2015年5月9日土曜日

N響第1808回 定期公演 Aプログラム

2015-05-09 @NHKホール


ユッカ・ペッカ・サラステ:指揮
クリストフ・バラーティ:バイオリン
NHK交響楽団

シベリウス:「クオレマ」から
 「鶴のいる情景」、「カンツォネッタ」、「悲しいワルツ」
バルトーク:バイオリン協奏曲 第2番
シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43
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アンコール(バイオリンソロ)
イザイ:無伴奏ソナタ第2番から第1楽章


指揮のユッカ・ペッカ・サラステとは初耳。フィンランドの人だそうだ。
つい先日NHKクラシック倶楽部がエサ・ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の来日コンサートを放映していたが、名前が似ているとおり、こちらもフィンランド人でやはりシベリウスの「トゥネラの白鳥」や「交響曲第5番」を取り上げていた。

また、日フィルの現在は首席客演指揮者で次季(2016-09)から首席指揮者に就任予定のピエタリ・インキネンもやはりフィンランド人だ。小さな国から多くの優れた指揮者が日本で活躍している。

今年はシベリウス生誕150年ということもあって、そうでなくともシベリウスの作品を聴く機会が多いが、それをフィンランド人の指揮で聴くのは、もちろん母国の音楽だと言ってもそれはひとつの解釈にすぎないけど、でも、シベリウスの思いはより濃厚に反映されるだろうから、興味深いことだ。

最初のシベリウスの小品3曲は、まあ、腕鳴らしみたいな感じで、いつもなら、第一声からN響らしい弦の美しい響を感ずるのだけど、今日はいまいち集中できなかった。


バルトークからが本領発揮で、ソロのクリストフ・バラーティは、バルトークと同じハンガリーの出身で、これもいわば正統な演奏なのだろう。僕には多分初耳だったが、ショスタコの音楽に似た節回しだなあ、と感じながら聴いていた。
ハンガリー民謡風な部分と無調の12音技法的な要素が混ざって、ついて歌えるようなメロディーには乏しいが、なかなかエキゾチックな香りがする。ソロヴァイオリンは終始弾きっぱなしでかなり技巧を要するようだ。第1楽章の終盤にバイオリンのカデンツァがあるが、ここもバルトーク自身が書いているそうだが、聴いている最中には全く分からなかったけど、半音の半分、四分音まで駆使されているそうだが、多分、もう一度聴いても聴き分けられないだろうなあ。楽譜では四分音をどのように記譜しているのだろう。


本日のメインイベントはもちろん、シベリウスの交響曲だ2番だ。
シベリウスは全部で8曲の交響曲を書いているらしが、僕は第2番と5番しかCDを持っていないし、生でもこの2曲しか聴いていないと思う。
中でも2番が一番ポピュラーで、おそらく全8作品中一番よく知られている作品だろう。
個人的にも、かつてアマチュアオケで演奏したことがあるので、思い出深い特別な1曲だ。


この曲ではもう出だしからゾクゾクさせる。
管弦の混ざり具合の美しいこと。やはり、いつも、聴くたびにN響は巧いなあと納得させてくれる。
知る限りにおいてシベリウスの曲に共通する北欧のフィヨルドを思わせる冷たくてとんがった楽想が続くけどこれが妙に心地よい。
エキゾチックという表現はぴったり来ないかもしれないけど、ドイツ音楽とは明らかに異なる旋法なのだろう。ロシアの音楽とも微妙に異なる。
慣れていない人には緩徐楽章である第2楽章がダントツに長いのに閉口するかもしれないけど、そこを集中して第3楽章を待つ価値がある。もう、第3楽章からクライマックスは準備され、徐々に興奮が高まり、ついに第4楽章に切れ目なくなだれこむといよいよ盛り上がってゆくが、ベートーベンやブラームスなどに比べると構造性は弱いというのか、敢えてこの形なのか、盛り上がっては鎮まり、また盛り上がっては鎮まり、何度も繰り返しながらラストに向かって徐々に気分が高揚するようにできている。
これを下手に演奏すれば無駄に長い印象を与えるかもしれないけど、さすがにN響だし、指揮は本場のマエストロだ。
集中力を切らさずにラストのクライマックスに突入し大きなカタルシスを得た。

♪2015-46/♪NHKホール-04