武藤英明:指揮
ホルンソロ
P・ヴォイタ(ケルン放送響首席)
M・バラノウスキー(フランクフルト放送響ソロ)
K・ヤブルコヴァ(チェコフィル次席ソロ)
Z・ヴァシナ(チェコフィル)
チェコ国立室内管弦楽団パルドビツェ
新垣隆:弦楽オーケストラとフルートのためのFNM(世界初演)
シューマン:4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック 作品86
ベートーベン:交響曲第7番イ長調作品92
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アンコール
ドボルザーク:スラブ舞曲 作品72 第2番(作品46と通し番号で第10番)
ヨーゼフ・シュトラウス&J.シュトラウスⅡ:ピチカート・ポルカ
チェコで名の通ったオケと言えば、何と言ってもチェコ・フィルだろう。次いでプラハ室内管弦楽団かな…。いずれにせよナマで聴いたことはないが。
「パルドビツェ」はプラハの近くの町の名前で人口9万足らずの田舎町?らしい。そこを本拠にしているオケという訳だが、そんな都市の存在も知らなかった。
指揮の武藤英明という人のことも知らない。チェコで活躍している人だそうだ。
安っぽいプログラムにはオケのことも指揮者のこともなんにも説明がないのには驚く。
まったくもって有名ではない指揮者とオケだが、ホール主催のシリーズ物の一コマではなく、単体の演奏会だ。お仕着せのプログラムではなく、自分の好みでチケットを買ったのだ。
なぜか。
室内管弦楽団で、ベートーベンの7番を聴いてみたい、という興味があった。それにわざわざチェコからやってくるのだし、それも国立のオケなのだから下手な訳はないだろうという希望的観測があったから。
パーヴォ・ヤルヴィ率いるドイツ・カンマー・フィルが52人前後だったが、このオケはそれよりさらに少なくて4人のホルン奏者とオケ36人、計40人くらいだったと思う。この規模だと音楽のスケルトンが目で見えるような感じさえする。
で、実際の演奏を聴いてみたら、なかなかいい。
新垣隆氏の世界初演という作品はタイトルの意味も分からないしあまり面白い音楽ではなかったけど弦楽合奏が美しいので、これはかなりの実力者集団だろうと思った。
次のシューマンは珍しい作品でCDは持っているが、ナマで聴くのは初めて。4本のホルンのけたたましいファンファーレから始まって、ホルン奏者にとっては面白くも相当な難曲のようだ。
全3楽章が続けて(アタッカで)演奏される。
これを聴いて管楽器のレベルの高さが分かる。
第7番は初演時に80人を超える規模で(弦5部で69人)演奏されたそうで、今も普通のオーケストラの演奏ではだいたいその程度の規模だと思うが、初演当時としては驚くような大編成だったのだろう。
それが、半分程度の室内楽オケなので音楽の響は軽量級なのだけど、先に書いたように音楽的構造が分かりやすくて面白い。
深刻ではなく、重厚ではなく、お友達のようなベートーベン。これも一興であった。
楽団員が楽しそうに演奏しているのも良かった。
アンコールでは、母国チェコの作品、スラブ舞曲全16曲の中でも最もメランコリックな第10番を取り上げた。なかなか心に沁みる演奏だった。
ラストのピチカート・ポルカではひょうきんな演出もあって、観客も大笑いしながら聴いた。
♪2017-015/♪みなとみらいホール-05