2015-12-23 @NHKホール
パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
森麻季:ソプラノ
加納悦子:メゾソプラノ
福井敬:テノール
妻屋秀和:バリトン
ベートーベン:交響曲第9番ニ短調 作品125 「合唱付き」
2日連続して「第九」を聴いた。
1日目は横浜交響楽団で600名の大合唱団が付いた。アマチュアながらかつてないほどの上出来だった。
翌日、神奈川フィルを聴いた。こちらはプロだから当然といえば当然だが、こちらも普段の定期ではなかなか聴けない名演だった。そして、やはりアマチュアとプロではこうも違うか、と感心したものである。
「第九」は真夏にも東京シティ・フィルで聴いているので、年初からはN響が4回目になる。
日フィル、読響も本来なら定期は「第九」だったが、今年は他のコンサートとダブったこともあり、他をやりくりしてまで両者を聴けば今年は7回も「第九」を聴くことになるので、日フィル、読響いずれも他日の別公演に差し替えてもらった。
あと1回東響の「第九」が残っているが、まあ、経験上N響の「第九」が一番だろうと期待して出かけた。
神奈川フィルの時と同様、最初から合唱団もソリストも壇上に揃った。これは音楽の流れを阻害しない良いスタイルだ。
いよいよ始まると、冒頭の第2バイオリンとチェロの6連符の響がもう違った。
弦に透明感がある。
音楽は「終わりよければすべてよし」なんていい加減な世界ではない。
しかし、「はじめよければすべてよし」といういい加減さはある。
最初に聴き手の気持ちがギュッと掴まれてしまえばあとは気持ちよく音楽に乗って行けるのだから。
N響でベートーベンを振るのは初めてというパーヴォ・ヤルヴィは、N響とは初めてであっても、すでにドイツ・カンマ-フィルとのベートーベン交響曲全曲録音もしており、当然のこととして「第九」も自家薬籠中のものの一つだろう。
とはいえ、今回の「第九」演奏会に当っては、多分、脳内で綿密に音楽構成を確認し、実際にオケとも相当リハーサルをしたのではないか。
元々腕の良いN響の団員がヤルヴィのタクトで(時に眠れる)実力が目一杯引き出されたのだろう。
演奏技術の巧みさだけではなく、ヤルヴィの音楽造形にも驚嘆した。
テンポがいい。かなり早めだ。
そして、音楽の輪郭がはっきりして引き締まっている。
疾走感と緊張感で緩んだところがまるでない。
だからといって第3楽章がおろそかになってはいない。しっかり歌って天上の調べだ。
第4楽章の低弦のレシタティーヴォの息遣いもツボに嵌ってゾクゾクさせる。
最後、大合唱の興奮が頂点に達したと同時に、管弦楽だけで突入するプレスティッシモの21小節。時間にして十数秒だが、このクライマックスが見事なこと。
終わらないで欲しい!と思いながらも遂に終曲を迎えて、オーケストラも観客ももう完全燃焼した体だった。
こんなに見事な演奏をするN響は初めてだ。
「第九」はおそらくレパートリーの中で最高に演奏会数の多い作品だろう。手慣れた曲ということもあったろうが、パーヴォ・ヤルヴィの気迫も手伝って、かつて聴いたことがない素晴らしい演奏を聴かせてくれた。やはり、日本のオケでは最高水準だ。
♪2015-131/♪NHKホール-14