2023-11-03 @サントリーホール
小林研一郎:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京音楽大学(126人)
ソプラノ:澤江衣里
テノール:髙橋淳
バリトン:萩原潤
コダーイ:ガランタ舞曲
オルフ:世俗カンタータ《カルミナ・ブラーナ》
前座の「ガランタ舞曲」は現在はスロバキアの「ガランタ」という地方の民謡(実質はロマの音楽)を素材にしているだけに、大げさな哀愁に満ちた、情緒溢れる、まさしく「ロマ」ンチックな音楽で、初聴きでも抵抗感なく楽しめる。が、実際は7年半前に聴いていたことを忘れていたよ。滅多に演奏されないものなあ。
「カル・ブラ」が傑作。この曲は誰が指揮しようとどのオケが演奏しようと、まず楽しめないことはない。
オルフはドイツ人だが、この音楽はどこの音楽だろう?これもやはり、ロマと地続きの音楽ではないだろうか?とハンガリーに縁の深いコバちゃんに無理に結びつけたようだけど、彼は得意なんだと思う。こういう土着の俗謡から成るリズミックで華々しい音楽が。
「ガランタ」は「ガラクタ」状況だったのに、「カル・ブラ」では、コロナ以降僕が聴いた範囲では最大規模(126名)の合唱団が、ガンガン歌うので、オケの不調は全く気にならなかった。いや、調子を戻していたのかもしれないが、管打鍵盤楽器も賑やかだし、独唱陣も(ほぼBrの独擅場だが)頑張りを聴かせて、良いも悪いも、とにかく盛り上がった。
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「カル・ブラ」の大判の歌詞集が、プログラムとは別に配られた。親切とは言えるが、読みたい人は、事前に目を通すか、家に持って帰って読むとかすればいいのに、僕の席のまわりでは数人がその大判の歌詞集を演奏に合わせてめくっていた。
プログラムのサイズならそっとめくれば音はしないが、今日のように大判でペラペラだとどうしても隣人に聞こえるような音がする。
僕は、演奏中の音のマナーにはあまり拘らない方だけど、今日のはちょいと気になったな。
やはり、プログラムに印刷しておけばよかったよ。
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今日は、横浜定期の振替だった。いつものように振替席は楽しくない。1桁列で、右翼席だった。中央も空いていたのに。
とにかく、目線の先はVaの第2Pと第3Pとの間だ。
目に入るVaは裏側ばかりが見える。
チェロはほぼ側板ばかり。
その代わりVn1-2は16+14がしっかり飛んでくる。
これでは弦のバランスはひどい。
ガランタ舞曲が僕の耳には雑音のように聴こえたのは半分は席のせいだ。半分は高域弦がキャンキャン言っていたからでもあるが。
やはり、席はこだわりたい。
定期を減らして一回券で好きなものだけ聴くたって、今日のような席だと金返せレベルだ。
やはり、定期で良席を死守しないといかんな。
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今日のコバちゃんの熱演も楽しかったよ。
でも、忘れられない「カル・ブラ」はNHK音楽祭2018でのPヤルヴィ+N響だ。
Spが前年新国で「ルチア」を歌ったペレチャッコ。
合唱は児童合唱+新国入れて130人。
プログラムも洒落ていて、
ドビュ〜「牧神〜」に続いて、オルフ「踊る牧神<日本初演>」、「カル・ブラ」と尻取り遊びのような緊密に繋がった構成に魅了されたが、何といってもN響の演奏が神がかり。
聖の世界から生の世界、そして性の世界と、正に聖俗の混交だ。
宝箱のようなおもちゃ箱をひっくり返したように次から次と刺激的で官能的で、土俗的で、時に天上の音楽が繰り出され、聴いている側も息をつく間もないめくるめく感興に振り回される。
圧倒、圧巻、感動、最高~なんて賛辞を軽々に使いたくないが、この演奏に使わずしてどこで使う?
パーヴォ・ヤルヴィの緩急自在な棒にオケも合唱もピタリと合わせて見事。聴きながら幸福に浸りオルフがこの作品を残してくれた事に感謝せずにおれなかった。
名演は、鑑賞のハードルを上げてしまって、幸福はだんだんと狭まる。
♪2023-189/♪サントリーホール-22