2021年6月27日日曜日

東京交響楽団川崎定期演奏会 第80回

 2021-06-27 @ミューザ川崎シンフォニーホール



飯守泰次郎:指揮
東京交響楽団
吉野直子:ハープ*

ライネッケ:ハープ協奏曲 ホ短調 op.182*
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調<ノヴァーク版(1954年版)>
-------------
アッセルマン:泉*

1曲目のハープ協奏曲。…といえば、他の楽器との二重協奏曲やアランフェスのハープ版などしか聴いた経験がなかったし、ライネッケという作曲家も初めてだが、ロマン派らしい曲想で楽しめた。

オケも弦10型でこじんまりとサポートしたのが良かった。


メインはブルックナー交響曲第7番。

最近は大規模編成もポツポツ聴けるようになった。ホルン4、ワーグナーチューバ4、コントラバス・チューバ等金管が多い分、弦も16型に近い大編成(14-14-12-9-8)。


ブルックナーの交響曲は冗長ではないか?という疑問は今も払拭できないが、今日は構成感が良かったか、1時間超を抵抗なく聴き終えた。


が、これで弦にもっと透明感があればどんなに素晴らしいだろうとずっと思っていたよ。


その飯守御大の健康を気遣って、珍しく指揮台に椅子が置いてあった。ほとんど座る事もなかったが、3楽章の途中だったか?楽章の切れ目だったか、短時間腰掛けていた。

あと3月で81歳。

この人には元気で現役を続けてほしいよ。


♪2021-063/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13

2021年6月26日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第369回定期演奏会

 2021-06-26 @県民ホール


小泉和裕:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ベートーベン:交響曲第2番ニ長調Op.36
フランク:交響曲ニ短調FWV.48


ベートーベン交響曲第2番は彼の全交響曲中一番聴く機会が少ないが、直近は昨年の沼尻+東響。小泉師もお好きなようで、都響で2016年に聴いた際はブラ2との組合せだった。

2番・ニ長調同士だ。


今回はフランクのニ短調という事で、Dで繋がっているが、こだわりかな?


ま、久しぶりのベートーベン2番。とても元気で良かった


ホンに最近の神奈川フィルはほとんど文句なしだ。

透明感という点ではイマイチとしても(この点でいつも満足させてくれるオケはそもそもいない。N響でも満足できない。)、弦の高域に不快な音が混ざる事もないし、管と弦が高域で喧嘩するような事も滅多にない。

要は、安心して聴いてられる。


フランクニ短調も小泉師のお気に入りか。

この曲を前回聴いたのが17年の都響で指揮は小泉師だった。

人気曲だと思うがなかなか取り上げられない作品だ。


3楽章構成とか循環形式とか、新しい工夫の巧拙は分からないけど、どの楽章もゾクゾクさせる刺激に満ちている。


弦編成は14型だが迫力ある演奏だった。


♪2021-062/♪県民ホール-07

2021年6月25日金曜日

NISSAY OPERA 2021「蝶々夫人」

2021-06-25 @日生劇場

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
歌劇「蝶々夫人」全2幕(イタリア語上演・日本語字幕付)


指揮:鈴木恵里奈
演出:粟國安彦
再演演出:久恒秀典
振付:立花寶山

テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
藤原歌劇団合唱部

蝶々夫人⇒小林厚子
ピンカートン⇒澤﨑一了
シャープレス⇒牧野正人
スズキ⇒鳥木弥生
ゴロー⇒松浦健
ボンゾ⇒豊嶋祐壹
ヤマドリ⇒相沢創
ケート⇒𠮷村恵
神官⇒立花敏弘


3月の新国立劇場「ワルキューレ」でジークリンデ役の小林厚子がとても良かったので「蝶々夫人」はとても楽しみだった。

オペラは演出次第だが、藤原歌劇団の粟國安彦版はこれまで観た中で(海外ものも含め)一番具体的・写実的で全く違和感がないので入り込みやすい。


小林も良かったが、観劇前は眼中になかった他の歌手達もいい。

ピンカートン(澤﨑一了)、は知らない歌手だったし、シャープレス(牧野正人)も初めてではなかったもののこれまで記憶には残っていなかった程度だったが、この2人が予想外に良かったし、何よりスズキを歌った鳥木弥生の巧い事。これ迄、新国立のオペラや「第九」等で何度も聴いていたが、良い役での彼女の演唱に出会えて良かったよ。


「蝶々夫人」にはいつも感心するが、プッチーニの日本風・味付けの巧さ。台本がいいのだろうけど、和のセンスをよく理解した人物造形。

一方で、気楽には聴いておれない。

無垢な15歳の少女の夢を踏み躙ったのは誰なのか。


終幕近くになると鼻を啜る音がそこここに。

僕とても、毎回泣かされてしまうよ。


♪2021-061/♪日生劇場-04

音楽堂アフタヌーンコンサート2021前期 佐藤美枝子 ソプラノ・リサイタル <華麗なるオペラ・アリア>

2021-06-25 @県立音楽堂


佐藤美枝子:ソプラノ
河原忠之:ピアノ

スキーラ:夢
ドナウディ:私の愛の日々/ああ、愛する人の
ベッリーニ:追憶
 歌劇「ノルマ」から”清らかな女神よ”
 歌劇「清教徒」から”あなたの優しい声が”
 歌劇「カプレーティ家とモンテッキ家」から”おお、幾たびか”
 歌劇「夢遊病の女」から”気も晴れ晴れと”、“ああ、信じられないわ”
----アンコール----
クルティス:勿忘草
カッチーニ伝:アヴェ・マリア
黒人霊歌:アメイジング・グレイス


2020年3月。既に公演中止が相次ぐ中で開かれた彼女のデュオ・リサタルから1年3月ぶりに、今度はソロ・リサイタルで相まみえる事ができるのは同慶の至。


ベテランの域だが、衰えは全く感じさせない。

大迫力の中〜高音域の迫力は歌う”人間兵器”の如し。

勿論超高域を繊細に歌う魅力も。


独唱会とあって、得意のベル・カント作家中心だった。

本篇9曲中初めの3曲を除けばすべてベッリーニの作品。

有名なのは「Casta Diva」だけ。

その他は聴いた事はあるが馴染んでいないものばかり。


でも、それでよし。


彼女の得意な曲を聴きたかったから。


アンコールでは昨年も歌った勿忘草等有名曲でサービスも。


ピアノ伴奏が河原忠之。

そのPfの音が素晴らしかった。

カーンと抜ける明るくて明瞭な音。

音楽堂の響の良さを歌とPfで堪能できた。ホンに良いホールだ。


で、思い出したのが、先日の東フィルのラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲。

上原彩子の演奏が見事だったが、惜しいのはサントリーホールのピアノの響。いつも暗くて弾まない。


♪2021-060/♪神奈川県立音楽堂-05

2021年6月24日木曜日

シリーズ 人を思うちから 其の参「キネマの天地」

 2021-06-24 @新国立劇場


井上ひさし:「キネマの天地」全2幕
予定上演時間:2時間30分
第1幕65分
 --休憩20分--
第2幕65分

【作】井上ひさし
【演出】小川絵梨子
【美術】池宮城直美
【照明】榊美香
【音響】加藤温
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】高村マドカ
【ステージマネージャー】渡邊千穂 

高橋惠子⇒立花かず子(大幹部女優)
鈴木杏⇒滝沢菊江(幹部女優)
趣里⇒田中小春(準幹部女優)
那須佐代子⇒徳川駒子(大幹部待遇)
佐藤誓⇒尾上竹之助(大部屋俳優)
章平⇒島田健二郎(助監督)
千葉哲也⇒小倉虎吉郎(監督)



かつて映画化された同名作とは筋に関連はない。

超特大新作映画の打合わせに松竹蒲田の人気女優4人=大幹部(高橋恵子)・同待遇(那須佐代子)・幹部(鈴木杏)・準幹部(趣里)が築地の劇場に集められる。

鉄の序列を一応踏まえつつ「私が一番!」の4人の鞘当てがおかしい。


新作の打ち合わせとは口実で、かつて急逝した女優が実は殺人によるもので、真犯人はこの4人の中にいると告げられ、築地署刑事による捜査が始まる。

二重に仕掛けられたどんでん返しで、演劇賛歌はめでたく幕。


しかし、本篇中にみた決着を再度繰り返すような説教くさいダメ押しはいただけない。


役者に手持ち無沙汰風の場面もあり、もっと、タイトな進行ができなかったものか。



不満も残ったが、スター役者がスター役者を演ずる設定自体にそこはかとないおかしみがある。

また、舞台のすぐ近くで観たので、その臨場感・存在感は半端なかった。


特に若手の鈴木杏と趣里は身体を120度くらい曲げてお辞儀ができるその身体能力に驚いた。本篇中にも、カーテンコールでもみせたが、僕なんか30度くらいしか曲がらないよ。


♪2021-059/♪新国立劇場-04

2021年6月20日日曜日

名曲全集第168回 世界最高峰の古楽アンサンブルを率いる佐藤俊介の「四季」

 2021-06-20 @ミューザ川崎シンフォニーホール


佐藤俊介:弾き振り&バイオリン*
東京交響楽団


ジャン=フェリ・ルベル:「四大元素」から 第1楽章 カオス
ハイドン:交響曲第7番 ハ長調 Hob.I:7 「昼」
ビバルディ:協奏曲集「四季」全曲
-------------
ビバルディ:協奏曲集「四季」から「冬」第2楽章



古楽分野で活躍している佐藤俊介の弾き振り。といっても、今回も”近代的合奏”だった。彼が率いるオランダ・バッハ協会の本物の古楽を聴いてみたいものだ。


今回は昨年1月のモーツァルト・マチネwith東響@ミューザと同様最大でも20数名の編成。今回もチェロ等を除き全員立奏。


プログラムは3曲すべて実験精神の溢れたものばかり。


小編成という事もあり、小気味よく活力の漲る演奏だった。


ハイドン交響曲7番はCDでは分からぬ生ならではの面白さ。

”交響曲”というより”合奏協奏曲”で、多くの独奏楽器(コントラバスも!)が活躍して楽しい。


メインの四季もアグレッシヴで、テンポも良し。


佐藤の独奏部分は装飾にアドリブのような独自性があり楽しそうだった。こういう辺りは古楽的アプローチなのかも。


これまで多くの”四季”を聴いてきたが、凡庸なのも少なからず。

しかし、今回の佐藤俊介+東響は印象的な演奏となった。


終演後の客席は大いに盛り上がって、かつてない程にカーテン・コールが繰り返された。いやはやホンに満足度が高かった。


♪2021-058/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13

2021年6月18日金曜日

東京フィル第954回サントリー定期シリーズ

 2021-06-18 @サントリーホール


尾高忠明:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
上原彩子:ピアノ*

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲*
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 Op.27
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ラフマニノフ:10の前奏曲 作品23 から
 第4曲 ニ長調 アンダンテ・カンタービレ


東フィルは2-3月が休演。先月は僕が休んだので、1月以来という久しぶり。尾高忠明+上原彩子によるラフマニノフ尽くし(上原のアンコールも)。これが熱かった!


パガニーニの主題による狂詩曲では専ら上原のピアノの美技に聴き惚れていたが、途中で東フィルの巧さに気がついた。


両者よく溶け合い、噛み合い、見事な出来栄え。


<パガニーニ>の主題と第7変奏以降登場する<怒りの日>の主題はその後もいくつかの変奏に形を変えて紛れ込み、18番変奏で震えがくるような抒情性を堪能させてからはひたすら最終変奏のクライマックスへと駆け上がる。


そのアクロバティックな演奏と音楽に、手に汗握る思いで聴き入った。


メインの交響曲第2番はラフマニノフの交響曲全3曲中では一番演奏=聴く機会が多いとはいえ、そう頻繁に聴く曲ではないのに第3楽章の胸をかきむしられるような哀感溢れる旋律は何故身体に染み込んでいるのかな?

ピアノ協奏曲はいろんな映画などで取り上げられているが、この旋律にその記憶はないのだけど何やら懐かしい。


弦の編成は12(10-8-8-6)型と中規模だったが、パガ狂といい2番といい、そもそも派手な音楽ではあるが、東フィルの管・弦・打・楽の華やかさ、アンサンブルの厚み、呼吸の良さなど、オーケストラ音楽の面白さを十分に味わった。


先日の読響同様、一人もマスクをしていなかったのも嬉しい。


♪2021-057/♪サントリーホール-07

2021年6月15日火曜日

ランチタイムコンサート 底抜けに明るいトラッドジャズ!

2021-06-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール

中川英二郎TRAD JAZZ COMPANY "Trio"
 トロンボーン:中川英二郎
 バンジョー:青木研
 ピアノ:宮本貴奈

中川英二郎:Into The Sky
ストレイホーン:A列車で行こう
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(バンジョー・ソロ)
ほか
----アンコール-------------
聖者の行進


今日のランチタイムコンサートは、珍しくピアノ・トロンボーン・バンジョーによるデキシーランド・ジャズだった。


トリオを主催するトロンボーンの中川英二郎という人の名前は知っていたが、演奏を聞くのは初めてかも。

オリジナル1曲以外は耳馴染みのあるものばかりで気楽に楽しめた。


いつもよりお客が5割増しほど多く、バルコニーもかなり入っていたので驚いた。


♪2021-056/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-12

2021年6月14日月曜日

東京都交響楽団 第929回 定期演奏会Aシリーズ

 2021-06-14 @東京文化会館

秋山和慶:指揮
東京都交響楽団

金川真弓:バイオリン*

シベリウス:交響詩《吟遊詩人》op.64
シベリウス:バイオリン協奏曲 ニ短調 op.47*
プロコフィエフ:交響曲第7番 嬰ハ短調 op.131


白眉は2月の都響に登場して素晴らしいベートーベンのバイオリン協奏曲を聴かせてくれた金川真弓が再登場。

指揮の秋山御大共々コロナ代役だが、いずれも代役の方が上等だったのではないか。


今回はシベリウスだったが、出だしの弱音部に一瞬の違和感を覚えた以外は、どんどんと惹き込まれていった。


上手な演奏家はいくらもいると思うし、技術的巧拙の判断もつけかねるが、彼女の演奏は少しも癖を感じさせず、自然体で、上品だが、音楽の作りが大きいとでもいうのか、誘い込まれるともう絡め取られたように浸り切ることになるのが不思議だ。


秋山御大の良きリードを得た都響も気持ち良く協和して”協奏曲”の面白さが溢れていた。


金川嬢の演奏が如何に名演であったかは、先ずもって都響自身の反応が雄弁に物語った。

そして、客席もかつてない程沸き、声は発せられないけど、大きな拍手を送り続けた。

鳴り止まぬ拍手に、繰り返されたカーテンコールでは、舞台も客席も幸福に満ちていた。


メインのプロコの7番は初聴き。嬰ハ短調とあるが、冒頭以外どこが短調だったのか思い出せないくらい全体に明るくて軽い音楽だった。

特に後半は「トムとジェリー」を思い浮かべながら聴いたよ。ところがこれがソ連政府の”指導”による本人不本意な部分だというから、どう受け止めるべきか難しい。本人満足版もあるらしが?


♪2021-055/♪東京文化会館-05

読響第2回川崎マチネーシリーズ

 2021-06-14 @ミューザ川崎シンフォニーホール


セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
読売日本交響楽団

アラベラ・美歩・シュタインバッハー:バイオリン*

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲ホ短調 作品64*
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68
----アンコール-------------
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ第3番第3楽章*



僕にとっては「第九」以来の常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレの登場。特に彼を待っていた訳でもないけどやはり座るべき人がその場所に座ることで周囲も落ち着いて力が出せるのではないか。


冒頭の「運命の力」からして力強く美しいアンサンブルだった。


アラベラ・美歩・シュタインバッハーのメンデルスゾーン:バイオリン協奏曲は、2015年NDR響との来日時の放映録画を事前に見ていたので、ドレスを含め既視感に囚われたが、電気増幅より格段に素晴らしいという当たり前のことを実感。

アンコールがJ.S.バッハの無伴奏”組曲”ではなく”ソナタ”からというのは珍しい。これも良かった。


休憩を挟んで、弦の編成を14型に戻してのブラームス交響曲第1番。


「運命の力」でも感じたが、読響吹奏楽団の強力な事。

そして弦楽部も負けていない。


冒頭のティンパニー+低域のリズムに乗って、ぬたうつような管・弦のうねりが渋いロマンの世界にぐいぐい惹き込んでくれる。


最近、ブラームス観が変化しつつある僕としては、とても新鮮に聴くことができた。


オケ演奏としても上出来!


さて、今日の読響は、前回同様、弦奏者も譜面台は隣奏者との距離をとって各人1本の配置だだったが、驚いたのは、演奏中は誰ひとりとしてマスクを付けていなかった事だ。


プロとしては感染対策・健康管理に万全を期して、演奏中は集中できるよう、マスクなんぞして欲しくない。


コロナ禍において、全員 No Mask は初めての快挙かもしれない。


♪2021-054/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-11

2021年6月13日日曜日

NISSAY OPERA 2021「ラ・ボエーム」

2021-06-13 @日生劇場


指揮:園田隆一郎
新日本フィルハーモニー交響楽団
演出:伊香修吾
日本語訳詞・字幕 : 宮本益光
美術 : 二村周作
照明 : 齋藤茂男
衣裳 : 十川ヒロコ

台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
歌劇「ラ・ボエーム」全4幕(日本語上演・日本語字幕付)

ミミ:迫田美帆
ロドルフォ:岸浪愛学
ムゼッタ:冨平安希子
マルチェッロ:池内響
ショナール:近藤圭
コッリーネ:山田大智
ベノア:清水良一


17年初演の日本語版の再演(大変化で再演とは言い難し)。

日本語オペラの是非は一先ず置くとしよう。

問題は演出だ。

1幕や4幕にそこに居る筈のないミミが冒頭から存在しているのは、いくつもの舞台を観ている者には、これが回想なり幻想の演出だろうと気付くだろうが、初めての人は同一幕で現実に重なってゆくので話に混乱したのではないか。


初演と同じ演出家だが、初演は墓場で始まり墓場で終わる円環した洒落た演出だったが、今回は見慣れた始まりと終わり。これも悪くはない。

問題は2-3幕。特に2幕はコロナ対策の為か換骨奪胎だった。


本来は群衆シーンで、その中でミミとは対極の明るさをもつ健康的なムゼッタが華やかに盛り上げる場だが、群衆ゼロのまことに寂しい舞台となって、ムゼッタの華やぎも不発に終わった。昨年11月の「ルチア」も内容以上の惨劇になってしまったが、まことに演出家にとってコロナは悩ましい。


初演に比べた場合に、上述の問題はあったが、元々プッチーニの音楽が素晴らしく、歌手たち(池内響の巧さ再発見)、園田ちゃん、新日フィルいずれも健闘で、大いに楽しめた。ラストのミミ(迫田美帆)の臨終の場のロドルフォ(岸浪愛学)の叫びにも似たアリアには、また、やられてしまったよ😢。


♪2021-053/♪日生劇場-03

2021年6月9日水曜日

小林美樹バイオリンリサイタル

 2021-06-09 @東京文化会館


バイオリン:小林美樹
ピアノ:小林有沙

ブラームス:
バイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 Op.78
バイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
バイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108
--------------------
ブラームス:5つの歌曲 Op.105から第1番「歌が導くように」(歌の調べのように)
 



先月もリサイタルを聴いたが、その時はCD発売記念と言うことで収録された小品が中心だったがいずれも素晴らしく、個人的好みを言えば彼女のサン=サーンスのロンド・カプリチオーソを聴くのは初めてでは無かったが益々艶が出てきた。

いずれにせよ、とても充実したリサイタルだった。


今回は、大好物のブラームスのソナタ全曲。期待は高鳴る。


さて、自由席には困ったものだ。ワクチン打った翌日で熱はないのに熱っぽく、良席を求めて並ぶのはしんどかったが、無理して並んだその甲斐あって真ん中のかぶりつき!

この小ホールは良く鳴るので、どこで聴いてもそれなりに聴こえるけど、やはりこういう編成だとかぶりつきたい!


指板を打つ音も聴こえる距離。


大好きな曲なので何度も聴いている。

特にこのリサイタルにゆくことを決めてからはCD、映像Discで暇さえあれば聴いていた。


しかし、実際に、ナマで、実に緻密な音楽の緻密な演奏に接し、これまでのブラームスのイメージは一変した。

僕はこれまでブラームスの何を聴いていたのだろうか?


ブラームスを大雑把にいえば禁欲のロマンチストというイメージで捉えていた。ま、大抵その括りで音楽を受け止めることができた。


が、今回、「バイオリンとピアノの為のソナタ」全3曲を通してその溢れるエネルギーに圧倒された。そして題名どおり「ピアノの為のソナタ」でもあることを痛感した。


姉妹の丁々発止の掛け合い、合いの手、ヒタと寄り添うアンサンブルの妙。まさしく音楽を聴くという悦びに包まれた100分だった。


ワクチン副反応で内心から熱に浮かされていたのかもしれないけど、滅多に得られない知的な刺激と芳醇な体験を抱えて上気したまま帰途に着いた。


♪2021-52/♪東京文化会館-04

6月歌舞伎鑑賞教室

 2021-06-09 @国立劇場


●解説 歌舞伎のみかた

●三遊亭円朝=口演

竹柴金作=脚色
尾上菊五郎=監修
人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)二幕四場
      国立劇場美術係=美術

序 幕  第一場 本所割下水長兵衛内の場
    第二場 吉原角海老内証の場
二幕目  第一場 本所大川端の場
     第二場 元の長兵衛内の場

●「解説 歌舞伎のみかた」
解説                    中村種之助

●『人情噺文七元結』
左官長兵衛          尾上松緑
女房お兼                  中村扇雀
和泉屋手代文七       坂東亀蔵
鳶頭伊兵衛              中村種之助
娘お久                    坂東新悟
和泉屋清兵衛          市川團蔵
角海老女房お駒       中村魁春
                                ほか


この芝居は落語から移し替えられた。

本家落語版では、なんと言っても名人志ん朝の「文七元結」が大好きだ。何十回も聴いているが、おかしくて、ほろっとさせられる。


落語は時空が噺家の自在になるが、芝居ではそうもゆかないので、落語の話を少し端折ってあるが、うまく繋いであるので少しも違和感がない。

この芝居、昨年菊五郎ほか豪華版で楽しんだが、今回は主役長兵衛を松緑に譲り(初役)、菊五郎は監修に回った。

やはり松緑こそ実年に近く味わいもピッタリだ。菊之助では長兵衛は務まらない。


毎回、こんなバカな話はないぞ、と思いながらも惹き込まれ、ホクホク、ウルウルしてくる。

娘が身を売って拵えた50両の大金を、長兵衛は店の金を無くして身投げ寸前の文七に逡巡の挙げ句人の命にゃ変えられない、とやってしまう。


長兵衛の女房(お兼=扇雀)はどうせ博打で擦ったのだろうと大喧嘩。この扇雀も巧い。2人の絡みの面白さで話に説得力が生まれ、バカな話もありそうな話になってくる。


今月(来月も)は観賞教室として開催されているので、中・高生の団体がたくさん入っていて、2階最前列の好きな席は取れなかったが、その後取り消しが相次いだようで、結局、2階はガラガラだった。よほどか、空いてる席に移りたかったが、ま、それはじっと我慢して後ろの方で観ていたよ。


本篇に先立って恒例の歌舞伎案内を今回は種之助が務めた(本篇も)が、手際良く、滑舌良く、上手だった。



♪2021-051/♪国立劇場-04

2021年6月6日日曜日

NHK交響楽団 06月公演

 2021-06-06 @サントリーホール





井上道義:指揮
NHK交響楽団

シベリウス:交響曲第7番ハ長調 作品105
ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 作品55「英雄」


シベリウス交響曲7番が、良い塩梅にまったりとした音楽で、睡魔と戯れながら、井上導師がコッテリ作り上げた熱くて厚いアンサンブルを楽しんだ。

いやはやN響・弦(14型)の響きはやはり群を抜いている。

5日前に1列1番違いで聴いた某オケの弦とはだいぶ違うな。


ベートーベン交響曲第3番は冒頭のTuttiからして嬉しくなる響きだ。

が、処々、弦と木管の高域に濁りがあったのは残念。


全曲通じて遅め目で、特に2楽章は朝比奈+新日フィルを思い出すツンのめるようなテンポだが、そこにはこれまで聴き漏らしていたかと思えるような音楽が広がった。

総じて重厚で、もうこの楽章だけで満腹だった。


素晴らしい2楽章に比べると3楽章が軽い…のは、ま、そう作ってあるのだと一応納得するものの、一呼吸で突入した終楽章(緊張感を維持して良)さえも軽い感じは否めなかった。


2楽章の重力を(3楽章はいなしてもそれが役割として)、終楽章は堂々と正面から支えてさらに重厚な大団円を期待したよ。


リハーサルなど準備期間が十分あれば、ひょっとして井上流の頭から尾っぽまで餡の詰まった美味しく、独自な「英雄」を聴けたのかもしれない。


ま、それにしてもこの人には目を離せないな。

次回は何を聴かせてくれるか。


♪2021-050/♪サントリーホール-06

2021年6月1日火曜日

東京都交響楽団 第928回 定期演奏会Bシリーズ

 2021-06-01 @サントリーホール


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

オネゲル:交響曲第3番《典礼風》
フォーレ:レクイエム op.48<第3稿>


6年ぶりに聴く生のフォーレ「レクイエム」。

期待が大き過ぎたか、まずまずの印象。

独唱の入る馴染みのピエ・イエスとリベラ・メはとても心地よかった。特に前者はカウンター・テナーやボーイソプラノが歌う場合があるけど、”女声”のソプラノに限るなあ。


新国立の合唱は部分的には上出来だが、1曲目のオネゲルの第1バイオリンパートと同じく、時に高域に不快音あり。


まさか、ピッチを乱す者がいるとは思えないが、どうして透明感に欠けるのだろう?


♪2021-049/♪サントリーホール-05