2014年11月20日木曜日

秋の夜長のみなとみらいクラシック・クルーズ ハマのJACK室内楽コンサート「シューマン」

2014-11-20 @みなとみらいホール


オール・シューマン・プログラム
 Ⅰ.幻想小曲集 op.73
  Va. 村松龍/Pf. 横手梓
 Ⅱ.アダージョとアレグロ  op.70
  Vc. 海野幹雄/Pf. 海野春絵
 Ⅲ.ヴァイオリンソナタ 第1番 op.105
  Vn. 白井篤/Pf. 横手梓
 Ⅳ.ピアノ四重奏曲 op.47
  白井/村松/海野/Pf. 桑生美千佳



弦3本とピアノによる室内楽、それもオール・シューマン・プログラムだった。数カ月前にチケットを入手して以来とても楽しみにしていた。

僕のシューマン開眼はとても遅い。
交響曲やピアノ曲の一部(「子供の情景」などよく耳にするモノ)は別にして、他のジャンル、特に室内楽の面白さを発見したのは、まずはブラームスの魅力を発見してからだ。
それからクララ・シューマンを仲立ちに、いわばこの微妙な三角関係のドラマがらみでシューマンの世界にも一歩進んで立ち入るようになったのは中年の域に達していた。通俗な動機で始まった奥手のファンだ。

シューマンはロマン派の正統な代表選手だと思う。
ロマンチックでポエジーだけど絶対音楽の枠にとどまっている。
一方、その音楽は甘くて美しいだけではなく、精神障害との関連をも指摘される暗さや迷走を感じさせる部分もあって、ベートーベンやシューベルトの音楽を引き継いでいると言われるけど、時に不安感が漂うのが別趣であり、そうでなくちゃシューマンの面白さはないと思う。
もっとも、シューマンにとっては孤独や狂気から絞り出した人間性の純粋な果汁だろうから、おろそかに聴くこともできないのだけど。

今回の演奏曲目は、シューマン32歳から41歳までに初演されたもので、ライン川に身を投げたのが43歳(その後2年余りで病死)であるので、一番若い時期の「ピアノ四重奏曲」は別として他の3曲は徐々に精神が蝕まれていった時期の作品だ。

確かに「幻想小曲集」(全3曲)の第1曲、「バイオリン・ソナタ 第1番」の第1楽章と第3楽章などには不安感や焦燥感を感じずにおれないが、同じバイオリン・ソナタの第2楽章など牧歌的で平安な音楽だし、「アダージォとアレグロ」のアダージォには透明で高い精神性を感ずる。

まあ、そのように聴き手を少し翻弄するところがシューマンの味わいではないかと思っている。
今日は取り上げられなかったが、子供のための(ピアノ)音楽をたくさん残した心の暖かさも、惹かれる要素ではある。



今日の演奏家で知っている人はバイオリンの白井篤(呼捨御免。以下同じ。)だけ。
この人はN響の第2バイオリンのフォアシュピューラー(次席)なので、N響の放送では通常の定位置が指揮者のすぐ右なので画面に入ることが多く、いつの間にかの顔なじみ。
ビオラの村松龍もN響の人らしいが、こちらは覚えがなかった。

チェロの海野幹雄も初めてだったが、終演後に会場で販売された海野夫妻のデビューCD(オール・シューマン・プログラム)を買って解説を読んだら、海野義雄の息子さんだった。



シューマンの作品は、唯一のオペラを除き、CD化されているものは多分全作品を持っているつもり(一度も聴いたことのないものも多数あるけど)のファンなので、この日の曲目に合わせてiTunesライブラリにまったく同じ曲目のプレイリストを作って事前に何度聴いたことか。
予習は万全、体調万全でコンサートはすべて楽しめた。

特に、外は小雨模様だったが、そのせいだろうか?
いつもは響きすぎると感ずる小ホールの残響が今回は気にならず、とてもきれいなアンサンブルの妙を味わうことができた。
今年、これまでに生で聴いたピアノ四重奏曲の中ではもっとも良い響でありアンサンブルだった。

この至福の時を僕は500円で堪能した。アンビリバボ!

♪2014-105/♪みなとみらいホール小ホール-41