 ルトスワフスキ:小組曲
 ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲

オールポーランド作品。
バツェヴィチは他の作品を、ルトスワフスキは今日の作品のほか交響曲なども聴いた経験あり。ヴィニャフスキは多分初めて。

1曲めはバイオリンに付けた弱音器のせいか、えらく乾いた弦楽合奏に聴こえた。え〜っこれN響の音?

2曲めは明確に好みでない。
他の3本(いずれも1950年前後の作)より百年ほど前の作品で、歌謡曲みたいで安っぽい。初聴きのジョシュア・ベルのバイオリンはなかなかの熱演で悪くはないが、音楽自体に惹き込まれない。

最後の2本はルトスワスキで、特に以前も聴いたことのある「管弦楽のための協奏曲」は、これも好みではないとはいえ、<管弦楽>を聴く面白さが詰まっていたように思う。
終盤は自分の体調もだいぶ戻って、N響の巧さ、P・ヤルヴィの統率力に感心した。

N響は今日から新シーズンだ。
ホール・エントランスの鉢巻部分が綺麗に塗装してあった。
演奏会の1日目はFM生中継とTV録画が行われる。
その為の客席内ビデオカメラの配置が変更されて、下手後方は静止画カメラ席になり、従来そこにあったカメラは客席最後列中央に移動していた。これで僕の後ろ髪が映されるかもしれないな。あまりふさふさしていないけど…。

♪2019-138/♪NHKホール-05

読売日本交響楽団第114回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2019-09-14 @みなとみらいホール


セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
読売日本交響楽団

小林壱成:バイオリン*

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲*
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

東フィル定期の来季の席替え手続きの為に80分も電話をかけ続けたせいか、精神的のみならず生理的にも本当に気分が悪くなり、いったんソファに横になったらなかなか起き上がれない。
仕方なく前半はパスした。

休憩後の後半に間に合うように出掛けて、大好きなメンデルスゾーン交響曲「イタリア」を聴くも核心に入れず、この曲の思い出などが連想ゲームのようにあれこれ思い出されて音楽に集中できない。

残念なコンサートになってしまった。

♪2019-137/♪みなとみらいホール-39

2019年9月10日火曜日

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

2019-09-10 @歌舞伎座


菅原伝授手習鑑
一、寺子屋(てらこや)
松王丸⇒吉右衛門
園生の前⇒福助
千代⇒菊之助
戸浪⇒児太郎
涎くり与太郎⇒鷹之資
菅秀才⇒丑之助
百姓吾作⇒橘三郎
春藤玄蕃⇒又五郎
武部源蔵⇒幸四郎

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう
武蔵坊弁慶⇒幸四郎
源義経⇒孝太郎
亀井六郎⇒坂東亀蔵
片岡八郎⇒萬太郎
駿河次郎⇒千之助
常陸坊海尊⇒錦吾
富樫左衛門⇒錦之助

三世中村歌六 百回忌追善狂言
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信⇒歌六
大高源吾⇒又五郎
鵜飼左司馬⇒歌昇
江川文太夫⇒種之助
渕部市右衛門⇒鷹之資
里見幾之亟⇒吉之丞
お縫⇒米吉
宝井其角⇒東蔵

今年の秀山祭夜の部は尻尾まで餡の詰まった鯛焼き3枚。大満足。

「寺子屋」は何度目観ても面白い。
今回は、吉右衛門・又五郎・菊之助・幸四郎と見たい役者が揃った。
忠義の為に我が子の首を差し出すという時代錯誤の物語だが不思議と共感してしまうのは無私の精神で徹底的に人に尽くすことの美しさに抵抗できないからだろうな。山本周五郎の掌編「水戸梅譜」に何十回となく読んでいても、新たに読む度泣けてしまうのも同根だ。

今時ありえないような話をありそうに描くのが役者の腕の見せ所。又五郎以下みんな巧いが、吉右衛門は次元が違う大きさを感じさせる。
菊之助の息子、丑之助は團菊祭で初舞台を踏んだ。あいにく彼の出演した夜の部は観なかったので(後日TVで観劇したが)、僕にとっては今日が初見。團菊祭から4ヶ月。6歳になり菅秀才を演じた様子は初舞台で牛若丸を演じた際の子供っぽさとは様変わりで驚いた。

「勧進帳」は弁慶役が奇数・偶数日で仁左衛門と幸四郎が交代。幸四郎は奇数日は富樫を演ずるというハードな舞台をこなしている。幸四郎の弁慶は経験済みなので仁左衛門で観たかったが諸般の事情で偶数日の今日は幸四郎で。富樫は男前の錦之助だ。

義経が孝太郎(最近放映のNHKで昭和天皇。そっくりだったな。)が義経。ちょい老けた義経だけどこれもよし。終盤、弁慶ら部下を謁見する場面などやはり、義経の貫禄を見せる。

3本立ての中でも「松浦の太鼓」がベスト!
歌六・又五郎・東蔵という地味だが達者な役者。米吉が紅一点で華を添える。
忠臣蔵外伝の一種で、これは以前、幸四郎が松浦の殿様を演じたのを観たが、まるで喜劇仕立てだったが、今回は、なかなかしんみりとさせる。

吉良家の隣屋敷に住まいする松浦鎮信(歌六)の赤穂浪士に寄せる思い、本心を明かせず歌に気持ちを託す忠義の大高源吾(又五郎)、二人の俳諧の師である宝井其角(東蔵)、源吾の妹・お縫(米吉…む、かわゆい!)のそれぞれの熱い想いが空回りする前半から、やがて隣家から聞こえてくる山鹿流陣太鼓の連打。
赤穂浪士に助太刀せんと勇みたつ殿様のもとに吉報を知らせにくる大高源吾。すべてのわだかまりが解け、気持ちが結ばれ、喜び合う面々。
おかしくて笑いながらもどっと泣けてきた。

東蔵は、いつもはたいていおばあさん役だ。立ち役(男役)は滅多に観られないが、何をやらしても巧い。人間国宝だものな。
歌六もいい味だ。又五郎も何を演っても巧いな。

3本とも古臭い話なんだけど。でも面白い。


♪2019-136/♪歌舞伎座-04

2019年9月8日日曜日

新日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会 第10回 サファイア<横浜みなとみらいシリーズ>

2019-09-08 @みなとみらいホール


上岡敏之:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

シューベルト:交響曲第4番ハ短調 D417「悲劇的」
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調 WAB107(ハース版)

新日本フィルのみなとみらいホールでのコンサートは年に3回しかないが、いずれも上岡御大が大曲を振る。
しかも数日前にサントリーホールで演奏した同一プログラムを持ってきてくれるので、謂わば、サントリーでお客を入れたゲネプロで仕上げた状態のものを聴かせてくれるのだから実に嬉しい。
そしていつもみなとみらいホールで収録するのは演奏が十分出来上がっているというだけでなく、良い音響を求めてのことだろう。いずれにせよ、いつも力が入っているのが分かる。

昨日の神奈川フィルの際もホールは良く鳴った。
不思議なもので、ホール内に入った時から、今日も良く鳴るぞという予感があった。
透明な空気感でそう感じたが、案の定だ。

弦のアンサンブルが実に美しい。
管も良い響き。
両者が混じり合う時の交響的音響はこれぞ生オケを聴く醍醐味だ。もちろん新日フィルの実力あってのことだが、音楽監督上岡敏之の采配も的確なのだろう。いつも細部へのこだわりを感ずる。時に独自な解釈を聴かせることがあって、それが楽しい。尤も、今日はオーソドックスな演奏ではなかったかと思うが、何しろブルックナーは好んで聴く方ではないから標準形を知らないので。

いずれにせよ、かくも透明感を維持して、楽器本来の音の美しさを発揮してくれるとあまり好物でもないブルックナーさえも愛おしくなる。

新日フィルが横浜に来るときはいつも客演するホルンの日高氏(元N響首席)もやはり只者ではない。マーラー同様ブルックナーでもホルンは非常に重要な役割を担っている。
第一楽章の出だしでバイオリンの細かい刻みに乗ってチェロとユニゾンでホルンソロが響くところ、ここで気持ちが乗らないと先がしんどいが、見事な演奏だった。お、これで今日は楽しめるかな、という気にさせ、そして最後まで知的興奮が継続した。

先日の大野+都響のブルックナー第9番も久しぶりに都響にも底力があるなと感心した出来だったが、今日の新日フィルの巧さは格違いの気がした。
こういう演奏を聴くと、ブルックナーに対して抱いていたマイナス印象を払拭されてしまう?ようで、どうしよう…。

♪2019-135/♪みなとみらいホール-38

2019年9月7日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第352回

2019-09-07 @みなとみらいホール


ユージン・ツィガーン:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ラヴェル:ラ・ヴァルス
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466*
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調Op.93

指揮のユージン・ツィガーンは初顔。名前・顔立ちからハンガリアンかと思っていたが、日米のハーフだとか。でもきっとパパが東欧系だろう。神奈川フィルとも初めてだと思う。そういう解説がプログラムに何にも書いてない。指揮の巧拙は分からないが好感受けた。

今日は、ホールの音響がとても良い。ベストが100点なら、85点くらい。なかなかこういう響きには遭遇できない。なんで、響きが毎回異なるのかはよく分からない。複雑な要素が関係すると思うが、どっちにしてもホールの音響設計が良くなければ他の要素をいくら積み上げても良い響きにはならない。そういうがっかりさせるホールはいくらもある。

1曲めは「ラ・ヴァルス」。あまり纏まりがなかったが、この曲はどんなオケの演奏を聴いても好演だと思った記憶がない。メロディーラインは部分的に親しみやすいが、そのオーケストレーションがとても複雑で、旋律線とそれに纏わり付く伴奏部分が衝突して互いの魅力を減殺しているように思える。そう簡単には楽しませてやるものか、という風なラヴェルの意地悪さを感じてしまう。

次のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番が実に良かった。

もちろん、独奏者の久元祐子の腕もいいのだろう。
ホールの響きの良さも相まって、高音はコロコロ転がり、中低音も歯切れ良い。

ほとんどペダルを使っていない…かのように、音の粒だちがよく濁らない。
ピアノにケレンなく、オケも出しゃばらず、端正な音楽に仕上がってこれは至福の一時だった。

ところで、この久元氏は日本で唯一のベーゼンドルファー・アーチストだ。しかし、今日弾いたのがスタインウェイだったのは残念。みなとみらいホールにはベーゼンドルファーのフルコンサートモデルの中でも最大級のものが置いてあるはずだけど。

ピアノ独奏ではなく、オケとの共演だったから派手めのスタインウェイを使ったのかもしれない。

メインはショスタコーヴィチ交響曲第10番。
年に1度位しか聴く機会がないのでなかなか感情移入が難しいが、今日はオケの鳴りも良く、弦も管も驚くほど達者で細部まで気合が入って十分楽しめた。

♪2019-134/♪みなとみらいホール-37

2019年9月5日木曜日

藤原歌劇団公演オペラ「ランスへの旅」

2019-09-05 @新国立劇場


折江忠道:総監督
園田隆一郎:指揮
松本重孝:演出

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団/二期会合唱団

コリンナ:ローマの女流詩人⇒砂川涼子
メリベーア侯爵夫人:ポーランドの寡婦⇒中島郁子
フォルヴィル伯爵夫人:若い寡婦⇒佐藤美枝子
コルテーゼ夫人:金の百合亭主人⇒山口佳子
騎士ベルフィオール:仏士官。コリンナに愛⇒中井亮一
リーベンスコフ伯爵:ロシア将軍⇒小堀勇介
シドニー卿:英軍人。コリンナに愛⇒伊藤貴之
ドン・プロフォンド:文学者⇒久保田真澄
トロムボノク男爵:独陸軍少佐⇒谷友博
ドン・アルバーロ:スペインの提督⇒須藤慎吾
ドン・プルデンツィオ:医者⇒三浦克次
ドン・ルイジーノ:フォ〜夫人のいとこ⇒井出司
デリア:ギリシャ孤児。コリンナ下女⇒楠野麻衣
マッダレーナ:女中頭⇒牧野真由美
モデスティーナ:フォ〜夫人の小間使い⇒丸尾有香
ゼフィリーノ:使者⇒山内政幸
アントニオ:給仕長⇒岡野守
ほか

ロッシーニ:歌劇「ランスへの旅」
オペラ全1幕〈字幕付きイタリア語上演〉

予定上演時間:約3時間
第Ⅰ部105分
 --休憩20分--
第Ⅱ部55分

藤原歌劇団公演に二期会・新国も参加した大掛かりなプロダクション。
独唱者17人に合唱がついて目まぐるしく賑やか。
幸い同じ藤原歌劇団の同じ演出による2015年の日生劇場版を観ていたので筋書きは覚えているが、初めての人には特段の説明もなく話が進むので置いてきぼりにされるかもしれない。
ま、それでも構わぬ歌こそ命の歌劇だ。

1825年パリ近郊の湯治場、と言っても高級ホテル。
フランス王シャルルのランスでの戴冠式見物の為に同じ宿に集った紳士淑女たち。そこであれやこれやのプチ・ドラマが繰り広げられる。目的のランス行きが不可能となるもパリでもお披露目が行われると聞き安堵して、とりあえずランスへの旅の費用として集めたお金で大宴会を開くことになった。
ここまでも一言もセリフはなく、レシタティーヴォとアリアの連発だ。ともかく、次から次と歌に次ぐ歌。

クライマックスの大宴会で紳士淑女は出身国にちなむ歌を交代で披露する。実は、集まった紳士淑女たちはそれぞれ異なる国の出身者なのだ。この辺が巧い設定だ。

ドイツ人の男爵はドイツ賛歌、
ポーランドの公爵夫人はポロネーズ、
ロシアの伯爵はロシア賛歌、
スペインの海軍提督はスペインのカンツォーネ、
イギリス軍人は英国国歌、
フランスの伯爵夫人と騎士は二重唱でブルボン王家賛歌、
ティロル出身の夫人はヨーデル颯民謡
を歌い継ぎ、シメに即興詩人が全員の投票によって決まったお題を基に即興で「シャルル王」賛歌を歌い、最後は全員で「シャルル王」賛歌を歌って華やかに幕。

主要な17人の歌手の中には何度も聴いている人もいるが初めて聞く名前もあった。だが、みんな巧いことにいつもながら驚く。よく通る声で、ベルカントの難しそうな細かく早い装飾をコロコロ歌う。
独唱から二重唱、六重唱、果ては14人、17人の強力な合唱も実に聴き応えがあった。

中でも一番は主役格の砂川涼子。
この人はホンに何度も聴いているけど、今日はその実力を思い知らされた感がある。今年はまだ日生劇場の「トスカ」、紀尾井ホールでのリサイタルを追っかけなくちゃ!


♪2019-133/♪新国立劇場-09

2019年9月4日水曜日

東京都交響楽団 第885回 定期演奏会Bシリーズ

2019-09-04 @サントリーホール


大野和士:指揮
東京都交響楽団

ヴェロニカ・エーベルレ:バイオリン*

【若杉弘没後10年記念】
ベルク:バイオリン協奏曲《ある天使の思い出に》*
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 WAB109(ノヴァーク版)
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プロコフィエフ:無伴奏バイオリン・ソナタから第2楽章*

今日は偶々ブルックナー195歳の誕生日だったが、プログラムには書いてなかった。その一方で、プログラムには若杉弘没後10年は銘打ってあったが、今日の演目との関係は何にもなかったようだ。
ま、そんな事どうでもいいのだけど。

久しく都響不信感が募っていたが、今日はさっぱりと解消してくれた。

「湿度が高いとホールは良く鳴る」という僕の仮説が当たってサントリーホールにしてはとても良い響きだった。これも都響の腕を高らしめた一因だろう。

まず、ベルクのバイオリン協奏曲。以前、N響+ジュミ・カンで聴いたことはあったがその時はつまらなく感じたが、今回は結構楽しめた。これで3度目聴くこととなったエーベルレの技量も(音圧を除き)良かった。

何より都響の演奏が繊細で良かった。
非調性音楽はだいたい嫌いだ。この曲は12音音階を基にして作曲されているようだが、その割には穏やかで無闇に意表を突くようなところも少なく嫌味がない。何より独自の和声が綺麗だ。
ただ、2楽章の3挺のバイオリンが絡み合う部分など、肝心の音の遣り取りがオーケストラに隠れてよく聴こえなかったのは残念。

メインがブルックナー。
これが過去の鬱憤を晴らす上出来!

冒頭の弦楽器のみの弱音トレモロ…所謂ブルックナー開始から管楽器が入るところが穏やかで良かった。ここをファンファーレみたいに大音量でかき乱す演奏も少なからず。
ここが自然で綺麗に滑りだしたので、あとはなんだか安心して聴いておられた。

今日は弦のアンサンブルも綺麗だったし、管と弦の織りなす響きも久しぶりに美しかった。都響は、やはり力があるのか。

それにしても、ブルックナーは何故かくも劇的で緊張感を強いる音楽なのだろう。未完成で終わってしまったのはむしろ正解だろう。

♪2019-132/♪サントリーホール-05