2018年11月23日金曜日

読売日本交響楽団第107回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2018-11-23 @みなとみらいホール


デニス・ラッセル・デイヴィス:指揮
読売日本交響楽団

ハリエット・クリーフ:チェロ*

ニールセン:歌劇「仮面舞踏会」序曲
エルガー:チェロ協奏曲ホ短調 作品85*
シベリウス:交響曲第1番ホ短調 作品39
-----アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番からサラバンド

ハリエット・クリーフというチェリストは初めて聴いた。
エルガーのチェロ協奏曲は力強いカデンツァ風のチェロ独奏で始まるが、その音量不足で抱いた不信感は最後まで払拭できなかった。ラストも読響の圧倒的な音圧に埋もれてしまった。音はなかなかきれいなのだけど、体調が悪かったのか、元々非力なのか。

ソナタや室内楽などでは力を発揮するのではないかと思ったが。
また、彼女が弾いたアンコールのバッハの無伴奏が独自的過ぎで驚いた。かつて聴いたことがないようなフレージングだった。あの楽譜から、どうしてこういう演奏になるのか、不思議だ。

シベリウスの交響曲第1番は2管編成に比べ弦の編成は見た目過剰感のある16型だったが、良く鳴るホールで大規模編成が違和感なく偉力を発揮した。

♪2018-152/♪みなとみらいホール-34

2018年11月22日木曜日

日生劇場会場55周年記念公演 NISSAY OPERA 2018 モーツァルトシリーズ『後宮からの逃走』

2018-11-22 @日生劇場


指揮:下野竜也
演出:ギー・ヨーステン

管弦楽:東京交響楽団
合唱:二期会合唱団

セリム:大和田伸也
ベルモンテ:金山京介
ペドリッロ:升島唯博
コンスタンツェ:松永知史
ブロンデ:冨平安希子
オスミン:加藤宏隆

モーツァルト作曲 オペラ『後宮からの逃走』全3幕
(原語[ドイツ語]上演・日本語字幕付)(セリフの一部は日本語)
台本:ゴットリーブ・シュテファニー

予定上演時間:約2時間25分
第Ⅰ、Ⅱ幕 80分
 --休憩25分--
第Ⅲ幕 40分

今季のNISSAY OPERAはモーツァルト4作。
所謂4大歌劇から「フィガロの結婚」に代えて「後宮〜」が入った。
「魔笛」、「ドン・ジョヴァンニ」、「コジ・ファン・トゥッテ」については、音楽はともかく、物語になかなか納得できないので、どうにもカタルシスが得られない。その点、本作の物語はおおむね腑に落ちるし、無理なく幕が閉まるのがいい。

物語で重要な役割を果たすトルコの太守・セリム(後宮の主)には歌がない(このオペラ自体が、歌付き芝居=ジングシュピールと呼ばれていて、セリフ劇の中に歌も登場するので、もっぱらセリフのみ受け持つ役も興行的に必要だったのではないか。J.シュトラウスⅡの喜歌劇=オペレッタ「こうもり」でも看守役には歌がなく、その役は有名な喜劇役者が演ずることが多いようだ。)。
歌のないセリムのセリフだけ日本語(部分的にはドイツ語のやり取りもあった。)というのも変だが、ここを日本語にしなくちゃ大和田伸也という舞台役者を登用する意味は無いのだろう。

美術・舞台装置は良かった。
日生劇場では、舞台があまり広くないので大掛かりな舞台装置を配置することはできない。その制約との戦いの中で色々なアイデアを巡らすのだろう。その出来栄えに感心することが多い。

今回も、シンプルな装置だった。
4つ折りの屏風のような構造物を4角に畳んだり3角に畳んだりして場面が変わる。
特に2、3幕との差で終幕が実際以上に豪華な後宮に見えるのが面白い。

欲を言えば、幕切れの演出に工夫がほしかった。セリムは復讐に走ってもよいはずだが、寛大な心で若者たちを後宮から逃走させてやる。立派な行いであるが、その心情がうまく描かれないと、取ってつけたような安易な「まとめ」になってしまう。今回もちょっとそんな気がした。


♪2018-151/♪日生劇場-04

2018年11月21日水曜日

東京都交響楽団 第864回 定期演奏会Aシリーズ

2018-11-21 @東京文化会館


ミヒャエル・ザンデルリンク:指揮
東京都交響楽団

河村尚子:ピアノ*

クルト・ワイル:交響曲第2番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番変ニ長調 op.10*
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調 op.54
--------アンコール
プロコフィエフ:10の小品 作品12-7「前奏曲」*

今日のプログラムは、クルト・ワイル:交響曲第2番<初演1934年-演奏時間28分>、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番<同12年-16分>、ショスタコーヴィチ:交響曲第6番<同39年-31分>と、

いずれも20世紀前半に活躍した作曲家の作品で、
いずれも3楽章で構成され、
いずれも比較的演奏時間が短い。

第1曲めは途中からまどろんだ。現代作品と言っても「3文オペラ」など軽いものも書いた人で、小難しい音楽ではなかったが、初聴きだし特に魅力を感じないまま、うつらうつらとしてしまった。

第3曲めのショスタコーヴィチの交響曲第6番。
これは近年の鑑賞記録には無いので、これもナマでは初めて聴いたのかもしれない。
超有名な第5番の香りを残しつつも全体として軽い。都響の演奏もこれが一番まとまりがあったように思う。

何と言っても一番楽しみだったのはプロコフィエフだ。
特にこのピアノ協奏曲第1番が好きなのではない。ソリストの河村尚子のファンなので彼女が弾くなら何だって聴きたい。

舞台に登場するところからチャーミング。
愛嬌のある顔に満面の笑みを浮かべて背筋を伸ばし、大股で舞台中央に。コンマスらと握手をし、オケにも愛想を振りまいてから客席に向かって深々と一礼。その辺まではキュートな笑顔だが、音楽開始とともに表情は一変する。

完全に音楽の世界に入魂した表情だが変化が目まぐるしく、その表情を見ていると音楽の表そうとしているものがそのままに伝わってくるようだ。
女性ピアニストの中には演奏中に高尚な苦悩の表情を浮かべる人も少なくないが、河村尚子の表情は次元が違う。

鋭いタッチ、コロコロと鍵盤を転がるしなやかな指は思い切りピアニシモでもフォルテシモでも一音一音を疎かにしていないことが分かる。とても繊細なタッチだが、ここ一番では椅子からお尻が上がる。そのダイナミズムも魅力だ。
わずか16分の作品だったが、中身は濃かった。

♪2018-150/♪東京文化会館-06

2018年11月19日月曜日

平成30年度(第73回)文化庁芸術祭協賛 国立演芸場11月中席

2018-11-19@国立演芸場


落語          立川吉幸⇒寿限無
歌謡漫談    東京ボーイズ
落語          三笑亭夢丸⇒納豆屋
漫才          東京丸・京平
落語          立川談幸⇒二番煎じ
    ―仲入り―
講談           神田紫⇒春日局〜奴さん〜
落語           桂米福⇒長命
曲芸           ボンボンブラザース
落語           三笑亭茶楽⇒明烏

11月の興行は芸術祭協賛と銘打たれているがそれは名ばかり。
ルーティンのやっつけ仕事みたいな芸が多かった。
二ツ目の立川幸吉は滑舌は良いが「間」が無いので聴き辛い。

曲芸のボンボンブラザーズはいつも同じ芸だが憎めない。
漫才が2本。東京ボーイズもいつものように冴えないが、東(あずま)京丸・京平は酷い。引退を勧告するよ。

せめてものトリの茶楽には味わいがあった。


♪2018-149/♪国立演芸場-17

2018年11月17日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会みなとみらいシリーズ第344回

2018-11-17 @みなとみらいホール


ロリー・マクドナルド:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

エルガー:序曲「南国にて(アラッシオ)」
ワーグナー/フリーヘル編:楽劇「ニーベルングの指環」 
 -オーケストラル・アドベンチャー-
 序夜:『ラインの黄金』
 ♪01前奏曲
 ♪02ラインの黄金
 ♪03ニーベルハイム
 ♪04ヴァルハラ

 第1日:『ワルキューレ』
 ♪05ワルキューレたち
 ♪06魔の炎

 第2日:『ジークフリート』
 ♪07森のささやき
 ♪08ジークフリートの英雄的行為
 ♪09ブリュンヒルデの目覚め

 第3日:『神々の黄昏』
 ♪10ジークフリートとブリュンヒルデ
 ♪11ジークフリートのラインへの旅
 ♪12ジークフリートの死
 ♪13葬送行進曲
 ♪14ブリュンヒルデの自己犠牲

今季・神奈川フィル定期(みなとみらい定期、県民ホール定期を通して)最大の楽しみが今日のワーグナーのフリーヘル編「ニーベルングの指環」オーケストラル・アドヴェンチャーだった。

一昨日のウィーン・フィルの「神々の黄昏」抜粋版がもたらす夢見心地は30分で覚めたが、フリーヘル版は「指環」4部作(演奏は4日間にわたり、計15時間を要する。)を網羅しているだけあって60分強のノンストップ興奮の旅だ。
この熱い期待に応えて、近年好調の神奈川フィルの演奏も緩みなくほぼ完璧だった。

高域弦の透明さ不足を除けばウィーン・フィルも吃驚の迫力。
「〜黄昏」の中で有名な「ラインの旅」のホルンソロが確実に決まって見事(Wフィルは1音外した)。

https://youtu.be/_MkMdlfl8Hg?t=3

欲を言えば、ハープ4台、ホルン9本、ティンパ2組など管打の大編成に対し、弦は変則14型?ここは各部あと1〜2プルト(プルト=譜面台。1本に付き奏者2名)ずつ増強してほしかった。

さて、余談になるが、指環の抜粋モノは数々あれど、全4部作を網羅した管弦楽版でノンストップ1曲にまとめ上げたのはこれしか無いのではないか。

2年前に都響定期で演奏したラインスドルフ版では「ラインの黄金」からは1曲も盛り込まれていなかった。尤も、この時は指揮者のアラン・ギルバートが手を加えた版だったので、彼が端折ったのか、元から入っていなかったのかは分からない(演奏時間約52分)。

4年前に東響定期では今日と同じのフリーヘル版を演奏して、これが素晴らしかった。今、プログラムを読み返したら演奏時間70分と書いてある。今日の神奈川フィルは60分と記載してあり、実演も61分だった。手持ちCDでは66分だ。すると、今日の神奈川フィルは少しテンポが速めだったのかもしれないな。

いずれにせよ、管弦楽を聴く喜びに満たされた名曲であり、名演奏ではあった。そして何より、ワーグナーがよくぞこの畢生の大曲を残してくれたものだと感謝する。

♪2018-148/♪みなとみらいホール-33

2018年11月15日木曜日

ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2018

2018-11-15 @ミューザ川崎シンフォニーホール


フランツ・ウェルザー=メスト:指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
フォルクハルト・シュトイデ:バイオリン
ペーテル・ソモダリ:チェロ

ドボルザーク:序曲「謝肉祭」作品92 B.169
ブラームス:バイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」~舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」第3夜から抜粋(ウェルザー=メスト編)
-----------------
J.シュトラウスⅡ:レモンの花咲くところ 作品364、
   〃     :浮気心 作品319

2年前に同じミューザでメータ指揮のウィーン・フィルを聴いた。その時がウィーン・フィルを聴いた最初だったが、期待したほどの音ではなかった。アンサンブルが分厚い、とは思ったがびっくりするような音質ではなかった。

そんな訳で、2年ぶりのウィーン・フィルが前回以上の素晴らしい音楽体験を与えてくれるか、多少の不安はあった。

しかし、第1曲「謝肉祭」の、冒頭の管・弦・打のTuttiがあまりに強烈で、しかも、音が濁っていないのに、まずは惹き込まれた。耳をそばだてていたが、弱音になっても、ほとんど問題なく、分厚いアンサンブルを響かせながら弦は透明感を維持していたので大いにホッとし、これなら全プログラムが高水準で楽しめるぞ、と確信できた。

「謝肉祭」の弦の編成は大規模だったが、完全な16型ではなかったように思う。自席からはバイオリン群は重なって見えるので、正確に数えるのが難しい。第1バイオリンが15本、第2バイオリンが13本のように見えた(1人で譜面台を見ている奏者が2人いたような気がした。)が、16+12だったのか、14+14だったのかもしれない。
ビオラ以下は16型の基本形に従ってビオラ12人、チェロ10人、コントラバス8人だったと思う。つまり、バイオリンがはっきりしないが、ほぼ16型だ。

ブラームスのダブル・コンチェルトでは、14型だったのではないか。少し縮小したが、ブラームスの協奏曲だから、そのほうがバランスがいいはず。

ソリストは、バイオリンがウィーン・フィルのコンサートマスター。チェロがウィーン国立歌劇場管弦楽団のソロ・チェリストで、有名なソリストではない(と思う。僕は彼らの名前を知らなかった。)が、腕前は一流なのだろ。むしろ、ウィーン・フィルを知り尽くしているのだから、オケとの呼吸はよく合うはず。

ブラームス最後の管弦楽作品で、オーケストレーションの集大成なのだろう。遠慮なく自分らしさを発揮した重厚な音楽で、独奏者の超絶技巧も、あまりそれらしく聴こえず、これみよがしの見せ場というか、アクロバティックな聴かせどころは少ないものの独奏楽器とオーケストラは溶け合って、深い世界へと誘っているように聴こえるが、果たして聴く側の耳がどれほど立派かによって表面の面白さにとどまっているのかもしれないと聴きながら葛藤していた。

欲を言えば、バイオリンの音がこの曲においてはやや繊細だったか。もっと図太い音でガリガリと脂を飛ばしてくれた方が、似合ったように思った。

今回の真打ちは、ウェルザー=メスト自らが「神々の黄昏」から抜粋した音楽を1曲の管弦楽作品にまとめたものだ。

4部作「ニーベルングの指環」全曲を網羅した管弦楽編曲(歌がないもの)はいくつか例があるが、今回は「〜黄昏」だけを対象に、その中で既に管弦楽曲として独立して演奏されることの多い「ラインの旅」と「ジークフリートの葬送行進曲」を軸に、前奏曲やフィナーレ部分などを加えていたように思ったが、自信はない。

「〜指環」は大好きな音楽だけど、「〜黄昏」だけでも休憩なしの正味演奏時間が4時間を超える大作だから、残念ながら、2曲以外の部分については確実にこの場面だ、というだけの確信は持てなかった。まあ、そんなことはどうでもいいことだけど。


特大編成の管弦楽が精緻なオーケストレーションを一瞬も緩むことなく、休むことなく楽劇の壮大なシーンを彷彿させてくれる。
演奏は、管・弦それぞれに美しいだけでなく、管と弦がこんなふうにも混じり合うのか、という驚きの響で溢れていた。

こんな素晴らしいアンサンブルで、この名曲を味わうという幸せに浸っていてもよいものだろうか、とさえ思った。

しかし、幸せは長くは続かない。
今回の編曲版は演奏時間30分に20秒ほど満たなかった。

フリーヘル編:楽劇「ニーベルングの指環」<オーケストラル・アドベンチャー>は全4部を網羅しているだけに演奏は60分〜70分も続く大曲だ。それをなんとなくイメージしていたのでまさか30分で終わるとは思っていなかったが、15時間の音楽を60分強でまとめているなら4時間の音楽を30分にまとめるのは上々なのかもしれないな。ともかく、ずっと聴いていたかったよ。

♪2018-147/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-22

2018年11月13日火曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後〜 トリオ・アコード

2018-11-13 @みなとみらいホール


ピアノ三重奏団「トリオ・アコード」
 白井圭:バイオリン
 門脇大樹:チェロ
 津田裕也:ピアノ

【第1部】
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調 作品8
-----------アンコール
ブラームス:ワルツ 作品39 から 第15番(ピアノ三重奏版)

【第2部】
ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番ハ長調 作品87
ブラームス:ピアノ三重奏曲第3番ハ短調 作品101
-----------アンコール
ブラームス:子守唄(ピアノ三重奏版)

ブラームスのピアノ三重奏曲全曲という硬派の演目が、小ホールと言え1部・2部とも満席だったのには驚く。

「トリオ・アコード」は津田祐也ピアノ、白井圭バイオリン、門脇大樹チェロが編成。いずれも室内楽、オーケストラでも活躍しているが、3人一緒でトリオで聴くのは初めて。
また、ブラームスのピアノ三重奏曲3曲全曲を通して聴くのも初めてだった。

みなとみらいホールは小ホールの方も響きが良くて、個々の楽器の音も重なりも美しい。

門脇のチェロは神奈川フィルの首席なので数多く聴いているが、ソロとしての音の良さに驚いた。

白井のバイオリンは先日のラザレフ+日フィルの定期で、ショスタコーヴィチの交響曲第12番という凄まじい大曲コンサートの客演コンマスの大役を努めたが、なるほどその実力は室内楽でも存分に発揮された。力強い。

ブラームスのピアノ三重奏曲全曲(だけに限らないが)に共通するのは、牧歌的だったり、メランコリックだったりの分かり易い主題が、決してそのまま情緒に流れることなく禁欲的に昇華され、弾けそうで弾けないギリギリの情念がコントロールされるところにこそむしろブラームスの秘めたエネルギーを感ずることだ。それがブラームスの魅力の一つだと思う。

とても3人で演奏しているとは思えないような精妙で重厚なアンサンブルが響き渡る空間で、美音に癒やされ、少しはブラームスの心境に近づけたような気もしたが。

♪2018-146/♪みなとみらいホール-32