2015年5月29日金曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.67 工藤重典&鈴木大介 デュオ・リサイタル

2015-05-29 @みなとみらいホール



工藤重典:フルート
鈴木大介:ギター

~フルートとギターが綴るタンゴの歴史~
ピアソラ:アディオス・ノニーノ 【ギターソロ】
ロドリゲス:ラ・クンパルシータ 【ギターソロ】
ピアソラ:6つのタンゴ・エチュードより
 №4レント/№3モルト・マルカート・エ・エネルジコ 【フルートソロ】
ピアソラ:タンゴの歴史【ギター+フルート】
 酒場1900/カフェ1930/ナイトクラブ1960/今日のコンサート
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アンコール(トリオ)
ラヴェル:ハバネラ形式の小品


フルートとギターのデュオ。アマチュアならともかくプロではありそうでなかった、いや、聴く機会がなかった組合せだ。

この組合せのオリジナル曲というのはなかなかないのだろうな。
初めのギターソロ2曲は編曲モノだろう。

いずれも聴き覚えがある、というか「ラ・クンパルシータ」は超有名曲、だけどとてもアルゼンチンの土着音楽風に出来上がっていて、よく耳にするようなダンス音楽とは様子が違った。
特にピアソラの作品はそもそもダンス伴奏から聴くタンゴへの革命を志したというだけあって、これでは踊れそうにもない。





















そのピアソラが唯一フルートのために、それも無伴奏曲として作ったのが「6つのエチュード」だ。
これは「タンゴ」のエチュードなのか「フルート」のエチュードなのかよく分からないのだけど、「フルート1本でタンゴを演奏するための」エチュードかも。

さて、どこが「タンゴ」なのか分からないような作品で、「現代曲」としか言いようが無い。
メロディーラインもはっきりしないし、調性も怪しい。
でも、さすがの工藤名人が鮮やかに輝かしい音色を発すると、なにやら説得されてしまうようなところがあった。


最後がピアソラの「タンゴの歴史」。
これはデュエットで、4つの部分(楽章?)に別れ、1900年、1930年、1960年そして現代(ピアソラが作曲したのは1986年)のタンゴの特徴を表現しているのだけど、相当タンゴの歴史に通じていなくてはその「歴史的変化」を理解できないだろう。

最初のパートでは明らかにピアソラ独特の切分音が登場して、ああ、これはピアソラのタンゴだと思えるけど、時代が下るに従って「タンゴ」ぽさは消えてゆき、最後の「現代」では「6つのタンゴ・エチュード」と区別がつかないような音楽だった。

この曲については、帰宅後、録りダメビデオの中の5月25日のクラシック倶楽部で有希・マヌエラ・ヤンケ&エマヌエール・セグレというバイオリンとギターデュオのリサイタルがあって、正にこの「タンゴの歴史」を取り上げているのを発見してびっくりした。


フルートではなくバイオリンとギターなのでやや趣は異なるけど、こういう音楽になると、やはり表現のメリハリという面でフルートはバイオリンにはかなわないのかなあ、と思った。

この曲については、フルートとピアノ版もあり、いったい元はどういう楽器編成で作曲されたのか気になってあれこれ調べたら、この日聴いたフルートとギターこそオリジナルだそうな。


工藤名人の演奏はほぼ1年前にやはりこのクラシック・クルーズで聴いているけど、やはりテクニックもさることながら音の輝くような明瞭さに惹き込まれる。ランパル直系と言われるのは、こういう音質もあるんだろうな。


♪2015-51/♪みなとみらいホール-14