2014年11月30日日曜日

第68回全日本学生音楽コンクール全国大会in横浜 バイオリン部門中学校の部

2014-11-30 @みなとみらいホール

<コンクール時の写真ではありません>


参加者:地方予選を勝ち抜いてきた中学生13人

バイオリン部門中学校の部入賞者

第1位 山影頼楓(やまかげ・らいか)
第2位 三谷本太一(みやもと・たいち)
第2位 清水怜香(しみず・れいか)
第3位 森山まひる(もりやま・まひる)
横浜市民賞 真田大勢(さなだ・たいせい)

27日のフルート部門(中学校の部/高校の部)
に続いて今日は、バイオリン部門中学校の部だ。

バイオリンは小学校、高校の部もあるけど、僕が忙しくて応募しなかった。ついでに、ピアノ部門は応募したけど選に漏れてしまった。

バイオリンはフルートと異なって演奏人口が多く、このコンクール出場者も多いのだろう。全国大会出場者は絞られているから同じ中学校の部のフルート部門より3人多い13名に過ぎなかったけど、厳しい競争を親子一丸となって勝ち抜いてきたからだろうが、付き添い保護者の多いこと。
フルート部門は会場はガラガラだったけど、バイオリン部門はほぼ満席状態だった。いやが上にも気持ちは高ぶるだろう。

バイオリン部門も過去2年も選定員として関わてきたので、顔なじみもあった。
67回の中学の部の参加者が3人、66回の小学校の部の参加者が1人、気がついたが、ほかにも混じっていたかもしれない。

フルートの部では誰が1位になるかという僕の予想は当たったのだけど、バイオリンに関しては今回もみんなのレベルが高くて、技術的な面や音楽性の面で、際立った子は居なかったように思ったのだが、専門家の耳には将来性も含めて判断可能なんだなあ、というか判断しなくちゃいけないものな。

全員自由曲を弾くが、13人中3人がヴィエニャフスキのバイオリン協奏曲第1番第1楽章を弾いた。同じ作曲家のバイオリン協奏曲第2番や別の作品を選んだ子もいて、結局ヴィエニャフスキの作品が6人に選ばれた。
過去の記録を手繰ってみるとやはりこの作曲家の作品を何人かが選んでいる。よほどコンクール向きなのだろう。

一体何者なのだ?
Wikipediaによると「1835-80年。ポーランドのヴァイオリニスト・作曲家。驚異的な技巧と情熱による華麗な演奏が知られ、その作品もまたスラヴ的情緒と名人芸的要素により今日なお愛される。1935年には彼の生誕100年を記念して、現在でもヴァイオリニストの登竜門として知られるヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールが創設された」…とある。
ブラームス、サン=サーンス、ビゼー、ブルッフなどと同じ頃の人だ。

さらにヴィエニャフスキ・コンクールについて調べると、第2回目以降はほぼ5年に1回開催され、第6回(72年)以降は日本人が常に上位入賞している。
いずれはこのコンクールにも出場を果たしたいという思いが今回の選曲にも反映しているのかもしれないな。

それにしても5年に1回って…どういう思想なんだろ?
最新の第14回(11年)は小林美樹が第2位だが、この人の演奏は今年だけでも2回聴いている。

…と脱線したけど、日本人好みなのかな。バイオリンの技巧を聴かせるのにはふさわしいのだろう。





横浜市民賞の選定基準は「演奏に感動したこと。もう一度聴きたいと思ったこと」という極めて主観的なものだ。選定員それぞれによって演奏から受ける印象は異なるだろうけど、そのために大勢の選定員が選ばれている。
投票結果を見ると、自分の意中ではないとしても、なるほどなあというところに落ち着くのが面白い。


♪2014-111/♪みなとみらいホール小ホール-47

2014年11月29日土曜日

読売日本交響楽団第76回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014-11-29 @みなとみらいホール



シルヴァン・カンブルラン:指揮
読売日本交響楽団

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調作品97「ライン」
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」


「魔笛」序曲はともかく、「ライン」は思い出せないくらい久しぶりだし、「英雄」は2月に聴いたけどその折も感ずるものがあったのでとても楽しみな組合わせだった。

そして、新たな発見というか音楽体験をした。

2月に金聖響+神奈川フィルで聴いた際にも「英雄」という作品の凄さの片鱗を感じたのだけど、今回はそういう次元ではなかった。
音楽の神の啓示を聴いたような、と大げさだけど、そんな気がしたなあ。神なんて信じていないけど、音楽の神はいるのかもしれないな。

シューマンは好きだし、「ライン」はとても良い感じで聴いた。
その後に「英雄」だ。ずいぶんと聴き馴染んだ作品で、心地よく楽しめるに違いない。そう思ってリラックスして聴いていたが、音楽が進んでゆくに連れ、いつもは感じないものを感じ始めた。
この感覚はどう説明すればよいのか分からないのだが、次から次へと表れる曲想は、聴き飽きるほど聴いているのにもかかわらず、この日はいちいちがとても新鮮だ。
よく思いつくなあと思うくらい突飛で新鮮なメロディーが噴き出してくるのだけど、すべての曲想は必然的に一つの形に収まってゆくのが奇跡にも思える。
おお、これこそがベートーベンの真髄なのか。
僕はようやく今、その入口に立っているのか、と思った。

こんな経験は初めてのことだ。
アマオケ時代、第九の演奏中に、やはり説明し難い感興高まる経験をしたことがあったが、それとは違う。

演奏・解釈が素晴らしかったから…でもないと思う。
シューマンの後に続けて聴いたのがそういう効果を齎したのかもしれないけど、だからといって、家でCDを聴いていたんでは到底得られない感覚だ。

よく分からないけど、体調のせいもあったのかな。
次回聴くときには多分今回経験した感覚は味わえないだろうけど、しっかり、感覚を研ぎ澄ませて聴いてみようと思う。

ところで、この奇妙な体験とは別に、今回は面白い勉強ができた。

プログラムに実に興味深い解説が出ていたので、端折って紹介しよう。

「魔笛」、「ライン」、「英雄」(特に後2者)に共通する「3」の不思議。

「ライン」も「英雄」もシューマンとベートーベンの交響曲の第「3」番である。「魔笛」にも「3」が散りばめられているそうだが、煩雑なので省略。

3曲はいずれも調性は変ホ長調。つまり♭が「3」つだ。

そして、「ライン」と「英雄」はいずれも「3」拍子で始まる。
<プログラムから>

「ライン」と「英雄」はヘミオラ(3拍子が2拍子に聴こえる書法)が取り入れられている。
この3拍子とも2拍子とも聴き取れる不安定さが音楽をスリリングにしているが、宗教的あるいは文化史的に西洋人の「3」に対するこだわりが音楽に表現されているとも解説してあって、興味深いのだけど、ここいらも端折る。

「英雄」の第3楽章トリオ部分では、ホルンが3本使われているが、当時の標準編成は2本だったところ、わざわざ3本というのも意味があるのかも、と解説は示唆している。

余談ながら、この3曲の楽器編成も非常に似通っている。まあ、そういう時代だったということかもしれないのだけど。

魔笛 ⇒Fl2、Ob2、Cl2、Fg2、Tr2、Hr2、Tb2、Tp、弦楽5部
ライン ⇒Fl2、Ob2、Cl2、Fg2、Tr2、Hr4、Tb3、Tp、弦楽5部
英雄 ⇒Fl2、Ob2、Cl2、Fg2、Tr2、Hr3、 無、 Tp、弦楽5部


♪2014-110/♪みなとみらいホール大ホール-46

2014年11月27日木曜日

第68回全日本学生音楽コンクール全国大会in横浜 フルート部門中学の部/高校の部

2014-11-27 @みなとみらいホール



参加者:地方予選を勝ち抜いてきた中学生10人、高校生14人

フルート部門中学校の部入賞者

第1位 脇坂颯(わきさか・ふう)
第2位 古賀奏美(こが・かなみ)
第3位 齋藤遥(さいとう・はるか)
第3位 靏野帆香(つるの・ほのか)
横浜市民賞 齋藤華香(さいとう・かこ)

フルート部門高校の部入賞者
第1位 清水伶(しみず・りょう)
第2位 山本英(やまもと・はな)
第3位&横浜市民賞 園田賀家⇒そのだ・かえ


日本音楽コンクール(1932年~)の後塵を拝して学生のみを対象として1947年に始まった。いずれも毎日新聞の主催、NHKも主催又は後援している。

2007年からは横浜で全国大会(チェロだけは東京大会が同時に全国大会となっている。参加人数が少ないからだろう)が開かれるようになって、それを機に本選の1位~3位とは別に各部門に横浜市民賞が送られることになった。




今年の例はチェロを除いて、
①フルート部門(中学校の部/高校の部)
②ピアノ部門(高校の部/小学校の部/中学校の部)
③バイオリン部門(小学校の部/中学校の部/高校の部)
④声楽部門(高校の部/大学の部)
と、計4部門10部に順位が決められ、各部毎に横浜市民賞が送られる。



この横浜市民賞を選定するのが、各部毎に応募に拠って決められた横浜市の横浜市民を代表する市民賞選定員であって、これに僕はここ3年連続して応募している。
その当選倍率はどれくらいか分からないけど、まあ、半分以上の確率で当選するようだ。
今年、ピアノ部門は応募できなかった(他の用事と重なった)し、応募した部について外れたものもある。

応募すると缶詰状態になって、彼らの演奏を審査員と一緒に聴くことになる。
しかし、横浜市民賞は、あくまでも素人の目に、耳に感動を与えてくれたかどうかが選定基準なので、楽器や音楽の専門家である必要はないし、むしろそれは邪魔なのかもしれない。




一つの部門の一つの部にだいたい二十数人~三十人位の選定員が選ばれ、各部門の各部毎に演奏終了後30分程度で投票して1人を選出するのだ。
技量とは関係ないのだけど、終わってみると、やはり本選で入賞した人が横浜市民賞を受けることが多いように思う。
アマチュアの目も、否、耳もまんざらではないのだ。



余談ながら、今日のフルートの中高生の各部門の優勝者は市民賞とは別に僕が多分この子だな、と思ったとおりの人が1位になった。素人目にも群を抜いていたように思った。

個人的にはこれらの部門・部に3年間選定員として継続して関わりあってきたので、出場者の多くが顔なじみだ。


高校1位の清水くんも一昨年は中学の部で1位、昨年は全国大会には姿を見せなかったが、今年は捲土重来で高校1位に輝いた。
高校の横浜市民賞の園田賀家(かや)さんは一昨年も出場だったが入賞ならず、昨年は姿を見なかったが、今年は3位入賞を果たし市民賞も獲得。僕より背が高くなっている!
彼らのこの2年間の確かな成長を目の当たりにして自分はどうか?とは思わないことにする。

♪2014-109/♪みなとみらいホール小ホール-45

第188回オルガン・1ドルコンサート ~フォーレをめぐるフランスの響き~

2014-11-27 @みなとみらいホール



梅干野安未 Ami Hoyano:オルガン

J.S.バッハ: 幻想曲ト長調 BWV 572
J.S.バッハ: 「われは神より離れじ 」BWV 658
G. フォーレ:組曲『ペレアスとメリザンド』より
 1. プレリュード 3. シシリエンヌ
C.サン = サーンス: 宗教的行進曲 作品 107
C.サン = サーンス:組曲『動物の謝肉祭』より
 7. 水族館 12. 化石
L.ヴィエルヌ: 『幻想小曲集 第2巻』よりトッカータ 作品 53-6



みなとみらいホールの名物コンサート?「オルガン1ドルコンサート」は4月から4回分も遠のいていた。ほかの行事とバッティングしたり、駆けつけたけど間にあわなかったりで7ヶ月ぶりの「オルガン1ドルコンサート」コンサートだ。

もっとも、この回もパスするつもりだった。
というか、この日から全日本学生音楽コンクールが始まり、その横浜市民賞選定員に応募して当選していたので、初日のフルート中学・高校部門に参加しなくちゃいけないため、その時間と微妙にダブるのでやめとこうと思ったのだ。

ところが、全学音コン(みなとみらいホール小ホール)には時間を1時間間違えて早く到着してしまい、事務局からはもう少し時間を潰してきてくれませんかと言われたので、そういえば、大ホールではオルガンコンサートだ、と思い出し、全プログラムは聴けないけど、まあいいか、で大ホールに移動した。



みなとみらいホール主催のコンサートの中には、クラシック・クルーズシリーズといい、オルガン1ドルコンサートといい、まことに信じられないような安かろう良かろうの企画があるのは大いにうれしい。

1ドル又は100円なのだ。
最近は円安傾向だから円で支払ったほうがお得!なんてレベルの問題ではない。
しかも受付にはSuicaまで用意してあるので、僕のような電子マネー派はワンタッチで済んでしまう。

僕は、みなとみらいホールの友の会(みらいすとくらぶ)の会員でもあるので、みなとみらいホール主催のコンサートの場合、早期販売や幾らかの料金割引などの特典があるが、1ドルコンサートではさすがに割引はないが、パイプオルガンの両脇の2階バルコニー席への優先着席が認められている。
でもこの日は、途中で抜けださなくちゃいけなかったので1階の出口に近いところに陣取った。




このシリーズは「ルーシー*、一人オーケストラ!+バッハ」というコンセプトで行われているので、毎回必ずJ.S.バッハのオルガン曲のほか、世界各国を音楽で訪ねるという企画だ。
今回はフランス音楽でフォーレ、サン=サーンスなどが取り上げられたが、あいにくと全部の作品を聴いているゆとりがなく、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」から「水族館」と「化石」を聴き終えて退席した。




特に、次のフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」の中の「シシリエンヌ」はとてもきれいな曲なので、チェロやバイオリンの曲に編曲されて単独でも有名な曲なので、是非ともパイプオルガンで演奏するとどうなるのか聴きたかったが、音楽コンクールに遅刻はできないので諦めた。

でも、久しぶりに大ホールに朗々と響き渡るパイプオルガンを楽しむことができた。




*なお、ルーシーと言うのはみなとみらいホールのパイプオルガンの愛称だ。

♪2014-108/♪みなとみらいホール大ホール-44

2014年11月26日水曜日

第32回神奈川トヨタ・クラウン・クラシック・コンサート

2014-11-26 @みなとみらいホール




石川星太郎:指揮

仲田みずほ:ピアノ

神奈川フィルハーモニー管弦楽団

シベリウス:交響詩「フィンランディア」
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
ドボルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88
-------------
アンコール

ドボルザーク:交響曲第8番から第3楽章



神奈川トヨタがスポンサーのコンサート。
88年から始まって今回が32回というから年に2回開催する年もあるらしい。今年はその年で、2月にも聴いた。

千組2千人の募集に今回も7千余人が応募したそうだが、今回も当選した。7倍なのか3.5倍なのか分からないけど前回も司会者は同じ数字を言っていたと思うけど。

良い席に座れるかどうかは早い者勝ち。ともかく、前回の轍を踏まないように、当選券と座席指定券の引き換え開始時刻の30分も前に到着したのに、既にホールの外のチケット売り場まで行列ができていた。



それでも、その努力の甲斐あって満足できる席を手に入れることができた。

今回も、ポピュラーな名曲ばかり。
すべて良かった。実に良かった。

指揮の石川星太郎って知らない。
85年生まれというからまだ20歳代で、藝大指揮科を首席で卒業後、現在シューマン音大に留学中だそうな。
巧いかどうかは分からない。奇を衒わない素直な音楽であれば許容できる。そしてそういう感じだった。
今日の神奈川フィルのコンサートマスターは第一コンマスの﨑谷直人。
彼は87年生まれで、国内最年少のコンマスだ。
この両者の息が合っていたかはちょっと疑問だったけど、もう少しにこやかな交流を演出してくれたら観客も安心できたのに、まだ若いか。



ピアニストの仲田みずほも若いが、女性だから生年月日は不詳だ。因みに中村紘子は今年7月に古希を迎えたそうだ。そのクラスになると年齢は問題にならないものな。
やはり20歳代だろう。遠目にはとても可愛らしい。

グリーグでは、ここが決め所という箇所でオケと微妙にずれたりしたが、これは大家にでもあることだ。生の勢いというものがある。そこを汲み取りながら音楽を仕上げてゆくのが指揮者、コンマス、独奏者の力量だろうけどにわかのコンビネーションでは難しいのだろう。
でも、これは実に些細な問題で、どうでもいいようなことだ。
音楽は実に良かった。素晴らしいコンサートだった。



どの曲も良かったが、特筆はドボルザーク(1841-1904)だ。
彼の交響曲では第9番「新世界から」がダントツに有名で、もちろんこれも名曲だけど、第8番はその栄光の陰に隠れてしまいがちだ。多分、熱心なドボルザークファンではむしろ第7番や第8番が好き、という人が多いかもしれない。
かくいう僕も、第8番のスラブ風なメランコリーに軍配を上げる。

第1番から第7番まではドイツ音楽(特にブラームス(1833-1897))の影響を受けており、第9番はアメリカのネイティヴの音楽を取り込んでいるが、第8番(1890年初演)だけは純粋にドボルザークの故郷チェコの民族色をたっぷり塗り込めた作品だ。それが実にいい。スラブ舞曲作品72の中のマズルカなどの短調の作品と共通する哀愁が立ち込めている。
それでいて、第4楽章など、冒頭のファンファーレに続くのは明らかにブラームスっぽくて、ブラームスの交響曲第1番(1876年初演)の第4楽章と作りが似ている。

ドボルザークはブラームスが第1番を書き上げるまでに既に5曲の交響曲を書いているが、おそらく、ブラームスが満を持して発表した第1番にかなり興奮したのではないか、と勝手な想像をたくましくしてみる。そして、第4楽章にリスペクトをそっと忍び込ませたのではないか。



アンコールは、そのドボ8の第3楽章(ワルツ)をそっくり演奏してくれた。これは実にうれしい、気の利いた選曲だ。
なんといっても、ドボ8の中でもっとも感傷的で美しく胸に迫る。

それに音が良かった。
良い席だから響が良かったとは思いたくないけど、この日の神奈川フィルは普段と違って弦の繊細な透明感が素晴らしかった。

♪2014-107/♪みなとみらいホール大ホール-43

2014年11月22日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団第302回横浜定期演奏会

2014-11-22  @みなとみらいホール


ピエタリ・インキネン[首席客演指揮者]:指揮
舘野泉:ピアノ
日本フィルハーモニー交響楽団

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:交響詩《海》
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
ラヴェル:《ダフニスとクロエ》第2組曲
------------------
アンコール
カッチーニ(吉松隆編曲):アヴェ・マリア(ピアノソロ)



ピエタリ・インキネンはフィンランド出身の若手指揮者。
インキネンとフランス音楽との関わりはプログラムに何ら説明はなかったが、3年半前の企画が東日本大震災で流れたのを、今回実現したということらしい。

ドビュッシーとラヴェルの作品だけでプログラムを組むというのは近代のフランス音楽の粋を楽しもうということだろう。

ドビュッシーの音楽史上の位置づけとか功績についてもっともらしいことを書けるほど詳しくないけど、手法的には調性を自由に拡張した旋律や和声を用い、表現においては幻想、情感など、それまでのロマン派音楽とは一線を画している。
時代は20世紀初頭。
まさに新世紀の音楽がドビュッシーによって開かれた。

ラヴェルはドビュッシーと同じフランス人で13歳若いだけだから、ほとんど同じ場所で同じ時代の空気を吸って生きた人だ。
御本人はどビュッシーからの影響を否定しているそうだが、彼が18歳の頃に発表された「牧神の午後への前奏曲」を聴かなかったはずはなく、聴いた以上大いに触発されたはずだ。


ところで、今月は(というより今年はというべきか)「ダフニスとクロエ」第2組曲がこの日で3回めだった。
東響(11月1日)、神奈川フィル(11月15日)、日フィル(11月22日)だ。実は16日のN響も当初は予定していたので、急遽の変更がなければ短期間に4回も立て続けに聴くことになっていた。

そこで不思議なのは、どうして、2014年11月に少なくとも4つのオケがそれぞれの定期演奏会で「ダフニスとクロエ」第2組曲をこぞって取り上げようとしたのかということだ。

今年はC.P.E.バッハの生誕300年に当たるというので、夏までに何度か作品を聴く機会があったが、ラヴェル(1875年-1937年)の生没年や「ダフニスとクロエ」の初演などの年のどれをとっても2014年が記念となるようなキリの良い数字にはならない。
偶然にしては重なりすぎで、気になってあれこれ調べてみたがまったく手がかりがない。



牧神の午後への前奏曲はフルートのソロで始まる。まずは4小節だけどその間息を継いでいないように見える・聴こえるのだけど本当は上手に息継ぎしているのだろうか。
あの長さを一息で吹き切るって自分の年齢分のローソクの火を消すより難しいな。まずはそこに感心した。

それはともかく、ドビュッシーもラヴェルも木管・金管・打楽器をフルに活用している。当時は古典は以前から存在した管楽器も改良が進んだという背景もあったろう。また、できたばかりの楽器を進んで取り入れたりしている。
管楽器奏者は、腕に自身があれば、そりゃモーツァルトやベートーベンを演奏するよりずっと楽しいだろう。
しかし、奏者には高い技量が求められるようで、特に「ダフニスとクロエ」ではピッコロ~フルート1~フルート2~アルト・フルートの連続技があるのに今回初めて気がついた。

近代ロマン派までの音楽を革新した旋法や和声を存分に活かすにはやはり新しい革衣(管弦楽技法)が必要だったのだなと納得した。


「左手のためのピアノ協奏曲」については、片手で弾いているとは思えない名人芸だったという感想にとどめておこう。

♪2014-106/♪みなとみらいホール大ホール-42

2014年11月20日木曜日

秋の夜長のみなとみらいクラシック・クルーズ ハマのJACK室内楽コンサート「シューマン」

2014-11-20 @みなとみらいホール


オール・シューマン・プログラム
 Ⅰ.幻想小曲集 op.73
  Va. 村松龍/Pf. 横手梓
 Ⅱ.アダージョとアレグロ  op.70
  Vc. 海野幹雄/Pf. 海野春絵
 Ⅲ.ヴァイオリンソナタ 第1番 op.105
  Vn. 白井篤/Pf. 横手梓
 Ⅳ.ピアノ四重奏曲 op.47
  白井/村松/海野/Pf. 桑生美千佳



弦3本とピアノによる室内楽、それもオール・シューマン・プログラムだった。数カ月前にチケットを入手して以来とても楽しみにしていた。

僕のシューマン開眼はとても遅い。
交響曲やピアノ曲の一部(「子供の情景」などよく耳にするモノ)は別にして、他のジャンル、特に室内楽の面白さを発見したのは、まずはブラームスの魅力を発見してからだ。
それからクララ・シューマンを仲立ちに、いわばこの微妙な三角関係のドラマがらみでシューマンの世界にも一歩進んで立ち入るようになったのは中年の域に達していた。通俗な動機で始まった奥手のファンだ。

シューマンはロマン派の正統な代表選手だと思う。
ロマンチックでポエジーだけど絶対音楽の枠にとどまっている。
一方、その音楽は甘くて美しいだけではなく、精神障害との関連をも指摘される暗さや迷走を感じさせる部分もあって、ベートーベンやシューベルトの音楽を引き継いでいると言われるけど、時に不安感が漂うのが別趣であり、そうでなくちゃシューマンの面白さはないと思う。
もっとも、シューマンにとっては孤独や狂気から絞り出した人間性の純粋な果汁だろうから、おろそかに聴くこともできないのだけど。

今回の演奏曲目は、シューマン32歳から41歳までに初演されたもので、ライン川に身を投げたのが43歳(その後2年余りで病死)であるので、一番若い時期の「ピアノ四重奏曲」は別として他の3曲は徐々に精神が蝕まれていった時期の作品だ。

確かに「幻想小曲集」(全3曲)の第1曲、「バイオリン・ソナタ 第1番」の第1楽章と第3楽章などには不安感や焦燥感を感じずにおれないが、同じバイオリン・ソナタの第2楽章など牧歌的で平安な音楽だし、「アダージォとアレグロ」のアダージォには透明で高い精神性を感ずる。

まあ、そのように聴き手を少し翻弄するところがシューマンの味わいではないかと思っている。
今日は取り上げられなかったが、子供のための(ピアノ)音楽をたくさん残した心の暖かさも、惹かれる要素ではある。



今日の演奏家で知っている人はバイオリンの白井篤(呼捨御免。以下同じ。)だけ。
この人はN響の第2バイオリンのフォアシュピューラー(次席)なので、N響の放送では通常の定位置が指揮者のすぐ右なので画面に入ることが多く、いつの間にかの顔なじみ。
ビオラの村松龍もN響の人らしいが、こちらは覚えがなかった。

チェロの海野幹雄も初めてだったが、終演後に会場で販売された海野夫妻のデビューCD(オール・シューマン・プログラム)を買って解説を読んだら、海野義雄の息子さんだった。



シューマンの作品は、唯一のオペラを除き、CD化されているものは多分全作品を持っているつもり(一度も聴いたことのないものも多数あるけど)のファンなので、この日の曲目に合わせてiTunesライブラリにまったく同じ曲目のプレイリストを作って事前に何度聴いたことか。
予習は万全、体調万全でコンサートはすべて楽しめた。

特に、外は小雨模様だったが、そのせいだろうか?
いつもは響きすぎると感ずる小ホールの残響が今回は気にならず、とてもきれいなアンサンブルの妙を味わうことができた。
今年、これまでに生で聴いたピアノ四重奏曲の中ではもっとも良い響でありアンサンブルだった。

この至福の時を僕は500円で堪能した。アンビリバボ!

♪2014-105/♪みなとみらいホール小ホール-41

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.62 サクスケルツェット ~驚異のサックス・アンサンブル~

2014-11-20 @みなとみらいホール



サクスケルツェット
木村有沙 服部 吉之 宗貞 啓二
池上 政人 岩本 伸一 大城 正司
成田 徹 二宮 和弘 大貫 比佐志
原 博巳 大石 将紀 有村 純親
松井 宏幸 江川 良子 國末 貞仁
貝沼 拓実 田村 真寛 田中 拓也

共演/成田 良子(ピアノ)

●ラター:「弦楽のための組曲」から<さすらい>、<私の青の縁取り帽子>、<アイロンをかけまくる>
●ビル・ウィーラン:「リバーダンス」
●星出尚志:「チェイサー」…≪ピアノトリオ≫
●ピアソラ:「ブエノスアイレスの春」…≪九重奏≫
●カバレフスキー:組曲「道化師」から「ギャロップ」、「小さな抒情的な情景」、「スケルツォ」、「エピローグ」
-----------
アンコール
●ダリウス・ミヨー:「スカラムーシュ」から「ブラジリア」
…≪ ≫のないものはサックス全員合奏



今日は、サクソフォーンばかり18人のアンサンブルだった。
サックスといえば、普通に接するのはアルトとテナー、時にバリトンだけど、それ以外にも沢山の種類があって、音域の高い楽器から順に並べると、
①ソプラニーノ
②ソプラノ
③アルト
④テナー
⑤バリトン
⑥バス
⑦コントラバス
という説明があったが、その後調べたところでは、上下両方にもう1つずつあるらしい。
今回は①は使われなかった。

18人全員がサックスを持って登場すると、舞台は金ピカだ。

これだけの人数のサクソフォーンアンサンブルを聴くのは初めてで、一体どんなサウンドだろうかと興味津々だったが、冒頭の作品など、大ホールの残響も手伝ってまるで弦楽合奏かと錯覚するくらいに豊かな音域と音色だ。



演奏された計6曲のうち一番古い時代でもカバレフスキー(1904-1987)の作品で、組曲「道化師」は管弦楽曲としては有名、と言うか、カバレフスキーの作品ではこの曲しか知らない。そして、この日演奏された中で唯一知っている曲だった。

その他はピアソラ以外は名前も知らない現代の作家の作品だったが、ラターの「弦楽のための組曲」は英国の民謡が織り込まれて楽しい曲だ。イングリッシュな音楽と言ってもいいのかな。

ビル・ウィーランという人は「リバーダンス」の生みの親らしい。そのダンスのためのとてもアイリッシュな音楽。

ピアソラは現代アルゼンチンタンゴの巨匠だし、つまり、すべてが非ドイツな音楽だった。
そこで、ふと思ったが、現代のドイツ音楽って存在するのだろうか?

演奏者は、ピアノを除いて、洗足学園音楽大学のサックス講師陣で編成されているようだ。

♪2014-104/♪みなとみらいホール大ホール-40