2021年9月27日月曜日

東京都交響楽団 第929回 定期演奏会Aシリーズ

2021-09-27 @東京文化会館




ローレンス・レネス:指揮
東京都交響楽団

松田華音:ピアノ*

ワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』序曲
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調 op.26*
プロコフィエフ:交響曲第5番変ロ長調 op.100
----アンコール--------------------
ラフマニノフ:楽興の時 第6番ハ長調*


プロコフィエフ2本の前座になぜかワーグナー「オランダ人序曲」。

その出来がイマイチで、16型って纏めるのが難しいのだろうな、と期待値が急速に萎んだがどっこい。

ややコンパクトになった14型でのプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番が、全てのモヤモヤを吹き飛ばす快演。


松田華音の指捌きが鮮烈な感動を呼び、プロコフィエフって本当はこんなに面白いのだと教えてくれた。


独奏ピアノは殆どぼんやりする暇もなく、ずっと超高速の妙技を続けるが、オケもピッタリ寄り添って、リズムの塊のような音楽を盛り上げる。


この3番はAガヴリリュク+N響、上原彩子+神奈川フィル、Aヴィニツカヤ+都響等過去に多くの名人でも聴いているが、今日の演奏が最高の感動であった。


最後に弦の編成は再び16型に戻ってプロコフィエフ交響曲5番。

ピアノ協奏曲ほどの緻密なアンサンブルは聴けなかったものの、大編成のオケの隅々に指揮者Rレネスの彫琢が行届き、生命力溢れる演奏だった。

打楽器のお姉さん達も大活躍でこれも嬉しい!


久々に重量級都響が、単にでかい音と言うだけでなく重厚なアンサンブルを聴かせてくれてホンに上出来だった。


♪2021-104/♪東京文化会館-06

2021年9月26日日曜日

東京交響楽団川崎定期演奏会 第82回

 2021-09-26 @ミューザ川崎シンフォニーホール



ユベール・スダーン:指揮
東京交響楽団
メゾソプラノ:加納悦子

フランク:交響詩「プシュケ」より第4曲“プシュケとエロス”
ショーソン:愛と海の詩
ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14


前半の2曲はいずれも初聴きで、親しみやすい音楽とは言えなかったけど、思いのほか良い演奏だった。

代役を務めた加納悦子の歌唱にも好感。


問題は後半。

スダーンというと「爆音・轟音」のイメージが付き纏うが、今回もすダーン節が炸裂した。


これを好意的に取れる人には、極楽の1時間だったかも。

僕は、第1楽章始まって間もないホルンの旋律に違和感を感じた時点で、《疑問》のスイッチが入ってしまった。


結局、終始独自色が強すぎ、強弱も甚だしく、そもそもが断片の集積のような音楽が一層まとまりを欠いて「幻想」は「幻滅」に変わった。


♪2021-103/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-31

2021年9月25日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第370回横浜定期演奏会

 2021-09-25 @県民ホール



梅田俊明:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:小山実稚恵*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30*
チャイコフスキー:幻想序曲《ロメオとジュリエット》
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
-----アンコール-----
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 作品48から第2曲「ワルツ」


全ロシアものプログラム。

といっても、ロシア臭はほぼ無い作品ばかり。


前半にラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番という重量級。

マチネが延びた為に開演時間にギリギリ到着したので呼吸を整えながら聴く。

実稚恵先生、もう随分前から「今が旬」を維持しているやに聴こえる。まったく驚嘆だ。


オケは12型だったが、双方とも力を出し合った横綱相撲の感。

約40分の大曲で、音楽を聴く、というより体験するという感覚。


後半は弦14型に拡大してチャイコフスキーのロメ・ジュリ、更に打楽器を4人加えてリムスキーコルサコフのスペイン奇想曲といずれも管弦楽技法の粋を集めたような絢爛豪華な重量級が続いた。


昨日の新日フィルも管弦楽の魅力を十分聴かせたが、今日の日フィルはこれを上回る(音楽が全然違うので)迫力を楽しんだ。


こういう重量級の音楽は、やはり、音が塊で突撃してくる(?)県民ホールのようなプロセニアム付きの大ホールが似合うなあ、と思いながら聴いていた。


これだけやればもう十分、なところ、アンコールでチャイコフスキー:弦楽セレナーデから「ワルツ」のサービス。


♪2021-102/♪県民ホール-09

第17回身体にいい音楽会<室内楽演奏会>

 2021-09-25 @リリスホール


泉真由:フルート
宮村和宏:オーボエ
小林美樹:バイオリン
須田祥子:ビオラ
門脇大樹:チェロ


モーツァルト:フルート四重奏曲第1番ニ長調 K.285
J.C.バッハ:五重奏曲ハ長調 Op.11-1

医療講演:小林修三<モーツァルトの音楽と病>

ハイドン:ロンドン・トリオ第1番ハ長調 Hob IV-1
モーツァルト:オーボエ四重奏曲ヘ長調 K.370
ジュースマイヤー:五重奏曲ニ長調 SmWV 602


こんな名前の音楽会シリーズがあるとは知らなかった。

本郷台駅前のリリスホールも初めて。よく鳴るホールだった。

途中に医師の講演が。

これがなかなか良い話で<モーツァルトの音楽と病について>。


話を聴いてモーツァルトの音楽に対する聴き方が変わったように思う。


弦が3人+フルート+オーボエで、トリオから五重奏曲まで全5曲。


冒頭のモーツァルト:フルート四重奏曲第1番は大好きな曲。

後半のモーツァルト:オーボエ四重奏曲は昨日の新日フィル定期でのオーボエ・アンコールでその第2楽章だけ聴いたのを今日、全曲を聴く事ができるたとは良い偶然。


モーツァルトの弟子で「レクイエム」を完成させた事で有名なジュスマイヤーの五重奏曲は初めてだが、その音楽はモーツァルト風というよりハイドン風だった。


やっぱりモーツァルトには哀愁がある。


僅か35年の人生は病との闘いでもあったようだ。

僕のような非力の凡人は、ちょっと体調が悪いともう何にもする気が起こらないが、モーツァルトはそれと闘い、生命を削って美しい音楽を書き上げたと思うと、前述の2つの四重奏曲の第2楽章に心洗われる思いがした。 


彼の「哀愁」は病の中から生まれた厭世観を反映しているのだろうか。


因みに、医学講演の先生はこの会の主催者でもあると同時に、ある有名な音楽家の父君でもある。

初めて謦咳に接し、この父ありてこの娘ありか、と納得した。


♪2021-101/♪リリスホール-01

2021年9月24日金曜日

新日本フィル:#40ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>

2021-09-24 @すみだトリフォニーホール



大植英次:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

吉井瑞穂:オーボエ*

モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲
D.チマローザ:オーボエ協奏曲ハ短調*
マルチェッロ:オーボエ協奏曲ニ短調*
メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 op.90 「イタリア」
-------------------
モーツァルト:オーボエ四重奏曲から第2楽章*
メンデルスゾーン:真夏の夜の夢からスケルツォ


2019年の100回目は7月15日(年間217回)。
コロナ塗(まみ)れの2020年は1年間でジャスト100回。
そして今年は今日が100回目のコンサート。

だからと言って格別のことでもないのだけど、たまに残念に思う時がある新日フィル定期だが、今日の出来には大いに満足した。

熱血漢大植英次の指揮だからという訳でもないだろうが、弦のアンサンブルがいつになく綺麗なので驚いた。
それは、2、3曲目のオーボエ協奏曲で一段と発揮された。

というのもチマローザではオーボエ+弦5部、マルチェッロではオーボエ+チェンバロ+弦5部というシンプルな編成で、吉井瑞穂のオーボエの音色と共にひときわ弦の美しさを堪能できた。

オーボエのアンコールではバイオリン+ビオラ+チェロも加わって四重奏を。これも一段と美しかった。

メインの「イタリア」にも久しぶりに魅了された。
管と弦の混ざり具合が絶妙なのだ。

前半には弦楽の、後半には管・弦・楽の味わいが楽しめた。
指揮ぶりに特別なことはなかったが、音楽の端々に大植氏の情熱が行き渡っていたようだ。

♪2021-100/♪すみだトリフォニーホール-05

2021年9月18日土曜日

名曲全集第169回 原田慶太楼が誘う、ヴォーン・ウィリアムズ

 2021-09-18 @ミューザ川崎シンフォニーホール


原田慶太楼:指揮
東京交響楽団
東響コーラス*

ソプラノ:小林沙羅*
バリトン:大西宇宙*

ヴォーン・ウィリアムズ:グリーンスリーヴスによる幻想曲
ヴォーン・ウィリアムズ(ジェイコブ編):イギリス民謡組曲
ヴォーン・ウィリアムズ:海の交響曲*

「海の交響曲」は大編成を必要とする為かなかなか生では聴けない。僕の記憶では05年に秋山・東響で聴いて以来だ。


今日の弦は16型。

独唱2人に合唱が約80人(一部交代で+40人)という大所帯だった。

不満は後で書くとしてまずは見事な演奏だった。

目下のところ今年最大のイベントだ。


前座の同じヴォーン・ウィリアムズの「グリーンスリーヴスによる幻想曲」と「イギリス民謡組曲」は大好きな曲だ。

特に後者は題名どおり郷愁を唆る英国民謡の旋律が心地よい。

明治時代に英国から輸入した「蛍の光」や「故郷の空」等の5音音階を中心とする旋律が日本人のDNAに染み込んでいるのかもしれない。


ただ、1-2曲目を続けて演奏したので2-1が1の終曲と勘違いした人が多く、あちこちで拍手が起こったが、「イギリス民謡組曲」も吹奏楽経験者を別とすれば一般には馴染みの少ない曲だからやむを得ない。


メインディッシュの「海の交響曲」の出来の良さには驚いた。

冒頭のオケと合唱の強奏で気持ちを持ってゆかれ、そのまま、最後まで緊張感が続いた。


この長大な歌詞を途中交代とはいえ、暗譜で歌い切った東響コーラスが最大の功績。独唱2人もよく響いた。

東響もノーミス(?)でお見事。

もちろん慶太楼氏のタクトも良かったので、この大曲を仕上げる過程で指揮者・オケ両者の信頼関係がますます深まったろう。同慶の至りだ。


不満は、相変わらずのマスク!

指揮・独唱・コンマス・管以外…つまり弦と打の全員がマスク。合唱もマスク。マスクだらけだ。さらに、その為か、合唱は生ではなく電気増幅を使った。これがもう残念無念。40人もいるのだから拡声する必要はなかったのではないか。マスクも必要性が分からない!


♪2021-099/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-31

2021年9月17日金曜日

東京フィル第958回サントリー定期シリーズ

2021-09-17 @サントリーホール


チョン・ミョンフン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98
----アンコール--------------------
ブラームス:ハンガリアンダンスNo.1ト短調


先日、NHKが東フィルとチョン師の真摯なブラームスへの取組みぶりを放映したばかりだったので(7月定期もすばらしかったし)、今日のサントリーホールはチョン・ミョンフン教祖の司祭する聖堂のような雰囲気(っとこれは言い過ぎかも)。

そして、演奏は、ただならぬ気合の入り方で物凄い圧力を感じた。

ブラームスの交響曲という重量級の作品を2本、演奏する方も大変だろうが、聴く側も気楽には聴けない。精神力を試されているようなところがある。


それにしても、ブラームスの底力というか真価を改めて思い知らされた。たぶん僕はブラームスの入付近口を彷徨っているに過ぎないのだけど、それでも奥の深さは感じられる。


カーテンコールは7月定期の際と同じく、熱狂のうちに進行した。指揮者のみならずオケも再登場して客席はほとんどが立ち上がって拍手した。


面白いのは、前回7月定期の際も同様だったが、ブラボータオルを掲げる人が1人もいなかった(正しくは僕の席からは見えなかった)事。


チョン師のブラームスにタオル⁉︎

そんな軽い反応を許さない雰囲気だったかも。


♪2021-098/♪サントリーホール-12

2021年9月15日水曜日

第1937回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2021-09-09 @サントリーホール



鈴木秀美:指揮
NHK交響楽団

J.S.バッハ:組曲第3番ニ長調 BWV1068
C. P. E. バッハ:シンフォニア 変ロ長調
C. P. E. バッハ:シンフォニア ニ長調
ハイドン:交響曲第98番変ロ長調 Hob. I-98

大Bach、その次男CPEバッハ、ハイドンを年代順に並べた。

最初の2曲は弦+チェンバロ(通奏低音)のみ。
残りの2曲は管打も入った。

弦編成は最初が8型。残りは10型。

このプログラムは、珍しい、面白い企画だと思うけど、これをN響が定期でやるのかなあ、という疑問は拭えず。

何より、中途半端な古楽アプローチにスッキリしない。


次男作はそもそも聴いたことがなかった。
ハイドンの98番も生は初めて。

しかし、この聴き馴染みの薄い3曲が面白かった。

これらに共通するのは、作曲家の発明心というか、遊び心だ。

その後の交響曲とは音楽の性格が違ったし、演奏場所や目的が違ったからこういう冗談ぽいのも歓迎されたのだろう。

ハイドン交響曲でチェンバロが入っているのは98番が唯一らしいが、帰宅後楽譜を見ると、通奏低音てそもそもこういうものなのかもしれないが、全曲にわたって他の楽器の旋律とかぶっている。

そのせいもあろうが、僕の耳にはほとんど聴き取れなかった。

モダン弦相手にせめてフォルテピアノを使うというのは邪道なのだろうか?

♪2021-091/♪サントリーホール-11

2021年9月14日火曜日

横浜18区コンサート 第Ⅰ期 萩原麻未Pf × 横浜シンフォニエッタメンバー(弦楽五重奏)

2021-09-14 @フィリアホール



横浜シンフォニエッタメンバー(弦楽五重奏)*
バイオリン:遠藤香奈子、大澤愛衣子
ビオラ:伴野剛
チェロ: 朝吹元
コントラバス:倉持敦

萩原麻未:ピアノ**

モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク(弦楽五重奏版)*
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番二短調 K466(弦楽五重奏伴奏版)**
----------------
J.S.バッハ(グノー編):アヴェ・マリア


恒例、横浜18区コンサート(市内全区の区民文化センターや公会堂などで開催されるクラシック・室内楽演奏会)の2021年の開幕は萩原麻未のピアノと横浜シンフォニエッタ・メンバーによる弦楽五重奏団の組合せ。

僅か5人の弦楽合奏版アイネクライネ・ナハトムジークが先ずは面白い。

何しろ、室内楽はかぶり付き(で聴く)と決めているので、残響の届く前に原音がそれをかき消すという?誠にリアルな、ガリガリ叫ぶ弦の音が堪らない。

都響の第2バイオリン首席の遠藤ちゃんの隠れファンであるが、今日は第1バイオリンでグリグリと引っ張っていた。

メインディッシュがモーツァルト・ピアノ協奏曲第20番。
これを聴くとパヴロフの犬のように映画「アマデウス」を思い出す。

萩原麻未は、これまでもオケ定期等でピアノ・コンチェルトを数回経験済みだが、間近に室内楽伴奏で聴くのは初めてで、繊細な息遣いとダイナミックレンジの広さ、Pfの音の抜ける輝きが素晴らしい。

同じ場所で10日程前に聴いたピアノ・トリオは、鈴木秀美のチェロがガット弦という中途半端な古楽アプローチに不満が残ったが、今日の5人の弦は当然モダン・アプローチなのでフルコンPfの音にも埋もれることなく、両者の丁々発止のやりとりが楽しめた。

ところで、明治の先人達は、急速な西洋文明の輸入に当たって、多くの学術用語などに名日本語訳を残しているが(文化・思想・哲学・理性・感性・共和・人民〜)、中でもmusica や musikを「音を楽しむ」としたのは実に名訳だと思う。
「音楽」は「音」こそ生命なのに、アマチュアリズムの現状は余計な《高邁な解釈》で水膨れにしているのではないか。

♪2021-096/♪フィリアホール-04

2021年9月12日日曜日

ベッリーニ作曲「清教徒」全3幕 藤原歌劇団公演(共催:新国立劇場・東京二期会)新制作

2021-09-12 @新国立劇場


ベッリーニ作曲「清教徒」
全3幕〈イタリア語上演/日本語字幕付〉

予定上演時間:約3時間20分
第Ⅰ幕 75分
  休憩20分
第Ⅱ幕 50分
  休憩20分
第Ⅲ幕 35分

指揮:柴田真郁
演出:松本重孝
合唱指揮:安部克彦
美術:大沢佐智子
衣裳:前岡直子
照明:服部基

合唱:藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団/二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

エルヴィーラ⇒佐藤美枝子
アルトゥーロ⇒澤﨑一了
ジョルジョ⇒伊藤貴之
リッカルド⇒岡昭宏
ヴァルトン卿⇒東原貞彦
ブルーノ⇒曽我雄一
エンリケッタ⇒古澤真紀子


「清教徒」は初生観賞。
上演機会も少ないと思うが、持っている録画は2007年METのものだけ。しかし、この公演ではネトレプコが舞台の端、ピットギリギリに仰向けで歌う「狂乱のアリア」が凄い。

我がベルカントの女王(と呼ばれているかどうかは知らないけど)佐藤美枝子がどんな風に狂乱するかが楽しみ。

オペラで狂乱するのは女性と決まっている。
そういう作品を得意としたのはベッリーニとドニゼッティ(ベルカントオペラの親分と言えるロッシーニに狂乱アリアが見当たらないのは勉強不足かな?)。

過度な装飾と超高域を駆使する超絶技巧のベルカントと狂乱アリアは似合うからだろう。

本作でもヒロイン、エルヴィーラ(佐藤)は本篇中2度狂乱し2度正気に戻る。

しかし仰向けはなかった。

エルヴィーラの相手役がアルトゥーロ(澤﨑一了)。
こちらは正気を保ったまま!超高域の難曲を歌う。
しかもほぼ出ずっぱり。

物語は清教徒と王党派の争い(清教徒革命)を背景にしているが、アルトゥーロは王党派。ならば、タイトルは「清教徒」というより「王党派」としてあげたいくらいの活躍で上出来。

ピットに入った東フィルの出来がやや不満。

♪2021-095/♪新国立劇場-07

2021年9月11日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第371回定期演奏会

2021-09-11 @ミューザ川崎シンフォニーホール



カーチュン・ウォン:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ピアノ:三浦謙司*

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83*
ベートーベン:交響曲第7番イ長調Op.92
----アンコール------------------
F.モンポウ:前奏曲第5番*


カーチュン・ウォンにハズレなし!といっても彼の指揮で聴くのはまだ4回目だが、いつも満足度が高い。
柔らかく、オケをグリップしているような気がする。

また、今日の神奈川フィルの出来が特に良かった。
昨日、N響の合奏力に感嘆したが、会場の違い(池袋芸劇よりミューザの方が断然良い響)もあるとはいえ、負けず劣らず見事な好演。

前半のブラームス:ピアノ協奏曲第2番では、オケとピアノのシンフォニックなダイナミズムを楽しんだが、とりわけ、ピアノの音の良さを堪能できた。
ミューザとしてはいつもの事なのだけど、低域はジーンと響き、中域はカーンと抜け、高域はコロコロと輝かしい。
この音色があって初めてピアノ協奏曲は面目躍如だ。

後半はベートーベン交響曲第7番。
これがまた格別に良い出来で、神奈川フィルはいつの間にこんなに巧くなったのだろう⁈

普段は気づかなかった処々弱音での弦楽合奏が、毛細血管に生命を満たすように、緊張を維持しながら流れる。

この辺りにカーチュン・ウォンの丁寧な仕事ぶりを感じた。
特に第2楽章は固唾を飲んで聴き惚れた。

♪2021-094/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-030

2021年9月10日金曜日

第1936回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2021-09-10 @東京芸術劇場大ホール


パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
NHK交響楽団

バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」
バルトーク:管弦楽のための協奏曲


開演を待つ客席の雰囲気が既に高揚していた。

N響『定期』今季劈頭の回であり、久しぶりのPヤルヴィの登場である。

加えて、コロナ禍が産んだ珍現象?客席全員が”定期会員”のみというのも普段にない心地よい緊張感を漂わせた要因ではないか。


プログラムはバルトーク2本。

「管弦楽のための協奏曲」はしばしば聴くが、「中国の不思議な役人」は生では初聴きだったかもしれない。


いずれも親しみやすい音楽ではないけど、気合十分の優れた演奏家集団の手にかかるとこれが実に面白く聴くことができるのだ。

昨日の某オケがぼんやりしていたので、余計にN響の個人技と合奏能力の高さを思い知った。


池袋C定期は毎回60~80分休憩なしのプログラムだ。

そんな短時間の演奏会の為に横浜から池袋までわざわざゆくかなあとも思っていたけど、今日のような鉄壁のアンサンブルを聴けるなら十分価値がある。


入国後の待機期間が不足したPヤルヴィはその筋のお達しにより格別の感染対策をとることになって、楽団員と極力距離を取らなくてはならない為、従来にない入退場方法が可笑しかった。


♪2021-093/♪東京芸術劇場大ホール-02

ランチタイムコンサート オルガンデュオ 木星がもたらすもの~快楽・夢と神秘の世界~

2021-09-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール


三原麻里:オルガン◇
原田真侑:オルガン◆

ホルスト(河野和雄編曲):組曲『惑星』から「木星」◇◆
ラングレ:フェット(祭)◆
ヴィエルヌ:夜の星◇
サン=サーンス:死の舞踏◇◆
コープランド:「アパラチアの春」から◇◆
 1非常に遅く/2速く/7穏やかに、流れるように/8中くらいの速さで、とても穏やかに


オルガン独奏と連弾。

全く初めて聴く作曲家(ラングレ、ヴィエルヌ)もあり。


〜快楽・夢と神秘の世界〜のうち「夢」の世界には易々と入ってゆけたが「快楽」も「神秘」も感じないままに終わってしまった。


「木星」や「死の舞踏」のように馴染んでいる曲ではどうしても原曲と比べて物足りなさを感じ、5千本超のパイプを持つ日本有数の大オルガンならもっと変化に富んだ音色を作れないものだろうかと思いつつ、J.S.バッハの曲のような壮大な響とかお尻が震えるような轟音とかを待っていたのだが、ちょっと軽かったなあ。


会員料金450円で文句言っているよ!

ま、昼時にはこんな感じでいいのかもしれないけど。


♪2021-092/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-29

2021年9月9日木曜日

東京都交響楽団 第934回 定期演奏会Bシリーズ

2021-09-09 @サントリーホール


デイヴィッド・レイランド:指揮
東京都交響楽団

北村朋幹:ピアノ*

シューマン:歌劇『ゲノフェーファ』序曲 op.81
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491*
シューマン:交響曲第2番 ハ長調 op.61
----アンコール-----------
シューマン:天使の主題による変奏曲から主題*


良かった!と投稿している人もいるので、気がひけるけど、前半はつまらなかった。

序曲は締まりのない響きだった。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番も大いなる期待が裏切られた。弦12型でも大きすぎたか。

北村君が下手な訳じゃないけど、ピアノがきれいに響かない。これはサントリーホールの欠点だ。ピアノの響きが重く、暗い。


後半のシューマン交響曲第2番。

最近では東響・都響・神奈川フィル、そして再び都響で今日聴いたが、どこが演奏しても冒頭のバラバラ感が拭えないのは、シューマンの管弦楽技法に問題があるように思う。


それでも徐々に響きが厚みを持ってきて、ようやく終楽章に来て音楽に浸れる感じだった。


シューマン自身も自虐的に1-3楽章の出来を病的と言ったそうだ。


ま、最後は都響の力技で盛上がりを見せたので、まずまず良かったか。


それにしても客席は空席が目立った。

少ないお客だけど、客演のDレイランド氏に、精一杯の拍手を送って健闘を称えた。


♪2021-091/♪サントリーホール-10

2021年9月5日日曜日

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年9月公演第Ⅲ部

2021-09-05@国立劇場



●伊賀越道中双六 (いがごえどうちゅうすごろく)
 沼津の段
前 藤太夫/宗助/寛太郎
後 千歳太夫/富助/清方

 伏見北国屋の段
  織太夫/清友

 伊賀上野敵討の段
  南都太夫・津國太夫・亘太夫・文字栄太夫/
  團吾
人形 吉田玉也・吉田玉男・吉田和馬・
   豊松清十郎・吉田玉勢・吉田一輔・
   吉田玉輝・吉田簑悠・桐竹紋吉・
   吉田文司・吉田玉彦・桐竹亀次

この作品も文楽で観るのは初めてだったが、歌舞伎では少なくとも<通し>で3度は観ている。
大部な作品で<通し>といっても幾つかの段の抽出。しかも、毎回構成が異なる。今回の文楽版でも初めて観る段を含む構成だった。が、今回は3段のみ。

一番有名な「沼津」で始まり、中に一段置いて最後はどんな版でも必ず上演される「敵討の段」で終わるので、スッキリと鑑賞できた。

とはいえ、敵討ちという筋立てに若い人達は共感を覚えられないのではないか。
鉢巻に手裏剣を刺した荒木又右衛門の敵討ちの話って、知らないだろうな。

僕が個人的に好きな藤太夫、千歳太夫(沼津の段)、織太夫(伏見北国屋の段)がホンにうまい。

クライマックスの伊賀上野敵討ちの段では太夫が4人揃ってチャンバラを盛り上げるのは爽快なり。

♪2021-090/♪国立劇場-07

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年9月公演第Ⅱ部

2021-09-05@国立劇場



●卅三間堂棟由来 (さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)
 平太郎住家より木遣音頭の段
中 睦太夫/清志郎
切 咲太夫/燕三
奥 呂勢太夫/清治
人形 吉田和生・桐竹紋臣・吉田簑一郎・
   吉田簑二郎・吉田玉助・桐竹勘次郎

●日高川入相花王 (ひだかがわいりあいざくら)
 渡し場の段
三輪太夫・咲寿太夫/
碩太夫・聖太夫・團七・清𠀋・錦吾_清允・青方
人形 吉田清五郎・吉田勘市


機会の少ない文楽の前回公演を、コロナ拡大中につき弱気にも断念したので、2月公演以来の久しぶりの文楽観賞だった。
客席に座った時に、その場限りにせよ、日常が戻ったなあと嬉しくなった。

「卅三間堂棟由来」は文楽では始めての観賞だが、歌舞伎では数回観ている。

異類婚姻譚の一種。
柳の精・お柳は、平太郎と縁あって結ばれ、子(緑丸)を成す。
平和な暮らしも長くは続かず、ある日、白河法皇の病気平癒のため建てる三十三間堂の棟木に使う柳の大木が切り倒されることに。
その柳の木こそお柳その者なのだ。

切り倒されて都に運ばれる柳の大木は夫と緑丸が見送る場面で動かなくなる。

夫が歌う木遣音頭に合わせて緑丸が綱を曳くと、びくとも動かなかった柳が動き出す。
夫婦・母子の無念の別れが涙を誘う。

豊竹咲太夫・鶴澤清治・吉田和生の人間国宝トリオが結集して、何やらありがたい舞台ではあった。

♪2021-089/♪国立劇場-06