2022年6月26日日曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第378回定期演奏会

2022-06-26 @県民ホール



三ツ橋敬子:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
マルク・ブシュコフ:バイオリン*

ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(原典版)
チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ長調Op.35*
ボロディン:交響曲第2番ロ短調
------------------
イザイ:無伴奏バイオリンソナタ第5番から*


要約すれば、非常に面白く充実した演奏会だった。
先ず「はげ山の一夜」に吃驚。
え!これはなんだ。僕は何を聴いているのだ?
…と事態がなかなか飲み込めなかったが、プログラムに小さく《原典版》と書いてあって得心した。
馴染みのR.コルサコフ版とは全然違う!

その謎解きに心奪われて音楽に集中できなかったが、オケの尽力にもかかわらず、バラバラ感が付き纏ったのは、やはりオーケストレーションに問題があるのではないか。R.コルサコフも手を入れざるを得なかったのだろう。

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲一段と素晴らしかった。独奏バイオリンのマルク・ブシュコフは初聴きだが、独自色をチラチラ見せながら雄弁だった。音色も美しく音圧も高い。
2013年モントリオール優勝、19年チャイフスキー・コンクール2位(同年、金川真弓4位。ピアノ部門で藤田真央2位)という実績を感じさせた。

これは要注目の期待株だ。

鳴り止まぬ絶賛拍手で長いカーテンコールだったが、1楽章の後かなり確信的な拍手が方々から起こったのも宜なるかな。

メインディッシュがボロディン交響曲第2番。だいたい2年に1回の割で聴いているが、神奈川フィルでは初めて。

なので、馴染みはそこそこあったけど、聴く度に驚かされる。
ワインガルトナーはこの曲をチャイコフシキー「悲愴」と並んでロシア人の国民性が如実に反映された作品、と言ったそうだが、西欧化と民族性の両極端において説得力がある。
厚みのある弦が、今日は特段美しく響いた。3楽章ホルンソロも良し!

♪2022-093/♪県民ホール-08

2022年6月22日水曜日

第1961回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2022-06-22 @サントリーホール



鈴木優人:指揮
NHK交響楽団
郷古廉:バイオリン*

J.S.バッハ(鈴木優人編):パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
ブリテン:バイオリン協奏曲 作品15*
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K. 551「ジュピター」
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イザイ:無伴奏バイオリン・ソナタ第4番ホ短調 作品27-4 から第2楽章「サラバンド」*



「5日前のC定期ですばらしいアンサンブルを聴かせた同じメンバーとは到底思えなかった」〜と前回N響B定期の感想に書いたが、同文引用。

なぜか?分からないけど、サントリーホールの響きがイマイチ良くないことが原因の一つだろう。

そして、第1曲の出だしが美しくなかった。
それでその日の印象が決まってしまうのかも。

鈴木優人が編曲した「パッサカリアとフーガ ハ短調」がざわざわしている。
オルガン曲を管弦楽に直したが成功しているとは思えない。いっそ鈴木がオルガン独奏すれば良かったのに。

ブリテンの「バイオリン協奏曲」はなんと9年前に聴いたきり。どんな音楽だったかもすっかり忘れていた。

管-弦の使い方が打楽器的で美しく盛り上がる…ことはない。
独奏の郷古廉は高等技術を駆使して豊かな音圧でリードしたが…。

最後は「ジュピター」。ここに来てようやくN響らしい弦が響いた。
そもそも、編成も弦主体なので音のまとまりがいい。
プログラムには演奏時間31分と書いてあったが、実演もそんなものだったと思う。小気味良いテンポで、楽章間休止も極めて短く、好感した。

3曲とも弦10型(バイオリン1-2同数対抗配置。)で通したのは珍しい。なのにコントラバスはチェロと同じく6本というのも珍しい。

♪2022-092/♪サントリーホール-09

音楽堂アフタヌーンコンサート2022前期 「実力派カルテットへの誘い」 ウェールズ弦楽四重奏団

2022-06-22 @県立音楽堂


ウェールズ弦楽四重奏団
 﨑谷直人:Vn1
 三原久遠:Vn2
 横溝耕一:Va
 富岡廉太郎:Vc

モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 K.421
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」
ベートーベン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」op.74
----アンコール----
ベートーベン:弦楽四重奏曲第5番 op.18-5 から第2楽章




神奈川フィルのコンマスでもある﨑谷を始め、各人個別の活動に接しているが、四重奏団としては初聴き。

リゲティ以外のモーツァルト・ベートーベン作品は有名で馴染みの、聴くのが楽しみなものばかり。

が、偉く慎重な演奏で、とてもアンサンブルの調和に神経を注いでいるのが分かる。

その分、即興性というか、ドライブ感が味わえなくて、きれいだけどつまらない。

多分、四重奏団としての更なる高みを目指している過程なのだろう。
求道者のようなアプローチに、凡人はついていけなかった。

♪2022-091/♪神奈川県立音楽堂-06

2022年6月21日火曜日

横浜18区コンサート 第Ⅱ期 毛利文香(バイオリン)&田原綾子(ビオラ)×ハマのJACK(弦楽五重奏)

2022-06-21 @かなっくホール



ハマの JACKメンバー(弦楽五重奏)
 バイオリン:三又治彦、倉冨亮太
 ビオラ:村松龍
 チェロ:海野幹雄
 コントラバス:松井理史

毛利文香:バイオリン*
田原綾子:ビオラ*

モーツァルト:「 魔笛」から“序曲“
モーツァルト:「 フィガロの結婚」からカヴァティーナ”失くしてしまって…あたし困ったわ !“
モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」から“皆が酔いつぶれるまで“
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
モーツァルト:きらきら星変奏曲
(以上弦楽五重奏)
モーツァルト:バイオリンとビオラのための協奏交響曲変ホ長調 K.364(弦楽五重奏伴奏版)*
----------------
モーツァルト:トルコ行進曲(弦楽七重奏伴奏版)*


今日は、全曲モーツァルト・プログラム。
そして今季18区コンサートで唯一、2人ソリストが登場した。バイオリンとビオラとなれば、もうモーツァルトの協奏交響曲しかないのではないか?

毛利も田原も横浜出身でかなっくHにも縁があったそうだ。
多分、同級生かな?高校時代から付き合いがあったというだけにホンに息が合って、とても楽しそうに協奏するので、聴いていても心持ちが良い。

このシリーズは弦楽五重奏をバックの協奏曲がメインだが、どの回も、音楽の骨格が良く分かりあれこれ発見があって興味深い。

アンコールの七重奏版トルコ行進曲はバイオリンの三又氏(N響)によるコリに凝った編曲が傑作。
また前半の弦楽五重奏曲集も、そもそもが編曲モノで協奏交響曲以外はすべてハマのJACKが自ら編曲しているので、遊心に溢れた編曲・演出がとても愉快だった。

♪2022-090/♪かなっくホール-06

2022年6月17日金曜日

第1960回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2022-06-17 @東京芸術劇場大ホール



ステファヌ・ドゥネーヴ:指揮
NHK交響楽団
リヴィエ・ラトリー:オルガン*

プーランク:バレエ組曲「牝鹿」
プーランク:オルガン協奏曲 ト短調
ガーシュウィン:パリのアメリカ人
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ボエルマン:ゴシック組曲 作品25から第4曲「トッカータ」*



指揮のステファヌ・ドゥネーヴは2015年のN響との初共演も6月定期だった。その時は全フランス作曲家(によるスペイン音楽?)プロだった。音楽のせいもあったかもだが、好印象を覚えている。

今回はプーランク2曲にガーシュイン(🇺🇸)。
前者の2曲はほぼ初聴き。

ガーシュインが最後を飾ったが、プーランクのオルガン協奏曲こそメインのような迫力と面白さがあった。

今日は第1曲から素晴らしい出来だった。

この日のマチネで新日フィルの上出来を聴いた後だったが、なんのなんの、さすがはN響の弦だ。格違いの透明感。
これで気持ちを掴まれて、次のオルガン協奏曲はなんて格好いい音楽だこと。

芸術劇場のオルガンはどういう仕掛けか知らないが、普段はクラシックな姿だが、今日はモダンな方の顔を見せていた。そのせいでもないだろうが、音が実に鮮烈だ。
芸劇の響はそもそも硬めだが、オルガンもそれに合わせたかのような鋭く明瞭な音色だ。
ずっと前にもこのモダンな方を聴いたことがあって、その時もホールの響きが良かったのは…偶然だろうな。

でも、どちらの化粧であれ、オルガンが姿を見せない時は、天井からの反響版がオルガンを覆い隠すので、オルガンを使う時と使わない時ではホールの響きが確実に異なる。
素人の想像に過ぎないが、オルガンを覆う反響版はかえって、音を舞台上に籠らせているのではないか?

ところで、この作品。
弦5部にティンパニーとオルガンだけ。管楽器は1本も使われていない。最近、立て続けにこの管なし音楽を聴いている。5/22東響、5/30-31都響、そして今日のN響オルガン協奏曲。

この、弦5部とオルガンという親和性の高い楽器群が作り出す響はまるで異次元の強化拡大弦楽合奏を聴いているようで、今宵はその饗宴に酔った。

さて、今日で今季のN響Cが終了した。
最初は、芸劇の悪口ばかり書いていたが、馴れるとこういう乾いた音もまあいいか、という気になってきた。
そうなってくると、絶好・最良席との別れがツラい。


♪2022-089/♪東京芸術劇場大ホール-04

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#8

 2022-06-17 @すみだトリフォニーホール



キンボー・イシイ:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団

周防亮介:バイオリン*

ベートーベン:バイオリン協奏曲ニ長調 op. 61*
吉松隆:鳥は静かに… op.72
吉松隆:交響曲第6番「鳥と天使たち」 op. 113
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J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第2番から「サラバンド」*


新日フィルは、3日前にデュトワの指揮で見事な演奏を聴いたので、今回はそこそこであれば良し、と構えていたが、これがどうして。デュトワの余後効か弦の響きがとても感じ良くて3曲とも楽しめた。


独奏バイオリンの周防(すほう)亮介は2度目だったが、今回も、少し、表現に独自性を感じた。聴きなれない節回しというか、呼吸点の違いなのかな。だからと言って、嫌味な訳でもないけど。

何より好ましいのは、音が実に明瞭で大きい。オケに埋もれるような場面はなく、はっきりと独奏Vnの動きを感じた。


吉松隆の2曲はいずれも初聴きだが、分かり易いのがいい。「現代音楽撲滅運動」を主唱し調性音楽を貫いているというのは本当かどうか知らないが、調性の中で現代にも通ずる大きな仕事を期待したいね。まあ、既に多くの大先達がやり尽くしている分野でもあるので、気を衒わずに、調性音楽を作るのがむしろ難しいのだろう。

しかし、たとえば、音を出さない音楽なんぞそれこそ《撲滅》したいところだ。

♪2022-088/♪すみだトリフォニーホール-06

2022年6月14日火曜日

シャルル・デュトワ指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 創立50周年特別演奏会

2022-06-14 @すみだトリフォニーホール



シャルル・デュトワ:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
上野通明:チェロ*

バーバー:弦楽のためのアダージョ op. 11
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 op. 107*
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 op. 64
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カザルス編:鳥の歌*


どんな名匠が振ろうとオケはオケ。急に巧くなる筈も無いが、指揮者によって出来具合の振幅変化はある。

で、今日の新日フィル。

驚いたよ。
出来具合測定メーターの針が<上出来>に振り切れてしまった。

バーバーの第一声が美しすぎて、そこで先ずやられた。

デュトワがオケを掴んだのか、オケが掴まれたのか、両者一体となって精妙な音楽がスキなくジワッと広がっていった。この心地良い緊張感は久しぶりに味わう。
新日フィルの弦がこんなにも透明感のある音を出すのか!
これはもうデュトワ・マジックとでも言わざるを得ない。
暫し陶然。

今回最大の楽しみはショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番。この曲にはショスタコの魅力が缶詰になっていると思っている。
中でも第2楽章の哀愁。
長音階を巧みに避けて外しながら調性はぎりぎり残している芸当。
大昔、チェロを習っていた時の発表会で、先生の用意した曲を嫌ってこの楽章の主要部分をチェロ二重奏に編曲して弾いたが、先生もよく伴奏してくれたものだ。そんな思い出のある曲だが、なかなか生では聴く機会が少ない。

上野君は過去何度も聴いているが全て室内楽ばかりで、今回初めて協奏曲を聴いた。

できれば避けたい客席の一桁列の効果は利・不利あるが、今回は利が上回った。フラジオの蚊の鳴くような最弱音からヤニの飛び散るような最強音まで縦横無尽のダイナミック・レンジがこの曲の魅力を最大限に発揮した。
ホルンとの二重協奏曲風なこの曲ではホルン首席の日高氏もここぞと美音を轟かせた。

メインのチャイコフスキー交響曲第5番も実に迫力があった。
これはオケに近い席だったから、音圧が高かったから、ということもあるが、音のせいだけではない。
普段は表情まで読み取れない団員の集中力が客席にも伝わり、音楽にかける意気込みの神々しい雰囲気さえ味わった。

確実に、今日の演奏会は、特別な経験となった。

良い演奏を聴くのは幸福なことでもあるが、この後に膨大な残念会が控えているとも言える。


♪2022-087/♪すみだトリフォニーホール-05

2022年6月13日月曜日

東京都交響楽団 第953回 定期演奏会Aシリーズ

2022-06-13 @東京文化会館



小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

メンデルスゾーン:交響曲第5番ニ短調 op.107 《宗教改革》
ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 op.55 《英雄》


メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」は滅多に聴けない。滅多に聴けないのを聴けたのが良かったが、好みで言えば、もう少しテンポ良くやってほしかったな。

記憶は曖昧だが、少なくとも前回聴いたのは鈴木優人がN響デビューした時のメインだった。とても良い印象だった。

中間楽章の順序がフツーとは反対で、3楽章がAndante。この冒頭部分がショスタコのジャズ組曲ワルツ#2によく似ている…と思っているのは、僕だけかも。

ともかく、親しみやすく、分かりやすく、面白いのだけど「宗教改革」のタイトルに似合わず音楽が全篇軽い気がするんだけどな。
終楽章のコラールも出来損なっている感が…🤪。

その点、盤石この上なしのベートーベン3番。
ベートーベン全交響曲中、ダントツの「第九」を別にすれば、3番が一番聴く機会が多い。
それで、いささか食傷気味ではある。

いつもクセを感じない小泉師のタクトが今日は処々で軽い溜めが入った。ひょっとしていつもそうだけど気がついていなかったのかも。その程度の匙加減。

2曲とも弦16型だった。
コロナを脱しつつある最近、都響は協奏曲以外は大抵16型に戻った。そんな大編成でやる必要があるのか?奏者が増えたらその分演奏リスクも増えるが、それを補って余りがあったか?と言えば、今日のような曲目ではそうは思えない。

今日の弦60人中マスクは6人。

♪2022-086/♪東京文化会館-11

6月歌舞伎鑑賞教室(第101回 歌舞伎鑑賞教室)

2022-06-13 @国立劇場



●「解説 歌舞伎のみかた」
解説                               中村玉太郎

●『彦山権現誓助剣』
毛谷村六助⇒中村又五郎
杣人斧右衛門⇒中村松江
微塵弾正実ハ京極内匠⇒中村歌昇
一味斎孫弥三松⇒小川綜真
一味斎後室お幸⇒上村吉弥
一味斎娘お園⇒片岡孝太郎
                     ほか

解説 歌舞伎のみかた

梅野下風・近松保蔵=作
彦山権現誓助剣-毛谷村- 一幕二場
(ひこさんごんげんちかいのすけだち-けやむら-)
       国立劇場美術係=美術

第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
第二場 同  毛谷村六助住家の場


国立劇場は、毎夏6-7月は鑑賞教室だ。
簡単な解説付きで休憩込み2時間20分は手頃。
お値段も破格。芝居は中堅〜若手だが勿論手抜きなし。

「毛谷村」は色んな役者で観てきたが、今回は六助を又五郎、その妻お園を孝太郎という好感コンビで楽しませてもらった。

又五郎の長男・歌昇が珍しく敵役を演じ、そのまた長男のちびっ子も出て親子3代。
人間国宝・東蔵(今回は出演せず)の長男が松江でこれも珍しく間の抜けた農民役。その長男・玉太郎が解説役、とこちらも親子出演。

歌舞伎ってこうやって芸が継承されていくんだね。


大勢の高校生が行儀良く鑑賞。事前のレクチャーもうしっかり受けてきたのだろう、ホンに立派な鑑賞態度で、掛け声禁止ではあるが、拍手のタイミングも実によろしい。

残念なのは、団体鑑賞ではない一般席(2ー3階)がガラガラだったこと。

♪2022-085/♪国立劇場-05

2022年6月11日土曜日

かなっく演劇部「3人ぐらいdeシェイクスピア」第6弾 シェイクスピア原作「ロミオとジュリエット」

2022-06-11 @かなっくホール



演出:柏木俊彦(第0楽章)
脚本:齊藤実雪(かなっくホール)

乳母・僧ロレンス他:井上加奈子(アル☆カンパニー)
ロメオ:伊原農(劇団ハイリンド)
ジュリエット:今井美佐穂(第0楽章)
リュート演奏:久野幹史

シェイクスピア原作「ロミオとジュリエット」


まったく、灯台下暗しで、近所のかなっくホールが「3人ぐらいdeシェイクスピア」なんてシリーズをやっているとは知らなかった。
今日はその第6弾「ロミオとジュリエット」。
役者は3人。
音楽はリュートのみ。
舞台装置は長箱一つ。
照明に工夫。
全篇60分。

小説・戯曲・映画で何度も目にし、チャイコフスキーやプロコフィエフの音楽で、ベッリーニのオペラでもお馴染みだ。

むしろ、物語の展開より、如何にして60分で、3人で演ずるのか、に興味津々。
もちろん色々と無理をしているが、部分的にはシェークスピア劇の香りも残しながら、一応ドラマが成立し、楽しむ事ができた。

区民文化センターという公的施設が自主企画で、極めて安価で、こういう試みを続けていることに大いに感心した。
『かなっく演劇部』なんて存在しないが、これも遊び心なのだろう。
今後が楽しみだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~
ところで、「ロミオ」も「ジュリエット」もその表記は多様だ。
「ロメオ、ロメーオ、ローミオ、ローミオー、ジューリエット」など。
今日の芝居のタイトルのように、演劇や小説の分野では「ロミオとジュリエット」が近年は大勢を占めているようだ。

ところが、音楽の世界では「ロミオと〜」が多く、そこで「ロメジュリ」と略記される事が少なくない。

本の場合は何千人、何万人が翻訳する度に、自己の信ずるもっともらしい響を読みに充てるのだろうが、楽譜は、そう再々新版が出る訳じゃないので、昔使った「ロメオとジュリエット」が今も生き続けているんだろう。

♪2022-084/♪かなっくホール-05

石田泰尚スペシャル 熱狂の夜 第2夜《デュオ》

2022-06-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール


石田泰尚:バイオリン
外山啓介:ピアノ

シューベルト:アヴェ・マリア
モーツァルト:バイオリン・ソナタト長調 K301
フランク:バイオリン・ソナタイ長調
フォーレ:シシリエンヌ Op78
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」Op40
グリーグ:バイオリン・ソナタ第3番ハ短調 Op45
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J.ウィリアムズ:映画「シンドラーのリスト」から“テーマ”
シュニトケ:タンゴ
アブレイユ(加藤昌則編曲):Tico Tico no Fuba
ロドリゲス(大橋晃一編曲):ラ・クンパルシータ



ピアノに外山啓介を迎えて、バイオリン・ソナタと小品集。
ピアノ独奏が1曲あっても良かった。

プログラムを見ると組長らしからぬ可愛らしいのが並んで「千住真理子・名曲の花束」ぽい。

第1曲は、これ以上は無理!という感じの最弱音のバイオリン独奏から始まったが、指が指板を離れる時の音まで響いてくる。

そんな静寂から始まったが、終始、こだわりの音色は細く美しい。
それが奏功する曲もあるが、フランクのソナタの終楽章後半など、もっと激しく、もっと咽び泣いてくれという欲求不満が募った。

人気者の演奏会を話のタネにとでも考えた中年御婦人が大勢いたのではないか。フランクのソナタでもグリーグのソナタでも同様に第2楽章の後で拍手が起こった。

プログラムには楽章と速度記号が書いてあるのだから、目を通しておいてほしいね。尤も、楽章間の拍手が禁則という訳でもないし、ホンに良い出来なら拍手したって構わないと思うが、今日の拍手はそういう感じではなかったね。

アンコールで「シンドラーのリスト」のテーマが聴けて良かった。石田の演奏では2回目だ。というより、バイオリン独奏では石田以外で聴いたことがないよ。
タンゴは石田組の自家薬籠中の物か、とても良かった。

♪2022-083/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-21

2022年6月9日木曜日

読響第5回川崎マチネーシリーズ

2022-06-09 @ミューザ川崎シンフォニーホール



セバスティアン・ヴァイグレ:指揮
読売日本交響楽団
宮田大:チェロ*

●チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」Op71-a
第1曲 小序曲
第2曲 行進曲
第3曲 こんぺべい糠の踊り
第4曲 トレパック
第5曲 アラビアの踊り
第6曲 中国の踊り
第7曲 あし笛の踊り
第8曲 花のワルツ

●チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 作品33<フィッェンハーゲン版>*

●ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
プロムナード
Ⅰ グノームス(こびと)-プロムナード
Ⅱ 古城-プロムナード
Ⅲ テュイルリー(遊びの後の子供たちの喧嘩)
Ⅳ ビドロ(牛車)-プロムナード
Ⅴ 殻をつけた雛鳥のバレエ
Ⅵ サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ(全持ちのユダヤ人と貧しいユダヤ人)
Ⅶ リモージュ(市場)
Ⅷ カタコンブ(古代ローマの地下墓地)-死せる言葉による死者への呼びかけ
Ⅸ 鶏の足の上の小屋(バーパ・ヤガー=民話上の妖婆)
Ⅹ キエフ(キーウ)の大門
----アンコール-------------
マーク・サマー:ジュリーオー*



今日の読響はロシア音楽尽くし。しかもチャイコが2曲とムソルグスキーの3本立て。
やはりクラシック音楽界でロシア音楽は一大勢力だ。

昨日の東フィルの最後がチャイコの「白鳥の湖」だったが、1曲目がまるで東フィルの後を継ぐかのようにチャイコの「くるみ割り人形」。
こちらは聴き慣れたフツーの版。こうでなくちゃ。

次の「ロココ〜」もフツーの版(正確には「フィッェンハーゲン版」でこれが”フツー”で、昨年末にN響+佐藤晴真が原典版を弾いたのがむしろ稀な事だらしい。)。
聴いているだけでは違いは分からないが。

相変わらず、宮田大のチェロの音色の豊かなこと。

メインが「展覧会の絵」。これがすこぶる上出来。

↑に紹介した年末のデスピノーサ+N響が「ロココ〜」と2本立てで演奏したのが「展覧会の絵」で、僕にとってはこれが同曲のここ数年の大傑作だったが、今日の読響はそれに十分肉薄していた。

16型の大編成の弦の厚みのあるサウンドとブラスの咆哮は、ミューザという良く鳴る場を得てまろやかに広がった。

昨日の東フィルも実力のあるオケだが、サントリーでは金管の音が硬く、それが昨日の終盤のザワザワ感を生んだと思うが、今日のミューザでは柔らかく暖かく豊かに響いて、これこそ「管・弦・楽」の愉しみだ。

余談:Mask着用率15%と極めて少数だったのも気分良し!

♪2022-082/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-20

2022年6月8日水曜日

東京フィル第970回サントリー定期シリーズ

2022-06-08 @サントリーホール



ミハイル・プレトニョフ(特別客演指揮者):指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

シチェドリン:カルメン組曲〈シチェドリン生誕90年〉
チャイコフスキー:『白鳥の湖』から(プレトニョフによる特別編集)



プレトニョフによる名作オペラの管弦楽版2曲…と思いきや、違う。「カルメン」組曲はシチェドリンがバレエ用に編んだもの。ビゼーの他作品も織り込まれている。

それに「管弦楽」ではなく弦5部+ティンパニー+4群の打楽器編成で管楽器は1本も無い。

初聴きではなかったが違和感が拭えない。
楽しむというより、お預けを食らったワンちゃんの心境。

「白鳥の湖」はプレトニョフがバレエ音楽中心ではなく<物語>の進行に合わせて再編したもの。
そんな訳で「4羽の白鳥」等の楽しい音楽も省略されていてつまらない。

そもそも、バレエの劇伴から音楽だけを取り出して物語を再現する事に如何なる意味が?

フツーに聴きなれたのを聴きたかったね。
それに、今日の東フィルの出来はイマイチ。
特に「白鳥」の終盤など、管を中心にざわつきを感じてしまったよ。

と、減点したものの、プレトニョフがまた来日して機嫌よく滅多に見せない笑顔も覗かせたのは同慶なり。


♪2022-081/♪サントリーホール-08