2017年1月20日金曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後~福川伸陽 ホルン X 鈴木優人 オルガン この2人だからこそ可能な遊びと本気の90分

2017-01-20 @みなとみらいホール


福川伸陽(のぶあき):ホルン
鈴木優人(まさと):オルガン

J.S.バッハ(鈴木優人 編曲):
 コラール「今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ」BWV734
 コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(BWV147から)
 コラール「目覚めよ、と呼ぶ声あり」BWV645
ナジ・ハキム:組曲 「ラプソディ」~ホルンとオルガンのための~
鈴木優人:Romantissimo〜ブルックナー交響曲第4番による〜
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アンコール
ナジ・ハキム:組曲 「ラプソディ」から終楽章

今日のコンサートは面白かった。
パイプオルガンとホルンという変わった組合せ。
特にブルックナーの交響曲第4番は70分ほどの大曲だが、これを15分位にオルガンとホルンに編曲したのは面白かった。

ホルンの福川伸陽(のぶあき)はN響の首席奏者。
オルガン・編曲の鈴木優人(まさと)はバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)を中心に活躍する鍵盤奏者(父親がBCJの音楽監督の鈴木雅明でその弟がチェロ・指揮の鈴木秀美だ。)。
2人は同い年だそうだ。両者とも35歳か。

この若さと才能だからこそ「可能な遊びと本気の90分」という訳で、大いに納得。

ホルンとパイプオルガンの競演であるからには、時にホルンがオルガンに埋もれてしまうのはやむを得ないだろう。
ホルンも朗々と歌ったが、何と言ってもみなとみらいホールのパイプオルガン「ルーシー」が時に爆音を響かせて床まで震わせるのにはテンションが上った。

♪2017-007/♪みなとみらいホール-02

2017年1月19日木曜日

チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル

2017-01-19 @ミューザ川崎シンフォニーホール


チョ・ソンジン:ピアノ

ベルク:ピアノ・ソナタ 作品1
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D.958
ショパン:24の前奏曲 作品28
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アンコール
ショパン:マズルカ 作品30-4
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番

シューベルトも、信じられないことに、このピアノソナタが苦手だ。シューベルトには若い頃から共感を抱いていた。
彼の音楽はなぜか、自分の感性にピタッとハマるような気がして、他人とも思えないというと大げさだが、つまり、親しみを感じていた。新しい作品を初めて聴いても、まず違和感を覚えない。
…と長く思っていたが、ピアノ・ソナタ19番はどうも勝手が違った。この曲に出会ったのは5年ほど前にソナタ全曲CDを買うまでは(放送などでは別として)きちんと19番を聴く機会がなかったのだ。
で、きちんと対峙してみると19番で語るシューベルトの言語が理解できない。なので気持ちが乗れない。本当にシューベルトの作品なのだろうか、そういう疑念が生まれるほどに馴染んでゆかない。何度繰り返し聴いても、近づけない。

19番は、僕のシューベルト体験におけるエア・ポケットみたいなものだ。

チョ・ソンジンが弾くというから、事前に何度も聴いたが症状は変わらない。

そんな風に迎えた本番。
ベルクは最初から諦めていた。あまり面白い音楽を書く人じゃないから。
でも、シューベルトは、ショパンコンクール1位という俊才の生演奏を間近で聴くことでようやく覚醒できるかもと思って臨んだが、どっこい、距離はあまり縮まらなかった。
作曲家の円熟に従って凡人の感性からは遠のくとも想像できる。
確かに、ベートーベンの場合、最後の30番台のソナタが若い頃は敷居が高かった(今ではむしろこの辺の作品が好きだ。)。

シューベルのピアノ・ソナタでもそういうことが言えるのかもしれないが、因みに、シューベルトの最後のピアノ・ソナタ第21番など、とてもしっくり来るのだ。如何にもシューベルトらしく、メロディーが美しい。なぜ、第19番が近寄りがたいのか、これは一つの課題としておこう。

24の前奏曲(全曲)は、最近では去年夏に(チョン・ソンジンが優勝した同じ2015年のショパンコンクールでファイナリストに残った…留まった?)小林愛実でも聴いたし、アンナ・ヴィニツカヤでも聴いて、いずれも楽しめた。
もっとも、厳密に言うと、全曲が楽しめる訳ではない。
第2曲など特にとっつきにくい。
ベルイマン監督のバーグマン最後の作品「秋のソナタ」でこの音楽が母と娘の断絶の象徴のように使われるが、初めて聴いたときはこれがショパンの作品とはとても思えなかったものだ。
それでも何度も聴いているうちに、まあ、この曲だけを取り出して聴きたいとは思わないけど、前奏曲集として楽しめるようになった。

チョ・ソンジンの音楽性は分からないが、佇まいにただならぬものは感じた。とくに最終曲の最終盤の迫力は鬼気迫るものがあった。

♪2017-006/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-01

2017年1月11日水曜日

国立劇場開場50周年記念 平成28年度1月中席

2017-01-11 @国立演芸場


落語 林家喜之輔⇒英会話
落語 橘ノ双葉⇒猿後家
曲芸 ボンボンブラザース
落語 古今亭今輔⇒だまされたフリ作戦
奇術 瞳ナナ
落語 柳家蝠丸⇒高尾
ー仲入りー
クラウン びり&ブッチィ―
落語 三遊亭圓馬⇒ふぐ鍋
コント チャーリーカンパニー
落語 古今亭寿輔⇒しりとり都々逸

今月の演芸場の寄席は上席がなかったので、中席初日の今日が今年の初笑い。

曲芸の「ボンボンブラザーズ」は初めてだったが、さほど<曲芸>というほどではないのだけど、おもしろくて相当笑ったよ。わざと下手にやっているのか、本当に難しくてうまくできないのか、その辺の微妙さがおかしい。

奇術は、時折タネが見えるときもあるけど、不思議さが楽しめる。

圓馬は今日も楽しめた。安定した芸だ。
「ふぐ鍋」はその名のとおり、ふぐ鍋を初めて食べる2人が、食べたいけどコワイ。やってきたおこもさん(乞食)にいくらか分けてやって様子を見るが平気な様子。安心して食べるがなるほど旨い。そこへ先程のおこもさんが2人の様子を見に来て大丈夫そうなのでもらったふぐを安心していただく、という話。ホンにおかしい。

寿輔の「しりとり都々逸」も面白いけど、もうすこしゆっくり都々逸の秀作を聞きたかったな。

恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす
あとがつくほど つねっておくれ あとでのろけの 種にする
あとがつくほど つねってみたが 色が黒くて わかりゃせぬ
惚れた数からふられた数を 引けば女房が残るだけ

2017-005/♪国立演芸場-01

2017年1月10日火曜日

東京都交響楽団 第823回 定期演奏会Bシリーズ

2017-01-10 @サントリーホール


小泉和裕:指揮
東京都交響楽団

ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調 WAB105(ノヴァーク版)

ブルックナーの0番から9番までの交響曲の中で、今日の5番は8番についで演奏時間が長く80分だ。
同じフレーズが何度も繰り返されるので余計に<長さ>を感じてしまう。CDではおとなしく聴いておれない音楽だが、ナマの演奏では若い頃ほどの抵抗感はなくなって、音楽風呂に浸かっているような感じでゆったりと楽しめるようにはなってきた。

ずいぶん工夫された構成になっているようで、その一端が感じられるようになってきたのは、少し鑑賞力が高まってきたのか、単に馴染んだだけなのか。

編成の大きさや演奏時間の長さでマーラーの交響曲と似ているけど、マーラーは俗っぽさがたっぷりあるように思うが、ブルックナーはひたすら生真面目で遊び心を感じさせない。教会音楽家だったんだなと得心する。

演奏はとても良かった。
指揮の良し悪しは分からないけど、おそらく気心知れた間柄(小泉和裕は都響の「終身名誉指揮者」)だ。オケもしっかりと指揮者の意図に応えていたのだろう。いつもの分厚い都響のアンサンブルがこういう作品では一段と輝きを増すようだ。

♪2017-004/♪サントリーホール-01

2017年1月9日月曜日

音楽堂ニューイヤー・コンサート クレメンス・ハーゲン(チェロ)&河村尚子(ピアノ) デュオ・リサイタル

2017-01-09 @県立音楽堂


クレメンス・ハーゲン:チェロ
河村尚子:ピアノ

ューマン:5つの民族風の小品集 作品102
ベートーベン:ピアノとチェロのためソナタ第2番ト短調 作品5-2
ラフマニノフ:ピアノとチェロのためのソナタ ト短調 作品19
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フランク:バイオリンソナタ(チェロ版)イ長調から第1楽章
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調から第2楽章


クレメンス・ハーゲンをナマで聴くのは初めてだが、ハーゲン四重奏団のチェリストとしても個人としてもたくさんのCDを出しているようで、我が家にも10枚近くある。

河村尚子は初めてかなと思っていたが、先程調べたら1年半前に読響の定期でラベルの「左手のための協奏曲」を聴いていた。

今回は、河村尚子ではなくクレメンス・ハーゲンのチェロをナマで、それこそ生々しく聴きたかったので、前から5列目のピアノ本体の前(センターから少し上手寄り)に席を取った。
ピアノとプラス1の編成の場合、プラス1は普通はピアノの前方下手に位置するのが通例だし、チェロの場合はピアニストとアイコンタクトを取るために客席正面に向かって座ることはなく少し舞台中央に楽器を向けるはずだ、という僕の読みも見事に的中して、ちょうど僕の席の正面にピアノとチェロがV字形に位置するというこの編成を聴くには申し分のない好位置となった。

ふたりが登場し、軽く客席に会釈して位置につくと両者はアイ・コンタクトもなしにいきなりハーゲンが弾き出したが、そのときちゃんとピアノも始まっていて、この息の合った、意表を突く出だしには驚いた。

その第1曲はシューマンの「5つの民族風の小品集」だ。
多くの作曲家のたくさんのチェロの小品の中でもとても好きな作品だ。タイトルどおり、とても「民族風」だ。と言っても、いちいちどこの<民族>風なのかは分からないが、ロマ、スラヴなどが混じっているのは間違いなさそうだ。
それほど有名曲とも思えないけど、僕はCDを3種類持っている。そんなこともあって耳によく馴染んでいるので、ナマで聴けたのは嬉しかった。

5列目という席は、オーケストラだと絶対に座りたくない場所だけど、小人数(弦楽器どうしの共鳴効果を期待しない編成)の場合は楽器本来の音がそのまま響いてくるのが心地よい。とくに音楽堂は残響が少ないので、原音が(きれいな場合は)豊かに響く。
ハーゲンのチェロのガリガリいうような音色はあまり美しいとはいえない。同じ音楽堂で、やはりかぶりつきで聴いた藤原真理の音色の方が格段に耳には心地が良いが、野性的な力強いハーゲンの音色もなかなか訴求力がある。

このシューマンだけでも十分満足だったが、ベートーベンのチェロソナタ2番もドイツ音楽の肝を感じさせてくれた。

ラフマニノフのチェロソナタは初聴きだった。
これはなかなかの大曲で全4楽章。演奏時間は40分前後あったのではないだろうか。その長尺をピアノがほとんど超絶技巧を駆使している感じで、その上でチェロに朗々と歌わせるという趣向のようだ。音楽自体には馴染んでいなかったので楽しみは彼らの名人芸にあったといえる。

ラフマニノフはバイオリンソナタを書いていない。(ピアノと)チェロのためのソナタがあるからそれで十分だと考えていたと書いてあるのを読んだことがあるが本当かどうか。
でも、チェロという楽器が好きだったことは間違いなさそうだ。
そしてもちろんピアノの大家でもあったからチェロ・ソナタ(彼自身はこういう呼び方を嫌ったようだが)においてチェロを思い切り歌わせ、一方ピアノには全曲に渡ってオタマジャクシて埋め尽くすような作品を書いたのかもしれない。

河村尚子

さて、本日の収穫その2は音楽に非ず。
冒頭書いたように河村尚子は初めてではなかったが、前回協奏曲を聴いたのは席が舞台から遠くてよく彼女の表情がはっきりとは見えなかった。今回はかなり近い場所だったので、彼女のピアノを弾く際の豊かな表情の変化をつぶさに見ることができた。それがなんとも魅力的だ。彼女の気持ちがそのまま表情に、姿勢に表れていて分かりやすい。そして、拍手に応える笑顔のなんと可愛らしいこと。とてもキュートだ。
ポスターやチラシの表情は固くて実物とはだいぶ印象が異なる。

♪2017-003/♪県立音楽堂-01

2017年1月7日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第324回横浜定期演奏会

2017-01-07 @みなとみらいホール


飯森範親:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
神尾真由子:バイオリン*

ブラームス:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品77*
ドボルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95《新世界から》
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アンコール
パガニーニ:「24のカプリース」から第24曲*
アンダーソン:「ジャズ・ピチカート」(弦楽版)


2007年のチャイコフスキーコンクールで優勝したというTVのニュースで神尾真由子(当時21歳)を初めてみた時に、えらく自信に満ちていたのが印象的で、その後放映でなんどか見る・聴く機会があって、その力強さに一目置いていた。

生を聴いたのは東響との共演でビバルディの「四季」の半分という中途半端な経験で、本格的な演奏は今回が初めてだった。しかも、ブラームスの協奏曲は大好きな作品だ。

で、大いに期待して出かけたのだけど、全体にテンポがゆったりめで、ちょっと違うんじゃないか、と隔靴掻痒の感で聴いた。
特に第3楽章は部分的に変拍子が用いられていて、ここはやはりある程度のスピード感とともに味わいたいところなのだけど、ブラームスのちょっとして工夫の魅力があまり伝わらなかった…と思う。
こういうテンポの設定は指揮者の好みなのか、ソリストの好みがリードするのか分からないけど、他の指揮者でも聴いてみたい。

バイオリン協奏曲の中ではチャイコフスキーと並んで超絶度が高いらしいが、バリバリ弾きまくるという印象はなかった。

むしろ、アンコールの「24のカプリース」の第24曲こそ、僕がイメージしていた神尾真由子だった。

「新世界から」もテンポはゆったりめだったが、これは不満がなかった。オケも弾き慣れているのだろうし細部まで巧い。
耳タコだけど、最近は聴く度によくできた作品だなあと思う。
奇を衒わない堂々とした音楽づくりがこの曲では活きていたやに思った。

♪2017-002/♪みなとみらいホール-01

2017年1月3日火曜日

国立劇場開場50周年記念 通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場 尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候

2017-01-03 @国立劇場


国立劇場開場50周年記念
柳下亭種員ほか=作『白縫譚』より
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=脚本
通し狂言 しらぬい譚(しらぬいものがたり)五幕九場
尾上菊之助筋交いの宙乗り相勤め申し候

発端 若菜姫術譲りの場
除幕 博多柳町独鈷屋の場
二幕目
 第一場 博多菊地館の場
 第二場 同 奥庭の場
三幕目 博多鳥山邸奥座敷の場
四幕目
 第一場 錦天満宮鳥居前の場
 第二場 室町御所の場
大詰め 島原の塞の場

尾上菊五郎⇒鳥山豊後之助
中村時蔵⇒烏山家の乳母秋篠/将軍足利義輝
尾上松緑⇒鳥山秋作
尾上菊之助⇒大友若菜姫
坂東亀三郎⇒菊地貞行
坂東亀寿⇒鳥山家家臣瀧川小文治
中村梅枝⇒秋作の許嫁照葉
中村萬太郎⇒雪岡家家臣鷲津六郎
市村竹松⇒足利家家臣三原要人
尾上右近⇒傾城綾機/足利狛姫/多田岳の山猫の精
尾上左近⇒菊地貞親
市村橘太郎⇒大蛇川鱗蔵
片岡亀蔵⇒大友刑部/謎の参詣人
河原崎権十郎⇒独鈷屋九郎兵衛/海賊玄海灘右衛門
坂東秀調⇒医者藪井竹庵
市村萬次郎⇒足利家老女南木
市川團蔵⇒雪岡多太夫
坂東彦三郎⇒錦が岳の土蜘蛛の精
 ほか

お家騒動、仇討ち、忠義の自己犠牲の話に、妖術、怪猫、霊力の宝物などが登場し、筋交い宙乗り(というのは珍しいのだろうな。舞台に直行するのは何度か見たが斜め横断は初めて見た。)や屋台崩しなどの大道具の仕掛けのほか、思いがけない小道具を含め全編がどっちから見ても外連味一杯の正月らしい派手な舞台だ。

「発端」で描かれる経緯が分かりにくかったが、その後の進行は見たとおりに理解できる。
まあ、乳母の献身ぶりには、それはないでしょう、と思ってしまうが、これも歌舞伎らしい。

ピコ太郎も登場するし、何でもありだ。

菊之助の宙乗りは舞台下手から3階席上手までという客席上を斜め横断だ。そのために、1階席よりむしろ2階席、3階席の方が楽しめる。
僕は2階席前から3列目中央だったので、ちょうど菊之助が止まって芝居をするのがほとんど目の前で、こんなに近くから役者を見るのは初めてだった。やはり、菊之助はなかなか妖しい魅力を振りまいていた。
松緑も「仮名手本忠臣蔵」では役不足を感じたが、今回は活躍場面が多くて楽しめた。

♪2017-001/♪国立劇場-001