2015年5月22日金曜日

松竹創業120周年 團菊祭五月大歌舞伎

2014-05-22 @歌舞伎座


一 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
玉手御前       菊之助
俊徳丸        梅枝
浅香姫        右近
奴入平        巳之助
合邦道心       歌六
母おとく       東蔵

二 天一坊大岡政談(てんいちぼうおおおかせいだん)
大岡越前守     菊五郎
池田大助      松緑
山内伊賀亮     海老蔵
お三        萬次郎
赤川大膳        秀調
平石治右衛門 権十郎
下男久助   亀三郎
嫡子忠右衛門 萬太郎
お霜                米吉
伊賀亮女房おさみ
                         宗之助
吉田三五郎    市蔵
藤井左京     右之助
名主甚右衛門   家橘
僧天忠         團蔵
天一坊         菊之助
大岡妻小沢       時蔵


一 摂州合邦辻
    合邦庵室の場

  通し狂言
二 天一坊大岡政談
序 幕  紀州平野村お三住居の場
     紀州加太の浦の場
二幕目 美濃国長洞常楽院本堂の場
三幕目 奉行屋敷内広書院の場
四幕目 大岡邸奥の間の場
大 詰 大岡役宅奥殿の場


「團菊祭」昼の部は「摂州合邦辻」一幕と通し狂言「天一坊大岡政談」だった。

メインイベントが「天一坊~」という訳だろうが、個人的には「摂州合邦辻」が面白かった。

「天一坊~」はよく知られた、徳川吉宗の御落胤を騙った天一坊(菊之助)が大岡裁きでバレてしまうと言う話だが、これが歌舞伎の芸としてはまたいろいろな見方もあるとは思うけど、物語としては案外面白くない。
天一坊の人間の大きさ・怖さがいまいち伝わらない。
いずれ偽物だとバレるのは分かっているけど、そのスリルは殆ど無いし、バレる経緯も当たり前過ぎてワクワクするものはない。

大げさなアクションもないので、ここぞという決めの場面が少なく、大向うも静まりがちだ。

三幕目が越前守(菊五郎)と伊賀亮(海老蔵)がお白州で対決する場面で、ここが一番面白かった。この幕だけでも見せる芝居としては成り立つのではないかと思ったが。
海老蔵のセリフ回しが貫禄で大変結構。

大詰め前の四幕に松緑のちょっといい出番があるのだけど、この人の出番はもっとほしい、といってもそういう芝居だからしょうがないね。夜の部では大活躍だったようだけど。

さて、昼の部はそんな訳で菊之助劇場みたいな感じだった。
こんな調子で、夜の部にも出て、昼夜通して一月近く公演するのではまことに疲れるだろうと思う。


ドラマとして面白かったのは、先述のとおり「摂州合邦辻」だ。
元は人形浄瑠璃の長編だったが、歌舞伎としては、今では「合邦庵室の場」だけが上演されるらしいが、この一幕だけで、十分な見応えがあった。

お家騒動を軸にしながら、義理の関係とはいえ母(玉手御前=菊之助)が息子(俊徳丸=梅枝)に恋をするというとんでもない設定だ。それも、ほのかに寄せる思いというのではない。思い余って義理の息子に毒を飲ませ、面体を醜く崩し、彼の許嫁に結婚を思いとどまらせようとするが、この女難を避けて出奔した俊徳丸を玉手御前はさらに追いかけて私と一緒になろうと詰め寄る。

話は関係者が他にも登場して簡単ではないけど、なぜ、玉手御前がそこまで狂ってしまったのか、いや、本当に狂っているのか、が興味深い。

芝居の筋書きとしての結末はきちんと付けられるが、真実はそんなことではあるまい、と思った。

それに関して、玉手御前を演じた菊之助が、「筋書き」(歌舞伎座篇プログラム)の中で、「建前はあるにせよ、俊徳丸への思いは真実の恋だったのだと思います。」と述べている。

そのとおりだと思う。そう解釈しなければ、この物語は人間ドラマにならない。底の浅い筋書きになってしまう。

さりとて、そのように全篇を解釈するにはやや、筋が通っていないと言う不満もあるのだけど。

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おさらい。

菊之助が大奮闘。
実にご苦労様で、こんなふうに頑張っていては芸を磨くより消耗してしまうのではないだろうかという心配をした。

昼の部での松緑の出番は少なかったが、いい味を出していた。
この人の芝居を見るのは楽しみだ。

海老蔵は、どういうわけか、国立では観たことがないし、歌舞伎座でも團菊祭でしか観たことがない(去年は「勧進帳」でこれはなかなか良かった。)。しかし、朗々たるセリフ回しが貫禄をみせて頼もしかった。


♪2015-50/♪歌舞伎座-03