2022年2月28日月曜日

東京都交響楽団 第944回 定期演奏会Aシリーズ

2022-02-28 @東京文化会館


大野和士:指揮
東京都交響楽団
小林愛実:ピアノ*

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 op.58
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調 op.93
----アンコール-----------------------
ショパン:24の前奏曲 op.28-4 ホ短調 Largo*


水際対策で入国できなくなった外国人演奏家の代打で登場した小林愛実はヒットどころかホームランをかっ飛ばした。

ショパンコンクール、ファイナリストと4位の違いか。
確実に以前とは一皮剥けていた。
自信に満ちて、それでいて丁寧に音楽に寄り添って、ベートーベンがもし聴いていたら、頭に雷が落ちたように驚いたのではないか。俺はこんな美しい曲を書いたのか⁉︎と。

弱音の早いパッセージも正確で美しい。ま、その位プロなら当たり前だろうけど、コロコロ転がりながら音楽の生成を感じた。

オケとピアノの「音楽」の受渡しが絶妙!

以前は、演奏中の感情・表情過多が気になったが、今日は、作品故かもしれないが、入魂しながらもほぼ無表情で通した。

協奏する「音楽」の面白さを十分に見せ・聴かせてくれた。

都響のサポートがこれまたイツニナク見事。大野の求心力の大きさもあったのだろう。

アンコールは当然ショパン。
前奏曲集からホ短調を選んだのは無論、偶然であって、後半のショスタコ10番ホ短調を意識していた訳じゃあるまい。

とにかく、お見事。

ただ、音楽を”聴く”というより”体験する”という滅多に得られない至福の時間を文化会館ではなく音楽堂で過ごしたかったなあと聴きながらずっと思っていた。文化会館大ホールでは今日のレベルが限度だろう。ピアノの音の美しさはこんなものではないもの。

後半のショスタコーヴィチ交響曲第10番。
弦は前半の14型から都響”得意?”の16型へ。

管弦楽技法の違いが如実に演奏にも表れ、1楽章は苦戦。
2楽章以降持ち直した…というか、高域弦の出番が少なくなったから瑕疵が目立たなかった。
3楽章以降はまとまったが格別の感興得られず。

編成を大きくするのはリスクを伴う。
16型が活かせるかそこが問題だ。

♪2022-027/♪東京文化会館-03

2022年2月26日土曜日

ホールアドバイザー小川典子企画 女の愛と生涯

2022-02-26 @ミューザ川崎シンフォニーホール





ソプラノ:市原愛
ピアノ:小川典子*
朗読:江原陽子

シューマン:歌曲集「女の愛と生涯」op. 42
 Ⅰ あの方にお会いしたその時から
 Ⅱ 誰よりも素晴らしぃお方
 Ⅲ 私には信じられない
 Ⅳ 私の指輪よ
 Ⅴ 妹たち、手伝って
 Ⅵ 愛しい人、あなたは見つめている
 Ⅶ お前は私の喜び
 Ⅷ はじめて与えられた苦しみ
クララ・シューマン:ポロネーズ第1番 op. 1-1*
クララ・シューマン:たおやかな蓮の花 op.13-6
メンデルスゾーン :歌の翼に op. 34-2
メンデルスゾーン :春の歌 op. 62-6*
シューベルト:野ばら D. 257
シューベルト:ます D. 550
シューベルト:ズライカ第1番 D. 720
シューベルト:楽興の時第6番 D. 780/6*
シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン D. 118
R.シュトラウス:あすの朝 op. 27-4
R.シュトラウス:献呈 op. 10-1
------------------
シューマン:献呈(歌曲集「ミルテの花」第1曲 op25-1)
*⇒Pf Solo

シューマンは大好きだけど、声楽作品で馴染んでいるのは歌曲集「女の愛と生涯」と歌曲集「ミルテの花」くらい。
しかし全曲を生で聴いたことがなかった。

今回は広義の「女の愛と生涯」に特化した好企画。
ソプラノが市原愛というのも嬉しや。


シューマン「女の愛と生涯」に加え、クララ・シューマン、メンデルスゾーン、シューベルト、R.シュトラウスによる広義の「女の愛と生涯」を巡る作品を揃えた全19曲。うちPfソロ3曲。

訳詞はついてなかったが、その代わりに各作品の内容を説明する朗読付き。

最後がR.シュトラウスの「献呈」。
全て心地よく聴いたが、アンコールになんとシューマンの「献呈」(「ミルテの花」第1曲)。心憎い構成で、とてもホクホクできた。

♪2022-026/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-06

シューマン:献呈

2022年2月25日金曜日

東京フィル第964回サントリー定期シリーズ

2022-02-25 @サントリーホール


井上道義:指揮
東京フィルハーモニー交響楽団

大井浩明:ピアノ*

エルガー:序曲『南国にて』作品50
クセナキス:ピアノ協奏曲第3番『ケクロプス』*(1986、日本初演)〈クセナキス生誕100年〉
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番へ短調 作品10
------------------------
J.シュトラウスⅡ:「南国のバラ」


エルガー以外は初聴き(クセナキスは日本初演なので当然)。

ショスタコーヴィチ交響曲第1番をこれまで聴いていなかったのかと小吃驚。


エルガー「南国にて」の冒頭の第1バイオリンの金切り声を除けばすべて楽しめた。サントリーにしては響きが良かった。


クセナキスは他作品を聴いた経験もあり、前日のミュージック・カレッジでの講義で楽譜(図形?記号?暗号)︎も見ていたのでなんでも来い気分で臨んだ。


東フィル2月定期3会場のうち、ピアノの屋根を取り払ったのはサントリーだけだったらしい。


オケの不快音が大きくてピアノの音は埋もれがちになった(屋根を外したのは、2F席には好都合だったろう。舞台左右と後ろを取り囲む席があるのはサントリーだけだから、その辺の席にも届くように外したのだろう。1階正面には不都合だけど。)。

独奏部分のみ綺麗に響いた。


弦打楽器は奏法を駆使していろんな音を出せるが、それに乗るピアノは昔ながらの平均率。聴いていてこのチグハグ感がもやもやして解消できなかった。


その後に聴いたショスタコ1番は、クセナキス効果で耳に穏やかなもので、特に3楽章や4楽章の遅いテンポの(やはり歌いにくいものの)旋律が19歳の作とも思えない大人びた情感で、クライマックスは既にタコ印が押されていると感じた。


2月に入ってショスタコ3本目。明日も都響で交響曲第10番を聴く。


🇺🇦💢🇷🇺気持ちは複雑。



♪2022-025/♪サントリーホール-03

2022年2月24日木曜日

MUZA ミュージック・カレッジ 第2回 聴く〜音楽を「見る」!

2022-02-24 @ミューザ川崎シンフォニーホール



講師:横山真男(作曲家/明星大学情報学部教授)

多井千洋:ビオラ(東京交響楽団)
濱﨑麻里子:フルート(東京交響楽団)
池城菜香:ハープ

ビバルディ:フルート協奏曲『ごしきひわ』より第2楽章(1729頃)
H.ビュッセル:『2つの小品』から
横山真男:フルート、ビオラ、ハープとスペクトログラムのためのバガテル(2021)
L.ベリオ:
 『セクエンツァ』Ⅰ(1958フルート)、同Ⅱ(1963ハープ)、同Ⅲ(1967ビオラ)
横山真男:図形楽譜「 無題」(2017)
ー柳慧:電気メトロノームの為の音楽(1960)
ドビュッシー:フルート、ビオラとハープのためのソナタ(1915)
 第1楽章 牧歌 レント - ドルチェ・ルバート
 第2楽章 間奏曲 テンボ・ディ・メヌエット
 第3楽章 フィナーレ アレグロ・モデラート・マ・リゾルート


市民大学のようなものだけど、約2時間半のうち講義は30分程度でほとんど音楽観賞だったので「観賞」にカウントすることにした。

第1回目が関係者のコロナ陽性で延期され、今日は1回目にして2回目の内容だ。

テーマは「聴く」。
なんと大雑把な!

それで、音楽を「見る」という切り口が用意された。

音・音楽の要素から始まって、ハンスリックの音楽論(後述)をチラと見てから、一応ビバルディから始まったが、音楽の可視化、楽譜の拡大、楽音でない音楽と、講師自身の作曲した作品を含め、超現代音楽へと急傾斜した内容だった。

ロールシャッハみたいな図形を見ながらの即興演奏や、超モダンな特殊奏法を駆使したものなど、演奏家は大変だったろうと思う。

最後に演奏されたドビュッシーは既に終了予定時間を超えていたが、まともな音楽で締め括れて良かった。


ハンスリックの音楽論を冒頭紹介しながら、それが講義全体の背骨にはならず、各論と有機的につながらなかったのは残念だ。

ハンスリックといえば、噂は聞いている。
ブラームス側に立ちワーグナー、ブルックナーなどを激しく非難した人だ…という程度しか知らなかったが、その根本となる美学の一端を読んで宜なるかなと思った。

ワーグナーも大好き。ブラームスも大好き。

ただ、絶対音楽の受止め方としては、感情や情景に過敏にならない事が重要だと兼ねてから思っていたので、ハンス〜の考えには共感できる。

我々は、作曲家の手元を離れた途端その音楽が纏うことになる物語や、自己の経験を、音楽に<過度に>投影すべきではないと思う。気持ちの入れ過ぎは、単なる自己陶酔にすぎない。


♪2022-024/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-05
<市民交流室>

2022年2月20日日曜日

かなっくクラシック音楽部 フロイデコンサート2022 〜カシオペイア クァルテット〜

2022-02-20 @かなっくホール


カシオペイア クァルテット(かなっくホール専属SQ)
 渡辺美穂:Vn1
 ビルマン聡平:Vn2
 村松龍:Va
 弘田徹:Vc

ベートーベン:弦楽四重奏曲第5番イ長調 op.18-5
吉松隆:アトムハーツクラブカルテット op.70
ブラームス:弦楽四重奏曲第3番変ロ長調 op.67
----------------
吉松隆:アトム〜から終楽章


星座のWは「カシオペア」と習った。
Wikiでは「カシオペヤ」とある。今日のString Quartet は「カシオペイア」…とややこしい。

4人の出身(在籍)は、第1バイオリン⇒元大フィルコンマス、第2バイオリンとチェロは新日フィル、ビオラはN響の奏者(ハマのJackのメンバーでもある)。だから、第1バイオリン以外は日頃顔を合わせているが、SQとしては初めてだった。

このSQはホール専属らしい(かなっくホールにはほかにも「カメラータかなっく」という専属アンサンブルもある。)。

で、演奏だが、4人のアンサンブルがとても力強い。

特にVn1の渡辺美穂は我がミュージック・ライフに初めて登場し、強い印象を残した。
立場上当然かもしれないがコンマスぽい自信に満ちたリードが小気味良いこと。

ベートーベンの四重奏曲第5番は、生では初聴きだったかも。シャキシャキとした演奏がベートーベンらしい。


驚いたのは吉松作品「アトムハーツクラブカルテット」だ。
正式には「Dr.Tarkus’s Atom Hearts Club」で、つまり、ピンクフロイドの「原子心母」にエマーソン・レイク&パーマーの「タルカス」を加え10万馬力でシェイクした音楽を目指す倶楽部(the Beatlesへの敬意を示すネーミング)が到達する音楽の形、を想定したものだという。なんとややこしい。

ま、早い話、弦楽四重奏版”The Rock”なのだ。
30分も続けばしんどかったかもしれないが、10分程度の曲で面白かった。

最後にブラ3番と正統派に戻った。
この作品も生では珍しいのだけど、終楽章の旋律に郷愁を感ずるのはなぜだろう?と思ったら、小山実稚恵&アルティSQの録画で散々聴いていたからと思い出した。

最近、芸劇、サントリー、県民ホール、それにミューザでさえ、なんだか、音が硬いと思っていたが、今日のかなっくホールでも硬めだった。
冬場は空気が乾燥するが、それが楽器やホールの響きに影響を与えているのだろうか。

とまれ、今日の元気で切れ味の良いカルテットにはそれも幸いした。

♪2022-023/♪かなっくホール-01

2022年2月19日土曜日

オペラ「ミスター・シンデレラ」全2幕

2022-02-19 @新宿文化センター



大勝秀也:指揮
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

台本・演出:高木達
作曲・音楽監修:伊藤康英

伊集院正男⇒山本康寛
伊集院薫⇒鳥海仁子
垣内教授⇒山田大智
伊集院忠義⇒江原啓之
伊集院ハナ⇒きのしたひろこ
赤毛の女⇒鳥木弥生
卓也⇒松原悠馬
美穂子⇒神田さやか
マルちゃんのママ⇒鈴木美也子
マミ⇒山邊聖美
ルミ⇒高橋香緒里
ユミ⇒遠藤美沙子

オペラ:伊藤康英「ミスター・シンデレラ」
全2幕〈日本語上演/日本語字幕付〉

予定上演時間:約2時間20分
 第Ⅰ幕   55分
  休憩   20分
 第Ⅱ幕   65分


出演している鳥木女史からSNSで「ねえ、みつばち先生〜」と歌いますよ、と言われて観に行った。
登場人物に蜜蜂の研究をしている教授がいて、その彼を誘惑するのが鳥木女史の役柄。そして、たしかに「みつばち先生」は、バスルームから悩ましくも呼ばれたのである。

チケ取りが遅かったので、好みの良席は残っていなかった。
案の定、音圧・響などに不満があったが、席のせいというより、このホールがアコースティックに向いていないように思った。
また、話の内容が大ホール向きではないし、オケが必要なのか、とも思った。
つまり、小ホールで室内楽程度で、客席とも親密に環境ならもっと没入できたかもしれないが。

男が、間違って、女王蜂の性ホルモンからできた秘薬を飲んで、潮の干満に合わせて女になったり、男に戻ったりする。
浮気していると誤解した男の妻との間がややこしいことになる。彼女自身もそんな亭主より上司に気持ちが傾き、亭主の方も、女になっているときに妻の上司を誘惑しようとする。
すったもんだの挙句、元の鞘に。という話だが、初演が20年も前だそうで、内容的にも今日のジェンダー問題を意識しているとは思えない。
今や、男が女になる…という話であれば、避けて通れない性自認の問題に関して、プログラムには後付けの説明が書いてあったが、そうじゃないだろ、という感じ。

♪2022-022/♪新宿文化センター-01

2022年2月16日水曜日

第1953回 NHK交響楽団 定期公演 B-1

2022-02-16 @サントリーホール



尾高忠明:指揮
NHK交響楽団
金川真弓:バイオリン*

ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」- 4つの海の間奏曲 作品33a
バーバー:バイオリン協奏曲 作品14*
エルガー:変奏曲「謎」作品36
------------------------
アメリカ民謡:深い河*


水際対策で入国できないヒラリー・ハーンの代役として登場した金川真弓が素晴らしい演奏を聴かせてくれるだろうと期待して臨んだが、その期待を軽々と超えた。

彼女を初めて聴いたのは丁度1年前の都響だったが、その時、不思議な事にオケの前奏を聴きながら出番を待つ彼女の佇まいにもう心惹かれてしまった。

次の機会も都響で、絡め取られるように彼女の演奏に浸り切った。

今日も、何か、不思議な力が働いている。

豊かな音量、美しい音色、ま当然だろうけど危なげのない技術。
そういう人は他にもたくさんいるけど、彼女の場合は、バイオリンを弾いていない時間も、ただ、舞台に立っているだけでも音楽が湧き上がってくる。

その姿を見て、音楽を聴いていると、ホンに幸せに包まれるのは不思議だけどありがたい。

今日のN響の出来。
バーバー:バイオリン協奏曲協は上等。

しかし、その他はまずまず。
ブリテンの1曲目はバイオリンパートの高域が全然美しくない。2曲目からは持ち直した…というか弱点が出なかった。

エニグマもN響ならこのくらい当然…だが、変奏の味わいがいつになく楽しめた。

コンマスは白井圭だが次席に今日も郷古廉が座っていた。

なお、尾高忠明は入国できないパーヴォ・ヤルヴィの代役。

♪2022-021/♪サントリーホール-02

2022年2月15日火曜日

ランチタイムコンサート グラスハープの癒しの世界

2022-02-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール



グラスハープ:大橋エリ
ギター:後藤郁夫

黒人霊歌:アメイジング・グレイス
ハーライン:星に願いを
ロジャース:エーデルワイス
タイギリス民謡:ピクニック
アンダーソン=ニロペス/ロバート・ロペス:映画「アナと雪の女王」から レット・イット・ゴー
宮沢賢治:星めぐりの歌
ホルスト:ジュピター
パッヘルベル:カノン


グラスハープはTVで演奏を聴いたことがあったが、生では初めて。
最初はソロから。その後ギターと。

初めて聴く生の音は、あたかも天から降り注ぐ光のシャワーみたいで驚いた。PAが控えめにアシストしていたが、でないと大ホールでは遠くまで届かないだろう。

大橋エリさんは日本でほぼ唯一のプロ奏者らしい。
チラシで見ると可愛らしい人だが、読書用メガネのまま出かけて、視界はボケていたのでその点はよく分からなかった。

「音楽は目で聴く」が信条の僕としては誠に残念!

いくら綺麗な音色でも、表現力に乏しいからMC込み50分で丁度ヨシ。
来月のモーツァルト・マチネは井上道義と組んでグラス”ハーモニカ”の為のモーツァルト作品をグラス”ハープ”で演奏することになっている。これは楽しみだ。


♪2022-020/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-04

2022年2月12日土曜日

名曲全集第174回 清水和音 X ラフマニノフ 至高のピアニズム

2022-02-12 @ミューザ川崎シンフォニーホール


大友直人:指揮
東京交響楽団
清水和音:ピアノ*

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18*
ルーセル:バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第2組曲 op.43
ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1919年版)
------アンコール--------------------
スクリャービン:2つの詩曲 Op32-1*


何がホールの響きを決定するのか判然としないが、いろんな要素の絡み合いだろう。
いつものホールでいつもの席でいつものオケを聴いても変化はある。
冬場だから客席は着膨れ。それが残響を吸収しているのは間違いないと思う。端的にピアノの音が硬かった。

ま、好みの問題で、こういうのが好きな人もいるだろう。オケも強奏Tuttiの後の余韻が短い。昨日の芸劇でさえもっと響いていた。

そんなこんなで前半のショパンはしっくり感じなかった。

が、後半はむしろこの硬さが奏功したように思う。

ルーセルは珍しいが昔「バッカス〜」も聴いた事がある。
印象派の時代だがストラヴィンスキーと作風がよく似ている。

そして最後がそのストラヴィンスキーの「火の鳥」。

昨日のN響もストラヴィンスキー2本立てで、しかも名演だったから、翌日の東響は分が悪い…という不安を跳ね飛ばすこちらも名演で、途中から、N響の続きを聴いているのか、と錯覚する程の繊細さと迫力ある演奏だった。

♪2022-019/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-03

2022年2月11日金曜日

第1952回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2022-02-11 @東京芸術劇場大ホール


鈴木雅明:指揮
NHK交響楽団
鈴木慎崇:ピアノ*

ストラヴィンスキー:組曲「プルチネッラ」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947年版)*


古楽の大家がストラビンスキー2本を振る。
コロナがなけりゃ永久に有り得なかった組合せかも。

しかし、見事なもので、これは指揮者の功績なのか、N響が本気を出したのか、両方か。

自宅でも聴きたい…ような作曲家ではないけど、そこが定期演奏会というお仕着せの良いところだ。
僕が選ばずともオケが好んで演奏するので「プルチネッラ」も「ペトルーシカ」も数多く聴いている。
おかげで、最近では楽しんで聴けるようになった。

2本中、何と言っても「ペトル」が面白い。

管弦楽による煌びやかな色彩のマジック。
管楽器は難しそうだが、ほぼノーミスだったし、14型の弦も繊細さ・透明感を維持した。

これ程の美しい見事なアンサンブルなら、無調であれミニマルであれ、何だってずっと聴いていたくなる。さすが充実のN響サウンド。

昨日のサントリーホールでのショスタコ2本(特に5番)にがっかりした身としては、SNSでの評判が余りに高いので我が耳が故障していたのかと不安に思っていたがそうではなかったよ。
あいにくながら、昨日の読響と今日のN響では雲泥の差と言っていい。

♪2022-018/♪東京芸術劇場大ホール-01

2022年2月10日木曜日

読売交響楽団特別演奏会

2022-02-17 @サントリーホール


井上道義:指揮
読売日本交響楽団
服部百音:バイオリン*

ショスタコーヴィチ:バイオリン協奏曲第1番イ短調 作品77*
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 作品47
----アンコール--------------------
ハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンスト:シューベルトの『魔王』による大奇想曲」作品26*


井上道義得意のショスタコーヴィチ2本立て。

前半は服部百音が独奏のバイオリン協奏曲第1番。

この曲はなぜか、取り上げるオケ、バイオリニストが多く、いろんな人で何度も聴いているが、その割になかなか馴染めない。

第1楽章がいつも眠くなる。

2楽章以降は面白くなるが。


超絶技巧かどうか知らないが超絶体力は必要みたい。

熱演だった。きょうは普段より後ろの席だったが、十分に聴こえていた。ま、オケの音量も小さいからね。


後半の5番交響曲だが、僕の耳にはどうもテンポが遅く、個々の要素がかちっと組み合わさっていないように思えた。

もちろん、大体が賑やかで緊張感に包まれた音楽なので、終盤に近づくにつれてアドレナリン分泌が高まる筈なのだけど、どうもテンポのもどかしさを最後まで払拭できずじまいだった。

オケがMaskだらけだったのが大いなる落胆を招いた。

これまで、東フィルと読響はNoMaskを通してきたのに、今日はどうして?

Maskをするオケでも弦のTopはNoMaskが普通だったが、今日は遠藤女史を含め首席も末席もMaskが多かった。


なぜ彼らはMaskをするのか?訳が分からない。

健康管理を徹底し、検査を徹底し、換気を徹底し、楽屋や袖でも密を避けて、長話を避ければ、舞台でしゃべる訳ではないのだから、Maskが必要なはずがない。

だからこそ、読響と東フィル(実は僕が定期会員になっているオケでもう一つ横浜バロック室内合奏団)は、これまでNoMaskを通してきたのだと思っていた。


そうじゃないのか。

これまではMaskするのを忘れていただけなのか?


でなければ、今日の読響の弦パートは多分、皆んな感染しているのだ。そして舞台はウィルスだらけなのだ。恐ろしや。


♪2022-017/♪サントリーホール-01

2022年2月9日水曜日

オペラ:ドニゼッティ「愛の妙薬」

2022-02-09 @新国立劇場



指 揮】ガエタノ・デスピノーサ
【演 出】チェーザレ・リエヴィ
【美 術】ルイジ・ペーレゴ
【衣 裳】マリーナ・ルクサルド
【照 明】立田雄士

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

【アディーナ】砂川涼子
【ネモリーノ】中井亮一
【ベルコーレ】大西宇宙
【ドゥルカマーラ】久保田真澄
【ジャンネッタ】九嶋香奈枝

ガエターノ・ドニゼッティ「愛の妙薬」
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間30分
 第Ⅰ幕   70分
  休憩   25分
 第Ⅱ幕   55分


今月はオペララッシュで、1週間前に「さまよえるオランダ人」を観たばかりで今日は「愛の妙薬」。

指揮のデスピノーサ&東響も「オランダ人」に引き続きの登板だ。


キャストはコロナの為に(元から出演予定の九嶋以外の)主要4役が全員日本人に代わった。

でも、それで大成功…は言い過ぎとしても、とても良かった。


何がいいかって、砂川涼子が素晴らしい。

あのふくよかで明かるく美しい声は、努力だけでは獲得できない天分だと思う。


ネモリーノ役の中井亮一にとっては歌手人生最高の大役だったと思うが、期待に応えた。

1番の聴かせどころ「人知れぬ涙」もヨシ!

もうちょっとツヤがあれば憂いも出てなお良かったが。


不満を挙げれば。

演出も美術も前回2018年公演と同じだが、前回は気づかなかったが点が今回は気になった。5年間の成長?


「文字」に拘る演出は美術面でも表れているが、「トリスタンとイゾルデ」はこの物語の契機に過ぎないのに全編にわたって「トリ・イゾ」由来の作り物がさも意味ありげに登場するのは紛らわしい。


薬売りの娘が登場するがセリフはない、歌もない。にもかかわらずなぜMaskをしているのか?

「オランダ人」の時もパントマイムの役者だけがMaskをしていた。

他にも兵士達が1幕ではMaskを。同じ連中が2幕ではNoMask。

いったいどういう整理基準なのか?


ともかく、Maskはやめてくれえ!


♪2022-016/♪新国立劇場-03

2022年2月6日日曜日

横浜交響楽団 第714回定期演奏会【新春コンサート】

2022-02-06 @県立音楽堂



鈴木衛:指揮
横浜交響楽団
大山弘翔:バイオリン(第74回全日本学生音楽コンクール横浜市民賞受賞者)*

ベートーベン:歌劇「フィデリオ」序曲
シベリウス:バイオリン協奏曲ニ短調*
ブラームス:交響曲第1番ハ短調


全日本学生音楽コンクールで横浜市民賞を得た高校2年生が弾くシベリウス:バイオリン協奏曲とブラームス:交響曲第1番というプログラム。
前日の神奈川フィルの、ブルッフ:バイオリン協奏曲とシューマン交響曲第2番というのと似た感じの組合せで、ついつい比較して聴きいた。

プロとアマの演奏技量の差とは別に色々と考えさせられることが多かった。

シベリウスのバイオリン協奏曲は独奏バイオリンにとって相当難曲だそうだが、17歳の青年は特に危なげもなく超絶技巧を豊かな音量で弾き切った。筑駒の学生だという。最近はこの手のマルチな秀才が増えているのか。

テンポ設定が遅めなことで、オケとの絡みの面白さはなかなか発揮されず、ようやくリズミカルな第3楽章で盛り上がりを見せた。

バイオリン協奏曲では弦パート、特に第1バイオリンは控え目に徹して、その代わり細く綺麗な音色を維持できたが、ブラームスでは変調したのが残念。管部門も手こずっていた。

いつになく不出来ではあったが、調和を欠いた演奏のお陰で、本来なら溶け合うパートもはっきり聴こえたりして、面白みはあった。

がんばれ横響!

♪2022-015/♪県立音楽堂-2

2022年2月5日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第374回定期演奏会

2022-02-05 @県民ホール



大植英次:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
吉田南:バイオリン*

山田耕筰:序曲ニ長調
ブルッフ:バイオリン協奏曲第1番ト短調 Op.26*
シューマン:交響曲第2番ハ長調 Op.61
------アンコール-------------------
テレマン:無伴奏バイオリンのための12の幻想曲第10番ニ長調から第2、3楽章*


このところ、十数連勝を爆進してきた神奈川フィルがよりによって大植ちゃんを初めて迎えた今日、連勝ストップしたよ。

オケが悪いとかましてや指揮が悪いとかではなく、小さな不幸が重なったんだろう。音が固かった。

ブルッフのVn協は吉田南の熱演にもかかわらず固い響きの上では、ストラディの乗りも悪かった。うまい下手ではなく、今日のホールはそういう響きだった。

ただし、ソロVnの鮮烈な音はよく響いていた。初めて聴いたが、リサイタルで間近に聴いてみたい。

ややテンポが遅かったのは残念。

シューマン2番。これは演奏が難しそうだ。過去に聴いた中で、名演奏の記憶はない。冒頭がなんだか頼りなくて、いつもバラバラの感じだ。管弦楽法に工夫が足らないのかも。これで緊張を維持するのは難しい。
主題が不器用に見え隠れし、2分過ぎにティンパニ1発鳴ってから調子が出てくる。

シューマン自身は自虐的に1-3楽章は病的だと言ったそうだが、そんなにひどくないよ。1楽章の冒頭は確かに病気かもしれないが。

さて、このシューマンもテンポがえらく遅かった。
測ってみたら標準より5分程長い。大植の確信的指揮ぶりだ。
いつも何か驚きがあるが、今日も驚いたよ。

♪2022-014/♪県民ホール-02

2022年2月2日水曜日

オペラ:Rワーグナー「さまよえるオランダ人」

2022-02-02 @新国立劇場



【指揮】ガエタノ・デスピノーサ
【演出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美術】堀尾幸男
【衣裳】ひびのこづえ
【照明】磯野睦
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】村田健輔

【管弦楽】東京交響楽団
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団

【ダーラント】妻屋秀和Bs
【ゼンタ】田崎尚美Sp
【エリック】城宏憲Tn
【マリー】澤田康子(再演演出)⇒演技/金子美香Ms⇒歌唱(山下牧子の代役)
【舵手】鈴木准Tn
【オランダ人】河野鉄平Bs

R.ワーグナー「さまよえるオランダ人」
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約2時間50分
 第Ⅰ幕   55分
  休憩   25分
 第Ⅱ・Ⅲ幕 90分


オペラ本体はとでも良い出来で大いに楽しめた。
まずはオケがいい。ピットに入っていたのは東響だが、管・弦がうまく交わった時のみ聴こえる甘い響きを久しぶりに聴いた。
ピット効果と新国立劇場の音響の良さも大いに寄与していると思うが。

【ダーラント】妻屋秀和、【舵手】鈴木准以外の外人勢はすっかり日本人代役に変わったが、今日以降、マリー代役の山下牧子が出演できなくなり、さらに彼女の代役も出演できなくなり、急遽演技は演出の澤田某が口パクで、歌唱は袖から金子美香が担当する、というとんでもないことが起こったが、よくこのクラスを急拵えできたものだ。

流石に、マリーの動きはほぼ下手袖(鈴木美香がここで歌っている)近くに限定される等芝居の面で不自然さはあったが、歌手全員が、それをカバーしようとしたか?歌唱の方もとても良い出来で、【オランダ人】河野鉄平、【ゼンタ】田崎尚美(厚化粧で顔の表情が不分明だったが…)も代役にもかかわらず文句なし。妻屋の歌唱もコミカルな芝居も良かった。鈴木も安定感。


ともかくオケ・歌唱とも高水準。
演出も分かり易くて良かった。

大したことでないと思っているが、オランダ人は救済されるのか否か。

これは序曲終盤(初演時の救済なしバージョンに、後年「救済」のテーマが追加されているの)で分かるけど、そこをぼんやり聴き逃すと終幕まで分からない。いや、最後まで観ても音楽の最後(やはり「救済のテーマ」の追加。最終の強勢アタックが締め括りの1回だけ。救済なしバージョンでは「救済のテーマ」がなく、強勢アタックは重々しく3回鳴る。)を聴かないと分からない場合も多いがこの演出は舞台を見ているだけで、救済された事が分かる。

救済と言っても半死半生状態から確実な死を迎えると言う事であり、その死によって新しく生きると言う事なのだろう。

この辺はもうワーグナーの死生観の独擅場で、自己中のオランダ人が救済されようとされまいと、僕の楽しみ方としては、どっちでもいい。


小さな残念が一つ。
合唱が大活躍するが、嬉しいことに全員NoMaskだった。流石新国立劇場だ、と喜んでいたが、3幕に入ると水兵たち狂乱の場だが、舞台前方で浮かれる6人?だけMaskをしている。ましてや歌う訳ではないのだからMaskの必要性がどこにある?
マスク神経症の僕としては気になったよ。

♪2022-013/♪新国立劇場-02