2016-11-27 @みなとみらいホール
パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
樫本大進:バイオリン
シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」序曲 op.81
ベートーベン:バイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68
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アンコール
ブラームス:ハンガリー舞曲第3番 ヘ長調
同 :ハンガリー舞曲第6番 ニ短調
横浜音祭り2016クロージング・コンサートと位置づけられたカンマーフィルの演奏会。
パーヴォとカンマーフィルは2006年にみなとみらいホールからベートーベンの交響曲全曲の演奏・録音を始めたそうだから、今日は原点に帰ったような演奏会だ。
弦5部の編成は(野鳥の会ほど正確な目ではないので少し違うかもしれないが)、
第1バイオリン10人/第2バイオリン8人/ビオラ6人/チェロ6人/コントラバス4人。これに各曲の所要の管・打楽器が加わるが、3曲ともほぼ同時代の作品とあってか、編成に大きな差はなく管・打の計は18名くらいか。つまり総勢は52名前後のようだ。
「ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団」というのが正式名称らしいが、確かに中編成以下とは言え、室内管弦楽団と断る程こじんまりでもなくブラームスまでの作品を演奏するにはちょうどいいくらいの規模ではないのだろうか。
配布されたプログラムの解説ではトランペットやティンパニはオリジナル楽器と書いてあったが、そんな風には見えないし聴こえなかったな。
また、ピリオド奏法(ビブラートなし)で演るのかと思ったけど、そうでもなく、やや控えめではあるがビブラートはかけていた。もっともこの時代の作品だからやたら咽び泣くようなビブラートはそもそもご法度だと思う。
適正規模で、しかし、メリハリの効いたモダンな演奏を正確無比にやってのける、というのが聴く前に抱いていた印象だった。
最初のシューマンの序曲「ゲノフェーファ」でどんな弦の響を聴かせてくれるかと興味と期待で最初の音を聴いたが、まあ、どこにでもあるような音だった。いわば音慣らしのようなものか。
いよいよ、ベートーベンのバイオリン協奏曲。
これは良かった。やはり、オケの規模が小さいだけに、各パートが明瞭でメロディの輪郭が鮮やかだ。樫本大進のバイオリンも当然、埋もれることなくさりとて浮き立つこともなく良い塩梅に聴こえた。
パーヴォ+N響でベートーベンを聴いたのは昨年末の「第九」だけだが、その時の印象から、ベートーベンを振るときはテンポを早めにするのかという予断を持っていたが、遅くもなく、速くもなく、よく聴く普通のテンポだった。奇を衒うことなく王道のベートーベンだったように思う。
ブラームスには少し驚かされた。休憩が終わって後半の開始時間に既にチューニングが終えたオケが静かに待っている舞台にパーヴォが登場し、客席に軽く一礼したかと思ったらひょいと指揮台に飛び乗り、乗ったが早いか、第一拍を振り下ろした。あっけにとられている間もなく例のティンパニーの8分音符の連打のテンポが結構速い。
ベートーベンではさほど感じなかったけど、ブラームスではけっこう外連味を感じさせる。
テンポの設定然り。強弱のメリハリもはっきりしている。
それらが、小規模編成で…と言っても音圧に不足はないのだ…カチッと輪郭を明らかにして迫ってくるのはある意味で心地よい。あゝ、ブラームスってこうなの?という疑問は覚えるのだけど(ベートーベン風だ!)、まあ、いいかなあ、と説得させられてしまう。
最近、相次いで、ウィーン・フィル、サンフランシスコ響、そしてカンマーフィルと聴いたが、サンフランシスコ響には及ばないもののウィーン・フィルより面白い(巧いという意味ではなく)かな、と言う印象で本番が終演した。
しかし、アンコールが問題だった。
やらなければよかった。
ブラームスのハンガリー舞曲第3番はまずまず、オマケとして楽しく聴いたが、第6番はひどいな。思い切りのテンポ・ルバート。極端なリタルダンドとア・テンポ、強すぎるダイナミックレンジ。これではあのコバケンも真っ青だ。パーヴォとしてはサービスのつもりだったのかもしれないが、慣れないサービス精神が音楽をひどいものにしてしまった。これは聴かないほうが良かった。
♪2016-164/♪みなとみらいホール-44