2015-05-02 @よみうりホール
エカテリーナ・デルジャヴィナ:ピアノ
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
エカテリーナ・デルジャヴィナというピアニストが世間でどのような評価を受けているのか知らないけど、彼女が録音した「ゴールドベルク変奏曲」(ゴルトベルクとも)がフランスの音楽誌?で賞を受けたことは知っていた。
ともかく、そのCDを僕は時々聴いてるので、好ましい印象は持っていた。
今年の「熱狂の日」のプログラムリストに彼女の名前と「ゴールドベルク変奏曲」のタイトルを発見した時、正に僕にとって「熱狂の日」になるなあ、という期待が膨らんだ。
3日間、朝から深夜まで、計8ヵ所のホールで、一体全部でどれほどのコンサートが開催されたのか知らないけど、僕は、毎日3回ずつ計9ステージを選んだ。
去年より減らしたのは、今回はマタイ、ヨハネ両受難曲という長大曲が含まれたので、マイ・プログラムが組みづらかったせいもあるが、余韻に浸るまもなく次の会場へ移動するのもなかなかしんどいからだ。結果的には正解だった。
その最初の日の最初のプログラムがエカテリーナ・デルジャヴィナの「ゴールドベルク」だった。
しかし、ホールのある7階まで上がるのにエレベータの順番を待ち、ようやく7階に到着すると今度は下り方向に階段で行列して開演を待つのは結構ストレスだった。
僕が最初に並んだ時、行列の最後尾は5階だった。なら、7階まで上げなくともいいじゃないか。
遅い人はもっと悲劇で、7階まではエレベータで上がって、行列の最後尾につくために階段を降りて、ひょっとして1階まで降りなくてはいけなかったかもしれない。
大勢のボランティア?スタッフがいながら、手際が悪いなあ、とだんだん気分を害してきた。
こんなこと音楽とは関係ないのだけど、出鼻を挫かれたという思いだった。
その上、開演時刻は10分余遅れた。
僕は次のステージまでにゆとりがあったから終演が少々遅れても構わなかったが、過密スケジュールを組んだ人はハラハラしながら聴かなくてはならない。
さて、ようやく登場したエカテリーナ嬢、御歳は不明だが童顔で可愛らしい。よし、すべてを許そう!という大らかな気持ちに切り替えて演奏を待つ。
暫時呼吸を整えて、始まった。
エカテリーナの「ゴールドベルク」だ。
でも、最初はCDで馴染んだ調子と同じように始まったが、さて、どの辺からか思い出せないけど、だんだんテンポが早くなってきた。
彼女の「ゴールドベルク」を初めて聴く人には何の違和感もなかったと思う。これはこれで一つの音楽だ。彼女がCD録音したのは7年ほど前だから、その後に解釈が変わったのかもしれない。
グレン・グールドの「ゴールドベルク」は54、55、81年の録音を持っているけど、演奏時間は43分、39分、52分といずれも短めだが収録時ごとで有意な差がある。それでいて、どれも聴き応えがあって、どの年の録音が好きとも言い難い。
エカテリーナのCDは77分なのでグールドに比べるとかなりゆったりとしたテンポだ。
アレクシス・ワイセンベルクのCDも持っているけど彼のは79分で、グールドの55年の倍の(半分?)ゆっくりしたテンポだ。
さらに、世の中には1枚では収まらず2枚組のCDを出しているピアニスト(エフゲニー・コロリオフ)もいるから、これは聴いたことがないけど、どんな音楽なのだろう。
もっとも、この演奏者による演奏時間の長短は必ずしもテンポの違いだけではなく、ABの各パートを繰り返すかどうか、繰り返す場合の形式の違いもあるので、それがどの程度影響しているのか分からない。
因みに、開演が10分少々遅れたので、それが演奏に影響を与えるとは思わないけど、終曲時に時計を見たら57分が経過していた。つまり、CD収録時間に比べて20分も速い!
経験を重ねると共に音楽解釈が変わってきたのかもしれないし、多分そういうことだろう。
それにしても20分も早まるものなのだろうか?
まさか開演時間の遅れをテンポアップや繰り返しの省略などで取り戻そうとした訳ではないだろうと思うけど、自信がない。
ちょいとすっきりしない「熱狂の日」の幕開けだった。
♪2014-46/♪よみうりホール-01