2015年11月15日日曜日

N響第1820回 定期公演 Aプログラム

2015-11-15 @NHKホール


ディエゴ・マティウス:指揮

ケイト・ロイヤル:ソプラノ
NHK交響楽団

マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調-アダージェット
マーラー:リュッケルトによる5つの歌
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64

指揮のディエゴ・マティウスはまだ31歳だ。
彼の3歳上のグスターボ・ドゥダメルと同じくベネズエラの出身で、同じくエル・システマという国家的音楽教育システムの出身だそうだ。
3年近く前にN響を振ったことがあるらしいが、定期演奏会ではなかったようで、今回がN響定期のデビューになった。

終演とともに客席に上がった大きな歓声と拍手は、終わったばかりの演奏に対するものもあるがそれ以上に観客のN響へようこそという歓迎の気持ちの現れだったように思う。

マーラーのアダージェットを単独で聴いたのは初めてだ。弦楽5部のほかハープが1台という編成だが、ここではあまり弦の美しさを感じなかった。
最近、僕はとても弦の音にこだわりすぎているなと反省しているが、やはり、気になってしまう。
昨日の日フィルが50点なら今日のN響は70点か。

マーラーの2曲めは、タイトルは聴いたことがあるけど、手持ちのCDにもコンサートビデオの中にも見当たらないので、多分初めて聴いた。
ソプラノのケイト・ロイヤル嬢が大柄な美形でもちろん声も美しく、まだ若手だが、サイモン・ラトルが重用しているそうだ。

マーラーの歌曲というので、締りのない歌曲性に乏しく長ったらしいものか、と覚悟していたけど、5曲で20分弱。シューベルトやシューマンの音楽のような分かり易さはないけど、悪くはなかった。手元の訳詞を読みながら、こういう内容にこんなメロディをつけるのか、と違和感が拭えなかったのは事実だけど、これも聴き慣れると面白くなるのかもしれない。

アダージェットはマーラーの交響曲<第5番>の第4楽章だ。
リュッケルトの詩による歌は<5曲>で完結している。
それで、と言う訳でもないだろうけど、メインプログラムはチャイコの<5番>だった。


ディエゴ・マティウスが以前N響を指揮した時にチャイコの4番を演奏したそうだが、今度はその次という意図もあったのかもしれないけど、彼にとって、チャイコフスキーは得意のレパートリーであり、とりわけ第5番は「勝負曲」だと解説にあった。

それくらい、意気込んで第5番を聴かせてくれるとは嬉しい。

その出来は…。

第1曲目のアダージェットで弦の音にやや不満を持っていたけど、その後はだんだん良くなる法華の太鼓で、勝負曲においてはいつものきれいな響を聴かせてくれた。

心地よく第3楽章が終わると、そこでほとんど一呼吸置いただけで(観客に咳払いするゆとりも与えず)終楽章に入った。
もう、怒涛のフィナーレだ。

昨日のインキネン(の日フィル)が下手だったとは全然思っていないけど(いや、少しは思っているか…)、オケの響はざわざわして残念感たっぷりだっただけに、今日のN響の繊細で重厚な弦のサウンドに管楽器もバリバリと響いてくる高揚感は、同じ曲だとは思えないほどの幸福な時間を共有できた。


♪2015-113/♪NHKホール-11