2018年12月22日土曜日

第26回フェリス女学院メサイア演奏会

2018-12-22 @フェリスホール


星野聡:指揮
フェリス室内管弦楽団
フェリス女学院大学音楽学部合唱団:合唱

長久真実子:チェンバロ
宇内千晴:オルガン
秦貴美子、小出真琴(ディプロマ生)、黒川青葉(大学院音楽研究科2年):ソプラノ
栗林朋子、佐藤ゆい(大学院音楽研究科2年):アルト:
蔵田雅之:バリトン
土屋広次郎:テノール

G.F.ヘンデル:オラトリオ《メサイア》Ferris version
(第1部全曲、第2部及び第3部は一部省略)

年末恒例の演奏会は「第九」だけではない。もう一つの楽しみがヘンデルの「メサイア」だ。
しかし、12月は毎年「第九」を中心にコンサートやオペラ、歌舞伎、文楽などが集中するので、ここ2年間は日程が合わずに行けなかった。今年も無理かと思っていたら、ちょうど予定のないエアポケットのようなタイミングにフェリス女学院が「メサイア」をやると知って申し込んだ。

オーケストラは学生たちによるフェリス室内管弦楽団24人。これに通奏低音(チェンバロ、オルガン)が2人加わった。
合唱は女学院の合唱団60人位に賛助出演の男声が20人。
独唱はプロが4声部4人に学生選抜が3人、部分的に参加した。

出来栄え如何?

お世辞にも巧いとは言えない。
プロを含めてあまり良い出来ではなかったが、心打たれるものがあった。
何と言ってもヘンデルの音楽の力だろう。
ありきたりの言い方になるが、「ハレルヤコーラス」の素晴らしさには胸が踊る。ものすごく元気付けられた。
ウツで悩む人にはこれを聴かせるのが一番療養効果があるのではないかと思う。
悪い憑き物が落ちて前向きになって人生は楽しいぞ、という気持ちにさせてくれる。そして、最後のアーメン・コーラスが、いやが上にも気持ちを盛り立てて大団円を締めくくった。

ところで、「メサイア」のロンドン初演(1743年)の際、「ハレルヤコーラス」があまりに見事なのに感動した国王ジョージ2世が思わず起立し、周りも総立ちしたという故事(作り話らしいが)に倣い、その後「ハレルヤコーラス」では観客が起立するという現象が彼の地を中心に広まり、日本でもこの場面での観客の起立が<中途半端>に慣習として残っている。

今回は、クリスチャンの学校での「メサイア」であるからには、この保守的な慣習は一層堅固に維持されているのではないかと心配をしたのだが、これは全くの杞憂だった。

誰も立たたなかった!
視界に入る限り誰一人立たなかった。
ロビーに「お立ちになりませぬよう」という張り紙もなかったのに、これは驚いた。

うっかり起立すれば頭が変!と思われたのかも知れない。

2016、17年の2年間は聴く機会がなかったが、ひょっとしてその間に、「メサイア」愛好協会が「起立しないようにしましょう」などとお触れを出したのだろうか(Just Joke!)。

いやはや、かくして、是非はともかく、確実に日本にも存在していた「ハレルヤコーラス」での起立は消滅してしまったのか?

https://youtu.be/bx8CC56NN3k

https://youtu.be/1NRm8awZgl4

↑古い動画だけどこれらでは非常に多くの観客が起立している。

一方、客席は立たないけど、ステージ上では本来出番のないソリストもここでは合唱団と一緒に立ち上がって歌うという慣習は生きていた。2階バルコニーに配置していた、これも本来は出番ではない合唱団の別働隊もここぞ!と言わんばかりにすくっと立ち上がって合唱に混じった。

客席の起立がだんだん廃れてきたのは良いことだ。
100人くらいの小ホールでの内輪の集まりなら一斉に起立するのもいいだろうが、数百人〜2千人規模のホールでは起立は徹底できない以上、全員起立せずに、その代わり敬虔な気持ちで圧倒的なコーラスに胸震わせながら拝聴するのがいいのではないか。

♪2018-175/♪フェリスホール-01