2014年4月30日水曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.55三浦一馬バンドネオン・リサイタル

2014-04-30 @みなとみらいホール


三浦一馬:バンドネオン
BABBO:ピアノ

~魅惑のタンゴ~
ピアソラ:オブリヴィオン
ピアソラ:バンドネオン協奏曲より 第1楽章
小曽根真:名も無き英雄
マルコーニ:モーダ・タンゴ
ピアソラ:アディオス・ノニーに
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アンコール
ピアソラ:リベルタンゴ


みなとみらいクラシック・クルーズは、3月から9月までの間に、月1回のペースで、みなとみらいホールの大ホールで3日、小ホールで3日、平日のお昼と午後の2回に開催される短時間の主として室内楽コンサートだ。
僕は午後の部を選んだ。

今日のバンドネオンリサイタルは、そのなかでは異色のプログラムだが、お昼の部ではいわゆる西洋のクラシック作品ばかり取り上げていたようだが、午後の部はモダンタンゴの旗手とかタンゴの革命家とか言われるピアソラ中心だった。

ピアソラの作品はCDで何曲か持っているし、たまに聴くけど、今日のプログラムでは知っている曲が一つもなく、僕にとっては一番有名で好きな「リベルタンゴ」がないのが淋しいなと思っていたが、アンコールで満を持して演奏してくれてよかった。

これまでもバンドネオン~タンゴバンドを聴いたことはあるけど、2千人を超えるキャパシティの大ホール(お客は半分くらいだったと思うけど。)で大丈夫なのだろうかと思ったが、小さな楽器なのに案外大きな音が響き渡り、十分な迫力があった。

バンドネオンの三浦一馬って人を知らなかったけど、90年生まれというから23歳くらいだ。びっくりするよ。

今日は、伴奏がピアノ1台だが、ピアソラがバンドネオン協奏曲を書いていると知ったので、一度、これをオーケストラとの協演で聴いてみたいものだ。


♪2014-37/♪みなとみらいホール19

2014年4月27日日曜日

読売日本交響楽団第71回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014-04-27 @みなとみらいホール


アレクサンドラ・スム:Vn
小林研一郎:指揮
読売日本交響楽団

チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調作品35
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」
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アンコール
バッハ:無伴奏バイオリンソナタ第2番からアンダンテ


炎のコバケンだ。人気のある指揮者だから、いつもより席の埋まり方が違う。完全に満席という訳ではないけど9割位は入っていたのではないか。楽しみにしている人が多いのだ。

僕は、逆にこの人だと不安を覚える。
記録されない生演奏ならではのサービスだろうけど緩急や強弱が誇張され気味で、よく言えばメリハリの付いた音楽なのだけど、度が過ぎれば嫌味だ。

果たして…。
ところどころに貯めを効かせてリリースする開放感を演出していたけど、今回は嫌味を感ずるほど大げさでもなく、まあ感情表現の範囲かなあと思った。

最初のバイオリン協奏曲では、アレクサンドラ・スムという美形の弾き出す音がとてもしっかりして明瞭で良かった。
生演奏では往々にしてバイオリンの音が管弦楽に埋没してしまう時がある。
使っている楽器も相当良いものらしいが、もちろん、腕も良いのだ。
最後の最後の決めるところで、指揮者の高揚感とソリストの高揚感に僅かなズレが出たようで、ぴったり感に欠けたのは残念だけど、まあ、誤差の範囲か。

「悲愴」は今でも大好きだけど、中学時代にクラシック開眼して以来、まずは惹きつけられた作品の一つで、当時はLPを夜遅くまで回して針音だけでも聴きたくてレコードプレイヤーにかじりついていた。その頃はヘッドフォンなんて無かったものなあ。

今日のコバケンは、「悲愴」ではもう泣きまくっていたなあ。
第1楽章も第4楽章も、これ以上に悲しいことが人生にあるだろうか!てな顔をして気合を入れていた。先に書いたように今日はあまりコバケン節も出なかったので違和感なく気持ちを音楽に乗せることができた。


この4月から新しいシーズンが始まり、席替えをして、読響も(神奈川フィルと同じく)P席にしたので、指揮者の表情を通して音楽を<見る>のが楽しみだ。

読響は、弦もいいけど金管が実に達者だ。ホルンの最弱音なんてだれでも難しいと思うけど、見事にポワっという感じが出るのが嬉しい。とりわけ、「悲愴」はブラスが咆哮する曲なので、バリバリやってくれて大いに楽しかった。


♪2014-36/♪みなとみらいホール18

2014年4月26日土曜日

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団名曲全集 第96回

2014-04-26 @ミューザ川崎シンフォニーホール


ジョナサン・ノット:指揮
佐藤卓史:Pf
東京交響楽団




ウェーベルン:管弦楽のための5つの小品 作品10
シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15

東響、今日のコンサートマスター(他のオケではコンサート・ミストレスと表記されることも。)は大谷康子だった。何時頃か覚えていないけど随分前に東響を聴いた時に既にコンサートマスターだった。当時は女性のコンマスがとても珍しかった。テレビで見かけることがあったけど、久しぶりのリアルは少し若返っているような気がしたが不思議なことだ。


ウェーベルンの「管弦楽のための5つの小品」は小品というより掌品といったほうがいいくらいで5つ合わせても6分程度だ。
無調音楽で12音技法ではないらしい(その区別もつかないと思うけど。)。妙な音がピコピコシャリシャリ鳴っているうちに終わってしまった。どこが面白いのか分からない。
指揮者のジョナサン・ノットは、そのまま、袖に引っ込むこと無く、続いてシューベルトを演奏した。

同じウィーンの作曲家ではあるけど、100年ほど時代が異なるので、続けて演奏する意図は奈辺にありや分からなかったが。

シューベルトの交響曲全8曲の中では第7番(昔は8番と言った。)の「未完成」がダントツ、ついで第8番(同9番)「ザ・グレート」が人気があり、他には5番が時々演奏される程度で、第4番となると家でもまず聴かない(今回の耳慣らしのために何度か聴いたけど)し、コンサートでも聴いたことがない。
「悲劇的」という表題はシューベルト自身が付けたそうだが、格別物語性があるわけではなく、ハ短調の雰囲気をそう評したものらしい。
まだ19歳ころの作品だというが、立派な音楽になっているのだから驚きだ。後年のシューベルト印が緩徐楽章の転調するところなんかに感じられて面白い。


ブラームスのピアノ協奏曲は、個人的には2番の方がよほどか馴染んでいるけどこの曲もなかなかの力作だ。
最初からピアノ協奏曲として構想されたものではないらしく、第1楽章が印象強い出だしで始まりかつ相対的に長い。それで存在感が大きい。終楽章は短いが、晩年の作品のようなストイズムは控えめで激情奔流。挟まれた第2楽章が、妙に落ち着いた作りで物足りなさもある。

さて、今日の東響。先日(20日)、サントリーホールで聴いた時に響が心地良かったが、今日も、会場は違ったが、変わらず良い響きだった。


♪2014-35/♪ミューザ川崎シンフォニーホール02

2014年4月24日木曜日

第183回オルガン・1ドルコンサート:夜も1ドルコンサート

2014-04-24 @みなとみらいホール



浅井美紀:Or

●R.ワーグナー=F.リスト:歌劇《タンホイザー》 より 巡礼の合唱
●J.S.バッハ=N.ロースソーン:《狩のカンタータ》 BWV 208 より アリア「羊は安らかに草を食み」
●(伝)J.S.バッハ=L.ヴィエルヌ:《フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ホ長調》 BWV 1031 より シチリアーノ
●J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調 BWV 548
●R.ワーグナー=T.デュボア:歌劇《ローエングリン》 より 第3幕への前奏曲~婚礼の合唱



年間8回開催されるオルガン・1ドルコンサートは、通常は昼間だけど、うち3回は夜も同じプログラムで開催される。
予定では昼間行くつもりだったが、急な用もあって、夜に変更した。そろそろ、夜のコンサートも良い感じの気候になってきた。

1ドルコンサートは、その名のとおり料金は1ドル又は100円で、消費税率のUPにもかかわらず据え置かれている。しかも、小銭入れを持ち歩かない僕にとっても好都合なことに電子マネーでも支払える。

大ホールのパイプオルガン「ルーシー」(愛称)を使って、一人100円では費用も回収できないのではと思うが、そこはみなとみらいホールの公益財団たる所以だろう。また、近辺の飲食街とタイアップしているので協賛金などが入るのかもしれない。
何にせよ、安価でパイプオルガンが聴けるなんてありがたいことだ。

演奏者は、多くの場合、みなとみらいホールが受け入れて育てるオルガニスト・インターンシップを修了した、いわばプロの卵のような人たちだけど、みんなうまい、というか、ミスタッチでもあれば別だけど、そんなこともないのでうまいのだろう、と思っている。
今日の浅井さんは第1期修了生だ(現在第11期)。
多くのオルガニストにとって、パイプオルガンはなかなか演奏の機会がないと思うが、こういう機会を作って演奏家を育て、聴衆も楽しませる企画はとてもいい。

今季、8回のコンサートを通底するテーマは「ルーシー、ひとりオーケストラ+バッハ」ということで、パイプオルガンの多彩な音色を駆使してオルガンだけでオーケストラのような響を創りだそうとしている作品とバッハの作品を組み合わせるというもので、4曲目の「前奏曲とフーガ ホ短調」以外は、非オルガン曲の編曲だった。
2曲めは初めて聴く曲だったが、それ以外は馴染みの曲ばかり(と言っても、オルガンで聴くのは初めて。)。

どれも楽しめたが、やはり、はじめからオルガンのために作曲された「前奏曲とフーガ ホ短調」が一番心地よかった。

このコンサートでは、いつもオルガニスト自身がマイクを持って曲の説明をしてくれるが、今日はシーズンの最初だからか、最初に司会者(ホールオルガニスト)からパイプオルガンの構造についての説明があった。
それ自身珍しいものでもなかったけど、説明用に登場した、昔の小学校にあったような足踏みオルガンがキュートだった。「スージー」という名前も付いているそうで、音色は1種類だけだけどレトロな響だった。ルーシーは家に入らないが(ルーシーの中に家が入る。)、スージーなら部屋に置ける。欲しい




♪2014-34/♪みなとみらいホール-17

2014年4月20日日曜日

東京交響楽団第619回定期演奏会【ジョナサン・ノット音楽監督就任披露公演】

2014-04-20 @サントリーホール


宮田まゆみ:笙
ジョナサン・ノット指揮:東京交響楽団




武満徹:セレモニアル -秋の歌-
マーラー:交響曲 第9番 ニ長調
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東響については川崎ミューザでの定期会員なのだけど、それが昨日で、日フィルの定期と重なったために1日遅れで同じプログラムによるサントリーホールでの東京定期に振り替えてもらった。

東京交響楽団は、友人が付属合唱団に入っていたこともあり、比較的よく聴いていたし、今年の1月にもみなとみらいホールで聴いている。
オケの上手い下手はなかなか判断しかねる。
それより、コンサートが楽しいということが大切で、技量はプロに及ばないアマオケでも、ワクワクする感動を与えてくれることもある。

しかし、今日の東響は、これまでの印象を変えてしまうような上出来だった。
普通、P席でオケの近くで聴くとどうしてもバランスが悪くなり、音にざらつきが出る(これはこれで楽しいのだけど)。
ところが、今日の東響の音はとてもきれいだ。
管弦打楽器のバランスや混ざり具合もいいし、何より、弦楽合奏の透明にして重厚な響きまで、音そのものを聴いているだけで心地が良い。

なんで?

指揮者兼音楽監督のジョナサン・ノット氏の就任披露を兼ねたコンサートだったが、指揮者によってオケの力が格段に変わるはずがない。

これまでの東響との付き合いは、みなとみらいホールとオペラシティコンサートホールで、記憶・記録にあるかぎり、サントリーホールでは初めて。

では、ホールの作りの違い?

たしかに、サントリーホールは音響の良さでは随一という評判だが、ミューザ川崎シンフォニーホールもみなとみらいホールも県立音楽堂もいずれも音響の良され知られているホールだから、素人が聴き分けられるほどの有意差はないと思う。

幸福な腑に落ちなさ。



第1曲は武満徹の「セレモニアル -秋の歌-」。初めて聴いた。
1992年の初演だそうな。
てことは、昨日の菅野祐悟「箏と尺八と管弦楽のための協奏曲~Revive~」より22年も昔の音楽だけど、その斬新なこと。

フューチャーされた「笙」は雅楽の楽器で、音色は弱々しく小さい。
にも関わらず、ナマのママで拡声されなかった(昨日の箏と尺八にはマイクが付き、拡声されていた。)。
それで、オケとの音量のバランスが難しい。
正直にいえば、聴いていて楽しいという音楽ではなかった。
実験音楽のような新しさに付いて行けない。
まあ、変わった経験をさせてもらったというところか。

休憩なしに、マーラーの第9番。

ブルックナーも苦手だが、マーラーも同様。
彼の交響曲も長い!
未完に終わった第10番を除く1曲当たりの平均は1時間22分(手持ちのCDで)というから、ブルックナーよりなお長い。
今日の第9番も1時間25分前後だ。

しかし、先月の金聖響と神奈川フィルでやはりマーラーの第6番を聴いたが、これは全く無理なく楽しめたし、前回のN響のブルックナー第5番も心に沁みる音楽体験だったので、あまり苦手意識で構えずに聴いたほうがいいなとは思っていた。


すると、果たして、冒頭にもたつきは感じたものの、最初に書いたように東響の響の良さ、アンサンブルの良さが手伝ったと思うが、まったく無理なく、この人間の感性や耐性を無視したかのような無謀な長大音楽が抵抗感無く入ってくるので、我ながら驚いた。

「別れ」とか「死」をイメージした作品のようだ。

始まりは何処からか不分明なママ始まり、終わりも消えゆくように終わる。

長大な音楽が静かに静かに終止して、しばらく(金聖響ほど長くはなかったが)は、指揮者が指揮棒を降ろさないので、オケも観客も時間が止まったかのような完全静寂。

暫時あって、ジョナサン・ノットが音楽の大往生を確認したかのように指揮棒を置いて、ようやくその場にいた全員が我に返る。

音楽監督就任披露公演の御祝儀気分もあって、会場は割れんばかりの拍手喝采。

彼も、N響でブルックナーを指揮したマレク・ヤノフスキと同様、この長大曲を完全暗譜で指揮した。

マーラー、おそるべし。

6月にも2番と6番を聴くことになっているが、楽しみではある。



♪2014-33/♪サントリーホール-01

2014年4月19日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第296回横浜定期演奏会

2014-04-19 @みなとみらいホール



遠藤千晶(箏)
藤原道山(尺八)
藤岡幸夫指揮:日本フィルハーモニー交響楽団

●菅野祐悟:NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」より
<メイン・テーマ><天才官兵衛><官兵衛走る><軍監勘兵衛>
●菅野祐悟:箏と尺八と管弦楽のための協奏曲~Revive~(世界初演)
●ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 Op47

今日取り上げられた作曲家、菅野祐悟(かんのゆうご)という人の名前は知らなかった。


でも「軍師官兵衛」は知っている。
でも、TVドラマは見ていない。
でも、NHKを見ていると、時々このテーマ音楽が流れるので、多少の聞き覚えはあった。

演奏されたのはメイン・テーマほか全4曲。
これらの曲も次の協奏曲も、まさに「今」そのものの音楽だが、和風の色付けに分かりやすいメロディ。
歌謡曲を壮大にしたような感じで、ちっとも「新しさ」を感じなかった。
いや、むしろ「古い」。
でも、そういう線を敢えて狙っているのだろう。

2曲めの「箏と尺八と管弦楽のための協奏曲」はシアトル交響楽団の委嘱作品で世界初演だったが、外国人の耳にはエキゾチックだろうが、僕の耳は平凡に感じた。
分かりやすい映画音楽を聴いているようで、心地良いというか、ノーストレスっていうのも、案外つまらないという贅沢で複雑な不満だ。
しかし、この作品がいずれは歴史に燦然と輝くかもしれないし、2、3度取り上げられてお蔵入りになるかもしれない。
どっちに転ぶかは作品の内容というより、運だろうな。


かのゴーストライター氏も悪魔のささやきに耳を貸さなければ、今日の菅野氏のように、終曲後舞台上に招かれ、楽団員と観客の拍手喝采を浴びることもできたろうに。

メインプログラムはショスタコの5番。
多くのオーケストラが定期演奏会で取り上げるショスタコの定番だ。先月も聴いたばかり。
もちろん、好きだし、演奏にも不満はないけど、ショスタコは交響曲だけでも15曲も書いているのだし、ほかの作品も取り上げてほしい。



♪2014-32/♪みなとみらいホール-16

2014年4月18日金曜日

第298回神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会【川瀬賢太郎 常任指揮者就任披露公演】

2014-04-18 @みなとみらいホール



伊藤恵:ピアノ
川瀬賢太郎指揮:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

バックス:交響詩「ティンタジェル城」
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 Op.54
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68

バックスという作曲家のことは全く知らなかった。こういっては失礼だが、シューマンとブラームスだけで十分なので、下調べもしなかった。生没1883年~1953年というからストラヴィンスキーとほぼ同年代だ。大雑把すぎて意味もない括り方だけど「現代の音楽」ということか。

交響詩「ティンタジェル城」は、かなり派手な音楽だが、すんなりと気持ちが乗り移るというタイプではなかった。聴き方が悪いのかもしれないが、ざわざわして騒がしいという印象だけが残っている。浮気相手のハリエット・コーエンとともにティンタジェル城(英国コーンウォール地方)を訪れた際の印象を音楽にして彼女に捧げたものだそうな。
後から、プログラムを読んで、おおそういえば激しかったな、と思ったが、先にこの背景を知っておれば聴き方も変わったろう。



シューマンのピアノ協奏曲は大好き!
ピアノの伊藤恵は弾き始めるとクララ・シューマンが乗り移ったような集中ぶりを見せるが、やはり要所要所で指揮の川瀬賢太郎と目を合わせ呼吸を合わせている。
二人は親子ほど歳が離れているが、今、両者がオーケストラと一緒に、そして観客も一緒に音楽を創りあげている、という感じが楽しい。

第2楽章から切れ目なく第3楽章に雪崩れ込む際の高揚感はやや物足りなかったなあ、と思って、帰宅後家にある2種類のCDを回してみたが、いずれも似たようなものか。こういう音楽なんだなあ。


ブラームスの交響曲第1番も大好き。
シューマンでもテンポについてやや遅めだと思ったが、ブラームスでははっきりと、普段聴いているものに比べてだが、遅い。

しかし、それで不満はなかった。
もともとブラームスはこの隔靴掻痒のストイズムが妙味だと思っている。
燃え上がりそう!と思わせて燃え上がらない。
とても禁欲的なので、馴染むのには時間が掛かるが、シューマン、クララそして青年ブラームスの関係を思いやるときに、その燃え上がらなさ、が痛切に思えて、聴き手もじっと我慢だ。
しかし、終楽章、それも終盤の盛り上がりはどうだ。
それまで溜めに溜めていた情熱がほとばしり出て堂々のカタルシスだ。

若干29歳の川瀬賢太郎。国内最年少の常任指揮者として就任披露のデビューコンサートだったが、ブラームスの高揚感をそのまま会場も楽団員も大歓声のエールを送り続けた。
なんどもカーテンコールに呼び出され、照れてか、指揮台の楽譜を取り上げて観客に示していたが、これは自分(の指揮)ではない、ブラームスの作品が素晴らしいんだ、という意味だったのだろう。
大指揮者?だったかのそういう逸話を昔読んだことがあるのだけど誰の話だったか思い出せない。
川瀬賢太郎もそれは承知していたろうけど、それを真似たというより、今日の大歓声の中では、正直にブラームスの音楽が素晴らしいと思った上でのことだろう。

♪2014-30/♪みなとみらいホール-15