指揮:下野竜也
演出:ギー・ヨーステン
管弦楽:東京交響楽団
合唱:二期会合唱団
セリム:大和田伸也
ベルモンテ:金山京介
ペドリッロ:升島唯博
コンスタンツェ:松永知史
ブロンデ:冨平安希子
オスミン:加藤宏隆
モーツァルト作曲 オペラ『後宮からの逃走』全3幕
(原語[ドイツ語]上演・日本語字幕付)(セリフの一部は日本語)
台本:ゴットリーブ・シュテファニー
予定上演時間:約2時間25分
第Ⅰ、Ⅱ幕 80分
--休憩25分--
第Ⅲ幕 40分
今季のNISSAY OPERAはモーツァルト4作。
所謂4大歌劇から「フィガロの結婚」に代えて「後宮〜」が入った。
「魔笛」、「ドン・ジョヴァンニ」、「コジ・ファン・トゥッテ」については、音楽はともかく、物語になかなか納得できないので、どうにもカタルシスが得られない。その点、本作の物語はおおむね腑に落ちるし、無理なく幕が閉まるのがいい。
物語で重要な役割を果たすトルコの太守・セリム(後宮の主)には歌がない(このオペラ自体が、歌付き芝居=ジングシュピールと呼ばれていて、セリフ劇の中に歌も登場するので、もっぱらセリフのみ受け持つ役も興行的に必要だったのではないか。J.シュトラウスⅡの喜歌劇=オペレッタ「こうもり」でも看守役には歌がなく、その役は有名な喜劇役者が演ずることが多いようだ。)。
歌のないセリムのセリフだけ日本語(部分的にはドイツ語のやり取りもあった。)というのも変だが、ここを日本語にしなくちゃ大和田伸也という舞台役者を登用する意味は無いのだろう。
美術・舞台装置は良かった。
日生劇場では、舞台があまり広くないので大掛かりな舞台装置を配置することはできない。その制約との戦いの中で色々なアイデアを巡らすのだろう。その出来栄えに感心することが多い。
今回も、シンプルな装置だった。
4つ折りの屏風のような構造物を4角に畳んだり3角に畳んだりして場面が変わる。
特に2、3幕との差で終幕が実際以上に豪華な後宮に見えるのが面白い。
欲を言えば、幕切れの演出に工夫がほしかった。セリムは復讐に走ってもよいはずだが、寛大な心で若者たちを後宮から逃走させてやる。立派な行いであるが、その心情がうまく描かれないと、取ってつけたような安易な「まとめ」になってしまう。今回もちょっとそんな気がした。