2019年6月30日日曜日

華麗なるコンチェルトシリーズ〜宮田大《チェロよ歌え!》

2019-06-30 @みなとみらいホール


粟辻聡:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

宮田大:チェロ
高木慶太:チェロ(読響団員)*

ブルッフ:コル・ニドライ
ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」
ソッリマ:チェロよ歌え!〜2つのチェロと弦楽のためのバラード〜*
フォーレ:チェロと管弦楽のためのエレジー ハ短調 作品24
ポッパー:ハンガリー狂詩曲
---------------
三枝成彰:チェロのためのレクイエム

華麗なるコンチェルト・シリーズ。
と言っても今回は協奏曲は無しでオケ伴奏付きチェロ小品集。

ソッリマの現代曲以外は全部馴染んでいるつもりだったがブロッホのヘブライ狂詩曲「シェロモ」はスコットランド狂詩曲と勘違いしていたか、初聴きだった。
ブルッフの「コル・ニドライ」に輪をかけたヘブライ色濃厚でまるでミクロス・ローザの映画音楽を彷彿とさせて面白い。

これまでの経験で、「宮田大に外れなし」。

今回も、明瞭で美しいチェロの音に感心したが、とりわけ後半のフォーレ「エレジー」とポッパー「ハンガリー狂詩曲」は、普段聴き慣れているピアノ伴奏版とは違いオケ版で一層音楽が豊かに広がり、大海に漕ぎ出したようにチェロも朗々と歌い切った。


♪2019-091/♪みなとみらいホール-27

2019年6月28日金曜日

ハチャトゥリアン・コンチェルツ

2019-06-28 @みなとみらいホール


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

石坂団十郎:チェロ
佐藤卓史:ピアノ
郷古廉:バイオリン

アラム・ハチャトゥリアン
 チェロ協奏曲ホ短調
 ピアノ協奏曲変ニ長調
 バイオリン協奏曲二短調

石坂団十郎(チェロ)、佐藤卓史(ピアノ)、郷古廉(バイオリン)によるハチャトゥリアンが書いた全協奏曲を一気に聴くという企画だ。

みなとみらいホール館長の池辺晋一郎の企画ということで、開演前の解説も同氏が登壇した。

バイオリン協奏曲はランパルが編曲したフルート版を含め何度か聴いているが、他の2本は初聴きだった。

作曲年代順に明らかに民族臭が露風・欧風に変化したのがよく分かる。

いずれも賑やかな音楽だったが、一番古いピアノ協奏曲(1936)が一番土臭く、派手で面白い。

バイオリン協奏曲(40)は多少馴染みもあったが、改めて聴くと成る程これがアルメニア色かと合点。

一番新しいチェロ協奏曲(46)はむしろショスタコーヴィチ作と言われたら信じてしまいそう。

オケは川瀬賢太郎指揮神奈川フィル。

神奈川フィルは全作品を弦12型というコンパクトな編成で演奏した。これが引き締まってとても良かった。

チェロ協奏曲では金管はホルンとトランペットのみ(編成表はなかったので見た目の判断)。他の2曲にはトロンボーン、チューバも入っていたが、出番はホンに少ない。やはり、独奏楽器を引き立てるための楽器編成なのだろう。

全体として、すこし辟易する感じの田舎臭さで、もうたくさん、という感じもしたが、池辺氏曰く「もう、二度と聴く機会がないであろう<破茶滅茶トゥリアン3部作>」という訳で、まあ、いいか。

ところで、余談:
バイオリン協奏曲で、1楽章カデンツァの途中、郷古の楽譜を賢太郎がめくっていたのには吃驚!

独奏者が楽譜を見ながら協奏曲を演奏する場合において、ピアノ以外の独奏楽器にめくりが付くのは見たことがない。現に、今日はチェロ協奏曲とバイオリン協奏曲が楽譜を見ながらの演奏だったが、いずれにもめくりは付かなかった。
普通、独奏者用の楽譜には自分でめくれるようにページの最後に音楽の休止が来るように書かれているはずだが、今日はそうではなかったらしい。譜面台には2ページ分が見開きで置けるのだから、2ページに収まりきらない楽譜だったのか。
いや、これまでもこの協奏曲は数回聴いているが、譜めくりはつかなかったし、指揮者が独奏者の楽譜をめくる姿は見たことがない。
一体どうしたことだろう?
やっぱり、楽譜はiPadの時代だな。

♪2019-090/♪みなとみらいホール-26

2019年6月25日火曜日

東京都交響楽団 第880回 定期演奏会Bシリーズ

2019-06-25 @サントリーホール


クシシュトフ・ペンデレツキ:指揮
マチェイ・トヴォレク:指揮+
東京都交響楽団

庄司紗矢香:バイオリン*

【日本・ポーランド国交樹立100年記念】
ペンデレツキ:平和のための前奏曲(2009)+
ペンデレツキ:バイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》(1992-95)*
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 op.92
----------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリンソナタ第3番ハ長調 BWV1005から第3楽章ラルゴ*

僕にとってはペンデレツキは教科書に出ている歴史上の人物だったが、現在86歳で今日の都響の指揮台に立った。
1曲目を弟子に任せたのは健康上の理由という説明だったが、任せて正解。
金管と打楽器だけの自作だが出来は悪かった。

2曲目の自作バイオリン協奏曲本人が指揮。
動作は緩慢だが恰幅が良くなかなかの男前。チャイコフスキーの面影がある。

小難しい現代曲は嫌いだが、この協奏曲も1曲目と同様に大きくは調性を保って案外聴きやすい。
管・打楽器の節操ない炸裂も無く、穏やかに終始したのは予想外だった。
庄司紗矢香がえらく巧くなったと感じた。
アンコールのバッハは良い味わいだった。

メインのベートーベン交響曲第7番はゆったりとした出だしだったが第2楽章以降はシャキシャキしたテンポで軽快。都響メンバーも巨匠との一期一会?を慈しむように集中度が高かった。

全体としてペンデレツキが放つオーラと客席に漲る畏敬の念が交錯して独特なハイテンションのコンサートだったと思う。

♪2019-089/♪サントリーホール-04

2019年6月24日月曜日

読売日本交響楽団第112回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2019-06-23 @みなとみらいホール


大植英次:指揮
読売日本交響楽団

日橋辰朗:ホルン(読響・首席)*

バーンスタイン:ディヴェルティメント
パウエル:ホルン協奏曲*
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

大植英次は読響には16年半ぶりの登場だそうな。
僕も前回と言えば3年強前に日フィル(この時は日フィルとの初顔合せ)で聴いて以来ナマは久し振り。日本人ながら日本ではなかなか聴けない指揮者だ。
超個性派で熱血漢。
前に超個性的なドボルザーク「新世界から」を聴いているので読響で振るシエラザードが超楽しみだった。

前半の2曲は独自性の発揮しようもない音楽?でまあ肩慣らしか。

問題起こしそうな「シェエラザード」は、これが案にたがって全くもって正統的だった。
「楷書」の音楽で、トメ・ハネがキッチリして独自色を排したのが独自的か。

しかし…
終曲の最後の音を長く長く引っ張った。
まだ終わりたくないと言っているようになかなかタクトを降ろさない。

管楽器はもう息が切れている。
弦楽器はもう弓が足らない。
が、彼の頭の中では鳴り続けていたのだろう。
長い沈黙に客席からフライングが無かったのも良かった。
漸く大植の腕が下がった途端の大喝采と拍手。
その後のカーテンコールは得意満面で何度も出入りを繰り返したが、この辺りは正に大植節の独自色。

♪2019-088/♪みなとみらいホール-25

2019年6月22日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第349回

2019-06-22 @みなとみらいホール


小泉和裕:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

クララ・ジュミ・カン:バイオリン

ドボルザーク:序曲「謝肉祭」作品92
グラズノフ:バイオリン協奏曲イ短調 作品82
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14

僕の記録が正しければ9回めを数えた特別客演指揮者・小泉和裕との共演で、息の合った好演だった。
ジュミ・カンのグラズノフ:バイオリン協奏曲も楽しめたが、メインの大曲「幻想交響曲」がノーミスで堂々と仕上がっていた。

神奈川フィルのここ3、4年の演奏技術の進歩に手応えを感ずる。
財政赤字脱却、労使紛争の解決など、団員が演奏に打ち込める環境が整ってきたのだろう。川瀬賢太郎の就任も刺激になったか。同慶の至りだ。

が、演奏に関して、欲を言えば、今日の金管は燻っていた。

15日の日フィル定期(@みなとみらいホール)、20日東フィル定期(@タケミツメモリアルホール)がともに金管が明るく輝くように鳴り響いたのが耳に残っているので、それらに比べると今日の神フィルの金管はどうも紗幕越しに聴いたような気がした。もっと実力はあると思う。

「雨の日はホールが良く鳴る」は僕の仮説だが、今日に限っては外れたか。まこと、響は微妙也。

♪2019-087/♪みなとみらいホール-24

2019年6月20日木曜日

東京フィル第126回東京オペラシティ定期シリーズ

2019-06-20@東京オペラシティコンサートホール


チョン・ミン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

髙木竜馬:ピアノ*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64
----------------
アンコール
ラフマニノフ:前奏曲 嬰ハ短調 作品3-2「鐘」*

高木竜馬の独奏でラフマニノフ:ピアノ協奏曲2番ハ短調。

冒頭から息を呑む。
タッチもペダルも完璧な仕事ぶりと見た。
アンコールの重めの「鐘」(ラフマニノフ:前奏曲作品3-2)も凄みあり。

滅多に聴けないShigeru.Kawaiのコロコロ転がる明瞭な音にも吃驚!
こんなにクリアに鳴るのなら他のピアニストもS.Kawaiを使って欲しいね。

メインはチャイコフスキー交響曲第5番。
つい最近4番、マンフレッド交響曲を聴いて今日の5番とはうまく作曲順に並んだ。
マンフレッドの後では馴染みの5番も新鮮に聴こえてきたよ。

東フィルは終盤の弦にもっと透明感が欲しかったがタケミツメモリアルホールらしい良い響き。

指揮は病気療養で降りた尾高忠明の代打のチョン・ミン。初聴き。とても正統派で堂々たるもの。親父さん(チョン・ミョンフン)とは対照的に彼は人当たりも良さそう。

終演後、今日の<有名人との遭遇>はピアノストの反田恭平くん。多分、高木くんを聴くのがメインだったのだろうな。

♪2019-086/♪東京オペラシティコンサートホール-03

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-20 @国立劇場


福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒      中村壱太郎
船頭八助⇒     中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒     中村虎之介
下男六蔵⇒     中村亀鶴
        ほか

2回目なので「歌舞伎のみかた」は省略して本篇から参入…というか、本当は緊張感なく、寝坊して間に合わなかっただけ。


注目は終盤の壱太郎の「人形振り」だ。
前回、この演出に唸ったが「振り」は改善の余地ありと見て10日間の精進ぶりを観察。
ま、それなりの進歩あり。
最後の櫓の場面では人形から人間に戻るが、狭い所で黒衣と3人では無理なのだろう。

「人形振り」では当然目玉を開けたまま動かさない。観ながら僕も瞬きを我慢してみたがとても続かない。何気ない処でも訓練・精進だなあ。

人形を遣う黒衣役の演技に不満が残ったがこれはやむを得ないか。

それにしても、今回の芝居で壱太郎は歌舞伎役者として確実に一ステージ高みに登ったと思う。鑑賞教室、侮るべからず。


♪2019-085/♪国立劇場-09

2019年6月17日月曜日

国立演芸場開場四十周年記念 6月中席

2019-06-17@国立演芸場


落語           春風亭昇也⇒寄合酒
紙切り    林家喜之輔
落語           古今亭今輔⇒五人男
奇術           山上兄弟
落語           桂小文治⇒小間物屋政談 
        ―仲入り―
浪曲           玉川太福(三味線:沢村美舟)⇒豆腐屋ジョニー
落語           三遊亭右左喜⇒嫁とり
コント       チャーリーカンパニー
落語           古今亭寿輔⇒老人天国

今日の落語は5席。いずれもつまらない。芸に対する…つまりはお客様に対する姿勢が良くない。ダジャレ、小話、業界裏話。それにお客への弄りが多すぎて邪道だ。トリでさえ漫談もどきだ。落語ができないのか。
いずれ、今の落語ブームの火を消すのは噺家自身だろう。

一つ救いは、国立寄席には珍しい浪曲が面白かった。
玉川大福(芸はイマイチ)と曲師は沢村美舟(若くて綺麗!)。元は新作落語らしいが、「豆腐屋ジョニー」という話で、浅草に本当にあるらしい三平ストアという食料品屋での目玉商品の座を豆腐とチーズが愛し合いながらも争うという荒唐無稽が傑作。

♪2019-084/♪国立演芸場-10


2019年6月16日日曜日

名曲全集第147回

2019-06-16 @カルッツかわさき


ユベール・スダーン:指揮
東京交響楽団

菊池洋子:ピアノ*

シューマン:「マンフレッド」序曲 作品115
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54*
チャイコフスキー:マンフレッド交響曲イ短調 作品58(原典版)

ミューザ改修中につき代わりのカルッツかわさきは音響面でイマイチな上、割り当てられた席がミューザでの本来席より3列も前で、原音が強すぎ、ざわざわとして落ち着かない。

そんな訳で、前半2曲はイマイチ集中できなかったが、メインのチャイコ「マンフレッド」はそんな環境をものともせずにその巨大な存在感を見せた…否、聴かせた。

CDでは何度か聴いているが、バーンスタインが「屑」と言ったらしいこの曲を僕も全然好きになれなかった。
大げさで無駄に長い(手持ちはムーティ指揮フィルハーモニア管:演奏時間59分)。

しかし、今日、16型3管編成による演奏を爆音にまみれて聴くという体験が評価を変えた。「幻想交響曲」を上回る迫力。また、これほど打楽器陣が活躍する曲はないかも。

わけても終楽章、それも終盤のクライマックスはかつて聴いたことがない大音量で床も震え怖いくらいだ。

そして、気づいたのは、この演奏が原典版によるということ。
過去に聴いていたのは終盤にオルガン付きコラールを加えた改訂版だった。これもよかろうと思うが迫力の点で桁違い。10分ほど短くなったのもスッキリして良い。

♪2019-083/♪カルッツかわさき-03

2019年6月15日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第348回横浜定期演奏会

2019-06-25 @みなとみらいホール


ピエタリ・インキネン:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

ペッカ・クーシスト:バイオリン*

【日本フィンランド修交100周年記念公演】
シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調 作品47*
シベリウス:交響曲第5番変ホ長調 作品82
-----アンコール-----
フィンランドのフォークダンス「悪魔の踊り」
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第1番からサラバンド〜ドゥーブル

県民ホールでの神奈川フィル定期演奏会が終わって、即、みなとみらいホールへ移動。
日フィル定期はオール・シベリウス作品だ。

第1曲、「フィンランディア」の冒頭のブラスの咆哮で神奈川フィルとの違いを感じてしまった。
オケの差もあるだろうが、まずもってホールの問題だ。
音の輝きと響きの豊かさが全然違う。

「雨の日はホールの鳴りがいい」という仮説はここでも確認できる。
バイオリン協奏曲、交響曲5番とシベリウスのオーケストレーションの面白さを堪能した。

時々、みなとみらいホールでは管・弦のアンサンブルの美しさに浸りながら、こんな贅沢をしていて良いのやら、と思うこともあるが、誰にも迷惑をかけている訳でもないし…。

ただし、交響曲5番では最後の最後に緊張が解けてしまった。
金管のピッチが甘くなって響きが濁ってしまったのは残念だ。
オーバーワークだったのか。

バイオリン協奏曲の独奏者ペッカ・クーシストは指揮のインキネン同様フィンランド人だ。
丁髷の黒装束で忍者風。
この人の演奏は、インキネンと息を合わせていたのか、これまでに聴いたシベリウス・バイオリン協奏曲の中で一番軽快な音楽だった。
本場の人間が揃ってこういう演奏をやるのだから、そもそもシベリウスはなんとなくイメージしているほど重苦しくないのかもしれない。

クーシストのアンコールが面白くて、最初に弾いたフィンランドの民謡もなにやら凄い演奏だったが、まさかの2曲めがバッハの無伴奏組曲1番サラバンドで、これがある意味凄い。
長音以外は弓の先1/3くらいしか使わずに全部を弾き終えた。当然音量は小さい。音楽が軽い作りだ。
最初はお遊びなのかと思って聴いていたが、ドゥーブルまで全曲その調子だったから真面目だったのだろう。独自色の強いバッハ解釈だが、何か意図するものがあるのだろうな。

♪2019-082/♪みなとみらいホール-23

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 県民ホール名曲シリーズ 第6回 「ロシア」~3大バレエの1つ クラシックバレエの傑作~

2019-06-15 @県民ホール


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
横浜少年少女合唱団

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」全曲(作品71)だ。
抜粋8曲で構成された「組曲」(作品71a)ではない。

過去に、何度か、<バレエ音楽>版を聴いたが、2幕だけだったり、全曲から数曲カットしたものだったので、全曲生で聴くのは初めて。90分もある。長い!

それに、そもそも、バレエ音楽をバレエなしで聴くというのは変ではないか。

チャイコは「くるみ割り人形」だけは(「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」では自らの手になる組曲版は存在しない。演奏者の便宜的な編集による組曲版が存在するだけだ。)自ら組曲版を作っている。だからこそ、組曲版で十分。という思いもあって、前半はなかなか集中できずにいた。

後半2幕に入るとお馴染みの音楽がぞろぞろ出てくるので興味が鎌首をもたげてきた。それによく聴くと、この日の県民ホールはなかなか良い響き

「雨の日のホールは良く鳴る」という僕の仮説がまた当たった。
硬質な響きなのだけど、その中にも明るさがあり、管楽器の明瞭さも弦アンサンブルも濁らずに綺麗だ。それに演奏においてはほぼノーミス。
まったく、この数年の神奈川フィルは明らかに一歩高みに登った。
で、最後は心地よく聴き終えたり。
この日は小雨の中、次のみなとみらいホールでの日フィル定期へとハシゴした次第。


♪2019-081/♪県民ホール-05

2019年6月14日金曜日

小笠原伸子コンチェルトシリーズvol.5 三大協奏曲の夕べ

2019-06-14 @県立音楽堂


横浜バロック室内合奏団+東京室内管弦楽団(混成)

小笠原伸子:バイオリン

ベートーベン:バイオリン協奏曲ニ長調 作品61
メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲ホ短調 作品64
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調 作品35
-----------------------
ビバルディ:バイオリン協奏曲第1番ホ長調 RV269「春」から第1楽章

改修後の音楽堂で第1号演奏会。反響版以外にどこが変わったのか?
舞台が拡張されていたのは、今日だけなのか、今後もそれで定着するのか分からない。音響の良し悪しを聴き分けるには不適当なアンサンブル、というより、僕の席が向いていなかった。

何しろ最前列中央なので、独奏の小笠原女史に一番近い。この場所を選んだのは、三大Vn協奏曲といっても、オケは弦17人+管打13人の計30人という室内アンサンブルだから、弦の共鳴などは考えられないし、残響音よりもリアルな原音を聴きたかったから。
これはこれで、とても硬派の響きが美しい。

指揮者がないのも面白い。バロックの室内アンサンブルではフツーのことだが、この規模でロマン派で指揮者なしは珍しい。それでもちゃんと音楽が様になっているのを聴いて、やたら独自様式を主張する指揮者に振り回されるオケがたまにあることを聴いているから、むしろ指揮者なしの方が良いかも。

小笠原伸子と横浜バロック室内合奏団+東京室内管弦楽団はいずれも小笠原の同志と言えるアンサンブル。見事に息の合ったところを聴かせてくれた。
あまりに肉薄して聴いたので、独奏には聴かない方がよかった部分も聴いたが、それはこのコンサートについてはあまり取り上げるべきことではなさそうだ。

ベト、メンデ、チャイコを1人で弾くのは大変だろうが、全部暗譜で、オケとの一体感と緊張感が聴いていて実に心地よい。集まっているのはほとんど小笠原ファンで、あたかもファンの集いの如し。みんなして独奏者に拍手喝采してとても温かい雰囲気に終始して、久しぶりに音楽を聴く悦びを味わった。


♪2019-080/♪神奈川県立音楽堂-01

2019年6月13日木曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2019前期 ヴァディム・ホロデンコ ピアノリサイタル

2019-06-13 @みなとみらいホール


ヴァディム・ホロデンコ:ピアノ

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番イ長調 作品82「戦争ソナタ」
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ロ短調 作品58
---------------------
レオポルド・ゴドフスキー:「ショパンのエチュードによる練習曲」から
「鬼火」、「左手のための嬰ハ短調(革命)」

全体として構えの大きい音楽だった。3曲ともゆっくり目でかつ力強い。
使用ピアノは珍しくFazioliだったが彼の音楽に似合っていたように思う。明るいが重い。どしっと落ち着いている。

アンコールはゴドフスキーが編曲したショパンの練習曲から2曲。とりわけ「革命」に度肝を抜かれた観客席からは嵐のような拍手喝采!いやはや凄いものを聴かせてもらった。


♪2019-079/♪みなとみらいホール-22


2019年6月10日月曜日

令和元年6月 第95回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」

2019-06-10 @国立劇場


解説 歌舞伎のみかた  中村虎之介

福内鬼外=作
神霊矢口渡 (しんれいやぐちのわたし) 一幕
    国立劇場美術係=美術
       頓兵衛住家の場

(主な配役)
渡し守頓兵衛⇒中村鴈治郎
娘お舟⇒     中村壱太郎
船頭八助⇒    中村寿治郎
傾城うてな⇒ 上村吉太朗
新田義峰⇒    中村虎之介
下男六蔵⇒    中村亀鶴
        ほか

通し狂言としても観たことがあるが、全幕中で一番の見所が大詰「頓兵衛住家の場」だろう。今回は鑑賞教室ということもあってこの幕だけが上演された。

前回は頓兵衛を歌六、お船を雀右衛門(当時:芝雀)が演じて素晴らしく印象に深く残っていたが、今回は鴈治郎に壱太郎という実の親子の共演だ。

近年成長著しい壱太郎がどこまで一途な<お船>の純情と命がけの想いを見せてくれるのかが楽しみだった。

が、終盤の見せ場〜
お船が一目惚れした新田義峰を追っ手から逃してやるために、義峰の身代わりとなって、欲深かな実の親・頓兵衛に刺され、打擲され、ボロボロになっても這いつくばって櫓に上がり、鐘を突いて追っ手の囲みを解こうとする〜
を「人形振り」で見せるという演出に本当にびっくり。

人形になりきった壱太郎には2人の黒衣(くろご)が付き、当然表情を変えない。着物の袖からほんの少し顔を出す白塗りの揃えた手指は本物の人形のように可愛らしい…

のだが、不思議なことにむしろ観ている側の感情は激しく揺さぶられた。

この人形振りにはまだ、研究の余地があるとは見たが、雀右衛門のお船とは別趣の悲劇性が高められ、思わず見入ったものである。
楽日は予定があってゆけないが、少し手前にもう一度観にゆくべくチケットを買った。あと10日余りでどれほど腕を上げているか、楽しみだ。

♪2019-078/♪国立劇場-08

2019年6月9日日曜日

横浜交響楽団第695回定期演奏会

2019-06-09 @県立青少年センター


泉翔士:指揮
横浜交響楽団

南能衛:横浜市歌
スッぺ:歌劇「軽騎兵」序曲
ドボルザーク:序曲「自然の中で」作品91
ドボルザーク:交響曲第8番ト長調「イギリス」作品88
------------------
ドボルザーク:スラブ舞曲作品72第2番

横響の前回が16年末の「第九」だったから2年半ぶり。
長いご無沙汰だった。

スッぺの生誕200年ということで彼の作品「軽騎兵」序曲。
できることならついでに「詩人と農夫」序曲も聴きたかったな。

ドボルザークの序曲「自然の中で」は初聴き。演奏自体が極めて珍しい。アマオケながらこういう珍しいのをやるのが横響の面目躍如。伊達に695回を重ねていない。

メインはドボルザーク交響曲第8番。
まずまずの出来。ここまでは大過なし。

アンコールが同じくドボルザークのスラブ舞曲作品72の2番(掲示は誤記)だったが、この出来がイマイチ。
というより、会場が県立音楽堂ではなく、県立青少年センターなので、アコースティックなコンサート仕様になっていない。
舞台上は天井も袖もカーテン。反射板なし。
これでは、ほぼ残響ゼロのようなもので、とりわけ弦楽器には厳しい。プロでも馬脚を出しそうだからやむを得ないのだが、こういうバイオリンの高域で始まりゆったりと歌う音楽ではピッチの甘さや響の悪さはごまかしようもなく、目立ってしまった。

♪2019-077/♪県立青少年センター-1

2019年6月8日土曜日

N響第1915回 定期公演 Aプログラム

2019-06-08 @NHKホール



パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
NHK交響楽団

マティアス・ゲルネ:バリトン*

マーラー:こどもの不思議な角笛*
ニールセン:交響曲第2番ロ短調 作品16「4つの気質」

マティアス・ゲルネは海外招聘組としては聴く機会が多く、N響定期で過去2回。今日で3回目。他に、最近ではバイエルン国立歌劇場公演「タンホイザー」でも聴いている。

今回の不思議な口笛ではあまり張り上げるところもなく(そのような作品だから)穏やかに終始したので遠くの席まで届いたかしらと心配したが、オケも穏やかだったので余計な心配だったかもしれない。
ご本人は上出来だったようで、1曲歌う毎パーヴォと目を合わせて満足のご様子。

ニールセン(ニルセン)は年に1回聴く程度で、今回の交響曲は初聴き。「4つの気質」を描いているそうだが、全然気にせず、まるで映画音楽みたいな軽さと刺激を楽しんだ。

前回のN響(横須賀公演)の出来が悪かったので、同じオケとも思えない異次元の響に、これぞN響だと安心したよ。

斜め前に音楽評論家堀内修氏を発見!
♪2019-076/♪NHKホール-04

2019年6月7日金曜日

新国立劇場オペラ「蝶々夫人」

2019-06-07 @新国立劇場


ドナート・レンツェッティ:指揮
栗山民也:演出
島次郎:美術
前田文子:衣裳
勝柴次朗:照明

東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場合唱団

蝶々夫人⇒佐藤康子
ピンカートン⇒スティーヴン・コステロ
シャープレス⇒須藤慎吾
スズキ⇒山下牧子
ゴロー⇒晴雅彦
ボンゾ⇒島村武男
ヤマドリ⇒星野淳
ケート⇒佐藤路子
ほか

プッチーニ:オペラ「蝶々夫人」
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間35分
第Ⅰ幕50分
 --休憩25分--
第Ⅱ幕80分

新国立劇場今季10公演中、7月の「トゥーランドット」と共に最大の楽しみが「蝶々夫人」で、本日鑑賞。

若い頃はこういう旧弊な物語が好きになれなかったけど今は割と素直に感情移入できる。
これまで観たオペラの中で一番泣ける作品だ。
今回も「号泣する準備はできていた」。
しかし、残念ながら、ウルーッときた程度で止まった。

日本人歌手たちはいずれも良かった。
蝶々夫人・佐藤康子、領事・須藤慎吾、そしてとりわけスズキ・山下牧子は役柄の良さも手伝って舞台を攫った感がある。
一方、海外から招聘したピンカートン役を初めて歌うというS.コステロ君が歌はともかく、演技力が欠如している。この拙さが感情移入を妨げた。

新国立劇場では本公演とは別に来月にも別キャストで「蝶々夫人」を上演するので、当日券に期待して出かけようと思っている。
10月の二期会の「蝶々夫人」は既にチケット入手済み。

4月にも藤原歌劇団の「蝶々夫人」を楽しんだし、今季は蝶々を追いかけ回している。

♪2019-075/♪新国立劇場-06