2016年12月26日月曜日

都響スペシャル「第九」

2016-12-26 @サントリーホール


ヤクブ・フルシャ:指揮
東京都交響楽団

ソプラノ:森谷真理
アルト:富岡明子
テノール:福井敬
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:二期会合唱団

ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付き」

2016年の、5回目にして最後の「第九」。そして最後185回目のステージ。

フルシャ指揮都響は大いに健闘した。
が、昨日のN響とは薄皮一枚の差を感じた。
ブロムシュテット+N響は音楽の細部の総和が100%を超える力を感じたが、今日の都響は細部の積み上げより元気さが目立った。

これも一つの「第九」だろうが、それにしては、楽章間の間合いの長さが高潮感を削いだ。
少なくとも第3楽章から第4楽章へは間髪入れずに入って欲しい。

全員二期会の独唱・合唱陣はとても迫力があり、元気なオケにも負けていなかったのは素晴らしい。

♪2016-185/♪サントリーホール-14

2016年12月25日日曜日

N響特別公演「第九」~N響創立90周年記念~

2016-12-25 @NHKホール


ヘルベルト・ブロムシュテット:指揮
NHK交響楽団

ソプラノ:シモーナ・シャトゥロヴァ
アルト:エリーザベト・クールマン
テノール:ホエル・プリエト
バリトン:パク・ジョンミン
合唱:東京オペラシンガーズ

ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付き」


今年の「第九」の4回目。
ブロムシュテットの指揮でN響を聴くのはこれが3回目。
ベートーベンの作品は前回の交響曲第2番とピアノ協奏曲第5番に次いで2回目の3曲め。
前回の印象では奇を衒わない正統派ドイツ音楽という印象を受けた。

今回は席も良かった。1階席のど真ん中やや前方。楽器の原音と残響とがうまく混じり合って大迫力なのに各パートの音が明瞭に聴き分けられる。そういう事情も手伝ったのだと思うが、音楽の細部がきちんと伝わってくる。
ベートーベンの交響曲、特に「第九」は細かなパーツを丁寧に積み重ねられた大伽藍だ。パーツの各面が正確に磨き上げられていなければ積み上がった構造物も隙間ができぐらついてしまうが、ブロムシュテットのN響に対するトレーニング〜指揮ではまさにどのパートも磨き上げられて美しく響き、積み上がって大伽藍を構成した。

「神は細部に宿る」という言葉を思い浮かべていた。
全曲を通じて、これほどに幸福感を味わいながら音楽を聴く事ができたのは得難い経験だ。

合唱隊だけでなく声楽ソリストも最初から舞台に上がった。それで、楽章間にソリストの入場で音楽の緊張感が損なわれることがなく、しかも、第3楽章が終わると、ほんの一呼吸置いただけで終楽章に雪崩打ったのには胸のすく思いがした。

N響の演奏は、常に上出来とは限らない。しかし、前回の「カルメン」全曲に続き「第九」でもさすがに日本を代表するオケだと感じさせてくれた。

2016-184/♪NHKホール-13

2016年12月23日金曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場

2016-12-23 @国立劇場


竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら) 第三部 四幕八場
国立劇場美術係=美術

八段目   道行旅路の嫁入
九段目   山科閑居の場
十段目   天川屋義平内の場
十一段目 高家表門討入りの場
    同  広間の場
    同  奥庭泉水の場
    同  柴部屋本懐焼香の場
    花水橋引揚げの場


2日の初日鑑賞に続いて2回目だ。
前回は、めったにない事だけど、1階4列目中央やや上手寄りから観たが、今回は3階最前列席中央だったが、むしろこのチケット代の安い席の方が見通しが良くて楽しめた…ともいいきれないか。
なにしろ2回目なので筋が頭に入っているという利点もあったのだろう。
特に十一段目の高家表門の場では46名の居並ぶ迫力は高い場所から見下ろしていた方が迫力を感じた。

全3部を2回ずつ観て、この間に文楽版も観たのでいよいよ全篇が終わってしまうと寂しくもある。
単なる<仇討ち事件>を描くのではなく、殿様の短慮に巻き込まれた多くの、いろんな立場の人々の忠義やそれ故の悲劇を描く人間ドラマとなっているのが素晴らしく、良くできた話だと感心する。

この公演は当然録画は行われたはずだからNHKが放映してくれると嬉しいが、何しろ大長編であるから無理だろうな。

♪2016-183/♪国立劇場-010

2016年12月22日木曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート ≪天使のクリスマス≫パリ木の十字架合唱団 クリスマス・コンサート

2016-12-22 @みなとみらいホール


ヴァンサン・カロン:指揮
ユーゴ・ギュティエレス:芸術監督

パリ木の十字架合唱団

グレゴリオ聖歌:キリエ第4番
ペタロン:主を
クープラン:歓喜し、歓声をあげよう
リュリ:神の力
セヴラック:かくも偉大な秘跡
デュリュフレ:グレゴリア聖歌の主題による4つのモテットから「いつくしみと愛のあるところ」
ギュティエレス:アニュス・デイ~神の子羊~
カッチーニ:アヴェ・マリア
フォーレ:ラシーヌ賛歌 Op11
グノー:モテット”おお、救い主なるいけにえよ”
J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 第40曲

グレゴリオ聖歌:幼子が生まれた
シャルタヴォワーヌ:ひとりの若い乙女
グティエレス編:クリスマスは来たれり
ダカン:クリスマス・カンタータ
グル―バー:きよしこの夜
トラディショナル:神の御子が生まれた
ラモー:夜の賛歌
トラディショナル:荒野の果てに
リュリ:三人の王の行進
トラディショナル:神の御子は今宵しも
サン=サーンス:クリスマス・オラトリオから「いけにえを捧げよ」
-------------
アンコール
日本古謡:さくらさくら
ロッシーニ:猫の二重唱
ピエールポン:ミュージック・ユニバーサル

木の十字架少年合唱団は、随分たくさん歌ってくれたが、取り立てていうほどに巧いとも思えない。このレベルの少年合唱団なら日本にもいくらでもあるのではないか。

ほとんどニコリともせず、舞台上での隊列の組み直しなども指揮者の合図通りに機械的に従って動くので、まるで鎖につながれた囚人合唱団みたいだったな。

歌そのものはとても心地良かったが、ちとがんばり過ぎ。
どの曲も短いけど次から次と歌ってくれるので、2時間近い演奏会になった。全部暗譜だったと思う。これは大したものだ。

最近ちょっと流行りのカッチーニの(真実はウラディミール・ヴァヴィロフ作)「アヴェ・マリア」をナマで聴いたのは初めてだったかも。

♪2016-182/♪みなとみらいホール-49

2016年12月19日月曜日

東京都交響楽団 第822回 定期演奏会Aシリーズ

2016-12-19 @東京文化会館


ヤクブ・フルシャ:指揮
東京都交響楽団

マルティヌー:交響曲第5番 H.310
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調 op.93

マルティヌーという作曲家は知らなかった。1890年モラヴィア生まれ。1959年になくなっている。交響曲を6曲書いているが、第1番が51歳のときというからブラームスもびっくりの慎重派?
5番を書いたのが1946年。
それにしてはとてもロマンチックでドラマチックな音楽だった。
初めて聴いたから、へえ、こんな音楽か、ということ以上の感興はなかった。


ショスタコの10番も多分初聴きだ。
第1楽章が全体の半分近い長さ(25分位)で、しかもほとんど弱音でゆったりと経過してゆくので体調が悪ければ爆睡必至だ。
が、第2楽章が賑やかでテンポも速いので寝ていた観客もここでは覚醒するだろう。
古典的な形式の第1楽章と第2楽章がこの作品では入れ替わっている。
第3楽章もあまり面白くない。
終楽章もいよいよ終曲の少し手前からどんどんと盛り上がっていって、ようやくそれまでの憂さ晴らしができるのだけど、心に残るフレーズはなかった。

ショスタコーヴィチとしては過去に色々と国家からの批判を受けてきたために、本作では密かに自分の名前や女性の名前を織り込んで、屈折した本音を表現しているという説もある。
スターリンの死まで発表を待ったらしいが、そのような事情は音楽とどう関係してくるのだろう。
純粋に絶対音楽として楽しめばいいのではないか。
もっとも、なかなか楽しませてはくれないのだけど。

♪2016-181/♪東京文化会館-10

国立劇場開場50周年記念 平成28年度12月中席

2016-12-19 @国立演芸場


落語 三遊亭ぐんま⇒子ほめ
落語 柳家喬の字⇒真田小僧
落語 柳家さん助⇒かつぎ屋
音楽パフォーマンス のだゆき
落語 三遊亭白鳥⇒座席なき戦い
落語 三遊亭歌司⇒風呂敷
   ―  仲入り  ―
漫才 笑組(えみぐみ)
落語 柳亭左龍⇒鈴ヶ森
曲芸 翁家社中
落語 柳家さん喬⇒掛け取り

柳家さん喬の「掛け取り」以外は落語に見るべきものなし。
これは傑作だった。
大晦日の掛け取りを追い返す方策として5人登場する掛け取りの夫々の得意分野に迎合し、狂歌、義太夫、歌舞伎、口喧嘩、三河萬歳を駆使してうまく断るのだが、これを演ずるには噺家にも各分野でそれなりの芸が求められるので容易では無いはず。
特に義太夫、歌舞伎が傑作だった。

曲芸の「翁家社中」はもう何度も観ているし芸は変わらないけど、この安定感と親子?の息の合い加減に好感。

2016-181/♪国立演芸場-17

2016年12月18日日曜日

横浜交響楽団第675回定期演奏会

2015-12-18 @県民ホール


飛永悠佑輝:指揮
横浜交響楽団

独唱 
ソプラノ:高井千慧子
アルト:小杉瑛
テナー:大川信之
バリトン:大川博
合唱
横響合唱団
横響と「第九」を歌う会合唱団

フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付き」


横響は年8回の定期演奏会を行うが、ホームは県立音楽堂だ。
年に1回だけ、この「第九」のときだけ県民ホールで開催する。
オケの規模も目一杯大きくなるが、何といっても合唱団が半端ではない。何年か前に600人だと聞いたが、今年も同じなのだろう。

県民ホールの大きな舞台上に所狭しとオケと合唱団が居並ぶこの壮大な景色がワクワクさせる。

演奏も熱が入っていたしなにより第4楽章の合唱の迫力は凄みがある。プロの声楽ソリストたちもとても良かった。

「千人の交響曲」並みの大規模オケと合唱団の爆音に酔った。

♪2015-179/♪県民ホール-5

2016年12月17日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第323回横浜定期演奏会

2016-12-17 @みなとみらいホール


下野竜也:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

ソプラノ:吉原圭子
アルト:小林由佳
テノール:錦織健
バリトン:宮本益光
合唱:東京音楽大学

ボイエルデュ―:《バグダッドの太守》序曲
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付き」


今年の「第九」の2回目。

先日の神奈川フィルの出来がとても良かったが、こちらも好テンポ。軽快だ。疾走するベートーベンは小気味よし。
しかし、第3楽章の天上の音楽はいくらなんでも急ぎ過ぎではないか。

終楽章、低弦のレシタティーボも疾走するが如き。
ベートーベンはこういうのを意図したのだろうか。
変り種と言えば、昨年の上岡敏之+読響の「第九」も相当なものだったが、あれはあれでなんか惹きつけられたなあ。

声楽独唱・合唱団は最初から舞台に待機したのは良かったが、なら第3楽章の後の休止を最小限にして終楽章に雪崩うってほしかった。

合唱団は声部毎ではなく男声・女声がランダム?に並んだ。一体どういう効果を狙ったものか?見た目にも良くない。


♪2016-178/♪みなとみらいホール-48

2016年12月16日金曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第325回

2016-12-16 @みなとみらいホール


パスカル・ヴェロ:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
アンドレ・アンリ:トランペット*

ミヨー:バレエ音楽「世界の創造」Op.81
シェーヌ:トランペット協奏曲第1番*
ミヨー:バレエ音楽「屋根の上の牡牛」Op.58
ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル:ボレロ
------------
アンコール
ドリーブ:歌劇「ラクメ」から”若いインドの娘はどこへ(鐘の歌)”*

フランス人指揮者パスカル・ヴェロによるフランス音楽尽くし。
トランペットのソリスト、アンドレ・アンリもフランス人。
ミヨーなんて作曲家は名前を知っているだけ。多分、これまで聴いたこともないと思う。
ショーヌに至っては名前さえ初聞きだ。

前半は退屈するだろうと思ったが、これが存外楽しめた。
ふたりとも現代の作曲家でミヨーは1974年に亡くなっているがショーヌは今年の6月(つまり半年前)になくなったばかりの同時代人だ。

ミヨーの2曲。
「世界の創造」は調性を持った親しみやすい音楽で前半はスローバラード風。後半はちょっと行進曲風になったかと思うとすぐジャズぽくなる。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」のような雰囲気を持った曲だ。
「屋根の上の牡牛」もまったく軽音楽のようだ。
しかし、13回繰り返す変奏はその過程で短調になったり長調になったりしながら全部の調性を網羅するようにできているそうだ。聴いていてはその工夫は聴き取れないけど。ま、気楽な音楽だ。

シェーヌの「トランペット協奏曲第1番」はもう思い出せないけど、これも決して理解不能な現代音楽風ではなかった。

そんな訳で、高いハードルだと思っていた前半が楽しめたので、あとは好きな曲が揃った。

交響詩「海」も「ボレロ」も派手なオーケストレーションが売り物だが、神奈川フィルの熱演にパスカル・ヴェロも満足できたのではないだろうか。

♪2016-177/♪みなとみらいホール-47

2016年12月14日水曜日

東京都交響楽団 第821回 定期演奏会Bシリーズ

2016-12-14 @サントリーホール


ヤクブ・フルシャ:指揮
東京都交響楽団
ヨゼフ・シュパチェク:バイオリン*

ドボルザーク:バイオリン協奏曲 イ短調 op.53 B.108*
マーラー:交響曲第1番 ニ長調 《巨人》
--------------
アンコール
イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第2番から第4楽章*

指揮のヤクブ・フルシャは都響の首席客演指揮者だが、これまで聴いたことがなかった(?)。まだ35歳だが、5年前(2011年)の『グラモフォン』誌で、「大指揮者になりそうな10人の若手指揮者」のうちの1人に選ばれたそうだ。

バイオリン独奏のヨゼフ・シュパチェクも初めて。こちらは30歳。

ドボルザークはまずまず。
むしろ、アンコールに弾いたイザイの無伴奏が超絶技巧で素晴らしかった。

大いなる楽しみは「巨人」だったのだけど、冒頭からテンポが遅いと感じて、最後までもうちょっと早めに頼むと思いながら聴いていた。そう思って聴いているとなかなか音楽に没入できないし、終楽章の盛り上がりも今ひとつカタルシスに欠けた。
終わるや否や時計を見たら、演奏時間は約55分で、決して長くはない。帰宅後手持ちCDの4種類の「巨人」を調べたらいずれも54分から58分で、こうなるとヤクブ・フルシャのテンポ設定は当を得たものだったのかもしれない。

都響のアンサンブルにはたいてい満足しているのに、この日の響はしっくり来なかったのはどうしてだろう。金管に珍しくミスがあった。でもそれは大勢に影響しない。
何か、わが心のうちに心配事でもあったのかなあ、と自分で自分の心配事を心配してみたがこれといったものも見当たらず。そういう日もあるか、ということにしておこう。

♪2016-176/♪サントリーホール-13

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後~旅立ちのヨコハマで、午後のX'masコンサート 前橋汀子バイオリンリサイタル

2016-12-14 @みなとみらいホール


前橋汀子:バイオリン
松本和将:ピアノ

エルガー:愛の挨拶 Op.12
J.S.バッハ:G線上のアリア
モーツァルト:バイオリン・ソナタ 第24番 ハ長調 K.296
ベートーベン:バイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調Op.24「春」
ドビュッシー(ハルトマン編):亜麻色の髪の乙女
クライスラー:ウィーン奇想曲 Op.2
クライスラー:中国の太鼓 Op.3
シューベルト(ヴィルヘルミ編):アヴェ・マリア
パガニーニ(クライスラー編):ラ・カンパネラ
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28
懐かしの名曲集(丸山貴幸編)
  枯葉/“ウエストサイドストーリー”より「マリア」/イエスタデイ/“オペラ座の怪人”より「オーバーチュア」/愛の賛歌
-----------
アンコール
ドボルザーク(クライスラー編):我が母の教え給いし歌
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

2012年に演奏活動50周年だったというから、現在は54年か。
これに20歳を加えると彼女の年齢になる。
54年間もステージに立ち続けている大ベテランの演奏を格安で聴くことができるのは「クラシック・マチネ」シリーズのおかげだ。

昨年夏に、音楽堂でJ.S.バッハ無伴奏全6曲の演奏会を聴いて、年齢を感じさせないエネルギーにこちらが疲れるくらいだったが、今回は気楽な小品集。といってもソナタが2曲含まれるけど、いずれも小振りで快活明朗な作品だ。ご本人も楽しんで弾いている様子で何より。

盛りだくさんのプログラムで、アンコールの最後に「ツィゴイネルワイゼン」まで弾いてくれたのには驚いた。

♪2016-175/♪みなとみらいホール-46

2016年12月11日日曜日

N響第1851回 定期公演 Aプログラム~N響創立90周年記念~

2016-12-11 @NHKホール


シャルル・デュトワ:指揮
NHK交響楽団

カルメン:ケイト・アルドリッチ
ドン・ホセ:マルセロ・プエンテ
ミカエラ:シルヴィア・シュヴァルツ
エスカミーリョ:イルデブランド・ダルカンジェロ
スニーガ:長谷川顯
モラーレス:与那城敬
ダンカイロ:町英和
レメンダード:高橋淳
フラスキータ:平井香織
メルセデス:山下牧子
      
合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団

ビゼー:歌劇「カルメン」(演奏会形式)



カルメン:ケイト・アルドリッチ
シャルル・デュトワ指揮N響の演奏会形式によるオペラ全曲演奏も今回で3回目だ。過去に「ペレアスとメリザンド」、「サロメ」を聴いた(観た?)が、なんといっても今回は目にも耳にも馴染んだ超有名作「カルメン」なので期待値は高かった。


ドン・ホセ:マルセロ・プエンテ
僕が自前で初めて買ったオペラのLPがマリア・カラスの「カルメン」。それ以来、DVDを買ったり、放映されたものを録画してディスクに保存したものが8種類を数える。全体を観るには時間がかかるのでなかなかそれらを楽しむこともできないけど、足腰が弱くなって出かけられないようになったら、ホームシアターで楽しもうと思っている。
「カルメン」組曲や間奏曲などは演奏会でもよく取り上げられるので聴く機会が少なくない。1年ほど前に横響がやはり演奏会形式の「カルメン」をやってくれたが、全曲ではなかった。


ミカエラ:シルヴィア・シュヴァルツ
今回、初めて全曲を完全に通して聴いてその素晴らしさを存分に味わった(1月に新国立劇場で本物の「カルメン」を観ることになっているので一層楽しみになってきた。)。

音楽の素晴らしさだけではなく、演奏も実に良かった。
N響の定期演奏会の2016年掉尾を飾るにふさわしい超上出来!
エスカミーリョ:
イルデブランド・ダルカンジェロ
独唱陣も合唱団も良い仕事をしたが一番はオーケストラだ。
デュトワの功績かもしれないが、久しぶりにシャキシャキした演奏を聴いて、N響はやっぱり日本一のオケかもと思った。

終演後の観客席の熱狂もかつてないもので、その場に居合わせて自分も拍手しながら、演奏家と観客席に通う感謝・感激の一体感に心震える思いだった。

2016-174/♪NHKホール-12

2016年12月10日土曜日

第7回 音楽大学オーケストラ・フェスティバル2016 東邦&洗足

2016-12-10 @東京芸術劇場大ホール


田中良和:指揮(東邦)
東邦音楽大学管弦楽団
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
井上道義:指揮(洗足)
洗足学園音楽大学管弦楽団
グローフェ:「グランド・キャニオン」組曲

全部で4回にわたって開催された在京音大オケによる「オーケストラフェスティバル」の最終回だった。
前回は11月23日にミューザで桐朋と昭和を聴いたが、今回は芸術劇場で東邦と洗足だ。

毎回、指揮者はプロが担当している。

少なくとも4つ聴いたがどこのオケが巧いとかは分からない。いや、どこも凄くレベルが高くてプロのオケとさほど変わらないのではないかと思った。

ただ、東邦が演奏した「英雄」はオケの規模が中規模で、「英雄」を演奏するにふさわしい規模なのだろうが、”フェスティバル”で取り上げるにはやや地味すぎた。

後から登場した洗足はグローフェの「グランド・キャニオン」だったので、オケの規模が大きい。それに管打楽器が多彩だ。ウィンド・マシンや名前は知らないが、畳1畳ほどもある鋼の薄板なども繰り出して広い芸術劇場の舞台も一杯になった。

「グランド・キャニオン」組曲を全曲(全5曲)ナマで聴くのは初めてだったが、音楽も派手で”フェスティバル”にふさわしかった。
しかも、指揮者が井上道義というお祭り男みたいな派手なパフォーマーだ。圧倒的に盛り上がった。

芸術劇場は、これまでに読響の定期(の振替)で何度か経験があるが、この日初めて気がついた。いや、これまでもなんとなく音響に不満を感じていたのだけど、今回は席が舞台に近かったせいもあって、その原因の一つに思い至った。
それは、オケの音が舞台上でぐるぐる回って、客席の方に飛び出す割合が低いのではないか…と素人の大胆な仮説。ヌケが悪いと言うべきだろうか。

勘違いをしているのかもしれないけど、また、聴く機会があるだろうからこの仮説(舞台上でぐるぐる周り)が正しいかどうか確かめてみようと思う。

♪2016-173/♪東京芸術劇場大ホール-3

2016年12月8日木曜日

国立劇場開場50周年記念 平成28年度12月上席

2016-12-08 @国立演芸場


落語  桂馬ん次⇒転失気
落語  桂宮治⇒棒鱈
落語  春風亭小柳⇒新聞記事
落語  三笑亭可龍⇒宗論
コント   コントD51
落語  桂伸治⇒寝床
   ― 仲入り―
講談  神田紅⇒南部坂雪の別れ
落語  桂歌蔵⇒長短
奇術  マジックジェミー
落語  三笑亭可楽⇒尻餅

本日の収穫は神田紅の講談。
12月ということで、忠臣蔵の物語から「南部坂雪の別れ」。
大石内蔵助が内匠頭の妻瑤泉院に討ち入り決行目前に最後の別れに訪問する話だ。
ここで蔵之介は間者の耳目を恐れて偽りの仕官話で瑤泉院を失望させ、怒らせてしまうが、瑤泉院の側で仕える女性に旅日記と称して託した巻物が、その夜吉良側の間者によって盗まれそうになったことから、それが討ち入りに参加する義士たちの連判状であったことが分かり、瑤泉院は自分の短慮を詫び、蔵之介に感謝する。
講談としての聴きどころは、瑤泉院が側女に義士の名前を全員読ませるところだ。もちろん講釈師は完全に暗記していてよどみなく四十七士の名前が出てくるのに、話の内容とは別に感激してしまう。

なんだか、歳のせいか、昔は斜に構えていた忠臣蔵の物語が、やけに胸を熱くさせる。


2016-172/♪国立演芸場-16

2016年12月7日水曜日

国立劇場開場50周年記念12月文楽公演『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』第二部

2016-12-07 @国立劇場


七段目   祇園一力茶屋の段
八段目   道行旅路の嫁入
九段目   雪転しの段・山科閑居の段
十段目   天河屋の段
十一段目 花水橋引揚の段

(主な出演者)
 豊竹咲太夫
 豊竹咲甫太夫
 鶴澤寛治
 鶴澤清治
 吉田簑助
 桐竹勘十郎
     ほか

第1部と第2部は、一応別の公演なので、記録上も2本に分けて書いておこう。

歌舞伎と文楽で「仮名手本忠臣蔵」を堪能したが、最初は子供の頃から映画やTVドラマで馴染んできた所謂「忠臣蔵」とは大きく異なる話なのに大いに驚いた。

「忠臣蔵」では主人公はほぼ由良助だが、「仮名手本忠臣蔵」ではむしろ加古川本蔵かもしれない。いや、おかると早野勘平も重要人物だ。そして平右衛門も捨てがたい…、などと思い起こしていると、本蔵の後妻戸無瀬も、娘小浪も、由良助の妻・お石もみんな魅力的だ。


人間的魅力に溢れた彼らの心根が絡み合いすれ違いがたくさんの悲劇を生み、それらを乗り越えた暁に本懐が待っているのだ。

彼らの心の有り様を紐解くことこそ仮名手本忠臣蔵の面白さだろうと思う。

文楽としての面白さは七段目にとりわけ心動かされた。
平右衛門が由良助の密書を読んでしまった妹おかるに斬りかかる場面だ。この場面だけ、義太夫、三味線の定位置である舞台上手側に客席に向かってはみ出すように設けられた「出語り床」とは別に舞台下手に「出床」が設けられて、そこで(無本で)語ったのが豊竹咲甫太夫だが、この人の語りはものすごい迫力で、義太夫という芸の面白さを十分に味わった。

余談:
歌舞伎では「塩冶判官」、「由良之助」、「鶴ヶ岡」、「天川屋」
文楽では「塩谷判官」、「由良助」、「鶴が岡」、「天河屋」と表記が異なるそうだ。

♪2016-170/♪国立劇場-11


国立劇場開場50周年記念12月文楽公演『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』第一部

2016-12-07 @国立劇場


大 序   鶴が岡兜改めの段・恋歌の段
二段目   桃井館本蔵松切の段
三段目   下馬先進物の段・腰元おかる文使いの段・
      殿中刃傷の段・裏門の段
四段目   花籠の段・塩谷判官切腹の段・城明渡しの段
五段目   山崎街道出合いの段・二つ玉の段
六段目   身売りの段・早野勘平腹切の段

(主な出演者)
 豊竹咲太夫
 豊竹咲甫太夫
 鶴澤寛治
 鶴澤清治
 吉田簑助
 桐竹勘十郎
     ほか


大劇場で10月から3部構成・3か月連続で公演している歌舞伎版の原作である人形浄瑠璃版「仮名手本忠臣蔵」は小劇場で2部構成で上演された。

歌舞伎版があまりに素晴らしいので、元祖「仮名手本忠臣蔵」も観たくなって、文楽なるものを初めてナマで鑑賞した。
文楽版は2部構成で、しかも1日で2部とも上演するのでここは思い切って1日で「全段完全通し」を観た。


10時30分開演で終演が21時30分なので拘束時間が11時間。休憩や第1部と第2部との入れ替え時間に席を立ったが、10時間近く椅子に座っていた勘定だ。
本来は、第1部と第2部は別の日に観るのだろう。
現に、第1部で僕の周りに座っていた人は第2部ですっかり入れ替わった。両方の公演をぶっ通しで見るなんて狂気の沙汰かもしれない。

しかし、「全段完全通し」て良かった。
話の内容がよく分かる。
歌舞伎版を既に第1部から第3部まで(第2部までは2回ずつ)観ていたのですっかり話の筋は分かっていたつもりだったが、2度観ても(歌舞伎と文楽の演出の違いは別としても)細部に発見があった。
そして面白い。
ベンベンと打つように鳴らされる太棹三味線の音楽がいい。
太夫の義太夫節がとても迫力がある。
人形の動きも、しばらくして馴染んでくると人形とも思えない不思議な感興が湧いてく
る。

何より、「仮名手本忠臣蔵」というドラマの奥深さに一歩踏み分けたような気がした。

♪2016-170/♪国立劇場-10