2023年7月31日月曜日

東京フィル第989回サントリー定期シリーズ ヴェルディ:歌劇「オテロ」

2023-07-31 @サントリーホール



チョン・ミョンフン:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団

オテロTn:グレゴリー・クンデ
デズデーモナSp:小林厚子
イアーゴBr:ダリボール・イェニス
ロドヴィーコBs:相沢創
カッシオTn:フランチェスコ・マルシーリア
エミーリアMs:中島郁子
ロデリーゴTn:村上敏明
モンターノBs:青山貴
伝令Bs:タン・ジュンボ

ヴェルディ:歌劇「オテロ」(リコルディ版)(演奏会形式)
全4幕 原語(イタリア語)上演 日本語字幕付き
原作: ウィリアム・シェイクスピア「オセロ」
台本: アッリーゴ・ボーイト
指揮:チョン・ミョンフン

公演時間:約2時間50分(幕間/CCを含む)
 第1幕 城壁の外側 …35分
 第2幕 城内の1階の広間 …40分
 休憩       …20分
 第3幕 城の大広間 …40分
 第4幕 デズデーモナの部屋 …35分



今日の発見というか、最大の驚きは、演奏会形式だというのに、本舞台のオペラ以上に迫ってくるものが大きく強かったという事だ。

歌手達の相乗作用か、いずれも演唱の入魂ぶりが激しかったこと。
何といってもノースコアで東フィルの実力を目一杯引き出したチョン・ミョンフン指揮の音楽がただならぬものあり。
それは畢竟ヴェルディの70歳越えの作品とも思えぬエネルギッシュで工夫に満ちた音楽の凄さの片鱗を、今回初めて味わったということでもあるが、とにかく冒頭から鷲掴みにされた。
過去に、「オテロ」でこんなに気持ちを持ってゆかれたことは一度もない。

よく聴いていると、所謂ナンバーオペラを脱して、まるでワーグナー作品のように、音楽が連綿と続き、アリアらしいものは、最終幕のデズデーモナの「柳の歌」〜「アヴェ・マリア」くらいだ。今日は、しみじみとこの10分を超えるナンバーを初めて味わい深く聴いた。それでも、ここで拍手する訳にもゆかない。深刻な人間ドラマはハナから緊張を孕んで、緩む時がないのだから。

二重唱や四重唱も、よく聴いていると複雑な仕掛けになっていて、心理の駆け引きというドラマ性を帯びている。

これまで僕は何を聴いていたんだろう、という反省もあり、それは「オテロ」だけでなく、オペラ全般、ひいては音楽全般に対して「ちゃんと聴いているかい?」という自問を投げかけられることになって、お金払って楽しみを得ようとすることも、なかなか容易ならざるものだなあ、といささか自虐的になってしまった。

まだ7月が終わったばかりだけど、今日の「オテロ」は、今年のベスト5に入るだろうと思った。

余談①:サントリーホールの天井から、大型のスピーカーセットが降りてきていた。記憶が曖昧だが、これまでに見たことがなかったような気がする。
東フィルのお姉さんにあれはいつ何のために使ったのか?と聴いたら、第1幕と第3幕に登場する大砲の音をこのスピーカーから流したようだ。その音源はシンセサイザーによる合成音だったようだ。
演奏中はオケの音が十分迫力があったので気が付かなかったよ。
余談②:弦の編成は14型だった。普通、弦の各プルトは指揮者に向かって、2人が並行して並ぶ。しかし、今日は60度くらい客席側に開いて並んでいた。そんなふうに並んだところで、音が大きく聴こえるようになるとも思えないので不思議に思ったが、暫くしてその理由が分かった。
演奏会形式といっても、演唱効果を高めるために、舞台上のオケはまるでピットに入っているかのように照明がぼんやりとしか当たらない。
その為に、譜面台に照明がついているのだけど、通常の形で並ぶと、客席上手・下手からはその照明が目に入ることになる。それを避けるべく、客席に向かって角度をつけて広がるように並んだのだろう。
…とこれは僕の推測で、東フィルのお姉さんに確認した訳ではないので間違っているかもしれない。

♪2023-135/♪サントリーホール-16

2023年7月30日日曜日

東京大学音楽部管弦楽団サマーコンサート2023

2023-07-30 @みなとみらいホール



田代俊文:指揮
東京大学音楽部管弦楽団

フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲変ロ長調 作品56a
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 作品64



東大オケの存在は知っていたが初聴き。
Vnが大勢で多分16-14なのだろうが前半の中音域以下はアマオケにありがちな歪な編成だった。

ともかく、弦は大勢いるのにイマイチ鳴りが悪くて「ハイドン変奏曲の終曲に至って漸く大編成オケらしい響が始まった。

メインはチャイコ5番。
ここで中音域以下も人数が増えてほぼ16型の標準サイズになった。しかし数を揃えている割に弦に熱量がない。

3楽章が終わり、4楽章には一呼吸で入ったのは良かったが、聴かせどころの弦に力が篭っていない。音量の問題ではなく、これから最後のクライマックスに向かって爆発していくエネルギーを内包しているとは思えない。

端的にいえば、それはティンパニーによく現れていた。終始穏やかな演奏で、終盤のブラスの咆哮にもかき消されるような音量だったが、ここは、ティンパニーが天地を裂くような大音量でブラスを圧倒するくらいのエネルギーが欲しかった。

しかし、管も弦も実に上手で、美しく、部分を取り出せばプロかと思わせる場面も。もちろん、アマオケらしい部分もたくさん噴出はしていたが。
とにかく上手だ。同日午後に聴いた横響より巧い。
にもかかわらず、熱が伝わらないのは奏者の問題ではなく、指揮者の好みなのだろう。
上品に美しく。それが意図なら成功していたが、どうかと思ったね。


余談:終演後女子学生のMCが始まった。Encの紹介かと思いきや、みんなで歌を歌えと仰る。なるほどプログラムの最後に楽譜が掲載してある。

ドイツ民謡「歌声響く野に山に」というのだけど、知らないよ。
この歌、3部カノンという凝った歌で、MC嬢は客席を縦に3分割してABC群に分け、Aが歌い始めて8小節後にBが歌う。その8小節後にCが歌う。2回繰り返して終わり…と指示。

そ、そんなことができると思う?
ところが始まってみたら、オケが伴奏するし、覚えやすい旋律だし、ちゃんと客席にサクラが仕込んであってリードするので、まあ、なんとか輪唱ができたようだ。

それにしても、このセンスにはついてゆけない。新興宗教か、少女趣味みたいだ。
東大!大丈夫か!

2023-134/♪みなとみらいホール-27

横浜交響楽団 第725回定期演奏会 【サマーコンサート】

2023-07-30 @県立音楽堂



泉翔士:指揮
横浜交響楽団
石本高雅:バリトン(全日本学生音楽コンクール横濱市民賞受賞者)

ハイドン:交響曲第101番「時計」 Hob.Ⅰ:101
バリトン・アリア集 独唱:石本高雅
 ●ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」から「私は町の何でも屋」
 ●ヴェルディ:歌劇「椿姫」から「プロヴァンスの海と陸」
 ●プッチーニ:歌劇「エドガール」から「この愛を」
 ●ナポリ民謡:「オー・ソレ・ミオ」
 ●ニノ・ロータ:ゴッドファーザー〜愛のテーマ
   with 電子ピアノ⇒泉翔士 Vnソロ⇒小谷野優子
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 作品73


14時開演だから1日で最も暑い🥵時間帯に出かけ、灼熱の紅葉坂を登らなくてはならん。
「危険な暑さ」の中「パスするか?」とも思ったが、今日は2本立てで、夜の部もあるのでここは踏ん張って出かけたのは正解だった。

学校が夏休みということもあって子供連れも多く、赤ん坊らしい奇声も聞こえる中ハイドンが始まったが、これがなかなかいい。

次に、全日本学生音楽コンクールで横浜市民賞を受賞したBrの石本くんが、主にオペラアリアを披露した。ガタイも大きいがなかなかの声量。「オー・ソレ・ミオ」だけは、この曲はやはりTn向きだなと思ったが。

コンミスの小谷野女史が曲中2回ソロを披露した。僅かに外した部分を除けば石田組長のような繊細で美しい音。

この声楽伴奏時の横響のうまいこと!欠点が目立たなかっただけかもしれないがそれも芸のうち。

最後の大物、ブラームス2番はテンポが重かった。こういうテンポで緊張感を維持するのはとても難しい。
それでも、今日の横響は管も弦も良く鳴り、40分の長尺を破綻なく終えて二重丸。

♪2023-133/♪県立音楽堂-08

2023年7月29日土曜日

横濱音楽物語1️⃣

2023-07-29 @フィリアホール



バリトン:坂下忠弘(加耒徹から急遽交代)
ピアノ:實川風
バイオリン:小林美樹
バイオリン:毛利文香
ビオラ:有田朋央
チェロ:門脇大樹

ドボルザーク:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調 Op.51より 第1-3-2楽章
【小林(1st)、毛利(2nd)、有田、門脇】
 ※当時のプログラムの記載通りに、楽章抜粋・演奏順を変更して演奏します。
ワーグナー:レチタティーヴォとロマンス
 ~楽劇『タンホイザー』第3幕から「夕星の歌」(「優しき夕星よ」)
【坂下、實川】
グリーグ:バイオリン・ソナタ第3番ハ短調 Op.45
【小林、實川】
シューマン:
 ひそやかな涙 ~12の詩 Op.35から第10曲
 献呈 ~歌曲集「ミルテの花」Op.25から第1曲
【坂下、實川】
ブラームス:ピアノ四重奏曲イ長調第2番 Op.26
【毛利、有田、門脇、實川】




日本の近代化は横浜で始まった。西洋音楽も然り。
フィリアホールが企画した5年がかり計6回の「横濱音楽物語」の今日は第1回目。今回は黎明期のクラシック演奏会を再現しようとするもの。

山手の丘に今も名前を残すゲーテ座で、1907年(明治40年)、居留民の演奏による居留民の為の演奏会が行われた。
今日のプログラムは、それをそっくり再現したもの。

ドボルザーク、ワーグナー、グリーグ、シューマン、ブラームスと並ぶと、現代人にとってはなんの違和感もないプログラムだが、116年前の人たちにとっては、ほぼ《現代音楽》が並んでいるというところが興味深い。

早く亡くなった順で一番のシューマンこそこの演奏会の51年前に亡くなっているが、ワーグナーは24年前まで生きていた。ブラームスは10年前、ドボルザークは3年前まで生きていた。グリーグは生存中だ。

今の日本に引き直すと、伊福部昭、早坂文雄、久石譲、吉松隆などの作品集を聴くようなものか。

僕も116年前に戻ったつもりで、音楽を聴いてみた。
とはいえ、もう、耳馴染みばかりなので、これらを現代音楽として聴くことは難しかったのだけど、無理無理明治人になり切ってみると、少なくともシューマン、ブラームス、ドボルザークにはそれまでの古典派にはみられない奏法やフレージングに、な〜るこの辺は新しいな、と思ったりもして良い経験ができた。

演奏するのは、今、まさに匂い立つような旬の中堅どころ。全員、横浜に縁のある演奏家ばかりだというが、我が小林美樹❤️以外は横浜とどういう縁があるのか知らない。

Brの加耒徹が不都合で急遽坂下忠弘に変わったが、当然、プログラムに変更はなく、「夕星(ゆうずつ)の歌」と「献呈」が聴けたのも嬉しいことだった。

♪2023-132/♪フィリアホール-03

2023年7月28日金曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 東京都交響楽団 耳から納涼♪ 北欧名曲選

2023-07-28 @ミューザ川崎シンフォニーホール



大野和士:指揮
東京都交響楽団
久末航:ピアノ*

ニールセン:狂詩曲風序曲「フェロー諸島への幻想旅行」
グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16*
 第1楽章 アレグロ・モルト・モデラート
 第2楽章 アダージョ
 第3楽章 アレグロ・モデラート・モルト・エ・マルカート
シベリウス:交響曲第2番ニ長調 Op.43
 第1楽章 アレグレット
 第2楽章 テンポ・アンダンテ,マ・ルバート
 第3楽章 ヴィヴァーチッシモ
 第4楽章 フィナーレ アレグロ・モデラート
-------アンコール--------------------------
リスト:「巡礼の年」第1年スイスから第4局泉のほとりで*


FSMuzaの嬉しいところは、在京オケを次々と定点観測できることだ。そしてほとんどのオケで首席・音楽監督級が登壇する。
都響も、Muzaで聴けるのはこのお祭りだけだ。

北欧の3曲。
ニールセンは9年ぶりに聴いた。前に東響@ミューザで聴いたが、これは明らかに東響の方が良かった。
まあ、腕鳴らしみたいなものだろう。

グリーグからだんだん良くなってきた。

2Wほど前まではどのホールもそれなりに鳴りが良かったが、猛暑のせいか、最近は少し響きが硬くなっている。ミューザにしても同様だ。
てきめんに分かるのがPfの音で、広域は煌めくような輝きがあるが、中〜低域がやや硬い。尤も、全域にわたって美音が鳴りわたるのは滅多にないから、今日(一昨日も)の音でも十分美しい。特に、六一のPfに比べたら、そりゃもう、べらぼうに美しい。

2楽章の終盤にオケと噛み合っていないようなところがあって、ひやっとしたけど、気のせいだったか…。弦12型ではあったけど、オケに埋もれるところもあってやや不満が残った。

メインのシベ2が良い出来だった。都響のことだから16型に拡大するかと思ったが、14型だった。それでも迫力は十分。

この曲は、美味しいところをほとんど管楽器、特に金管が攫っていく。それで、弦の上手側がモヤモヤとして存在感がはっきりしなかったけど、それがシベリウスの狙い所なのだろうか。次にこの曲を聴く時は、弦の中低域に着目してみよう。
なんだかんだ言っても、よくできた音楽だなあと、いつも思う。

♪2023-131/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-15

2023年7月27日木曜日

ランチタイムコンサート〜音楽史の旅 2023年① リストと文学作品

2023-07-27 @かなっくホール



ロー磨秀:ピアノ
司会・解説:飯田有抄(音楽ファシリテーター)

リスト:愛の夢ー3つのノクターン 第3番
リスト:伝説 第2番<波の上を歩くパウラの聖フランチェスコ>
リスト:巡礼の年 第2年 イタリアより<ダンテを読んでーソナタ風幻想曲>



お恥ずかしいことに途中で寝てしまったので、コンサートの感想めいたものは書けない。トホホ。

とはいえ、熟睡していた訳ではなく、美しくいえばまどろんでいたので、不思議と曲が終わりそうになるとそれが分かるので、刮目して拍手をし、次が始まるとまたまどろむの繰り返し。
睡眠学習という学習法もあるように、間違いなく、まどろみの中では人間の感性はとても敏感になる。
で、ぼんやり聴きながら、ピアノの音があまりに美しいので、その音にずーっと酔っていたような気もする。

ローくんは初聴き。経歴を読むといろんなコンクールで相当な成績を上げて極めて優秀な若手らしい。加えて、ポップスのシンガーソングライターとしても活躍しているらしい。

いつも気の利いた解説をしてくれる飯田有抄女史の解説も右から左で誠に残念なことをした。

♪2023-130/♪かなっくホール-10

2023年7月26日水曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 新時代の先駆者たち〜アメリカン・オールスターズ〜〜

2023-07-26 @ミューザ川崎シンフォニーホール



高関健:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
横山幸雄:ピアノ*

ガーシュウィン:パリのアメリカ人
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー*
バーンスタイン:『ウエスト・サイド物語」から「シンフォニック・ダンス」
 1 プロローグ
 2 サムウェア
   3 スケルツォ
 4 マンボ
 5 チャチャ
 6 出会いの場面
 7 クール~フーガ
 8 ランブル(決闘)
 9 フィナーレ
バーンスタイン:ディヴェルティメント
 1 セネッツとタケッツ
 2 ワルツ
 3 マズルカ
 4 サンバ
 5 ターキー・トロット
 6 スフィンクス
 7 ブルース
 8 イン・メモリアル~行進曲「ボストン響よ、永遠なれ」
-------アンコール--------------------------
ドビュッシー:前奏曲第2集第6番*
バーンスタイン:ディヴェルティメントから
 8 イン・メモリアル~行進曲「ボストン響よ、永遠なれ」



ガーシュウィンとバーンスタインの作品2曲ずつ。
いずれもお祭り向きなのか、FSMuzaでも複数回聴いている。

横山幸雄の「ラプソ~」始め、みんな良い演奏だった。これと言って文句のつけようもなく、いつも聴く武満MEMでの演奏より、ミューザが開放的な分、気持ち良く聴こえた。

それにしても、覚えの悪いのがレニーの「ディヴェルティメント」で、タイトルと中身がしっくりこないのもなかなか馴染めない理由かもしれない。

ぼんやり聴いていたせいで、Encでその第8曲が再度演奏された時に、聴いたことのある曲だけど…とは思ったけど、つい今しがた本編で聴いた曲だと気づかなかった。恥ずかしや。
そのEnc曲の演奏では、終盤、オケ全員(Vc含め)が立ち上がって演奏した。中に放浪するものもあり。
お祭りの演出なんだな。賑やかに終わって、これも良き哉。

♪2023-129/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-14

2023年7月25日火曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2023 洗足学園音楽大学 〜バレエとオーケストラで魅せる物語〜

2023-07-25 @ミューザ川崎シンフォニーホール



秋山和慶:指揮
バレエ:洗足学園音楽大学バレエコース
 谷桃子バレエ団
 東京シティ・バレエ団
 牧阿佐美バレ
ピアノ:福島未紀*
管弦楽:洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団

ワーグナー:オペラ『タンホイザー』序曲
振付:小林洋壱

ショパン:『ロマンティック組曲』~ピアノ曲による~*
(プレリュード第17番変イ長調 Op. 28-17、ノクターン第20番嬰ハ短調[遺作]、エチュード変ト長調 Op. 25-9「蝶々」、ワルツ第10番ロ短調 Op. 69-2、プレリュード第16番変ロ短調 Op.28-16、ワルツ(華麗なる円舞曲)第2番変イ長調 Op. 34-1)
振付:谷桃子

ベルリオーズ:劇的交響曲『ロメオとジュリエット』Op.17から
振付:安達悦子

グノー:オペラ『ファウスト』から
振付:牧阿佐美



今日はFestaSummerMuza。
数年前から開幕はパスすることにしているので事実上今日が僕のFSM開幕だ。

秋山翁指揮:洗足学園オケで、選曲のコンセプトは「バレエとオーケストラで魅せる物語」。

オペラとバレエとコンサートがごちゃ混ぜで立ち位置が決まらないのではないか、と余計な心配もしたけど、最初に「タンホイザー」をやったのが良かった。これで、とてもしっくり落ち着いた。それどころか、この音楽は、本来、バレエ付きで聴くべきだなあ、と思ってしまった。

ショパン組曲も良かったのだけど、この作品だけ、オケではなく、Pf伴奏だったので、舞台両端のダンサー用モニターSPの音がせっかくのPfの美しい生音をもっさりさせたのが惜しまれる。

バレエは3つのプロバレエ団から各曲毎に数名のソリスト級?が入り、そこに洗足学園の学生が各曲とも最大20名くらい?登場した。
舞台の1/2近くをバレエ用に空けたのでオケは後ろの方に窮屈そうで変則10型だったか。

新国立劇場のバレエに比較すれば時にポーズが決まらず・揃わず、という場面もあったが、概ね優雅で上品でバレエの魅力が音楽を一層引き立てて良き哉。

♪2023-128/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13

2023年7月22日土曜日

かなっく寄席

2023-07-22 @かなっくホール

 

三遊亭こと馬<落語芸術協会>
笑福亭茶光<落語芸術協会>
瀧川鯉丸<落語芸術協会>
林家つる子<落語協会>

子ほめ⇒三遊亭こと馬(前座)
手水廻し⇒笑福亭茶光(二ツ目)
瀧川鯉丸⇒皿屋敷(二ツ目)
--------仲入り--------
林家つる子⇒紺屋高尾(二ツ目)


今日の噺家は4人。前半の2人は存在すら知らなかったが、鯉丸は今日で3回目。林家つる子も3回目。

前座は前座なりの出来栄えだったが、初めて聞く茶光が二ツ目では上出来。

先輩格の鯉丸は、さらに上出来でこれまでの中では群を抜いて良かった。話ぶりに落ち着きがあり、観客の呼吸をとらえて笑いを引き出した。


さて、問題のつる子。初めて聞いたのが5年前。その頃も二ツ目だったが、下手な真打より巧い。巧すぎて良くない。


今回は4年ぶりに聞いたが、一層巧くなっている。

今年の4月に、来年3月下席からの真打昇進が決まったそうで、普通より2年早い。ほぼ満席の客席のあちこちから昇進を祝う掛け声も多く、追っかけファンが相当いた様子だ。


本日のお題は「紺屋高尾」。

ピュアな男の真心が通じ、吉原の人気花魁高尾太夫と結ばれるというまことに麗しい人情噺で、こういう話で泣かされるのはごめんだと頑張っているが、この頃涙脆い僕としては、演技過剰のつる子の話ぶりに煽られてウルっと来てしまった。


この人、巧すぎて嫌だよ。

滑舌が良く、全く噛まない。

強弱、テンポ、間の良さは計算され尽くした感じ。

それが、折伏されてしまう様な心地の悪さを残すのだ。力を抜いて8分目くらいで話せば良かろうと思うが。


まだ、36歳。

さらに芸を磨くだろうし、どこまで巧くなるのか。

枝雀みたいに一旦、自分の芸を壊さなくちゃ行き詰まるのではないか、と余計なお世話。


♪2023-127/♪かなっくホール-09

2023年7月19日水曜日

東京都交響楽団 第979回 定期演奏会Aシリーズ

2023-07-19 @東京文化会館



アラン・ギルバート:指揮
東京都交響楽団
シュテファン・ドール:ホルン*

ウェーベルン:夏風の中で―大管弦楽のための牧歌
モーツァルト:ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495*
R.シュトラウス:アルプス交響曲 op.64


ウェーベルン:「大管弦楽のための〜」という割にはおとなしい音楽で、うとうとしている間に終わってしまった(13分)。

本日の白眉はモーツァルト:Hr協4番だ。独奏はシュテファン・ドール。彼の演奏でモツHr協全曲を聴いたことがあるので、彼の4番を聴くのは2回目。というより、他の人の演奏で4番は聴いていない。
モツのHr協奏曲というとほとんど3番ばかりで、N響6月のBでも福川名人が3番を吹いた(つい先日クラ館で放映)。しかしその演奏はあまり芳しくなかった。放映録画を確認してもスッキリしない。

そういう経験をしたばかりで聴いた今日の演奏にはびっくりした。
音圧高く、音色も豊かだ。オケに埋もれるなんて心配は全く無用。朗々と響き渡る。
それほど福川氏と技量の差があるとも思えないしバックのオケはN響と都響ではだいぶ違う。
しかし、今日の都響は弦10型に絞って(N響は12型だった)、キリリとしてよくサポートしていた。
ま、Hrを鳴らす技術に特別のものがあるのかもしれないが、半分はホールの違いだろう。文化会館はサントリーと違って無駄に音を逃さない。


メインが、最近やたら多い「アルプス~」。これにもシュテファンドールが参加して大サービス。

弦は「運命」でも16型でやる都響だもの当然に16型。金管はHr8-Tp4-Tb4-Tub2計18本にバンダがHr12-Tp4-Tb4計20本と舞台より多い超特大。まるで音大の合同オケみたいだ。
その超特大バンダがどこで吹くか?興味があったが、舞台裏から聴こえてきたね。これじゃ20本揃える意味がないだろう。どうしてバルコニーでやらなかったのだろう?

オルガンもパイプオルガンじゃないから迫力はないし、全体として賑やかではあったが、P.ヤルヴィ+N響や特に沼尻+神奈川フィルが聴かせた緻密さと巨大さには及ばす。

♪2023-126/♪東京文化会館-08

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 令和5年7月歌舞伎鑑賞教室(第107回歌舞伎鑑賞教室) 『双蝶々曲輪日記-引窓-』

2023-06-10 @国立劇場



●解説「歌舞伎のみかた」
 澤村宗之助
 坂東やゑ亮
 中村橋三郎
 中村翫延

●『双蝶々曲輪日記-引窓-』
南与兵衛後ニ南方十次兵衛⇒中村芝翫
女房お早⇒市川高麗蔵
平岡丹平⇒中村松江
三原伝造⇒坂東彦三郎
母お幸⇒中村梅花
濡髪長五郎⇒中村錦之助
        ほか


本来は長い話で、その通し狂言も随分前に観たが筋はさっぱり覚えていない。しかし、「引窓」の1幕だけは独立して上演される機会が多いので、何度か観ている。よくできた話だ。

訳あって人を殺めた関取・濡髪が追手に捕まる前に、密かに再婚した母お幸に会いに来るが、お幸の再婚相手の義理の息子十次兵衛は皮肉にも十手持ちだった。

十次兵衛は父の亡き後代官の跡目を告げずに悶々としていたところ、今日は、ようやくにして代官に就任の命が下って親子夫婦ともども大喜び。
そんな時に、既に人相書きが出回り追い詰められた濡髪が登場するのだ。

もはやこれまでと覚悟を決めた濡髪を母親お幸が引窓の縄で縛る。

早速の大手柄を挙げることになった十次兵衛だが、濡髪が義母の実子と知って、縄を切り逃してやるのだった。

その日は、折しも生き物を放つ「放生会」の夜だった。

…見事にまとまった人情話である。

引窓なんて見たこともないが、引窓を開けて中秋の満月でも見たいものだ。

♪2023-125/♪国立劇場-08

2023年7月15日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第387回定期演奏会

2023-07-15 @みなとみらいホール



小泉和裕:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ベートーべン:交響曲第8番ヘ長調 Op.93
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98



完全に記録を残している(つもりの)2014年以降のコンサートで、ベト+ブラの交響曲2本立てを聴いたのは今日を含め3回だけ。

16年にベト2+ブラ2(都響)、
20年にベト4+ブラ3(都響)。そして
今日、ベト8+ブラ4だった。

単独では聴く機会が多い両雄の交響曲を2本一緒に聴くというのは実はとても稀なことだ。

しかもこの3回を振ったのはいずれも小泉和裕氏である。

彼は単独でも、ベト、ブラは多く、シューマン、メンデルスゾーンなどドイツロマン派の作品を多く手掛けている。僕の大好物の標的が、同時に、彼のライフワークなのかもしれない。

そんな訳で、僕の”好み”も小泉風味にかなり影響されているかもしれないな。

ま、何を取り上げてもだが、いつも嫌味がなく、外連もない。真っ当なドイツ音楽という気がしている。

今日の演奏。
ベト8番は7番をそのまま延長した様なリズム感で心地良し。
ブラ4は大きなうねりを歌わせながらまとまり良く、抑制されたブラームス流の哀感を楽しんだ。

ただし、オケは良い響だったけど弦に縦線の乱れを感じた部分も…。ま、これもナマの勢いか。

♪2023-124/♪みなとみらいホール-26

2023年7月13日木曜日

オペラ「ラ・ボエーム」 〜高校生のためのオペラ鑑賞教室2023〜

2023-07-13 @新国立劇場



【指揮】阪哲朗
【演出】粟國淳
【美術】パスクアーレ・グロッシ
【衣裳】アレッサンドロ・チャンマルーギ
【照明】笠原俊幸

【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ミミ⇒石橋栄実
ロドルフォ⇒宮里直樹
マルチェッロ⇒成田博之
ムゼッタ⇒臼木あい
ショナール⇒吉川健一
コッリーネ⇒久保田真澄
べノア⇒畠山茂
アルチンドロ⇒晴雅彦…本公演と同じ
パルピニョール⇒寺田宗永…本公演と同じ

プッチーニ:「ラ・ボエーム」
全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

上演時間約2時間45分
 第Ⅰ幕・第Ⅱ幕60分
  休憩25分
 第Ⅲ幕30分
  休憩20分
 第Ⅳ幕30分




昨日に続いて鑑賞教室2回目。本公演を合わせて3回目の「ラ・ボエーム」。
昨日と変わった最重要な歌手4役は、

ミミ⇒石橋栄実、ロドルフォ⇒宮里直樹、マルチェッロ⇒成田博之、ムゼッタ⇒臼木あい。

鑑賞教室のチケットはそもそも数が少なく極めて安価(全席4,400円)で、会員先行もないから良席確保は難しい。
今日は3階席の3列目。右翼ブロックのセンター寄り、とまあ嬉しくないけど、値段を考えたら文句も言えない。

舞台は昨日より一層遠い。
しかし、抜群の音響を誇るオペラパレスでは、3階席だろうが、十分響いて不満はない。

今回、9日間のうちに3回、キャスト違いで同じ舞台を鑑賞して思うに、歌手については、本公演含めて木下美穂子が演技ともども見せた・聴かせた。もちろん他の役の歌手もみんな上手。一度きり聴いたとすればどの組であれ感銘を受けたと思う。

ただ、熟思うに、オペラは舞台に近いのがよろしい。オペラも演劇だ。役者の表情がはっきり見えなければ入魂が難しい。2回目、3回目と徐々に遠くに離れるにつけ、物語もどこか遠くの話になっていった。

然は然り乍ら、プッチーニの音楽の素晴らしさには、どこの席でも十分浸れる。今回は、短期間に珠玉の名アリア集を生で3回も味わうことができて大満足也。


♪2023-123/♪新国立劇場-15

2023年7月12日水曜日

オペラ「ラ・ボエーム」 〜高校生のためのオペラ鑑賞教室2023〜

2023-07-12 @新国立劇場



指揮】阪哲朗
【演出】粟國淳
【美術】パスクアーレ・グロッシ
【衣裳】アレッサンドロ・チャンマルーギ
【照明】笠原俊幸

【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ミミ⇒木下美穂子
ロドルフォ⇒工藤和真
マルチェッロ⇒青山貴
ムゼッタ⇒九嶋香奈枝
ショナール⇒高橋正尚
コッリーネ⇒伊藤貴之
べノア⇒畠山茂
アルチンドロ⇒晴雅彦…本公演と同じ
パルピニョール⇒寺田宗永…本公演と同じ

プッチーニ:「ラ・ボエーム」
全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

上演時間約2時間45分
 第Ⅰ幕・第Ⅱ幕60分
  休憩25分
 第Ⅲ幕30分
  休憩20分
 第Ⅳ幕30分



本公演が終わった後、同じ演出(美術/衣装/照明も)でのそっくり再演だが、指揮者(大野和士⇒阪哲朗)と主要なキャストが変わっている。

最重要な歌手4役は
ミミ⇒木下美穂子、ロドルフォ⇒工藤和真、マルチェッロ⇒青山貴、ムゼッタ⇒九嶋香奈枝に。

高校生の集団鑑賞の残り席を分けていただくシステムなので、あまり良い席は取れなかったが、今日は1階席の最後列の1列前だがかろうじてセンターブロック。

舞台は遠い。
が、オケも歌唱も十分響いて音楽鑑賞に不満はないが、歌手の表情が見え辛いのは致し方ない。

7倍モノキュラーを愛用しているけど、ずっと追いかけている訳にもゆかない。

木下美穂子は明るくハリのある声で、時に突き刺さってくるような勢いがある。掛け値なしの実力派としか言いようのない人材なのに、イマイチ活躍の場が少ないのが不思議だ。
本公演でミミを歌ったA.マリアネッリを凌ぐような迫力があり、演技もうまい。

終幕の瀕死のミミと祈るような思いのロドルフォの二重唱は第1幕の2人の名アリアが再現されて(プッチーニの巧さ!)、気持ちが入り込んでゆく。この辺も、本公演より吸引力が強かったな。

他の歌手陣も問題なし。まあ、好みを言えば適役かな?と思った人もいたのだけど。

♪2023-122/♪新国立劇場-14

2023年7月11日火曜日

タレイア・クァルテット -重厚で繊細な弦楽四重奏の響き-

2023-07-11 @みなとみらいホール



タレイア・クァルテット
 山田香子:Vn1
 二村裕美:Vn2
 渡部咲耶:Va
 石崎美雨:Vc

モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク
ハイドン:弦楽四重奏曲第61番ニ短調「5度」 Op.76 No. 2, Hob.III:76
ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調 Op.10 
----------------------------------
デンマーク弦楽四重奏団:Peat Dance(泥炭舞曲?)




某財団主催抽選無料演奏会。SQ自身は2年半ほど前にフィリアHで聴いた。
「タレイア」とはギリシャ神話の女神の名前だそうな。
今日は、全員パステル調の空色〜黄緑のドレスで華やかなこと。
フィリアの時は、ふだん響きの良いホールだけどその日の響には難があって十分真価を発揮しなかったと思ったが、今回は、みなとみらい小ホールというベスト環境で実力を発揮したように思う。

結成以来9年の常設SQとあって息が合っている。
アイ・クラはテンポ良く進み、慣れているなと感じさせた。
ハイドン五度はCDで聴いたことはあるけどナマでは初めて。こんなにロマンチックなのかと驚きだった。古典派というより一歩進んでいる感じだった。

弦楽小編成をナマで聴く時、いつも思うのが、ビオラの活躍だ。めったに主題をリードすることはないけど、バイオリン2本とチェロが先行した後にビオラが入っていく瞬間が好きだ。いっぺんに響きが豊かになる。


最後はビュッシーだった。唯一の弦楽四重奏曲らしい。そして作品番号(Op)がついた唯一の作品だという(他はL番号)。これは全く初めて聴いた。馴染んだ旋律の欠片も出てこないので、感興を覚えるという程でもないが、終盤になってドビュッシーらしさが現れてなるほどと思った次第。

願わくば、モーツァルト、ハイドンときたら最後はベートーベンかブラームスで締めて欲しかった。

EncはデンマークSQ作「Peat Dance」というのが北欧の民謡ぽくても面白かった。思わず手拍子が出そうな音楽だが、するなら、前拍だろうか後拍だろうか頭の中で調子を合わせてみたが、やはり前拍が合いそうだ。
「汚泥舞曲」とでも訳すのだろうか?いかにも土着風で、4人の女神も熱演。

♪2023-121/♪みなとみらいホール-25