2014年4月13日日曜日

N響第1778回 定期公演 Aプログラム

2014-04-13 @NHKホール


マレク・ヤノフスキ指揮:NHKホール交響楽団

ブルックナー:交響曲 第5番 変ロ長調(ノヴァーク版)

率直にいえば、ブルックナーは苦手(ほかにも苦手の作曲家はいるけど。)!
何しろ、長大交響曲作家だ。合唱曲や室内楽などもあるらしいが、聴いたことはない。
0番から9番までの交響曲はいずれも演奏時間が1時間前後を要し、今日の第5番は80分だ(それで、今日の演奏曲目はこの1曲だけで、当然休憩はない。)。

長いだけではなく、覚えやすい旋律はほとんどないので、つまり、馴染みにくい。で、敬遠する。ますます楽しめない、という悪循環だ。

それでも、定期演奏会などで取り上げられると、逃げようもなく対峙しなければならないが、生で聴くと家で聴くのとは大違いで、壮大なオーケストレーションに案外良かったなあ、と思って帰る。

しかし、やはりその程度のことで終わってしまい、自発的に聴きたいとはなかなか思えない作曲家だ(った!)。


今回は、久しぶりのN響だし、出し物はこれだけ!なので、是非とも楽しみたい、と思って、随分耳慣らしをしたが、結果的には虚しい努力だった。

意外にも、冒頭のppの低弦のピチカートで、もうすんなりとブルックナーの世界に入り込むことができた。霧が一瞬にして晴れたような感覚だ。
第2楽章は僕の耳には冗長な感じもするが、第3楽章が気分を変えてくれ、終楽章はもう怒涛の未体験ゾーンに入る。

終楽章に来てよく分かった。第1楽章の再現から始まって第2楽章の主題も織り込まれている。そしてクライマックスにかけても第1楽章の第1主題が再現されて、なるほど、これは巧緻に設計された構造物だと得心した。


こういう感覚や理解は、大編成のオーケストラの生演奏で初めて感得したことだ。
すべての楽器の音が埋没すること無く聴こえるから、曲の構造の手がかりを掴めたのだ。

家で緊張感なくCDをいくら回しても、散歩の折にiPodで繰り返し聴いていても、ブルックナーのような長大で、壮大で、仕掛けに満ちた音楽は、なかなか心に届くものではないのだとよく分かった。
故にそれらは虚しい努力だった。

しかし、一度手がかりを得ると、次からは観賞態度がおぼろげではあるけど固まってくるので、同じiPodで聴いていてもこれまで聴き取れなかった音が聴こえてくるだろうと思う。

まあ、今日はそんなふうな体験をした。

ここ1年では別のオケで3番と7番を聴いているが、今日ほどブルックナーを味わったことはなかった。
N響がうまいからか、僕の蓄積が効いたのか、よく分からないけど、苦手意識が激減したのはうれしい。しかし、深みに嵌りそうな作曲家でもあるから要注意だな。

マレク・ヤノフスキという指揮者は初めて聴いたが、まあ、このクラスになると当たり前かもしれないが、この長大なスコアを暗譜している。そうでなければ、とてもこの音楽を自分のものにはできないのだろう。
クライマックスが来て終曲するのが惜しい!と思うほど素晴らしい音楽体験だった。

これだけの大曲だから、アンコール演奏はなかったが、アンコールなど聴きたくもないという思いだった。
なかなかこういう経験はできないものだ。忘れがたいコンサートになった。


♪2014-30/♪NHKホール-01