2016-11-22 @NHKホール
マイケル・ティルソン・トーマス:指揮ユジャ・ワン:ピアノ*サンフランシスコ交響楽団
ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 作品21*ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 WAB107(ハース版)------------アンコールシューベルト(リスト編):糸をつむぐグレートヒェン
聴いた場所も良かった。大きなホールだからそういう事情も影響しただろう。弦のアンサンブルが重厚だ。力強い。とは言え、ブルックナーの冒頭など聴こえないような繊細な微弱音もきれいだ。でも特徴的で印象に残ったのは厚い響きだ。国内オケだってこれくらいの力はあるなと最初は思いながら聴いていたけど、段々と音楽が進むにつれやはり一味違うものを感じた。前半のショパンは音楽がそもそも協奏曲と謂い条その実管弦楽伴奏付きピアノ幻想曲?とでも言った方がいいような作品なので、管弦楽はもっぱらユジャ・ワンの引き立て役に徹していたように思ったが、後半のブルックナーでは管弦楽が遺憾なく力を発揮した。第2楽章や終楽章のワーグナー風な、オルガン風なアンサンブルの美しさには特に弦の充実を感じさせた。ブルックナーの音楽(交響曲しか知らない)は、たいてい冗長感が拭えなかったが、今回はその精密な音楽の作りを逐一味わった気がして長すぎるとは思わなかった。
ユジャ・ワン!9月に音楽堂でのリサイタルをかぶりつきで聴いてヒジョーに興奮させられたが、今回はピアノ協奏曲ということもあって、リサイタルと比べるとだいぶ端正な印象を持った。とは言え、やはり、ユジャ・ワンらしく、例えば、力強い左手のバスに載せた右手高音部の実に軽やかでしなやかな宝石のキラメキのような音が、正確無比に転がる様にうっとりする。一体、ほかのピアニストとどこが違うのだろう。その違いを説明できるほどの耳も経験もないが、明らかにユジャ・ワンの弾きぶりはユニークだと思う。トレードマークの蝶番を畳んだような90度のお辞儀は健在で(よく見ると100度くらい曲がっているようにも思ったが)、指揮のマイケル・ティルソン・トーマスもおどけてユジャ・ワンと並んで腰を曲げてあいさつしたが、彼はせいぜい40度くらいしか曲がらなかったな。
2016-160/♪NHKホール-11