2015-11-29 @ミューザ川崎シンフォニーホール
栁澤寿男:指揮
梯剛之:ピアノ*
横山桂:チェロ**
プロースト交響楽団
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83*
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」**
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アンコール
モーツァルト:幻想曲ニ短調 K397*
プロースト交響楽団はアマチュアだ。初めて聞く名前。
首都圏の大学オケのOBが主体らしい。年2回定期演奏会を開いている。近年はミューザやみなとみらいホールを舞台にしているというのにその存在に気が付かなかったなあ。
なぜ、聴きに行ったのか?
横響(横浜交響楽団)以外のアマオケを久しく聴いていないので、<アマオケ>のレベルを確かめたかった。
アマチュアであるにせよマーラーの「巨人」はやはりナマで聴くべき音楽だ。これが聴けるのは良い機会だ。
ミューザでアマオケがどう響くのだろう?
そもそも「巨人」を演奏するにふさわしい実力があるのか?
そんな興味やお手並み拝見といった<上から目線>で出かけたが…(指揮者とソリストは言うまでもなくプロである。)。
ブラームスのピアノ協奏曲第2番は一昨日神奈川フィルで聴いたばかり。
最初にホルン、後を追ってピアノの超低域からのアルペジオが2回繰り返されて木管、弦と厚みを増してゆく。この冒頭で破綻するプロオケもあるが(ホルンがヘマをする)、ここは上手に乗り切って快調な出だし。
その後も管楽器にやや惜しまれる部分はあったけど実にうまい。
とりわけ弦の綺麗なこと。
どうして?
アマチュアとも思えないほどきれいな音色だ。この日の1回だけを聴く限り横響(も前回は素晴らしかったが)よりまとまりがいい。良い響だ。
マーラーも同様だった。
弦楽器は少々失敗してもソロでもない限りかき消されてしまうから目立たない。
管楽器はどうしても失敗が目立ってしまうのが気の毒でもあるが、全体としてとても優秀だと思った(音大のオケにはかなわないけど。ま、当然だろう。)。
このアンサンブルの美しさは、ひょっとしてミューザという極上のホールも手伝っているに違いない。
横響はもっぱら音楽堂(年8回の定期のうち「第九」だけ県民ホール)だ。音楽堂は残響でごまかしの聴かないホールだけに実力がそのまま出てしまう。
横響がミューザで演奏するのを是非とも聴いてみたい。一皮むけたように上手に聴こえるのではないだろうか。
ブラームスは、テンポが全体として遅めに感じたが、終わってみるとほぼ50分で標準的な長さだった。
梯剛之(かけはし・たけし)氏の演奏をナマで聴くのは初めて。
生後1ヶ月で失明したそうだが、全盲なのかどうか分からない。ニュース記事では「全盲の~」と書いてあるのもあるからそうなのかもしれない。
辻井くんの場合と同様に指揮者が見えないのだから、どうやって音楽の流れを掴むのだろうと思うけど、全神経が目になり耳になっているのだろう。
ただ、ブラームスの第4楽章の入りはピアノとビオラが同時なので、一体どうやって合わせたんだろうと思った。指揮者の動きが伝わってくるのだろうか。
ピアノの音が実に気持ち良い。
辻井くんの時にも感じたのだけど、ピアノの音の抜けがいい。
辻井くんの時は1階5列目?という場所であったが、今回は3階(第4層)なので距離がある分マイルドに伝わるけれど、やはりカーンという感じのスッキリした音だ。
みなとみらいホールは大ホールでも小ホールでもピアノの音は席によって音の大きさは異なっても種類は同じように聴こえる。
迫力はあるが抜けの良い音ではない。低音の重音などは音の塊として攻撃的に響いてくるが、ミューザの音はピアノのすぐそばで聴いているような原音を残した感じの澄んだ音だ。
ポタージュスープとコンソメスープの違いかな。
と、前に思ったことを今回再確認したのだけど、違うだろうか。
マーラーも上出来だった。部分的にはプロのような響だし、ピッチも揃って濁りは少ない。
これは前述のようにミューザの音響の良さに助けられている部分もあるだろうが、それを言えばプロだって同じということだ。
今回、ミューザの音響設計ポリシーのようなものをちょっと感じた。
還暦を迎えた県立音楽堂の音響との違いは根本的な思想の違いによると思う(良し悪しではなく時代の好みを反映しているのだろう)が、みなとみらいホールとの違いは思想の違いによるのか、偶々そうなっただけなのか、興味深い。
♪2015-120/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-24