2016-07-03 @国立劇場
●解説 歌舞伎のみかた
坂東新悟
若竹笛躬・中邑阿契=作
山田庄一=補綴
●卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)二幕三場
国立劇場美術係=美術
序 幕 紀州熊野山中鷹狩の場
二幕目 横曽根平太郎住家の場
木遣音頭の場
中村魁春⇒お柳<おりゅう>(実は柳の精)
坂東秀調⇒進ノ蔵人<しんのくらんど>
中村歌女之丞⇒平太郎母滝乃
市村橘太郎⇒伊佐坂運内<いささかうんない>
中村松江⇒太宰師季仲<だざいのそちすえなか>
坂東彌十郎⇒横曽根平太郎<よこそねへいたろう>
ほか
「卅三間堂棟由来」は異類婚姻譚の一種。
柳の精・お柳は、今は落魄の武士・平太郎の弓の腕前のおかげで危ういところ一命をとりとめる。それが縁で2人が結ばれ、子(緑丸)を成すが平和な日々は長くは続かない。
およそ5年経過したある日、都から知り合いの武士が平太郎一家が住む熊野にやってくる。白河法皇の病気平癒のために都に三十三間堂を建てることになり、その棟木に使う柳の大木を伐りに来たのだ。
まさにその柳の木こそお柳そのものなのだ。
やがて、柳に斧が振るわれる。カーンという音。これは小鼓だろうか。激痛に身悶えしながら、お柳のクドキが始まる。
すべてを知った平太郎も緑丸も姑も為す術はなく、4人が互いに掻き抱きながら、無情の別れが竹本(浄瑠璃)の気合も高らかに哀切極まりない。
ああ、この話で江戸の庶民は涙を搾り取られたんだろうなと思いながら観ていたが、隣のお兄さんも鼻をグズグズ言わせ始め、つい伝播して不覚の涙。
特に切り倒された柳の大木を運ぶ木遣り音頭の場面では、大勢の曳き手にもかかわらず、駆けつけた平太郎や緑丸を前に柳は微動だにしなくなる。そこで、緑丸が「かかさま~」と縋りより、手綱を曳くとお柳の思いが晴れたか、ゆっくりと動き出す。
緑丸を演じた子役(星一輝と山田華音のダブルキャストなのでこの日=初日どちらが出ていたのか分からないが)がなかなか上手で、しっかり感情移入させてくれた。
大道具の仕掛けもいろいろあって、姿が消えたり、早変わりに宙吊りまでと、人情モノにしては凝った作りが面白かった。
平太郎の彌十郎とお柳の魁春。
これまで、余り主要な役は観る機会がなかったが、いずれも力の入った良い芝居だったと思う。
♪2016-092/♪国立劇場-04