2022年5月31日火曜日

東京都交響楽団 第952回 定期演奏会Bシリーズ

2022-05-31 @サントリーホール


アンドリュー・リットン:指揮
東京都交響楽団

金川真弓:バイオリン*

シンディ・マクティー:タイムピース(2000)
バーンスタイン:セレナード(プラトン『饗宴』による)*
コープランド:交響曲第3番
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J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005から 第4楽章 アレグロ・アッサイ*



昨日と同一プロを会場を変えて。

僕の席は両ホールともほぼ同じような場所なので、ホールの違いが音楽にどう反映するのかに興味があったが、この日のサントリーホールはいつになく良く鳴った…というべきかどうか自信がないが、こういうプログラムでは弦もまるで効果音によるリズムセクション担当みたいなので、ドイツ古典派・ロマン派などのように旋律を重奏的に担当する部分が少ないから、アラも目立たないということは言える。

そのためか、都響の演奏は2日ともほぼ変わらない上出来だった。

ただし音圧は文化会館の方が恐ろしい程の迫力があったが。

金川真弓は、当然だろうが、動作も含め両日とも同じようだった。コンマスを見るタイミングも。素振りも佇まいも。素晴らしい演奏も変わりなし。

カーテンコールはあっさり切り上げた。時間にすれば上野の半分くらいだったろう。客席のノリも上野の方が熱狂的ではあった。

それにしても、彼女の、聴く人を音楽に惹き込む魅力はどこから来るのか。謎は解けないよ。

♪2022-080/♪サントリーホール-07

2022年5月30日月曜日

東京都交響楽団 第951回 定期演奏会Aシリーズ

2022-05-30 @東京文化会館



アンドリュー・リットン:指揮
東京都交響楽団
金川真弓:バイオリン*

シンディ・マクティー:タイムピース(2000)
バーンスタイン:セレナード(プラトン『饗宴』による)*
コープランド:交響曲第3番
---------------------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005から 第4楽章 アレグロ・アッサイ*


僕にとっては珍しいコンサートだった。
🐝3曲とも初聴き。
🐝都響にしては信じられないほどの上出来。
🐝金川真弓にまたしてもやられたっ!

米国人指揮者Aリットンによる全曲米国現代作品。
3曲すべてがバーンスタインのシンフォニックダンスに類似しているような気がした。リズムのおもしろさ、映画音楽のような親しみやすさ。

コープランドの交響曲第3番も、エキゾチックでミクロス・ローザの映画音楽を思い起こさせる。
演奏に関しては少し残念な部分もあったが、これはいつもの高域弦の出来の悪さ。これを除くと100点あげたい。

1、3曲目が弦16型の特大編成。その良さを十分発揮。

しかし1番素晴らしかったのは金川真弓を迎えた2曲目。
弦5部は14型。ここにHarp1と打鍵11種を7人の奏者でという編成。
つまり管楽器は1本たりとも入っていない。

これが終始独奏バイオリンを引き立てて心地良い。

金川真弓には、過去3回、信じられないほどの幸福感を味わったので、まさか、そう何度もこういう思いができる訳あるまい。今日は多分少し残念に終わるのでは、と覚悟していたが、どっこい!

これはどうしてだろう?

明日もサントリーホールで同一プロ。奇跡は続くのか?

♪2022-079/♪東京文化会館-10

2022年5月26日木曜日

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅①

2022-05-26 @かなっくホール



倉田莉奈:ピアノ
司会・解説:飯田有抄(音楽ファシリテーター)

〜オールJ.S.バッハプログラム〜
主よ人の望みの喜びよ BWV147(マイラ・ヘス編曲)
半音階的幻想曲とフーガニ短調 BWV903
イタリア協奏曲 BWV971
 Ⅰ(速度指定なし)
 Ⅱ Andante
 Ⅲ Presto
ゴルトベルク変奏曲 BWV988から「アリア」
----------------
クープラン:クラブサン曲集第3巻第14曲組曲から第7曲「シテール島の鐘」



かなっくホール主催ランチタイムコンサート「音楽史の旅全6回」が始まった。と言っても通史ではなく前半3回はJ.S.バッハ。後半3回はシューベルトを取り上げるという。どういうスタンスで臨めばいいか分からないが、レクチャー付きなのでまずは案内に従おう。

そんな訳で、今日は大バッハのオルガン曲とチェンバロ曲から有名曲をいずれもピアノで聴いた。

開演前に音楽通史のガイダンスもあり、開演後は専門家の解説もあって興味深く聴けた。

先日来気になっているチェンバロ音楽の強弱表記の意味は鍵盤切替えではないか?という疑問を講師に訊いてみたかったが時間がなかった。

♪2022-078/♪かなっくホール-04

2022年5月25日水曜日

第1958回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2022-05-25 @サントリーホール


ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団

小菅優:ピアノ*

メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」作品27
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調*
リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35
------------------------
メシアン:前奏曲集ー第1曲「鳩」*



5日前のC定期ですばらしいアンサンブルを聴かせた同じメンバーとは到底思えなかった。

でも、これはN響のせいではない。
サントリーホールは、そもそもあまり音響的に良いホールではないけど、この日は特に鳴らなかった。
だから弦は潤いがなくキンキンシャリシャリ。

ピアノは石を叩いているようで輝きがない。

独奏ピアノの音の悪さはサントリーホールが首都圏随一!だろう。
許容範囲に収まる時もあるが今回は酷かった。

語源的には”ミューズの技”を意味するらしいが、それに「音楽」という漢字を充てたのは先人の達見。
先ずもって「音」を楽しめなくては「音楽」に非らず。

♪2022-077/♪サントリーホール-06

2022年5月24日火曜日

ランチタイムコンサート いろいろな鍵盤楽器で聴くJ.S.バッハの魅力

2022-05-24 @ミューザ川崎シンフォニーホール



大塚直哉:ポジティフオルガン、チェンバロ、パイプオルガン

〜オール・J.S.バッハ・プログラム〜
【ポジティフ・オルガン】
プレリュードとフーガト長調 BWV 860(『平均律クラヴィーア第1巻』から)
コラール「ただ愛する神にゆだねる者は」BWV 691
【チェンバロ】
プレリュードとフーガハ長調 BWV 846(『平均律クラヴィーア第1巻』から)
シャコンヌ BWV 1004/5
(原曲『無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番』終曲-演奏者自身によるチェンバロ編曲版)
【パイプオルンガン】
コラール「われら悩みの極みにありて」BW V 641(『オルガン小曲集 』から)
プレリュードとフーガ変ホ長調 BWV 552(『クラヴィーア練習曲集第3部』から)



ランチタイムにしては格調高く短いながらも本格的な演奏会だった。
3つの鍵盤楽器(ポジティフ・オルガン、チェンバロ、パイプオルガン)でそれぞれ異なる「前奏曲とフーガ」とコラールなど2曲ずつ。
というコンセプトの明確なプログラム。

今年は平均律クラヴィーア曲集第1巻上梓300年に因んだらしい。

ポジティフ・オルガン(小型パイプオルガン)を聴くのは初めてではないが、今日は解説付きで、興味深い演奏だった。楽器は現代作だが、ほぼバッハ時代の機構らしい。音が魅力的だ。

チェンバロでは無伴奏バイオリン組曲からシャコンヌを奏者自身の編曲で。これも味わい深い。

終演後20分程解説もあり、充実した演奏会だった。

ところで、チェンバロは強弱を付けることがほぼ無理なはずだ。
では、強弱自在のバイオリン曲など(例シャコンヌ)を編曲してチェンバロで弾く時に、どんな心境で音楽に立ち向かうのだろうか?

音楽表現にとって”強弱”は強力な手段だが、それを封じられたチェンバロにとってどう解決されているのだろう?

また、2種類のオルガンはいずれも強弱をつけられるが、それはピアノのように一つひとつの音についてではなく、音の塊についてしか強弱を付けることができない。
そのような演奏上の制約は、こちらもどう解決されているのか興味深い。

質問時間があれば訊きたかったよ。

♪2022-076/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-19

2022年5月22日日曜日

東京交響楽団川崎定期演奏会 第86回

2022-05-22 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
東響コーラス

ペーター・ヤブロンスキー:ピアノ*
トランペット:澤田真人(東京交響楽団首席奏者)**
バリトン:ジェームズ・アトキンソン

R.シュトラウス:ドン・ファン op.20
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調* **
ウォルトン:ベルシャザールの饗宴
------------------------
ショパン:マズルカ 第47番 (遺作) Op68-2*




豪華3本立てで、しかもいずれも上出来で素晴らしかった。

先ず「ドン・ファン」冒頭の弦4部がゴニョゴニョと上昇し管と合流する僅かな間に惹き込まれてしまった。

弦は16型。ざわざわしそうなものだが、音楽自体が強烈なので大編成の利点は十分効果的だった。

次のショスタコーヴィチピアノ協奏曲第1番は初聴き。
独奏ピアノ以外はトランペット1本のほか12型の弦5部のみというコンパクト編成。4楽章休止なし20分。

ピアノの響きが久しぶりに美しい。舞台周辺の客席を封鎖していたせいかも。
トランペット独奏も上手。

ショスタコ27歳の作だそうだが、若者が全編軽く遊んでいる感じ。

ウォルトン「ベルシャザールの饗宴」も初聴き。

これはたまげた。

オケは、弦16型にオルガン含む鍵打管盛りだくさん+7人のバンダが2組。東響コーラス130名が舞台周りに並び視覚的にも壮観。これにBr独唱も加わる。

なんと言っても感心したのは合唱。全曲35分とはいえほぼ出ずっぱり。それを暗譜で通した。

ホールの鳴りも良かったが、オケも合唱も独唱も力演。いつも気になる高域弦の金切り声も今日はかき消された如くまったく気がつかなかった。

派手な音楽を力で弾き切った感じもするけど、全体的にどこと言って瑕疵が見当たらないばかりか、圧倒するような音楽であり、演奏だった。

オルガンは移動コンソールではなく、本来の席で弾いて欲しかったよ。

♪2022-075/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-18

2022年5月21日土曜日

グルック「オルフェオとエウリディーチェ」

2022-05-21 @新国立劇場



指 揮】鈴木優人
【演出・振付・美術・衣裳・照明】勅使川原三郎
【アーティスティックコラボレーター】佐東利穂子
【舞台監督】髙橋尚史

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【エウリディーチェ】ヴァルダ・ウィルソン
【オルフェオ】ローレンス・ザッゾ
【アモーレ】三宅理恵
【ダンス】佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳

クリストフ・ヴィリバルト・グルック「オルフェオとエウリディーチェ」<新制作>
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約 2時間
第Ⅰ・Ⅱ幕    60分
     休憩25分
第Ⅲ幕                  35分



新制作であり新国立劇場としても初上演らしい。
僕にとっては今回初めての生舞台。

オペラ自体がコンパクトで正味95分。
3幕構成だが実質2幕。
登場歌手はタイトルロールの2人とアモーレの3人だけ。
その代わり、ダンサーが5人登場してドラマ進行に重要な役割を果たす(物語を知っているので、ダンスの意味も検討がつくのだけど。)。

舞台美術もシンプル。
音楽は超有名なアリア「エウリディーチェを失って」以外も懐かしさに満ちた耳触りの良いものばかり。

手持ちの録画ディスクが2種ある。
いずれも原典(ウィーン)版なのでパリ版で追加された「精霊の踊り」が入っていない。

今回の鑑賞に当たって少し勉強してみて、こちらも超有な名曲が「オルフェオ〜」の挿入曲だったのを初めて知ったよ😅。

今回の演出は両方の版の組合せ(「精霊の踊り」あり)で、舞曲も自由自在の入れ替えあり。

オルフェオ役はカウンター・テナー(CTn):ローレンス・ザッゾ。手持ちの円盤を検索したら、ヘンデルを歌っている。声質からこの時代作に出番が多いのだろう。

ところが、僕はCTnが苦手。
低い音域では地声が出てしまって興醒め。
メゾ・ソプラノでやれば良かったのに。
ザッゾの問題というより、これまで内外の有名なCTnの誰を聴いても、その不自然さに満足できないでいる。

エウリディーチェ役のソプラノ:ヴァルダ・ウィルソンは魅力普通。ベルカントもののような華麗なアリアはないので。

アモーレはソプラノ:三宅理恵。
変わったところでは「ジークフリート」の森の小鳥役も聴いた。モーツァルト「レクイエム」にリゲティを挿入した迷曲にも出てたね。
先月の新国「魔笛」でパパゲーナ。
だんだん良くなる感じ。今日も良かったよ。


難をいえば、シンプルな舞台美術だが、最後の喜びのシーンはほぼモノクロでまるで告別式のよう。せめて照明で百合の大輪に色をつけられなかったか。

ダンスシーンが1/3位。
グルックが最初に「精霊の踊り」を書かなかったのは正解だと思った。この音楽・ダンス自体が魅力的で、その分物語が薄くなる。

♪2022-0746/♪新国立劇場-08

2022年5月20日金曜日

第1952回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2022-05-20 @東京芸術劇場大ホール



ファビオ・ルイージ:指揮
NHK交響楽団
アレクサンドル・メルニコフ:ピアノ*

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K. 466*
ベートーベン:交響曲 第8番 ヘ長調 作品93
---------------
モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397*



ファヴィオ・ルイージのドイツ古典派3作。
彼は独墺ものが得意なんだそうだ。
でも(最後のベートーベン交響曲第8番の印象に引き摺られたのかもしれないが)、全体としては、イタリアの明るさを感じてしまった。

ドン・ジョヴァンニは中低域の弦の豊かな重なりが、やはりN響は只者ではないと思わせた。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番を弾いたのはアレクサンドル・メルニコフ。
だいぶ前にイザベル・ファウスト+ジャン=ギアン・ケラスとのピアノ・トリオで聴いて好感。

今回もなんだか柔らかで、1週間前に神奈川フィルとモーツァルト:ピアノ協奏曲第25番を弾いたクレア・フアンチと同じような印象だった。
彼女と同じく意識していたのはフォルテ・ピアノではないか?

ピアニスト・アンコールは未完成の幻想曲Dmだが多分後世の補作部分は弾かなかったのだと思う。

ピアノ協奏曲第20番のカデンツァも自分と兄との共作で、独自性を発揮していたが、やはり違和感があったなあ。

メルニコフは何度も深々とお辞儀をしていたが、ロシア人として感ずるところがあったのだろう。ルガンスキーやラザレフの例もある中、よく招きに応じてくれたよ。

最後はベートーベン交響曲第8番。

ここでも弦の豊かな響きは心地よい。

鳴りの悪い、カサカサの乾いた響きの芸劇なのに、管・弦の交わりが生む甘い響きを彷彿とさせた。

3曲ともだが、ルイージの彫琢・剪定が行き届いて、N響もしっかり応えている風な印象を強く持った。

♪2022-072/♪東京芸術劇場大ホール-03

2022年5月18日水曜日

東京フィル第968回サントリー定期シリーズ

2022-05-19 @サントリーホール


チョン・ミョンフン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

フォーレ:組曲『ペレアスとメリザンド』1898年
ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲1912年
ドビュッシー:交響詩『海』(管弦楽のための3つの交響的素描)1905年
ラヴェル:管弦楽のための舞踏詩『ラ・ヴァルス』1920年



ほとんど睡眠薬みたいなプログラムで、「海」で船を漕ぐのはピッタリだと思っていたが、いずれも好演かつ演奏時間が短いので眠ることもなかった。

「ペレアスとメリザンド」はいろんな作曲家が取り上げているが、中で聴く機会が断トツ多いのは今日のフォーレ。
ドビュッシーは同じ題材をオペラ化しており、デュトワ+N響で聴いたのはもう8年も前か…。
ちょっと失敗したデュトワは6月に新日フィルで復権が楽しみ。またN響定期で演奏会形式オペラを期待するよ。

ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」は7月に新国立劇場が取り上げるのも楽しみだ。

4曲とも独墺古典にない管弦楽技法の面白さ。
特に管楽器使用の巧みさ。

中でも一番好きで一番楽しめたのは「海」。

惜しむらくは、たいてい、いつも、どのオケでもだが、第一バイオリンの高域が歯軋りをしている。弱音器をつけた弦はきれいに響いたが、ここぞとばかりに炸裂するときに、耳障りなこと。

さて、今日の曲順F⇒R⇒D⇒R’のコンセプト如何?

作曲順ならF⇒D⇒R⇒R’だが、1番の大曲はDなので、F⇒R⇒R’⇒Dが落ち着いたのにな。


♪2022-072/♪サントリーホール-05

2022年5月15日日曜日

名曲全集第177回 ノットX直球ブラームス!

2022-05-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール



ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
大木麻理(ミューザ川崎シンフォニーホール・ホールオルガニスト)*

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
デュサパン:オルガンとオーケストラのための二重奏曲「WAVES」(日本初演)
ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 op. 90
---------------
マーラー:交響曲第1番「巨人」から 花の章


4日連続5ステージ目。それに昨日までの新日フィル・神奈川フィル・日フィルの出来がいずれも良かったので、そうそう名演は続くまいと期待せず、オルガンとオケによる日本初演作品(WAVES)に興味を絞って臨んだ。

ところが、結果的には逆にWAVES以外を楽しんだ。

オケとオルガンで”二重奏”って、どうも飲み込めない。
二重奏というならオケの使い方が独奏的であるべきと思うがそうでもなかった。

それに一昨日の新日フィルの”二重奏”中のオルガンがあまりにきれいだったが、まあ、あれは特別だったのだろう。比べちゃいけないな。

他のホールでもこの”二重奏”でお互いが引き立て合うことは稀で、オルガンはややもするとオケに埋没しがちだ。

舞台上の移動式コンソールで演奏された。
利点も多いのだろうけど、僕としては、舞台奥の鍵盤を弾いてほしい。手足の動きから確実に弾いているのが分かる。
するとオルガンを聴き分けようと耳が働くのだが。

ブラームスは、”直球”にしてはスローボールだなと思ったが、進むに連れ、違和感は消えてしまった。

アンコールがマーラーの花の章って、どういう繋がりか分からないけど、モーツァルトにリゲティが挟まれることに比べたらおかしくもないのだろう。

花の章は、昨年末のN響、3月の名曲全集と最近聴く機会が増えた。

♪2022-071/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-17

2022年5月14日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第377回横浜定期演奏会

 2022-05-14 @ミューザ川崎シンフォニーホール



カーチュン・ウォン:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
南紫音:バイオリン*

モーツァルト:歌劇《後宮からの誘拐》K.384 序曲
シベリウス:バイオリン協奏曲 ニ短調 op.47*
ドボルザーク:交響曲第7番 ニ短調 op.70 B.141
--------------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリンのためのソナタ第3番からラルゴ*
ドボルザーク:チェコ組曲からポルカ


今日は神奈川フィルとハシゴだったので、みなとみらい線-東海道線を乗り継いで開演ギリギリに着座した。間に合って良かったよ。

カーチュン・ウォンにハズレなし!とこれまで言ってきたが、今日は偽物だったかも?
最初から最後まで一度もマスクを外さなかったから怪しい…と言うのは冗談だが、NoMaskで頼むよ!

棒捌きと言うか、特に左手をコンマスの千葉ちゃんにばかり向けていたような気がしたが、あれで本物だと得心した。

神奈川フィルの演奏が全曲素晴らしかったが、続けて聴くと違いがよく分かる。

日フィルのなんと明瞭な響き…に驚いたが、ま、これがホールの違い。

今日の収穫は南紫音のシベリウス。

南紫音は過去に数回バイオリン協奏曲を聴いたが、いずれも良い印象はなかった。彼女がと言うよりオケ(日フィル、N響など)が不調だった。

しかし、今日の聴き取れないような最弱音から始まったシベリウスは確実に僕の琴線に触れた。
惹き込まれて聴いていると、オケの鳴りまでどんどん良くなる。やはり、実力者なんだ。今日納得できて良かったよ。

な訳でドボルザーク交響曲第7番も良かったがシベリウスこそ本日の白眉!

♪2022-070/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-16

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第377回定期演奏会

2022-05-14 @県民ホール




阪哲朗:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
クレア・フアンチ:ピアノ*

酒井健治:Jupiter Hallucination「ジュピターの幻影」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503
シューベルト:交響曲第8番ハ長調D944「グレイト」


先日の横浜バロック室内合奏団はD調の作品ばかり取り上げたが、今日の神フィルはC調…正しくはC-durハ長調作品ばかり。

邦人作「ジュピターの幻影」は初めて聴いた。
2021年初演という出来立てだ。
すっきりとした調性は感じられないが、その名のとおりモーツァルトの「ジュピター」のオマージュで、なので、「大管弦楽の雲の彼方に、モオツァルトの可愛らしい赤い上着がチラチラ…」(小林秀雄)することから、これも全体としてはハ長調を基調としているのだろう。

いじくり回したジュピターを聴きながら本物を聴きたいっ!と強く思ったよ。でも演奏はとても良かった。合奏力を感じた。
昨日の新日フィル「風神・雷神」の時と同じく作曲家も会場にいて終曲後紹介を受けていた。

そのモーツァルトのハ長調のピアノ協奏曲を、初聴きのクレア・フアンチが弾いたが、これもとても好ましい。

玄米23%まで削りました、みたいな真ん中の口当たりの良いところだけの音!でとてもまろやかだ。コロコロ転がって粒立ち良し。が、刺激的な音は見事に避けられている。カデンツァだけはややダイナミズムが現れたが、全体としてフォルテピアノを模しているように聴こえた。面白い!

「グレイト」。
冒頭のホルンが怪しくも見事に惹き込んた。

終演が16時15分。
カーテンコールもそこそこに席を立ち、次の日フィル定期@ミューザに走ったよ。

♪2022-069/♪県民ホール-07

2022年5月13日金曜日

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#7

2022-05-13 @すみだトリフォニーホール



井上道義:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

石丸由佳:オルガン*
林英哲:和太鼓**

サン=サーンス:糸杉と月桂樹 op. 156より「月桂樹」*
新実徳英:和太鼓とオルガンとオーケストラのための「風神・雷神」* **
ファリャ:バレエ音楽『三角帽子』
ラヴェル:ボレロ
-------------------
ラヴェル:ボレロ (最終部分)**


4曲とも原始脳を強力に刺激する作品ばかり。
最初の2曲はオルガン入り。これが先ずは上出来。

オケ+オルガンでは時にオルガンがオケに埋没することもあるが、今日のオルガンは溶け込むところは新鮮な音色を合奏に齎し、存在を主張するところでは朗々とホールを揺るがした。特にその音色に惹かれたが、ストップの組み合わせが良かったのか、オルガン自体の性能なのか、このホールではもっとオルガンを聴いてみたいと思った。

2曲目「風神・雷神」でもオルガンは大活躍したが、特筆は大和太鼓(おおわだいこ)の迫力。

風神はオルガン、雷神は太鼓を意味しているそうだが、途中で舞台照明が落ち、両者のみが闇の中に浮き上がって、ジャズセッションのようなアドリブの応酬がスリリングで面白い。
ここに管弦打楽器が重なり合って狂乱のクライマックス!お見事!

後半のファリャ、ラヴェルは、弦の透明感が…等と考えるのも野暮な、リズムと色彩感に溢れた興奮の連続。

道義さんのドヤ顔が何度も見られて、こちらも思わず頬が緩んだ。

最近の新日フィルは弦のマスク着用率が約2割。
多くがNoMaskなのは見ていても気持ちいい。
Vn2首席はN響大宮君の客演。


♪2022-068/♪すみだトリフォニーホール-04

2022年5月12日木曜日

音楽堂アフタヌーンコンサート2022前期 「チェロ・名曲の響き」 藤原真里 チェロ・リサイタル

2022-05-12 @県立音楽堂




藤原真理:チェロ
倉戸テル:ピアノ

ブラームス:チェロ・ソナタ第1番ホ短調 op.38
ベートーベン:チェロ・ソナタ第3番イ長調 op.69
フォーレ:エレジーハ短調 op.24
フォーレ:無言歌第3番 ~3つの無言歌 op.17から
----アンコール----
宮沢賢治(林光編):星めぐりの歌


藤原真理を初めて生で聴いたのも音楽堂だった。随分昔の事。その時の印象を「弦の振動で脂が粉となって飛んでゆく時の、摩擦音が楽音に変化する微妙な両者の共存が聴かせる豊かな音色だ。チェロの、これほど美しい音を聴いたことは今までになかった。」と書いている。


今日も全く同様で、良く鳴り、良く響く。

あまりに美しいので、ああ、もう少し前の席で聴きたかったとの思いが最後まで払拭できなかった。


プログラムが凄い。

ソナタ2本はブラ1とベト3の鉄壁!

に小品のおまけ付き。


ブラ1もベト3もVcが中低域の豊かな音色で先導して音楽が始まる。もう、そこで惹き込まれてしまう。


音楽堂は残響が短い古いタイプの音響設計で、アマチュア泣かせでもあるが、名人が奏でる原音が僅かに残響を纏う微妙なブレンドが至福の響きになる。


王道の音楽を音楽堂で味わう幸せ。


♪2022-067/♪神奈川県立音楽堂-05

2022年5月10日火曜日

石田泰尚スペシャル 熱狂の夜 第1夜《無伴奏》

2022-05-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール



石田泰尚:バイオリン
山本裕康:チェロ*

ビーバー:パッサカリア
テレマン:12のファンタジアから
 第1番、第7番、第9番、第12番
ブロッホ:無伴奏バイオリンのための組曲第1番
コダーイ:バイオリンとチェロのための二重奏曲op.7
J.S.バッハ:無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番からシャコンヌ
------アンコール-----------
モーツァルト:バイオリンとチェロのための二重奏曲ト長調 K.423から 第3楽章*
テレマン:12のファンタジア第8番から スピリトゥオーソ
ピアソラ:タンゴ・エチュード第3番
ハルヴォルセン:パッサカリア*


石田泰尚「熱狂の夜」は今日が第一夜「無伴奏」。
以後9月まで1回毎に編成を大きくして全5回続くが、今日が第一夜にして既にクライマックスだったのではないか。
”熱狂”とは裏腹に、こんなにも静粛に音楽を傾聴したのは久しぶりだ。
いつもながらの繊細な美音。

ステイジングが苦手の兄いは1人では間が持たないと思ったか、ゲストに山本裕康を招いたコダーイのデュオも息の合ったところを見せた。

無伴奏はどれもよく知っているか、初聴きもあったが何やら懐かしいような調べで楽しめた。
特にテレマンの12のファンタジアからの4曲中、1番と7番は僕の睡眠の友として親しんでいるのでうっかり寝そうになった…は冗談で、しっかり覚醒して味わった。

なんと言っても白眉はJ.S.バッハ「シャコンヌ」。
小節頭に多い重音の弾き方に個性が出るところだが、初めて聴いた石田の弾き方は独特だったが、繰り返されるうちに耳に馴染み説得力がでてきた。

ほぼ1曲毎に(時には楽章毎に)調弦を繰り返すのもいつものスタイル。その必要はないのではないかと思うが、コンマスとしての習慣か、あるいは彼のルーティンなのか。
ともあれ、長時間(休憩込み2時間半)弾いていても繊細な響きにこだわり抜くスタイルは見事だった。

♪2022-066/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-15

2022年5月8日日曜日

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅲ部

2022-05-08@国立劇場


●桂川連理柵 (かつらがわれんりのしがらみ)
 石部宿屋の段
  竹本三輪太夫・ツレ:豊竹咲寿太夫
 /野澤勝平・鶴澤清允

 六角堂の段
  豊竹希太夫/竹澤團吾

 帯屋の段
前 豊竹呂勢太夫/鶴澤清治
切 豊竹呂太夫/鶴澤清介

 道行朧の桂川
お半       豊竹睦太夫
長右衛門 豊竹芳穂太夫
ツレ       竹本津國太夫・竹本碩太夫・豊竹薫大夫
/竹澤團七・鶴澤友之助・野澤錦吾・鶴澤清方

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人形役割
娘お半⇒    豊松清十郎
丁稚長吉⇒      吉田玉佳
帯屋長右衛門⇒吉田玉也
出刃屋九右衛門⇒桐竹亀次
女房お絹⇒  吉田勘彌
弟儀兵衛⇒  吉田玉志
母おとせ⇒  桐竹勘壽
親繁斎⇒   吉田清五郎


「桂川連理柵」(かつらがわれんりのしがらみ)は文楽でも歌舞伎でも数回観ている。これは面白い!

立派な妻・お絹がいるのに、女性にだらしない帯屋の主人・長右衛門(38歳。以下、数え年だと思う)。

旅先で、彼女にしつこく言い寄るのが隣家信濃屋の丁稚の長吉。彼から逃れて長右衛門の部屋にきたのが信濃屋の娘・お半(14歳)。子供ゆえに寝間に入れてやる。それが間違いの元。

長右衛門は帯屋の跡取り養子。帯屋の隠居・繁斎の妻は後妻で連れ子が儀兵衛。繁斎はできた男だが、後妻と儀兵衛は性悪で長右衛門を追い出しにかかっている。

旅先での出来事を盗み見した丁稚長吉も、長右衛門からお半を奪わんとする悪党。

長右衛門は前後左右から濡れ衣を着せられ、悪い事にお半は妊娠。

懸命なお絹の働きにも拘らず八方塞がりの中、先に死を決したお半の後を追って、長右衛門も桂川に。

四段構成だが、これが実に効果的に組み立てられている。
一番面白いのが「帯屋の段」で1時間超だが、長さを感じさせない。前半の儀兵衛と長吉の遣り取りが傑作だ。呂勢大夫の語りが素晴らしい。

この浄瑠璃が作られた当時(1776年初演)、上方では大流行して、「帯屋」の段は「お半長」とも呼ばれて子供でも知っている話となった、と上方落語「胴乱の幸助」に取り入れられていて、こちらも大傑作だ(枝雀が素晴らしい)。

追記:
4月から呂太夫/錣大夫/千歳太夫が切語りに昇格した。同慶也。

♪2022-065/♪国立劇場-04

豊竹咲太夫文化功労者顕彰記念 文楽座命名150年 文楽公演第Ⅱ部

2022-05-08@国立劇場


●競伊勢物語 (はでくらべいせものがたり)
 玉水渕の段
口 豊竹亘太夫/鶴澤清𠀋
奥 竹本織太夫/鶴澤清友

 春日村の段
中 竹本小住太夫/鶴澤清馗
次 豊竹藤太夫/鶴澤藤蔵
切 竹本千歳太夫/豊澤富助/琴:鶴澤清公
************************
人形役割
娘信夫⇒    吉田一輔
磯の上豆四郎⇒吉田玉勢
鉦の鐃八⇒  吉田簑一郎
代官川島典膳⇒吉田玉輝
亭主五作⇒  桐竹勘次郎
母小よし⇒  吉田和生
紀有常⇒   吉田玉男
在原業平⇒  吉田玉彦
井筒姫⇒   吉田和馬


「競伊勢物語」は東京では35年ぶりの上演だそうだ。勿論、初めての観賞。

朝廷の争いに巻き込まれた公家・紀有常が忠義の為に実の娘を手に掛け、その若い夫も自害するという悲惨な話。

それに先行して、これも忠義で犯した大罪の、類が実母に及ばぬように、必死でわざと実母に悪態をつき、なんとか勘当してもらおうとするが、母の限りのない我が子への深い情愛がそれを受け付けない。このやりとりがウルっとなる。

ところで、伝統芸能でジェンダー不平等やセクハラ・パワハラは洋の東西を問わないが、身代わりに我が子の首を差し出す児童虐待?は日本のお家芸かも。

追記:
文楽では初めて観たけど、過去の記録を見ていたら2015年の歌舞伎座秀山祭で、吉右衛門・菊之助・染五郎*・東蔵・米吉*(*当時の名前)らの豪華版で(歌舞伎では)観ていた。
強烈な話なのにもう忘れているなんてかなりショックだ。

♪2022-064/♪国立劇場-03