2019年7月31日水曜日

フェスタサマーミューザ2019 読売日本交響楽団 ≪堪能!ホールが鳴り響く壮大な交響曲≫

2019-07-31 @ミューザ川崎シンフォニーホール


井上道義:指揮
読売日本交響楽団

ブルックナー:交響曲第8番(ノヴァーク版 第2稿 1890年版)

JRのダイヤの乱れの影響で途中から京急に乗り換えたが、川崎駅に着いたのが開演時刻だった。普通のプログラムなら1曲めは見送って2曲めから入場すればいいが、今日のプログラムはブルックナーの交響曲8番、1本建てだ。途中入場はできないしやりたくもない。
さて、ミューザまで行っても無駄足に終わる可能性が高い。それでも、ま、ともかく行ってみなきゃ話にならない…と半ば諦めてミューザまで早足で6分くらい?モギリのおねえさんに「間も無く開演です。定刻10分遅れでの開演です。」と言われて、ラッキーとばかり席に急いだ。

開演時刻延長に救われて着席するや否や団員入場。
なんと、コンマスが我が百済観音・日下紗矢子。
ヒエーッありがたや。
チェロの首席も遠藤女史…と華が揃って意気揚々の井上師が捌いた読響の繰り出す管弦アンサンブルの見事さに驚く。フェスタサマーミューザはあと6オケ残っているがもう十分かも、と思うような上出来だった。

ブルックナーって無駄に長い、意味なく派手(これらは確信!)なのであまり好きじゃないが、今日の演奏には蒙を啓かれた思いだ。楽器数は多いけど、種類はシンプルに徹している。管弦以外はティムパニーのほか、出番の少ないシンバ、トライアングルとハープ2台のみ。大編成の割にはおもちゃのような打楽器や多彩な鍵盤楽器などが全くない。これが一つは密度の高いアンサンブルを生むのかも。

特に3楽章、終楽章は思わず身を乗り出すような吸引力があった。全篇とは言わないが、弦の強奏の美しさ、管と弦の交わる時の豊かで甘い響きを久しぶりに味わった。

終演後の得意満面の井上師の達成感丸出しのパフォーマンスも感動を共有できて良かったよ。
が、百済観音に長時間のハグは余計だろう😡。


♪2019-112/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-09

2019年7月30日火曜日

フェスタサマーミューザ2019 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ≪名ギタリストも参戦のスペイン・プロ≫

2019-07-30 @ミューザ川崎シンフォニーホール


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

渡辺香津美:ギター*

ボッケリーニ(ベリオ編曲):マドリードの夜警隊の行進
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲*
シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第1組曲、第2組曲
-アンコール--------------------
ビゼー:「カルメン」からトレアドール

一昨日の新日フィルがロシアもの、昨日の都響がイタリアもの、に続いて今日の神奈川フィルはスペイン尽くし。

ギーターの「アランフェス協奏曲」ではジャズギターの大御所・渡辺香津美のソロ。ギターはフル・アコースティック・ギターで臨むと書いてあったが、実際に使われたのは、フル・アコースティックタイプのエレキギターで、足元にアンプとスピーカーを置いていた。ジャズの世界では電気拡声するものでもアコースティックというらしいが、世間の常識とは違うようだ。
電気増幅しているので、音は大きくて、オーケストラにかき消されることはなかったが、なにしろピックを使う奏法なので、いくら名人でも5本指にはかなわないか、拍の間の細かいフレーズが潰れた感じでだった。やはり、クラシックギターで聴きたいね。

オーケストラとしての白眉は当然「三角帽子」で、これはメリハリつけた熱演だった。弦14型でも十分迫力があり、かつ纏まりが良かった。
また、このフェスタサマーミューザにはどのオケも主力コンマスを出しているが神奈川フィルは石田・﨑谷2人を投入。この2人がトップに並んで競うように、時に腰を浮かせてバリバリ弾きまくる姿にも一種の感動があり。
N響名物コンサートマスターのマロ氏の息子氏(今春入団)も気合の入ったティンパニーで盛り上げた。

昨日の都響よりも良い出来だったなあ。

♪2019-111/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-08

2019年7月29日月曜日

フェスタサマーミューザ2019 東京都交響楽団 ≪名匠のガイドで聴くイタリアン・プログラム≫

2019-07-29 @ミューザ川崎シンフォニーホール


アラン・ギルバート:指揮
東京都交響楽団

ヴォルフ:イタリア風セレナーデ(管弦楽版)
レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」

ヴォルフ作品は初聴きだった。が、もうさっぱり記憶に残っていない。

中締めのレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」を楽しみにしていたが、弦楽合奏に透明感と厚みが感じられない。なんか違うなあ…と隔靴掻痒の感。

後半は、レスピーギの「ローマ三部作」から「噴水」と「松」。
「松」は欠かせないとして、せっかくの夏祭りなのだから「噴水」をやめて「祭」にすれば良かったのに。

結局、メインの「ローマの松」が弦16型(弦だけで60人)大編成にオルガンも付き、客席上層階の左右に2組配した金管群(バンダ)の効果もあり、花火を打ち上げたように賑やかに終わった。

♪2019-110/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-07

2019年7月28日日曜日

フェスタサマーミューザ2019 新日本フィルハーモニー交響楽団 ≪ロシア音楽の2大巨頭を味わい尽くす≫

2019-07-28 @ミューザ川崎シンフォニーホール


上岡敏之:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
小川典子:ピアノ*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番*
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から
 モンタギュー家とキャピュレット家 (第2組曲)
 少女ジュリエット (第2組曲)
 ジュリエット (第3組曲)
 ロメオとジュリエット (第1組曲)
 僧ローレンス (第2組曲)
 タイボルトの死 (第1組曲)
 別れの前のロメオとジュリエット (第2組曲)
 ジュリエットの墓の前のロメオ (第2組曲)
 ジュリエットの死 (第3組曲)

----アンコール---------------
ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」作品39の1*

フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2019。その初日は他のコンサートに回って休んだが、今日から8月12日までに全10オーケストラを同じ席で聴けるのが楽しみだ。

今日の驚きは、いつになくホールの響きが良い事。
もとより、ミューザは聴く側にとってのスウィート・エリアが広く、ほとんど響きに不満を感じたことはないが、今日は格別だった。特にピアノが久々に良く鳴った。高域の抜けが良い。低域も濁らない。残響が過不足なく正に適度なのだ。故に小川典子のマイクなしのアンコール曲紹介が<明瞭>に聴き取れた。

残響が効き過ぎると声はくぐもる。声は届いても反射音も一緒に連れてくるものだから聴きとりにくくなるのだ。

同じホールで同じピアノを同じような席で聴いていてもなかなか今日のような明るい響きは経験できない。
外気の温湿度やエアコンの具合、客の入りなどで床や壁の木材の仕事ぶりが違うのだろう。ホンに木は生きているよ。

オーケストラの方も、実力が発揮できたのか、ホールに助けられたか、ともかく好調だった。
念入りな弱音も力技の強音も確かな表現になった。
それは「ロメオとジュリエット」の後半で愈々はっきりしてきた。時にゾクゾクさせるアンサンブルを聴きながら、上岡師がなぜこの曲を選んだのか、が分かったような気がした。

「ジュリエットの死」で全曲が終わった時に、上岡師は指揮台で死んだように手摺に凭れかかっている。幸い拍手は起こらない。演奏事故みたいに長く死んだふりしている。そろそろ心配になりかけた頃にムクッと生き返って大拍手。これも上岡師らしい。

♪2019-109/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-06

2019年7月27日土曜日

華麗なるコンチェルトシリーズ 《雄大なる北欧3大協奏曲》

2019-07-27 @みなとみらいホール


石﨑真弥奈:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

上野由恵:フルート
田村響:ピアノ
堀米ゆず子:バイオリン

ニールセン:フルート協奏曲 FS119
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 作品16
シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調 作品47
---アンコール------------
上野由恵⇒アンデルセン:24のエチュードから第3番
田村響⇒ショパン:華麗なる大円舞曲
堀米ゆず子⇒J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番から「ガヴォット」

北欧の作曲家の協奏曲3本建て。
<松竹梅>を逆転させたような品揃えと言っちゃ失礼だけど、やはり最後の堀米ゆず子:シベリウス「バイオリン協奏曲」が一番良かったな。

田村響:グリーグ「ピアノ協奏曲」はオケとの一体感に欠けたように思う。それに拍と拍の間の細かな音がはっきり聴こえてこないのはどうして?アンコールのショパンを聴けば超速のフレーズだって、難なく弾きこなしていたのに。

上野由恵:ニールセンのフルート協奏曲は個人的に馴染みのない曲(記録にある限りナマでは2回目。CDも持っていない。)で楽しめるまでに至らず。3人の演奏の中では一番瑕疵がなかった。完璧な演奏だったと思う。その腕前でモーツァルトを聴きたかったよ。

それにしても、堀米女史のバイオリンが良く鳴ること。
靄の中から聴こえてくる1本の弱音は正に一条の光が射すように明瞭でその後に続く劇的な展開を期待させた。録音なら録り直したいところもあったろうが、スリルある展開と豊かな響きでシベリウスの醍醐味を味わった。

オケも最初は響きがイマイチだったが、だんだん良く鳴るようになった。
指揮は石﨑真弥奈女史。初めてだ。第16回東京国際音楽コンクール(2012年)の指揮部門で1〜3位なしの入選者の一人で、既に多方面で活躍している田中祐子もその一人。また顔つきが良く似ているよ。これから活躍の機会が増えるといいけど。

♪2019-108/♪みなとみらいホール-33

2019年7月24日水曜日

東京都交響楽団 第882回 定期演奏会Cシリーズ

2019-07-24 @東京芸術劇場大ホール


アラン・ギルバート:指揮
東京都交響楽団

モーツァルト:交響曲第38番ニ長調 K.504《プラハ》
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調 WAB104《ロマンティック》
(ノヴァーク:1878/80年版)

9月のA定期がB定期と同一プロだったのでA定期をC定期に振り替えたが、今度は明日のB定期と同じになった。ま、いいや。てなことで、ロマンティックを明日もサントリーで聴くことになっている。都響は振替でも席が選べるのが素晴らしい。今日の席は普段聴かない2階席前方中央。

芸術劇場は響きがイマイチでできたら避けたいところだが、前回の読響に続いて今日の都響もちょっとマシになってきたのはどうして?

都響の本来の我が定席はABとも1F真ん中だが、今日のようにちょっと距離を置いて聴くと粗が目立たないようだ。
それにプラハは弦12型(弦の総勢40人)という小規模だったので各パートの見通しが良く纏まりよく聴けた。

ブルックナーは当然のように弦16型だ。
それだけにざわざわするところもあって上出来とは思えなかったが、終楽章の最初の方で60本の弦が低域で一斉にぐいっと脂を飛ばすような音を奏でるところ、これはちょっと聴きものだった。
サントリーホールではどんな音を聴かせるだろう?

♪2019-107/♪東京芸術劇場大ホール-4

2019年7月23日火曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期 佐藤しのぶソプラノリサイタル〜女の愛と生涯〜

2019-07-23 @みなとみらいホール



佐藤しのぶ:ソプラノ
森島英子:ピアノ

シューマン:歌曲集「ミルテの花」から献呈
シューマン:連作歌曲「女の愛と生涯」

団伊玖磨:花のまち
寺島尚彦:さとうきび畑
鈴木キサブロー:Remember(リメンバー)
前田憲男:約束
菅野よう子:花は咲く
岡野貞一:故郷

いや〜これまで全く縁がなかったのか?
過去に歌劇で聴いたような気もするが近年の記録には無し。
綺麗なご婦人が綺麗な衣装を着て綺麗な声で歌ってくれたけど、なんかクラシック声楽を聴いているような気がしないままの2時間だった。

♪2019-106/♪みなとみらいホール-32

2019年7月22日月曜日

新国立劇場オペラ「トゥーランドット」

2019-07-22 @新国立劇場


指揮:大野和士
演出:アレックス・オリエ
美術:アルフォンス・フローレス
衣裳:リュック・カステーイス
照明:ウルス・シェーネバウム
演出補:スサナ・ゴメス
舞台監督:菅原多敢弘

バルセロナ交響楽団
新国立劇場合唱団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
TOKYO FM 少年合唱団

トゥーランドット⇒イレーネ・テオリン
カラフ⇒テオドール・イリンカイ
リュー⇒中村恵理
ティムール⇒リッカルド・ザネッラート
アルトゥム皇帝⇒持木弘
ピン⇒桝貴志
パン⇒与儀巧
ポン⇒村上敏明

オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World
ジャコモ・プッチーニ:オペラ「トゥーランドット」
フランコ・アルファーノ補筆
全3幕〈イタリア語上演/日本語・英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間55分
第Ⅰ幕40分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕45分
 --休憩25分--
第Ⅲ幕40分

東京では公演終了したが地方公演はまだ続くのでネタバレは慎もう。
ま、かつてない幕切れであったことくらい書いてもいいか。
確かに、従来の演出ではいつも不満が残る。
さりとて、Aオリエの新演出ですべてがストンと落ちる訳でもない。2様の解釈の余地がある。

それはともかく、歌手陣の歌唱が見事。
よく響き渡った。
中村理恵の最初のアリアには驚いた。
テオリンの謎かけの歌、イリンカイの誰も寝てはならぬ…。
全て良し。

さらに、特筆はバルセロナ交響楽団の明瞭な響きはピットに入っているオーケストラの音とも思えない。大野和士が招いただけのことはある。

モノトーンを主軸にした美術。天井の高さを生かしたセットなど視覚面でも見事だった。
ただし、衣装・化粧にはトゥーランドットを別にして疑問あり。
リューの化粧をもっとなんとかできなかったか。ここはあまりリアルにやらなくとも良かったはず。ピンポンパンも最初はまるで浮浪児だよ。

この日を以って新国立劇場の今季は全作が終了した(次季は10月から)。邦人新作1本(紫苑物語)を除いて残り全作を観たが、一番満足度が高いのは今回の「トゥーランドット」だった。次点が「蝶々夫人」かな。

♪2019-105/♪新国立劇場-08

2019年7月21日日曜日

東京交響楽団 川崎定期演奏会 第70回

2019-07/21 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
東京交響楽団
東京コーラス**

サラ・ウェゲナー:ソプラノ*
ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー:メゾ・ソプラノ*

J.シュトラウスⅡ:芸術家の生涯
リゲティ:レクイエム*/**
タリス:スペム・イン・アリウム(40声のモテット『我、汝の他に望みなし』)**
R.シュトラウス:死と変容

面白かったのはトマス・タリス(1505-1585・英)の40声のモテット「スペム・イン・アリス『我、汝の他に望みなし』」だ。
イタリアで言えばルネサンス後期に当たるようだ。
この頃に40声部の音楽が作られていたとはなんと斬新な。
尤も終始40声部で歌われたのではなく5声部合唱8組で、完全に40声部の合唱はわずかな部分だったと思うが、それでも壮大なものだ。

これは東響コーラス(総勢120名くらい)のみの無伴奏曲。テキストは聖書から取られたのだろう。短いものだが、多分手を替え品を替え繰り返されて演奏時間は10分強だった。

その対極に位置したのが現代音楽のリゲティの「レクイエム」。
1965年完成の女声独唱が2人と混声合唱とオーケストラによる作品。
これも最大20声部に分かれているそうだが当然聴き分けられるはずもなし。この作品の一部が映画「2001年宇宙の旅」に用いられたそうだが、メロディーラインなどと言うものもないので何十回観た映画であっても全然ピンとこなかった。はっきり言ってつまらない音楽だった。こんな妙ちくりんな音楽では死者もおちおち寝てはおれないだろう。

この声楽(含む)2曲の前と後ろにJ.シュトラウスとR.シュトラウスをサンドイッチのパンみたいに置いたのはどうしてか。

ともかく、今回だけではないが、ジョナサン・ノットの選曲は癖がありすぎて付いてゆけない。僕の理解力では本人だけがご満悦なのだ。

ところで、普段は暗譜で歌う東響コーラスも今日の新旧2曲を楽譜を手に歌った。そりゃやむを得ないだろう。おそらく彼らにとっても初めての作品だったはずだ。

♪2019-104/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-05

2019年7月19日金曜日

東京フィル第126回東京オペラシティ定期シリーズ

2019-07-19 @東京オペラシティコンサートホール


チョン・ミョンフン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

クリステル・リー:バイオリン*

シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調 Op47*
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 Op95「新世界から」
-----アンコール-----------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第3番からルーレ*
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番ト短調

チョン・ミョンフン指揮、超巨大「新世界」は、弦5部の編成が16-16-14-12-10という信じられないような超特大規模。それでもキビキビ、シャキシャキの演奏だ。第1〜3楽章まではさほどの効果は現れなかったけど、特に終楽章の冒頭の弦一斉強奏(tutti)は、音を楽譜以上にたっぷり延ばして、まるでシネラマ(古い!)でD51がのっそりのっそり、しかし、力強く飛び出してくるような大迫力で、成る程、これがやりたかったのか、と納得。

ホールのせいか腕利きが揃っているのか、高域弦もほどほど透明感を保ちながらぶ厚いアンサンブルが高揚感を掻き立てる。
これは正に「新世界」の「新世界」!オーケストラをナマで聴く楽しさを満喫。

ドボルザークの交響曲に続いてアンコールがハンガリー舞曲第1番って、4日前の東響と同じ(東京は交響曲第7番だった。)展開だ。特大編成を維持したままのこの演奏も素晴らしい響だったが、何が違ったのだろう、東響の哀愁には及ばなかったなあ。

前半のシベリウスのバイオリン協奏曲もなかなか聴きごたえあった。こちらも協奏曲としては弦の編成が14-14-12-10-8という変則14型で大規模だが、独奏バイオリンが良く響いて違和感はなかった。メリハリの効いた演奏で、あまり情緒に流されるようなこともなく、快活なシベリウスだったなあ。

♪2019-103/♪東京オペラシティコンサートホール-04

2019年7月16日火曜日

東京都交響楽団 第878回 定期演奏会Aシリーズ

2019-07-16 @東京文化会館


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

宮田大:チェロ*

ドボルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 op.104 B.191*
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 op.73

ドボルザークのチェロ協奏曲、ブラーむす交響曲第2番の組合せ。正に鉄壁のコンビだったがイマイチ楽しめなかった。
どうして都響は何でもかんでも弦16型の大編成なのか。
「運命」でもこの編成でやるオケだから協奏曲であれブラームスであれ御構い無しか。

「宮田大にハズレなし」と日頃思っていたが、今回は、彼のせいではなく、文化会館という響き不足のホールに大編成のオケという組み合わせで貧乏くじを引いた。
大ホールならみなとみらいホールやタケミツメモリアルなら彼のチェロが朗々と響き渡るはずだけど、今日は、いつもと違う。こんなもんじゃないはず、と隔靴掻痒の思いで聴いた。

ブラームスの2番も大好きな曲だけど、やはり、もう少しコンパクトな編成でやってほしいな。

近頃抱き始めた都響不信感は拭えず、周りの拍手喝采の中、1人白けていたよ。

♪2019-102/♪東京文化会館-06

令和元年6月 第96回歌舞伎鑑賞教室「菅原伝授手習鑑ー車引」/「棒しばり」

2019-07-16 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  坂東新悟

竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)  一幕
 ―車引(くるまびき)―
  国立劇場美術係=美術
  吉田社頭車引の場

岡村柿紅=作
棒しばり(ぼうしばり)  長唄囃子連中

(主な配役)
「菅原伝授手習鑑 -車引- 」
舎人松王丸⇒尾上松緑
舎人梅王丸⇒坂東亀蔵
舎人桜丸⇒坂東新悟
舎人杉王丸⇒中村玉太郎/尾上左近(交互出演)
藤原時平⇒中村松江
       ほか

「棒しばり」
次郎冠者⇒尾上松緑
太郎冠者⇒坂東亀蔵
曽根松兵衛⇒中村松江
        ほか

7月は短篇2本。菅原伝授手習鑑から「車引」。
三ツ子の兄弟の出会い・睨み合いを描くだけでこれといって面白い話ではないが、歌舞伎の荒事・和事・実事を隈取りや車鬢、衣装、小道具などで描き分ける点で入門にも相応しい。
松緑の松王丸、亀蔵の梅王丸やよし!

後半は「棒しばり」。
狂言から移された松羽目物。
オリジナルの狂言は若い頃に観ているが歌舞伎版は初見。
遠い記憶と照らしてはほぼ同じように思ったが…。
主人の留守中、悪さをせぬようにと次郎冠者は棒に両手を縛られ太郎冠者は後ろ手に縛られるが、二人協力して酒の壺から大酒する様のおかしさ。こちらも松緑と亀蔵が大活躍。

松江が前半では藤原時平、後半では大名(曽根松兵衛)の役で舞台を締めるはずだけど、イマイチ貫禄不足かなあ。この人は真面目一方な感じで(実際は知らないけど…)ハッタリが不足している。

♪2019-101/♪国立劇場-10

2019年7月15日月曜日

名曲全集第148回 ブラームスとドボルザークの傑作

2019-07-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ロレンツォ・ヴィオッティ:指揮
東京交響楽団

ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲第1番ト短調 作品25(管弦楽版)
ドボルザーク:交響曲第7番ニ短調 作品70
-------------
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番

手堅い仕事ぶりのロレンツォ・ヴィオッティがスニーカーを履いて登壇。彼の指揮ぶりを見たのは、歌劇「トスカ」(東フィル)、フランス音楽集(東フィル)、ベルディ「レクイエム」(東響)に次いで4度目だけど、スニーカに気がついたのは今回が初めて。前もスニーカーだったのかな。
スニーカーといえば、7日に聴いたクラリネットのA.オッテンザマーもヴィオッティとそっくりのスニーカーを履いてステージに上がった。オケ団員は正装しているので妙な感じだが、まあ、そこは突っ込むところでもなかろう。

今日のプログラムはブラームスとドボルザーク。鉄壁の組み合わせだけど、問題はブラームスだ。
彼のピアノ四重奏曲を無調音楽の騎手シェーンベルクが指揮者オットー・クレンペラーの要請を受けて管弦楽版に編曲したものだ。

過去何度かこの管弦楽版を聴いているがいつも感想は同じ。オーケストレーションが成功しているのは終楽章だけではないかと思う。第1〜3楽章は暑苦しい感じだ。

オリジナルのピアノ四重奏曲は元々大好物で何度かナマでも聴いているし、CDでもよく聴いている。中でもこの春にベルリン・フィルのメンバーによる演奏を聴いた折、この曲の核心に触れたような気がしたが、それに比べると弦14型の大規模管弦楽で聴くと外縁をなぞっているだけのように気がしてならぬ。

加えて東響。第一バイオリンの出来も高域がキンキン・シャリシャリで聴きづらい。終演後のヴィオッティの表情も満足できていない様子だった。

ところが、後半、メインのドボルザーク第7番になると、演奏者の身体や楽器が馴染んできたか同じオケとも思えない上出来。
第一バイオリン群も調子を上げて不快音が聴こえなくなった。演奏は構想力を感じさせ、つけ入る隙のない組立と巧さ。
久しぶりに胸踊る気分。

豪快にラストを決めた後、拍手喝采の中、何度かのカーテン・コールを経てひょいと指揮台に飛び乗るや否や始めたアンコールはブラームスのハンガリー舞曲第1番。
少し遊びを加えた演奏だが、これまた素晴らしいこと。
こんなに心に染みる美しい1番は初めてかも。

第1曲めで生じた欲求不満を返り討ちに仕留めるようなブラームスで締めてくれて大いに気分が高揚した。ヴィオッティも大満足の様子。いやはやブラームスとドボルザークはホンに鉄壁だよ。

♪2019-100/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-04

2019年7月13日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第350回

2019-07-13 @みなとみらいホール


鈴木優人:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン

澤江衣里:ソプラノ(天使ガブリエル&イヴ)
櫻田亮:テナー(天使ウリエル)
ドミニク・ヴェルナー:バリトン(天使ラファエル&アダム)

ハイドン:オラトリオ「天地創造」Hob.XXI-2

みなとみらい定期350回記念ということで、大作ハイドンのオラトリオ「天地創造」。指揮はバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)を率いる鈴木優人。3人の独唱に混声合唱が加わる。演奏時間約100分という長尺*で、なかなか聴く機会がない。記録を調べたら2017年の都響9月定期演奏会以来だ。

というわけで、気合の入ったプログラムだった。同じハイドンのオラトリオでも「四季」に比べると単調で面白さに欠けるとはいえ、親しみやすい音楽ばかりで、また、旧約聖書「創世記」でお馴染みの筋書きでもあり、テキストをにらめっこしながらあれこれ考える必要もないので、心地よく音楽に浸っていられる。

演奏も良い出来だったと思う。神奈川フィルは小ぶり編成で音楽の見通しが良かった。弦の弱音もかなり気を使いながら丁寧に弾いていた。
独唱陣はBCJの常連(所属?)で、指揮・合唱団共々和気藹々慣れたものだった。

優れた歌唱を聴いていると、よく訓練された人間の身体こそ最強の楽器だなと思う。特に表現力という面では如何なる楽器も人間の歌唱力には敵わないだろう。

ところで、モダン楽器ばかりで中途半端な古楽アプローチだったがこれはこれで今風の楽しみ方だ。むしろ、いっそ力負けするチェンバロをやめてピアノを使うというのは幾ら何でも大胆すぎるかな。というのもチェンバロは(指揮の鈴木優人が演奏も兼ねた。)重要な役割を果たすが、2千人ホールでは遠くまで音が届いていないだろう。特にオケが重なると比較的前の方の僕の席でも埋没していたもの。

♪2019-099/♪みなとみらいホール-31

*プログラムには演奏時間100分と書いてあり、実際にもそれくらいだった。
しかし、僕の手持ちのCDは2枚組で計142分だ。幾ら何でも42分もの差があるのはおかしい。
今日の神奈川フィルはベーレンライター新版というのを使ったと書いてある。
17年の都響のプログラムを読み返すと110分でオックスフォード版を使っている。
その前というと16年にシンフォニア・ヴァルソヴィアとローザンヌ声楽アンサンブルで聴いたが、この時のプログラムが残っていない(ホンにどこへやったのだろう。捨てるはずがないのに。)ので、版も演奏時間も分からない。

ともかく、100分から142分までの違いは主として使った版の違いによるのだと思う。同じ楽譜を使ってこんな大きな差が生まれることはないだろう。

2019年7月12日金曜日

横浜バロック室内合奏団定期演奏会91回 〜イタリアの輝き

2019-07-12 @みなとみらいホール


横浜バロック室内合奏団
 Vn小笠原伸子、齋藤亜紀、有馬希和子、土谷麻莉子
 Va中島久美、佐藤裕希子
 Vc間瀬利雄
 Cb大西雄二
 Cemb木村聡子
 Ob戸田智子*
 Fg山上貴司**

Tn近野桂介☆
Ctn久保法之
Sp二枝由衣
MSp湯川亜矢子

ナレーション:二宮亮

ボッケリーニ:弦楽5重奏曲ホ長調 作品11の5から第3楽章メヌエット
マルチェッロ:オーボエ協奏曲ニ短調*
ビバルディ:ファゴット協奏曲変ホ長調 RV483
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ヘンデル:オペラ「セルセ」から抜粋〜演奏会形式

イタリアの輝きと称して盛りだくさんのプログラム。
まずはボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調作品11-5の第3楽章「メヌエット」が郷愁をかき立てた。
この音楽は、昔ラジオ番組のテーマ音楽として慣れ親しんだが、番組が思い出せない。

マルチェッロのオーボエ協奏曲は先日ベルリン・バロック・ゾリステン(BBS)の名人芸を聴いたばかりだが、ミューザの大ホールで聴くより、みなとみらいホールの、それも響きの良い小ホールのかぶりつきで聴くマルチェッロはオーボエの肉感的な哀愁が魅力的でBBS以上に好感した。

メインはヘンデルのオペラ「セルセ」抜粋(1時間弱)だ。

「ヘンデルのラルゴ」とか「オンブラ・マイ・フ(樹木の陰で)」というタイトルで超有名だが、これが「セルセ」の冒頭のアリアだとは知らなかった。
この歌は短調でもないのに(ヘ長調)ホンに胸が締め付けられるような旋律だ。俗にまみれた卑しい心も少しは洗われるような思いがする。
ペルシャの王セルセによって歌われる(テノール)が、キャスリーン・バトル(ソプラノ)がこれを歌う洋酒のCMが大ヒットしたそうで、多くの人はソプラノの歌だとばかり思っているかもしれない。まあ、内容的にも木々や木陰の思いを歌ったものなので男女どちらが歌っても違和感はないが。

かくも美しいアリアで始まるオペラだが、ラブコメディで、横恋慕や嫉妬やらが交錯し、最後はめでたく収まるべきところに収まってめでたしめでたし。
今回は演奏会形式で抜粋全16曲。これにナレーションが時々入るので筋に迷うことはなかった。声楽独唱陣も見事だ。「オンブラ・マイ・フ」に限らず、親しみやすいアリアの連続でいずれも楽しい。実に贅沢な時間を過ごさせてもらった。

♪2019-098/♪みなとみらいホール-30

https://youtu.be/PLzaMlYomOE ボッケリーニのメヌエット
https://youtu.be/oK58x2cfAQ0 マルチェッロのオーボエ協奏曲
https://youtu.be/5rBEcokvsF0 オンブラ・マイ・フ

2019年7月10日水曜日

新国立劇場オペラ「蝶々夫人」〜高校生のためのオペラ鑑賞教室

2019-07-10 @新国立劇場


プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」
〜高校生のためのオペラ鑑賞教室
全2幕〈イタリア語上演/日本語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
第Ⅰ幕50分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕80分

飯森範親:指揮
栗山民也:演出
島次郎:美術
前田文子:衣裳
勝柴次朗:照明

蝶々夫人⇒木下美穂子
ピンカートン⇒樋口達哉
シャープレス⇒成田博之
スズキ⇒小林由佳
ゴロー⇒晴雅彦
ボンゾ⇒峰茂樹
ヤマドリ⇒吉川健一
神官⇒山下友輔
ケート⇒山下千夏

高校生のためのオペラ鑑賞教室だった。あいにくと僕は高校生ではないので!前売り指定券は買えない。
公演日の前日の16時に翌日売り出される「当日券」の発売予定枚数がNET上に発表され、当日の10時以降に新国立劇場ボックスオフィス(B.O.)で電話で予約し窓口で引き換える(直接窓口に行って購入することもできる。)という仕組みだ。

今回は6日から12日までの7日間で6公演あり、ダブルキャストで交代に出演する。

そして、僕は蝶々夫人役で言えば木下美穂子(別の組は小林厚子)の組の公演を是非とも聴きたかった。

それで、毎日、木下組公演の前日の、翌日前売り券発表状況を見ていたが、初日(8日)がわずか10枚で、これではたとえ買えてもろくな席はあるまいと断念。
次の出番(10日)の当日券は20枚と倍増したが、ここが思案のしどころ。チャンスはもう一回あるのだけど、その日が5枚とかになったらもっと厳しいことになる。
で、その20枚に賭けた。

当日、10時から新国立劇場のB.O.に電話(固定と携帯電話2台)をかけるのだけど、もう、ハナから話し中で繋がらない。
20分以上かけ続けて、ようやく繋がってた。
チケットはまだ残っていた。
残りものに福あり。
信じられないことに1階のセンターブロックが残っていた。
あいにく最後列の1列前だった。
もし自分で選んで買うなら、避けるような席だけど、舞台から遠いといっても21列目。普通に買えば安価な公演であれS席だから2万円はする。これがなんと4,320円とは信じられない価格。ありがたや。

購入の手続きを済ませて、あまり時間もなく家を出た。

「高校生のためのオペラ鑑賞教室」である。オペラパレスは高校生ばかり。それもどういう訳か圧倒的に女学生が多い。なんと賑やかで晴れやかなこと。


「鑑賞教室」と言い条スタッフ・キャストは6月の通常の公演とほとんど変わらない。演出も同じだから、舞台装置も美術も衣装も同じ。指揮者は変わったが、一流の指揮者であることには変わりはない。
主要な歌手は変わったが、一部は6月公演と同じだ。
肝心要の蝶々夫人は木下美穂子。彼女は、文句なしの一流で、2006年の(随分古いが)東京文化会館の二期会公演で彼女の蝶々夫人を聴いている。最近では読響との「第九」や文化会館での「ローエングリーン」など。

2001年に日本三大声楽コンクールを1年で制覇したという伝説のツワモノで、今回は是非、木下美穂子でなくちゃという思いだった。いやはや、うまい。

ほかのキャストもみんな上手で、こんな本格的な手抜きなしのオペラをおそらくタダみたいなチケット代で鑑賞できるなんて、現代の高校生はラッキーだよ(ま、都市部に限られるが。他に京都でも鑑賞教室は行われるらしい。)。

ことしは、蝶々夫人の当たり年で、4月、6月、7月と観たが、もう一度10月にも、今度は大村博美の蝶々夫人を観ることにしている。

筋書きとしてはいろいろ議論ができる内容だが、何度観ても飽きないし、観るたびにプッチーニの音楽の巧さに気づかされる。また、日本を舞台にして日本の音楽を沢山取り入れた美しいオペラを残してくれたことに感謝する。

高校生たち、とりわけ、女学生たちはどのようにこの話を受け止めたろう。やっぱり2幕後半では泣いたろうか。それとも時代錯誤を笑ったろうか。

♪2019-097/♪新国立劇場-07

2019年7月7日日曜日

読売日本交響楽団第218回マチネーシリーズ

2019-07-07 @東京芸術劇場大ホール


小林研一郎:指揮
読売日本交響楽団
アンドレアス・オッテンザマー:クラリネット*

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番ヘ短調 作品73*
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88
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ハンガリーの民謡*
ドボルザーク:交響曲第8番第4楽章から終結部

響きに不満があるので、余程のことがない限りこのホールでは聴きたくないが、今回は、横浜定期が他の用事とダブったために仕方なく藝劇の公演と振り替えてもらった。
振替えの場合は席を選べない。同じランクの中で空いている席があれば振り替えてもらえるという仕組みなのでとやかく言えないが、その振替席は、ここでもS席かと思うような場所だった。

前から10番目はかろうじて許容できるが、Lブロックでしかも壁際から2席目だ。やや舞台中心方向に傾けて並べてあるブロックであるとは言え、それでも背もたれに背中をつけてまっすぐ前を見ると第1バイオリンの第4プルト(前から4列目)が正面だ(指揮者の背中を見るのが理想。)。つまり、オーケストラの左端近くに座っている訳だからバランスが実に悪い。

音のバランスだけでなく、目はどうしても指揮者に向かうので、身体は自然とねじれてくるし、よくまあこんな席でもS席で売るものだ、いや、買う人がいるのが不思議。

と、心中さんざの悪態をつきながら開演を待ったのだけど、ねじれはともかく、演奏が始まってみるとこれが、案外良い感じで聴こえてきた。「雨の日はホールが良く鳴る」とは僕の仮説だが、今日も、藝劇でも、正しかったようだ。

普段は響いてこない、特に弦がぼやけがちのホールなのに、10列目というせいもあったろうが、今日は弦がよく響くこと。
指揮者の右側にいるビオラは遠いというデメリットがあるが、チェロやコントラバスは指揮者越しにこちらを向いているので、見た目のせいか低域弦もそこそこ鳴っているのだ。
これで案外管楽器と弦のバランスがうまくいったようで、当初覚悟していたような悲惨な音響的経験にはならずに済んだ。
とは言え、やはり真ん中の真ん中で聴くのが一番いい。

クラリネット独奏のオッテンザマーはベルリンフィルの来日公演でも聴いているので、これでオケの独奏としては3度目か。室内楽でも聴いたように思うが記録していないな。
アンコールで吹いたのがテクニックの披露だったが、本番のウェーバーではあまり音色の美しさは感じられなかった。

ドボルザークの8番はやはりいつ聴いてもいいなあ、と感じさせる。ブラームスが賞賛したというメロディーメーカーぶりが特にこの8番では発揮されているのではないか。全篇がボヘミアぽい哀愁に満ちているのが素晴らしい。
この頃聴くコバケンは遊びを封印してひたすら正統的だ。

尤も、アンコールでは4楽章終結部を思い切り超速で振って、観客サービス怠りなし。

♪2019-096/♪東京芸術劇場大ホール-3