2015年7月5日日曜日

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団名曲全集 第109回

2015-07-05 @ミューザ川崎シンフォニーホール



飯守泰次郎:指揮

アレクサンダー・クリッヒェル:ピアノ
東京交響楽団

ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より “ダッタン人の踊り”
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43
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アンコール(ピアノソロ)
クリッヒェル:ララバイ(自作曲)


この日は、体調が思わしくない上に睡眠不足で、こりゃ寝てしまうかもと危惧をしていたが、最初の「ダッタン人」で覚醒した。

東響ってホンにうまいなあ。弦もいいが管が特にうまいと思う。
東響の演奏は定期だけでも年に15回(名曲全集と川崎定期)聴いているけど一度もがっかりしたことがない。
主にミューザ川崎シンフォニーホール(不都合なときはサントリーホール)という聴きやすいホールで聴いていることも多少は関係あるのかもしれないけど、何と言っても「実力」がなければホールの音響効果ではごまかしきれないはずだ。

ラフマニノフのピアノ協奏曲は全部で4曲あるけど、コンサートで取り上げられるのは今日の第2番が圧倒的に多い。
次いで3番かな。
僕は第1番も第4番もCDでは聴くけどナマで聴いた覚えがない。

第2番は映画でもよく使われているし、多くの人の耳に馴染んだ人気曲だからコンサートでも取り上げられるのだろうけど、ピアニストにとっても弾き甲斐のある曲なんだろうな。とにかく、難曲だ。
そのアクロバティックな妙技を見る・聴くのもコンサートの楽しみだ。

ピアノのアレクサンダー・クリッヒェルという人は、1989年生まれというから25、6歳か。
ピアノの才能は言うまでもないが、数学、生物学、語学などの分野でも数学オリンピックをはじめ各種コンクールにも入賞し、今もそれらの分野の研鑽も積んでいるというからえらくマルチなタレントだ。こういう人が他の人の才能まで喰ってしまっているのかもなあ。
いや、礼儀正しい好青年ではあった。


シベリウスは今年が生誕150年なので、コンサートでも取り上げられることが多い。先月のN響定期でも聴いた。
シベリウスの交響曲についても全7曲(+クレルヴォ交響曲)あるのにコンサートで取り上げられるのは圧倒的に第2番。ほかには5番を一度聴いた記憶があるだけだ。
手持ちのCDもやはり2番と5番だけなので他の交響曲の世界を知らない。生誕150年の今年こそ、いろんな作品を取り上げてほしいものだ。

とはいえ、やはり、馴染んだ第2番はゾクゾクするほど素晴らしい。
第1楽章冒頭から、独墺、フランス、イタリア、英国、ロシアとは確実に一線を画す、いかにも氷河と森のフィンランドぽいムードがたちこめてその世界に惹きこまれる。
第2楽章は低弦のピチカートにチョッとリズムが外れたようなファゴットのメロディーが不安定で霧の中を彷徨うようだ。
シベリウス独特(フィンランド民謡が取り込まれているのだろうか)ではあるが、美しいメロディーが繰り出される。
第3楽章のモゾモゾした不気味さは徐々に盛り上がっていき、やがて切れ目なく(アタッカで)第4楽章になだれこむとその後は緊張が押しては引くやりとりを繰り返しながら徐々に悠々たるクライマックスに高揚する。このカタルシスは何度聴いてもぐったりするほど感情移入してしまう。

それを指揮する飯森泰次郎御大のクールさがおかしいくらいだ。
髪振り乱し汗だくでタクトを振る人もいるけど、御大はほとんど表情は変えず穏やかに微笑さえしているようで、それでいて大クライマックスを引き出すのだからやはり只者ではないのだろうな。

東響の素晴らしいサウンドと揺るぎない安定感。
久しぶりの至福の時を過ごした。

♪2015-63/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-10