2023-11-12 @かなっくホール
笹沼樹:チェロ
上田晴子:ピアノ
ラフマニノフ:2つのサロン風小品 Op.6
1 ロマンス
2 ハンガリー舞曲
ブルッフ:コル・ニドライ Op.47
バルトーク:ラプソディ 第1番
フランク:バイオリン・ソナタ イ長調
第1楽章 Allegretto ben moderato
第2楽章 Allegro
第3楽章 Recitativo-Fantasia
第4楽章 Allegretto poco mosso
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ラフマニノフ:ヴォカリーズ
笹沼樹(たつき)は、以前にカルテット・アマービレの一員として、また、今年度からは東響の客演首席として達者な腕前を聴いているので僕にとって初のリサイタルは楽しみだった。
一昨日、東フィルで佐藤晴真がサントリーホールであるにもかかわらず、柔らかい美音を響かせていたが、今日は、小ホールの中でも音の良いかなっくホールだ。どんな音が出てくるかが一番の興味だったが、やりました。
冒頭のロマンスはピアノのアルペジオ風の伴奏に乗り、ビ〜ンと出てきた音が、小ホールならではの、しかもかぶりつきならではの、生々しさと艶(なまめ)かしさを響かせて、もうこれで最後までOKという感じ。
この最初の1曲だけが初聴きで、なぜか組物なのに2番手のハンガリー舞曲以下は、全てよく知っている作品なので心地よく楽しめたが、今回のプログラム、ちょっとした遊び心で構成されている。
アンコールを含む全曲がチェロとピアノで演奏されたのは当然だが、作品の方は、すべて元来がチェロとピアノの為に作曲されたものではない。
バイオリンとピアノ、チェロと管弦楽、声楽とピアノといった調子だ。このうちバルトークだけは作曲者自身が後年チェロとピアノに編曲したので、これはオリジナルと言っていいだろうが、その他は、笹沼とピアノの上田晴子が今日の編成の為に手を加えた…彼ら自身の遊び心に溢れているのだ。
特に、本篇最後の大物、フランクの、その名も「バイオリン・ソナタ」は興味深かったが、単にバイオリンの楽譜をチェロで弾いているのではなく(それじゃ、チェロの良さを活かせないし、高域が続いて聴き苦しかったのではないかと思う)、適宜、上げたり下げたりしているのだけど、何の違和感も感じさせなかったのは面白い。この曲をビオラでも聴いた覚えがあるが、ビオラではひょっとして原曲の楽譜をそのまま使ったのではなかったかな。
いずれにせよ、ブンブンと豊かに鳴るチェロとピアノの音も美しく、とても濃密な100分だった。
笹沼樹。看板どおり、未来のヴィルトゥオーゾかも。
♪2023-194/♪かなっくホール-16