2015年11月26日木曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.72 児玉桃&ゴーティエ・カプソン ~フランスの風薫るデュオリサイタル~

2015-11-26 @みなとみらいホール


児玉桃:ピアノ
ゴーティエ・カプソン:チェロ

ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38
サン=サーンス:「動物の謝肉祭」より"白鳥" 


ドビュッシーというと牧神の午後~とか交響詩「海」といった管弦楽作品や「映像」、「版画」、「ベルガマスク組曲」などのピアノ曲を思い出すが、室内楽はピンと来ない。
でもチェロソナタやバイオリンソナタを作曲していることは、たまにCDを聴くから知っていたけど、しっかりと聴いたこともないので、初耳のようなものだった。

ぼんやり聴いていたら、気が付いたら終わっていた。
何しろ、3楽章と言いながら2-3楽章はつながっている(アタッカ)ので実質2楽章のようなもので全部で10分強の長さだ。

チェロのいろんな奏法が用いられており、演奏難度は高いようだ。
しかし、これといって盛り上がりもないままに終曲する。

このドビュッシー唯一のチェロソナタの完成が1915年で、16年~17年(死の前年)にかけて作曲された同じく唯一のバイオリンソナタも同じような曲調で、既に病状が思わしくなかったようだから、全体として重苦しく、晴れやかな感じはFinaleに至ってもない。
既に癌を患っており、この曲の完成後2年ほどで亡くなるが、そういう事情も背負っていたのかもしれない。
チェロの高度なテクニックを聴かせるのが主眼の作品ではないか。

ドビュッシーに比べるとブラームスのチェロ・ソナタはずいぶん分かりやすい。まあ、自分がこの曲に馴染んでいるからでもあるけど。暗くて重いけどロマンティックな香りも残した冒頭のメロディーがきれいだ。
全3楽章とも短調(ホーイーホ)だ。せめて第2楽章の三部形式のいずれかのパートを長調にすれば変化が出て他のマイナー部分の哀愁が一層引き立ったろうに。と考えるのは素人の思いつきなのだろうな。
第3楽章はピアノの旋律をチェロが追いかけて始まる(フーガ)。両者のからみ合いが面白い。


チェロのゴーティエ・カプソン。1981年生まれのフランス人。アントニオ・バンデラスを若くしたような男前だ。
コンクール入賞歴多数。世界中の一流オケと共演をしている。
相当な腕前なのだろうが、印象に遺ったことが二つ。
一つはエンドピンの長いこと!
1mくらい伸ばしていたのではないか。
もう一つは、楽器の音が素晴らしくよく通る。良く鳴るのだ。
みなとみらいホールの大ホールでチェロの独奏を聴くのは数知れずだが、こんなに明瞭できれいな音を聴くのは初めてだ。

もっといろんなタイプの音楽を聴きたかったな。

使用楽器は1701年製のマッテオ・ゴフリラーだそうな。
チェロに限らず弦楽器の銘器といえばストラディヴァリウスやアマティ(のチェロがあるか知らないけど)が有名だが、このゴフリラーを愛用する名人も多いようだ。
カザルス、フルニエ、シュタルケル、ヨーヨー・マ、マリア・クレーゲルそれに長谷川陽子など。

もちろん、個体差もあるだろうけど、今日のゴティエ・カプソンの音が素晴らしかったのは、腕もあるだろうが、やはりゴフリラーの素晴らしさに由来しているのだろう。


♪2015-116/♪みなとみらいホール-34