アルデオ弦楽四重奏団
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D956
シューベルト唯一の弦楽五重奏曲。
短い一生(31歳)を終える2ヶ月前に完成され、22年後に初演され、25年後に出版されたという長く埋もれていた遺作だ。
冒頭の序奏部が重々しく、その後シューベルトらしい明るさがチラリチラリと顔を出すけど、やはり、すぐ短調に転調して全体として暗い。そして長い(手持ちのシフ+アルバンベルクSQでは14:39だが、もっと長い演奏もあるようだ。)。
第2楽章も中間部が少し取っ付き易いけど、その前後はシューベルトの精神世界で、ここに共感できるか、なかなか難しい。
そして、第1楽章に劣らず長い。
第3楽章のスケルツォに至って、ちょっと歌心が発揮されて前2楽章の重苦しさを吹き飛ばす…かにみえて、中間部(多分トリオ)に入るとテンポを極端に落とし、またもや第2楽章の続きのような瞑想世界が続く。
終楽章でようやく親しみやすい舞曲風な旋律が登場して、シューベルトらしい世界が広がる。
全体として長大だし、構成は交響曲に編曲可能ではないかとい思わせる重厚感が溢れている。
やはり自分の死を予期していたのだろうな。
ところで、この曲の楽器編成は変わっていて、弦楽四重奏に普通は第2ビオラを加えた五重奏が多いが、ここでは第2チェロを加える事で、低音部を強化している。そのために重厚感が一層増すのだろう。
第1楽章では(たぶん第2主題の提示か)その2本のチェロが暗闇を照らす一条の光のように美しいメロディを奏でる。
アルデオ弦楽四重奏団は30歳代?の女性ばかりの団体で、今回はこれに男性チェロが加わった形だ。
演奏開始直後ホールに軽い揺れが走った。震度1くらいだろう。女性チェリストがチョッと不安そうな表情をしたが、束の間のこと。その後は揺れもなく、大曲が無事に終曲してよかった。
容易に親しめる音楽とはいえないけど、なかなか奥行きのある味わい深い音楽だ。
♪2015-40/♪東京国際フォーラム-04