2017-12-19 @みなとみらいホール
横坂源:チェロ*
田村響:ピアノ
黛敏郎:文楽*
ウェーベルン:チェロとピアノのための3つの小品 作品11
シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
ベートーベン:チェロ・ソナタ第4番ハ長調 作品102-1
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アンコール
サン=サーンス:白鳥
2年強前に、同じみなとみらいホールの大ホールの方でウィーン・フィルのヘーデンボルク・直樹のチェロ・リサイタルを聴いた際に黛敏郎の「文楽」を聴いた。音楽は忘れていたけど、こういう変わったタイトルなのでどこかで聴いたな、と覚えていた。
人形浄瑠璃の太棹をイメージした作品で、ピチカートと言うより、叩きつけるような撥音法が随所に取り入れられているが、旋法がまるで違うので、文楽をイメージするのは難しかったが、今回の横坂の演奏の方がインパクトが強かったのは、ヘーデンボルク・直樹は大ホールでの演奏(2列目とはいえ2階席。)だったのに比べて、今回は小ホールの演奏だからだろう。
みなとみらいホールの小ホールは僕が日常的に聴く小ホールの中では一番響が良いと思っている。小規模なシューボックスで天井以外はすべて木製だ。オペラシティのタケミツメモリアルを小さくしたような感じの柔らかい響がする。
ウェーベルン(プログラムにはアントン・ヴェーベルンと書いてあったが、僕は予てからウェーベルンと表記しているので従前に倣う。)の「チェロとピアノのための3つの小品」は初聴き。3曲と言っても、それぞれが9、13、10小節からなり全曲!でも2分ほどしかかからないという説明だったが、たしかに、いつの間に3曲が終わったのか分からなかった。演奏者も観客に終曲の合図をせず、そのままシューマンを始めたので、結局ウェーベルンは誰からも拍手を受けなかった。でも、演奏家にとっては何某かの味わいがあるかもしれないが、聴く側にはつまらない作品だ。独りよがりとしか思えない。
そのシューマンも残念ながら小品なので、じっくり2人の駆け引きなどを味わうような作品ではない。
そんな訳で、メインはベートーベンのソナタ4番。やはり、これはしっくり来る。ピアノ・ソナタで言えば、27番(1814年)と28番(1816年)の間(1815年。チェロ・ソナタ5番も同年)に作られたらしいが、この辺はベートーベン後期の始まりと言えるのではないか。ピアノ・ソナタ27番と28番では随分様相が異なる。
チェロ・ソナタも有名な3番(1808年)の明快さに比べると4番はとても深刻そうで内省的だ。7年の時が経過したこともあるのだろうが、ピアノ・ソナタで言えば27番と28番の違いと似たようなものがあるのではないか。また、その単純でないところが(耳馴染むまではともかく、馴染んでしまえば)面白さでもある。
10月に大好きな藤原真理の演奏で、大ホールの方でこの4番を聴いている。それももちろん感銘深いものだったが、今日の演奏、特にチェロの音といい、ピアノのおとといいを聴きながら藤原真理もやはり小ホールで前の方に陣取って聴きたかったなあと思った。
アンコールは、弾く前に、安直だが「白鳥」だろうと思ったがそのとおりで、これはちと物足りなかったな。
♪2017-206/♪みなとみらいホール-50