2014-11-26 @みなとみらいホール
仲田みずほ:ピアノ
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
ドボルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88
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アンコール
ドボルザーク:交響曲第8番から第3楽章
神奈川トヨタがスポンサーのコンサート。
88年から始まって今回が32回というから年に2回開催する年もあるらしい。今年はその年で、2月にも聴いた。
千組2千人の募集に今回も7千余人が応募したそうだが、今回も当選した。7倍なのか3.5倍なのか分からないけど前回も司会者は同じ数字を言っていたと思うけど。
良い席に座れるかどうかは早い者勝ち。ともかく、前回の轍を踏まないように、当選券と座席指定券の引き換え開始時刻の30分も前に到着したのに、既にホールの外のチケット売り場まで行列ができていた。
それでも、その努力の甲斐あって満足できる席を手に入れることができた。
今回も、ポピュラーな名曲ばかり。
すべて良かった。実に良かった。
指揮の石川星太郎って知らない。
85年生まれというからまだ20歳代で、藝大指揮科を首席で卒業後、現在シューマン音大に留学中だそうな。
巧いかどうかは分からない。奇を衒わない素直な音楽であれば許容できる。そしてそういう感じだった。
今日の神奈川フィルのコンサートマスターは第一コンマスの﨑谷直人。
彼は87年生まれで、国内最年少のコンマスだ。
この両者の息が合っていたかはちょっと疑問だったけど、もう少しにこやかな交流を演出してくれたら観客も安心できたのに、まだ若いか。
ピアニストの仲田みずほも若いが、女性だから生年月日は不詳だ。因みに中村紘子は今年7月に古希を迎えたそうだ。そのクラスになると年齢は問題にならないものな。
やはり20歳代だろう。遠目にはとても可愛らしい。
グリーグでは、ここが決め所という箇所でオケと微妙にずれたりしたが、これは大家にでもあることだ。生の勢いというものがある。そこを汲み取りながら音楽を仕上げてゆくのが指揮者、コンマス、独奏者の力量だろうけどにわかのコンビネーションでは難しいのだろう。
でも、これは実に些細な問題で、どうでもいいようなことだ。
音楽は実に良かった。素晴らしいコンサートだった。
どの曲も良かったが、特筆はドボルザーク(1841-1904)だ。
彼の交響曲では第9番「新世界から」がダントツに有名で、もちろんこれも名曲だけど、第8番はその栄光の陰に隠れてしまいがちだ。多分、熱心なドボルザークファンではむしろ第7番や第8番が好き、という人が多いかもしれない。
かくいう僕も、第8番のスラブ風なメランコリーに軍配を上げる。
第1番から第7番まではドイツ音楽(特にブラームス(1833-1897))の影響を受けており、第9番はアメリカのネイティヴの音楽を取り込んでいるが、第8番(1890年初演)だけは純粋にドボルザークの故郷チェコの民族色をたっぷり塗り込めた作品だ。それが実にいい。スラブ舞曲作品72の中のマズルカなどの短調の作品と共通する哀愁が立ち込めている。
それでいて、第4楽章など、冒頭のファンファーレに続くのは明らかにブラームスっぽくて、ブラームスの交響曲第1番(1876年初演)の第4楽章と作りが似ている。
ドボルザークはブラームスが第1番を書き上げるまでに既に5曲の交響曲を書いているが、おそらく、ブラームスが満を持して発表した第1番にかなり興奮したのではないか、と勝手な想像をたくましくしてみる。そして、第4楽章にリスペクトをそっと忍び込ませたのではないか。
アンコールは、そのドボ8の第3楽章(ワルツ)をそっくり演奏してくれた。これは実にうれしい、気の利いた選曲だ。
なんといっても、ドボ8の中でもっとも感傷的で美しく胸に迫る。
それに音が良かった。
良い席だから響が良かったとは思いたくないけど、この日の神奈川フィルは普段と違って弦の繊細な透明感が素晴らしかった。
♪2014-107/♪みなとみらいホール大ホール-43