2021年7月6日火曜日

ジョルジュ・ビゼー「カルメン」全3幕

 2021-07-06 @新国立劇場


ジョルジュ・ビゼー:カルメン<新制作>
全3幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約3時間10分
第Ⅰ・Ⅱ幕95分
   休憩30分
第Ⅲ幕  65分

指揮:大野和士
演出:アレックス・オリエ
美術:アルフォンス・フローレス
衣裳:リュック・カステーイス
照明:マルコ・フィリベック

合唱:新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【カルメン】ステファニー・ドゥストラック
【ドン・ホセ】村上敏明
【エスカミーリョ】アレクサンドル・ドゥハメル
【ミカエラ】砂川涼子
【スニガ】妻屋秀和
【モラレス】吉川健一
【ダンカイロ】町英和
【レメンダード】糸賀修平
【フラスキータ】森谷真理
【メルセデス】金子美香


良かった点⇒歌手が上手。一番は我がマドンナ砂川涼子(ミカエラ)の1幕の村上敏明(ホセ)との二重唱と3幕の独唱が実に素晴らしい。誠に美声だ。身体は小さいのに明るくまろやかな声がとても良く響き渡った。今回で彼女の新国ミカエラを聴くのは三度目だが今回が一番良かったように思う。


「ワルキューレ」に続いて代役を勤めた村上も朗々たる歌唱。カルメン役が大きすぎて背が釣り合わなかったのは悔しいけど、とても健闘していた。


肝心のカルメン(ステファニー・ドゥストラック)は、忘れていたけど、エクサン・プロバンス音楽祭2017で「カルメン」を歌っていたのを帰宅後思い出した。

まるでソプラノのような明るく輝く声だ。ガタイも大きく声量もある。

尤も、冒頭の「ハバネラ」が舞台中奥の高い場所だったので実力発揮できず。これは演出が悪い。


闘牛士(アレクサンドル・ドゥハメル)も登場のアリア「闘牛士の唄」がやはり舞台中奥の高い場所なので、か細く頼りなかったが、以後は、床に降りて客席近くで歌ったので本来の迫力ある美声を響かせた。これも演出が悪いのだ。


これらの無理設定や演出をしたアレックス・オリエは「トゥーランドット」(の無理な演出)に次いでこれで前科2犯である。


カルメンを来日公演中のスペイン人ロック歌手、ホセとスニガはコンサートの警備責任者(当然日本人?)、エスカミーリョは偶々来日していたスペインの闘牛士だという(な、バカな!)。


この酷い設定は、1幕はかろうじて維持できたが、2幕以降は完全に破綻してしまう。そりゃ音楽も歌詞(字幕)も設定とはどんどん乖離してゆくのだから。


故に観客は各自の脳内の「カルメン」の記憶で演出の綻びを繋ぎ合わせながら立ち向かうことになる。演出は既に存在していないも同じだ。


多くの鉄パイプを組み合わせた舞台も、意味があったのはライブコンサートを表現した1幕のみ。

その後は、観客の想像の障害でしかなかった。


そもそも「読替え演出」はほとんど失敗しているような気がするが、僕の記憶で唯一の成功例が、エクサン・プロバンス2017の「カルメン」(演劇セラピーとしての劇中劇という読替え。)で、上述のようにそこでカルメンを歌ったのがステファニー・ドゥストラックだったというのは皮肉なことだ。


♪2021-069/♪新国立劇場-05