2014-04-18 @みなとみらいホール
伊藤恵:ピアノ
川瀬賢太郎指揮:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
バックス:交響詩「ティンタジェル城」
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 Op.54
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
バックスという作曲家のことは全く知らなかった。こういっては失礼だが、シューマンとブラームスだけで十分なので、下調べもしなかった。生没1883年~1953年というからストラヴィンスキーとほぼ同年代だ。大雑把すぎて意味もない括り方だけど「現代の音楽」ということか。
交響詩「ティンタジェル城」は、かなり派手な音楽だが、すんなりと気持ちが乗り移るというタイプではなかった。聴き方が悪いのかもしれないが、ざわざわして騒がしいという印象だけが残っている。浮気相手のハリエット・コーエンとともにティンタジェル城(英国コーンウォール地方)を訪れた際の印象を音楽にして彼女に捧げたものだそうな。
後から、プログラムを読んで、おおそういえば激しかったな、と思ったが、先にこの背景を知っておれば聴き方も変わったろう。
シューマンのピアノ協奏曲は大好き!
ピアノの伊藤恵は弾き始めるとクララ・シューマンが乗り移ったような集中ぶりを見せるが、やはり要所要所で指揮の川瀬賢太郎と目を合わせ呼吸を合わせている。
二人は親子ほど歳が離れているが、今、両者がオーケストラと一緒に、そして観客も一緒に音楽を創りあげている、という感じが楽しい。
第2楽章から切れ目なく第3楽章に雪崩れ込む際の高揚感はやや物足りなかったなあ、と思って、帰宅後家にある2種類のCDを回してみたが、いずれも似たようなものか。こういう音楽なんだなあ。
ブラームスの交響曲第1番も大好き。
シューマンでもテンポについてやや遅めだと思ったが、ブラームスでははっきりと、普段聴いているものに比べてだが、遅い。
しかし、それで不満はなかった。
もともとブラームスはこの隔靴掻痒のストイズムが妙味だと思っている。
燃え上がりそう!と思わせて燃え上がらない。
とても禁欲的なので、馴染むのには時間が掛かるが、シューマン、クララそして青年ブラームスの関係を思いやるときに、その燃え上がらなさ、が痛切に思えて、聴き手もじっと我慢だ。
しかし、終楽章、それも終盤の盛り上がりはどうだ。
それまで溜めに溜めていた情熱がほとばしり出て堂々のカタルシスだ。
若干29歳の川瀬賢太郎。国内最年少の常任指揮者として就任披露のデビューコンサートだったが、ブラームスの高揚感をそのまま会場も楽団員も大歓声のエールを送り続けた。
なんどもカーテンコールに呼び出され、照れてか、指揮台の楽譜を取り上げて観客に示していたが、これは自分(の指揮)ではない、ブラームスの作品が素晴らしいんだ、という意味だったのだろう。
大指揮者?だったかのそういう逸話を昔読んだことがあるのだけど誰の話だったか思い出せない。
川瀬賢太郎もそれは承知していたろうけど、それを真似たというより、今日の大歓声の中では、正直にブラームスの音楽が素晴らしいと思った上でのことだろう。
♪2014-30/♪みなとみらいホール-15