2018年8月29日水曜日

ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』来日公演2018

2018-08-29 @県民ホール


ミュージカル:コーラスライン

ザック役:アーロン・パトリック・クレイヴン
シーラ役:カーリア・デイヴィス
マギー役:ヴェロニカ・フィアオーニ
コニー役:サマンサ・チョー・グロスマン
クリスティン役:エリカ・ジェーン・ヒューズ
ボビー役:ライアン・コーバー
キャシー役:マディソン・ティンダー
ディアナ役:ナタリー・ブルジョワ
ロイ役:ギデオン・チコス
ブッチ役:ジョヴァンニ・ダ・シルヴァ
ヴィッキー役:ハンナ・フェアマン
ロイス役:エミリー・フランクリン
フランク役:デヴィッド・グラインドロッド
トリシア役:ゾーイ・シュナイダー=スミス
ほか

原案・オリジナル振付・演出:マイケル・ベネット
演出・振り付け・再構成:バーヨーク・リー
音楽:マーヴィン・ハムリッシュ

劇団四季版は初演から何度か観た(日生劇場)。
今回はブロードウェイの引越公演。バーヨーク・リー(昨秋NHKBS「奇跡のレッスン」での彼女の人柄、生き方、魅力が素晴らしかった!ブロードウェイ「コーラスライン」オリジナルキャスト)も振付け・再構成に参加している。
さぞや迫力があるだろうと期待したが、驚くような出来ではなかった。初演時の四季の方がよほどか衝撃だったな。

とはいえ、耳に馴染んだ「One」、「at the Ballet」などは美しいし、キャシーのダンス、長い脚を目一杯上げての群舞などは原始脳を興奮させてくれる。
オーディションを受ける若者たちの「生い立ちの記」の告白もあまり湿っぽくならず、その分感情移入ができないのだけど、むしろあっさり片付けて正解だと思う。


舞台装置などは四季と同じ演出(実際は四季が模倣したのだろうが)で、舞台後方に回転する鏡だけ。これがなかなか効果的。ブロードウェイから運んできたのだろうが、後述するように舞台に間尺が合わない。

「稽古場」が舞台の所謂<密室劇>なので県民ホールのような広い舞台、広い客席(2,500席)には向かない芝居だ。
元の額縁の中に小さな額縁を作り舞台を狭くして演じられた。
僕は1階前から4列目の良席をGETしていたから問題なかったが後方席からは観づらかったろうし、舞台そのものが持つ迫力には欠けたろう。

日生劇場クラスが一番向いているのだけどなあ。

♪2018-103/♪県民ホール-02

2018年8月28日火曜日

MUZAナイトコンサート60 音と語りで楽しむ「セロ弾きのゴーシュ」

2018-08-28 @ミューザ川崎シンフォニーホール

チェロ:山崎伸子*
ピアノ:寺嶋陸也+
語り:青池玲奈#

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番から*
 前奏曲、サラバンド、メヌエット
ドビュッシー: 前奏曲第1巻から第10曲「沈める寺」+
ドビュッシー:チェロ・ソナタ*+
林光(編曲:青島広志):チェリストのための童話「セロ弾きのゴーシュ」*+#
ポッパー:ハンガリアン狂詩曲*+
---------------
サン=サーンス:白鳥*+

子供向けのようなタイトルの演奏会だが、しっかりと大人向けの充実したプログラムだった。

J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」から始まって、ピアノ独奏ドビュッシーの「沈める寺」、同「チェロソナタ」、林光のチェリストのための童話「セロ弾きのゴーシュ」など。

林光の「セロ弾きの〜」は初聴き。
原曲はオペラらしいが、今日の演奏はチェロ、ピアノ、語りの3人で演奏されるように編曲されている。尤も、オペラの方はオーケストラはピアノ1台だそうだから、今日の簡略版の方が編成は豪華だ!
全9曲で構成されていて、どれも面白いが、この中にもバッハの無伴奏組曲1番前奏曲が組み込まれていたが、ここでは無伴奏ではなく、チェロのアルペジオ風の音楽にピアノによる美しい旋律がかぶる。しばらくするとこれが逆転してピアノがチェロのパートを弾きこれにチェロがメロディーを載せる。
ちょうど、J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集の第1曲にグノーが美しい旋律を載せた所謂「グノーのアヴェ・マリア」の趣向と同じことを林光はチェロの無伴奏組曲の第1曲でやった訳だ。無伴奏は単独で演奏されるものだから、邪道かもしれないけど、あまりにうまくメロディが嵌っているので新鮮な驚きがあった。

語り手は第5曲「カッコウのドレミファ」では自らカッコウになって歌うほか、第6曲「子狸のデュエット」では打楽器でも参加しするので、ただ朗読がうまいだけでは務まらない。変形ピアノ・トリオのようだ。

林光を聴く機会はめったにないが、こんなに楽しくて親しみやすいのを作曲しているとは知らなかった。

チェロのベテラン山崎伸子も初めて聴いた。還暦は過ぎていてチラシの写真とのギャップが大きいが、さすがにケレンなく軽ろやかで安定感があり非常に心地良かった。

♪2018-102/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-16

2018年8月26日日曜日

歌舞伎座百三十年 八月納涼歌舞伎第三部 通し狂言 「盟三五大切」

2018-08-26 @歌舞伎座


四世鶴屋南北 作
郡司正勝 補綴・演出
織田紘二 演出
通し狂言 「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」

序幕
 佃沖新地鼻の場
 深川大和町の場  
二幕目
 二軒茶屋の場
 五人切の場   
大詰
 四谷鬼横町の場
 愛染院門前の場

薩摩源五兵衛⇒幸四郎
芸者小万⇒七之助
家主くり廻しの弥助⇒中車
ごろつき五平⇒男女蔵
内びん虎蔵⇒廣太郎
芸者菊野⇒米吉
若党六七八右衛門⇒橋之助
お先の伊之助⇒吉之丞
里親おくろ⇒歌女之丞
了心⇒松之助
廻し男幸八⇒宗之助
富森助右衛門⇒錦吾
ごろつき勘九郎⇒片岡亀蔵
笹野屋三五郎⇒獅童

初めて観る芝居で、あらすじはざっと予習していたが、本番では、歌舞伎座が販売している「筋書き」(プログラム)を手元に開いてややこしい人間関係の理解に追われながら観ることになった。手元に置くと言っても、演出で館内も暗くなる場面が多くてそうなるともうお手上げなのだが。

この作品は、先行の「五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)」、「仮名手本忠臣蔵」、「東海道四谷怪談」が織り込まれているそうだ。後者2作はまずまず理解しているつもりなので、どういうふうに本作に取り込まれているかは、およそ分かる。
が、「五大力恋緘」を観たことがなく内容も予習の範囲でぼんやりとしか頭に入っていなかった。
今後のために改めてブリタニカ国際大百科から関係部分を引用しておこう。

『<五大力>とは、元来は<五大力菩薩>の略で、女からの恋文の封じ目に書く文字であり、また貞操の誓いとして簪(かんざし) 、小刀、三味線の裏皮などにこの字を書いた。』
『<五大力恋緘>〜は紛失した宝刀探しに明け暮れる源五兵衛と三五兵衛に、辰巳芸者小万との愛と義理立てをからませた筋で、隣で唄う上方唄<五大力>を聞きながら三味線の裏皮に<五大力>と書く趣向が受けた。ほかに文化3 (1806) 年並木五瓶作の『略三五大切 (かきなおしてさんごたいせつ) 』、文政8 (25) 年鶴屋南北作の『盟三五大切 (かみかけてさんごたいせつ) 』の書き換え狂言が有名。』とある。

つまり、「盟三五大切」は「五大力恋緘」を再構成し、その際?に「仮名手本忠臣蔵」と「東海道四谷怪談」(東海道〜は元来が忠臣蔵の外伝である。)を盛り込んで再構成したようだ。

本作では、笹野屋三五郎がその女房小万の腕に彫った「五大力」の入れ墨に、頭に「」を加え「」に偏として「」を加えて、「五大」に書き変える。これが終盤の悲劇の原因となる。

小万は三五郎の女房であることを隠して深川芸者として稼いでいる。それは三五郎の父に討ち入りの資金を提供することで、勘当を解いて欲しいからだ。つまり、三五郎も今は身分を隠して船頭をしているが、元は武家の出で、塩谷家(史実では浅野家)に縁の者だ。

一方、その小万にすっかり入れ込んだのが源五右衛門。彼は主人の切腹前に主家の御用金を盗まれて、その科で浪人となったが、なんとか盗まれた金を取り戻し、塩谷家に復縁したいと思っているが、今は、その素性を明らかにできない。また、そんな事情から芸者にうつつを抜かしているゆとりはないのだが、そこがだらしがないのがこの男の性なのだ。
ところが、親戚筋から、思わぬ大金百両を得ることになった。本来なら、主家に届けて復縁を願い出るべきところ、小万に未練があって逡巡している。
それを知った三五郎夫婦がその金を奪おうと計画する。三五郎も源五右衛門も本来は仲間同士なのだが、互いはその事情を知らないがゆえである。

源五右衛門は結局百両を奪われ、深夜、その恨み果たさんと三五郎の仲間が寝入っている家を襲い、5人を斬り殺す。

筋書きは、このあとも更に複雑に展開し、人殺しや腹切など凄惨な場面が続くが、最後は源五右衛門が晴れて塩冶浪士として高野家(史実では吉良家)討ち入りに向かう。

という訳で、この芝居も全体として「忠臣蔵外伝」なのだ。
幽霊の紹介は略したが、民谷伊右衛門(実は塩冶浪人)が女房のお岩を斬り殺した家が重要な舞台となり、お岩の幽霊が出る、という話が絡んでくる。

こういう筋書きの理解で、冒頭に書いた、「五大力恋緘」、「仮名手本忠臣蔵」、「東海道四谷怪談」の織り込みは納得できるが、おそらく、この作者はもっと巧緻な仕掛けを用意しているのかもしれない。

「予習」した際に、芝居の大詰で源五右衛門が三五郎の切腹を見て「こりゃかうなうては叶うまい」(こうでなくちゃおさまらなない)というセリフを言うことで、三五郎の切腹を早野勘平、塩冶判官の切腹に見立て、物語全体が「忠臣蔵」として「収まる」という見方を読んだが、今回の公演ではこのセリフ、確かに聞いたが、源五右衛門のセリフではなく、三五郎の父徳右衛門がつぶやいたように思った。なので、このセリフの意味が理解できない。浮いている感じだ。

巧緻な仕掛け、というのは、ここに引用した独自な見方が正しいかどうか判断できないが、そのような類の仕掛けが施してあるのではないか。登場人物を(源五右衛門⇒不破数右衛門だけでなく)忠臣蔵のいろんな人物に重ね合わせることができるのではないか、そんな気もしながら観ていたが、筋を追いかけるのが精一杯だった。

歌舞伎の常套手段で、登場人物の「A実はB」というびっくりぽんが多いこと。
参考までに以下に列挙しよう。これが、理解を難しくさせる原因の一つだ。

●薩摩源五兵衛⇒実は塩冶浪人(御用金を盗まれたため浪人となった)の不破数右衛門
●芸者妲妃の小万⇒実は民谷伊右衛門の召使いお六⇒実は大家の弥平の妹⇒実は三五郎の女房
●大家の弥助⇒実は民谷家中間土手平⇒実は小万の兄⇒実は塩冶家から御用金を盗み出した盗賊
●賤ケ谷伴右衛門⇒実はごろつき勘九郎
●笹野屋三五郎⇒実は塩冶家縁の徳右衛門(同心の了心)の息子千太郎

♪2018-101/♪歌舞伎座-04

2018年8月25日土曜日

華麗なるコンチェルト・シリーズ第7回 清水和音〜ラフマニノフ・ドラマティコ〜

2018-08-25 @みなとみらいホール


太田弦:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

清水和音:ピアノ*

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」からポロネーズ
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18*
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30*

まずは、神奈川フィルのオーケストラのみでチャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズで、最近好調の厚みのある響を聴かせた。

このところ、鑑賞・観劇は12日間の長期休暇(どこのオケもお盆前後に定期演奏会は開かない。)だったのでナマオケは13日ぶり。そう事情もあって、生演奏が干天の慈雨の如く染み込んで、一層良く聴こえたのかもしれないけど、最近の神奈川フィルのアンサンブルはとてもまとまりが良い。一皮むけた感じだ。

次に、今日のメインプログラム。
清水和音のラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2、第3番はいずれも力演だった。

みなとみらいホール自体が楽器のように高性能だから、スタインウェイを一層ブリリアントで力強く響かせて、第2番第1楽章冒頭の有名な和音連打(10本の指で最大9重音!)がワクワクさせ、それに誘われるように入ってくる弦による主題が美しい。マリリン・モンローの「七年目の浮気」で浮気男の妄想をかき立てたのがこのメロディーだ。

2番はラフマニノフの全4曲ある協奏曲の中で、人気No.1だろう。演奏機会が多く、聴く機会も多い。この曲のロマンチックでメランコリックな情感に浸るのは、妄想の助けにもなるが、癒やしにもなる。

僕としては、3番も同じくらいに好きだ。
各人の好みだけど、3番はちょっと音楽的に難しいように思う。オーケストレーションも複雑で、指揮者が(どんな音楽でも基本的には同じだけど)各パートをしっかり制御して縦横をきちんと合わせないと音楽が空中分解してしまいそうな、聴いていてそんなリスクを感ずるけど、その代りきちんと制御されたならラフマニノフが構想した絶妙なアンサンブルが再現できる訳だ。

今日の若手指揮者太田弦くん(1944年生)、初聴きだが、ピアノとオケの絡みが複雑な管弦楽を綺麗にまとめ、清水和音の強力な演奏と相まって、うねるように陶然たるクライマックスに仕上げて、振り終えるや間髪入れず大きな拍手と歓声が一斉に巻き起こった。

♪2018-100/♪みなとみらいホール-23

2018年8月12日日曜日

フェスタサマーミューザ2018 東京交響楽団 フィナーレコンサート ≪祝 バーンスタイン生誕100年≫

2018-08-12 @ミューザ川崎シンフォニーホール


秋山和慶:指揮
東京交響楽団

テューバ:田村優弥(ミューザ・ソリスト・オーディション2016合格者)
幸田浩子:ソプラノ♡
中川晃教:シンガーソングライター/俳優◆

●ジョン・ウィリアムズ:オリンピック・ファンファーレ
●ジョン・ウィリアムズ:テューバ協奏曲
●バーンスタイン:「キャンディード」序曲
 「着飾って浮かれましょ Glitter and be Gay♡
 「キャンディードの哀歌 Candide's Lament◆
 「なんて幸せな二人 Oh, Happy We」♡◆ 
●バーンスタイン(C.ハーモン編):組曲「キャンディード」
●バーンスタイン:ディヴェルティメント
---------------
●バーンスタイン:ウェストサイトストーリーから”トゥナイト”♡◆

在京十オケがミューザ川崎シンフォニーホールに集う夏祭のオープニングとフィナーレコンサートはいつも東京交響楽団の出番だ。ミューザがホームだから。

それにしてはいつも選曲が悪い。
なんで、ここで「祝バーンスタイン生誕100年」なのか。
なのに、ジョン.ウィリアムズ(スター・ウォーズ、E.T.、未知との遭遇等の作曲家)が2曲も入っているのはなぜか。分からないまでも映画音楽ならともかく、テューバ協奏曲では独奏者には申し訳ないが楽しめない。

肝心のバーンスタイン作はミュージカル「キャンディード」関係の数曲(歌入り3曲含む)と嬉遊曲(小品8曲集)。芯とか核になる作品がなく、つまるところ小品集のようなものだった。

これではフェスタサマーミューザのフィナーレとしては弱い!すっきりして帰れないな…と思っていたが、アンコールで再度登場した幸田と中川がオケをバックに歌った「トゥナイト」がなかなかの名演名唱。ようやくのカタルシスで幕。

♪2018-099/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-15

2018年8月10日金曜日

フェスタサマーミューザ2018 東京ニューシティ管弦楽団 ≪センター争奪、灼熱のアリアバトル≫

2018-08-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール


曽我大介:指揮
東京ニューシティ管弦楽団
司会:朝岡聡

ソプラノ:髙橋維
ソプラノ:土屋優子
メゾ・ソプラノ:野田千恵子
メゾ・ソプラノ:高野百合絵
テノール:芹澤佳通
バリトン:吉川健一

●ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
●プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」から“誰も寝てはならぬ”(芹澤)
●ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」から“今の歌声は”(高野)
●ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」から“祖国を裏切る者”(吉川)
●ロッシーニ:歌劇「タンクレーディ」から“この胸の高鳴りに”(野田)
●ヴェルディ:歌劇「椿姫」から“ああ、そはかの人か~花から花へ”(高橋)
●プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」から“ある晴れた日に”(土屋)
-----休憩-----
●ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」序曲
●ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師 」からロジーナとフィガロの二重唱“それじゃ私だわ…嘘じゃないわね” (高野/吉川)
●プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」からロドルフォとミミの二重唱“おお麗しの乙女よ”(芹澤/土屋)
●マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
●プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」蝶々夫人とスズキの二重唱"桜の枝を揺さぶって"(土屋/野田)
●ドニゼッティ:歌劇「ドン・パスクワーレ」からノリーナとドン・パスクワーレの二重唱 “お嬢様、そんなに急いでどこへ”(高橋/吉川)
●ヴェルディ:歌劇「リゴレット」序曲
●ヴェルディ:歌劇「リゴレット」第三幕四重唱”美しい恋の乙女よ” (高橋/野田/芹澤/吉川)
---------------
アンコール
ヴェルディ:歌劇「椿姫」から”乾杯の歌”(全員)
アンドレア・ボチェッリ:”タイム・トゥ・セイ・グッバイ”(全員)



コンサートのキャッチコピーは「センター争奪、灼熱のアリアバトル」。
要はイタリア・オペラの有名アリアを女声4人(ソプラノ2人、メゾソプラノ2人)と男声2人(テノール、バリトン)が各1曲ずつ歌い(前半)、前半終了後の休憩中に観客に投票でラストステージのセンターを決めようというお遊び。

下手に進行すれば嫌味なコンサートになるが、指揮者も、歌手たちも、何よりMCを務めた朝岡聡(元テレ朝)の軽いノリで穏やかに、楽しむことができた。

投票率は85.6%と驚異的だったのも、客席が楽しめたからだ。

で、みんな何を基準に投票したのか?

結局は歌唱力というより、歌手というより<何を歌ったか>で決めたのだろうな。

イタリア・オペラからアリアを選ぶなら、断然プッチーニが、それもテノールかソプラノが有利だ。ここ一番の名曲が割り当てられているから。

僕の好みで言えば、最初に歌った、プッチーニ「トゥーランドット」からテノールの「誰も寝てはならぬ」が良かったが、最後に登場した、やはりプッチーニの「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」のソプラノの名曲にやられてしまい、ほとんどの票がこの歌に浚われたのではないか。

休憩後の後半は、二重唱〜四重唱。おまけは六重唱に指揮者も飛び入りして(結構巧い!)七重唱で盛り上がった。

東京ニューシティ管弦楽団は、最近になってフェスタサマーミューザに登場するようになったが、在京オケの中では気の毒なくらいマイナーな存在だ。お客もあまり入らないだろうという観測からか、舞台周りの後方・側方の席は売らなかったらしく誰も座っていなかった。

オケもこじんまり(12型)していたが、歌伴だけでなく序曲や間奏曲などでオケの実力を聴かせたが、なかなかのものだ。

ベートーベンやブラームスといった正統派企画ならお客の入りは厳しいかもしれないけど、今日の<歌合戦>みたいなユニークな企画で是非とも来年以降もフェスタサマーミューザに参戦してほしいものだ。

♪2018-098/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-14

フェスタサマーミューザ2018 日本フィルハーモニー交響楽団 ≪音の風景〜北欧・ロシア巡り≫

2018-08-09 @ミューザ川崎シンフォニーホール


藤岡幸夫:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

反田恭平:ピアノ*

ラフマニノフ(ヴァレンベルク編):ピアノ協奏曲第5番 ホ短調
(交響曲第2番ホ短調の編曲版)-日本初演*
シベリウス:交響曲第1番ホ短調 作品39
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アンコール
E.エルガー:夕べの歌

ラフマニノフのピアノ協奏曲<第5番>は気鋭の若手、反田恭平による”日本初演”だった。

正確にはラフマニノフの交響曲第2番をヴェレンベルクという人が換骨奪胎してピアノ協奏曲に編曲したものだ。
ラフマニノフはピアノ協奏曲を4番まで作曲しているので、このマガイモノは<第5番>という訳だ。

元の交響曲全4楽章を協奏曲らしく3楽章に仕立て直すために小節数で4割カットしたという。それでも演奏時間は40分となかなかの大作で、有名な第3番についで演奏時間が長い。

交響曲の主要な旋律はだいぶ残っているようで、有名な3楽章のきれいな旋律も残されている。
それだけに聴いていて妙な気分だ。ま、邪道でしょう。

メインは、シベリウスの交響曲第1番。
超有名な第2番の陰に隠れて目立たないが、全7曲あるシベリウスの交響曲の中では第2番についで聴く機会が多い。この第1番の中には、後の第2番やバイオリン協奏曲等で特徴的なシベリウス印の素がそこここに散見(散聴?)されるので、知らずに途中から聴いてもシベリウスの作品だということは多くの人が分かるのではないか。クラシック音楽というより、娯楽音楽のような気楽に楽しめる音楽だ。
もう少し演奏機会が増えるといいが。でないと、シベリウスは第2番だけの作曲家みたいだ。

前半のピアノ協奏曲<第5番>は、当然、ピアノが大活躍なので(反田恭平はこの曲を5年前から弾きたくて機会を求めていたそうだが、それにしては楽譜が頭に入っていなくて、譜面を見ながら弾いた。協奏曲で独奏者が譜面を見るというのは非常に稀な例だ。)、弦の響があまり効果的に発揮されなかったが、シベリウスではアンサンブルの心地よさが目立った。


♪2018-097/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-13

2018年8月8日水曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後〜

2018-08-08 @みなとみらいホール


大山大輔:バリトンB
野々村彩乃:ソプラノS
中桐望:ピアノ

ホワイト(騎士道)とブラック(欲望)をテーマに、オペラとミュージカル作品の登場人物を歌い分ける!
【第1部】ホワイト(騎士道)
●モーツァルト:オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」より“彼に目を向けてください”【グリエルモ役】B
●ワーグナー:オペラ「タンホイザー」から“夕星の歌”
【ヴォルフラム役】B
●クロード=ミシェル・シェーンベルク:ミュージカル「レ・ミゼラブル」から”星よ”【ジャベール役】B
●レハール:オペレッタ「メリー・ウィドウ」から”間抜けな兵隊さん”【ダニロ役】&【ハンナ役】B&S
●ミッチ・リー:ミュージカル「ラ・マンチャの男」から“見果てぬ夢”【セルバンテス&ドン・キホーテ役】B
●プッチーニ:オペラ「トスカ」から“歌に生き 恋に生き”【トスカ役】S
●ヴェルディ:オペラ「ドン・カルロ」から“最後の時が来た”【ロドリーゴ役】B

【第2部】ブラック(欲望)
●ヴェルディ:オペラ「オテロ」から“俺は信じる 残忍な神を”【イアーゴ役】B
●モーツァルト:オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」から“女も15にもなれば”【デスピーナ役】S
●沼尻竜典:オペラ「竹取物語」から“かぐや姫へ捧げるアリア”【庫持皇子役】B
●モーツァルト:オペラ「ドン・ジョヴァンニ」から”お手をどうぞ”【ドン・ジョヴァンニ役】&【ツェルリーナ役】B&S
●ベートーベン:オペラ「フィデリオ」から“絶好の機会だ”【ピッツァロ役】B
●A・ロイド・ウェバー:ミュージカル「オペラ座の怪人」から“ミュージック・オブ・ザ・ナイト”&”ザ・ポイント・オブ・ノー・リターン”【オペラ座の怪人役】&【クリスティーヌ】B&S
●宮川彬良:オペラ「ブラック・ジャック」から”コップ一杯の空を飲んでいるか”【ブラック・ジャック役】B

みなとみらいホール「クラシック・マチネ」シリーズの今季第1回はバリトンの大山大輔にソプラノの野々村彩乃が賛助出演。

野々村といえば、横浜・みなとみらいホールで開催されている「全国学生音楽コンクール」声楽・高校の部で優勝(後日大学の部でも優勝)し、高校野球春の選抜で「君が代」を歌って超有名になった人だ。
今日の楽しみはその一点。

大山くんはオペラなどで何度か聴いている。
オペラ座の怪人にも出てたんだね。とても上手です。

でも、興味は野々村嬢。あの「君が代」には痺れた。
あれから8年余か。
すっかり大人になった野々村嬢。歌唱力はプロに相応しいがあの感激は得られず…(/_;)。
アンコールで「君が代」をやってほしかったが、今日はアンコールはなしだった。
ま、いつまでも「君が代」の野々村と言われたくもないだろうけど。

http://bit.ly/2My600c

♪2018-096/♪みなとみらいホール-22

2018年8月5日日曜日

フェスタサマーミューザ2018 東京都交響楽団 ≪鬼才ミンコフスキのくるみ割り人形≫

2018-08-05 @ミューザ川崎シンフォニーホール


マルク・ミンコフスキ:指揮
東京都交響楽団
TOKYO FM 少年合唱団

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71(抜粋)
 序曲
[第一幕]
 第1曲 情景(クリスマスツリー)
 第2曲 行進曲
 第3曲 子どもたちの小ギャロップと両親の登場
 第4曲 踊りの情景(ドロッセルマイヤーの贈り物)
 第5曲 情景と祖父の踊り
 第6曲 情景(招待客の帰宅、そして夜)
 第7曲 情景(くるみ割り人形とねずみの王様の戦い)
 第8曲 情景(松林の踊り)
 第9曲 雪片のワルツ
[第二幕]
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 第12曲 ディヴェルティスマン
  1 チョコレート(スペインの踊り)
  2 コーヒー(アラビアの踊り)
  3 お茶(中国の踊り)
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  5 葦笛の踊り
  6 ジゴーニュ小母さんと道化たち
 第13曲 花のワルツ
 第14曲 パ・ドゥ・ドゥ(金平糖の精と王子のパ・ドゥ・ドゥ)
  1 アダージュ
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  3 ヴァリアシオンⅡ:ドラジェ(金平糖)の精の踊り
  4 コーダ
 第15曲 終幕のワルツとアポテオーズ

演奏作品は、チャイコフスキーの<組曲版>ではなくバレエ音楽「くるみ割り人形」の抜粋だった。抜粋と言っても全曲から4曲*間引いただけのほぼ全曲版で演奏時間正味90分1本勝負。

チャイコフスキーは、バレエ音楽「くるみ割り人形」全曲完成に先立って自ら<組曲版>を編んでいる。これは全8曲で、作品71aという番号も付いている。
一般にはコンサートで聴く「くるみ割り人形」は大抵この<組曲>だ。

余談だが、チャイコフスキーの3大バレエ音楽が、バレエ公演ではなくコンサートで演奏される場合は<組曲>として演奏されるが、チャイコフスキー自身が編成した本物の<組曲>は上述のバレエ組曲「くるみ割り人形」だけだ。
「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」もコンサートで演奏される場合はほぼ<組曲版>だが(バレエ音楽の全体をコンサートでは聴いたことがない。)、その<組曲版>はその時の指揮者などが好みで構成した<組曲>なので、選曲が一定していないし、当然作品番号も付いていない。

元に戻って、作品71aというバレエ組曲ではなく、バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71を敢えて取り上げようとするなら、どうして完全版にしなかったのか。あと4曲加えたって10分か15分程度ではないか。まずはこの微妙な<抜粋版>だったというのが腑に落ちなかった。

また、演奏会用組曲ではなく、ここまで全曲に近い形での演奏となると、バレエ抜きのバレエ音楽を聴くことになるのでどうも釈然としない。

文楽の素浄瑠璃(人形なしの義太夫語りと三味線)から更に語りも抜いた三味線だけを聴くようなものだ。
能で言えば、能楽師も謡も抜いて笛太鼓をだけを聴くようなものか。…というのは極端な譬えだけど、バレエ音楽は音楽だけを聴いていても筋書きが分かる訳ではない。さりとて絶対音楽として聴くには短い舞曲の集まりだからこれも無理がある。

そんなこんなで、何やら隔靴掻痒の気分を収めることはできなかった。とはいえ、殆どは馴染みの音楽なので、歌のない歌謡ショーを聴いているようなものか。
部分的でもバレエを見せてほしかったな!そしてらストンと腑に落ちて音楽にも集中できたろうに。

ところで、都響がミューザで演奏するのはこのフェスタサマーミューザの機会だけだ。年に1度ということになる。いつものサントリーホール、東京文化会館、東京芸術劇場で聴いていると、それぞれ一長一短だが、久しぶりのミューザで聴く都響は一段と響が良かった。やはりミューザは聴きやすい。

*間引かれた音楽
[第二幕]
●第10曲 情景(お菓子の国の魔法の城)
●第11曲 情景(クララと王子の登場)
第12曲 ディヴェルティスマンの中の4 トレパック【ロシアの踊り】
第14曲 パ・ド・ドゥ【金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ】の中の2 ヴァリアシオン I:タランテラ

♪2018-095/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-12

2018年8月4日土曜日

フェスタサマーミューザ2018 NHK交響楽団 ≪新時代の到来! 注目の新星とN響の共演≫

2018-08-04 @ミューザ川崎シンフォニーホール


熊倉優:指揮
NHK交響楽団

上野耕平:アルト・サクソフォン

ブリテン:青少年のための管弦楽入門ーパーセルの主題による変奏曲とフーガ 作品34 
グラズノフ:アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲変ホ長調
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調 作品93

在京10オケ夏祭。どのオケも指揮者は首席級だというのにN響はパーヴォの助手の熊倉君。しかもN響を公開で振るのは初めてという。FSMを軽くみてるんじゃねーよ。チコちゃんに叱ってもらえ!と内心面白くない。

が、ブリテンのパーセルの主題が全強奏で始まった途端…豊かな響に気持ちが吸い込まれた。
グラズノフのA.SAXと弦楽の協奏曲は初聴き。耳慣れないせいもあって面白くはなかったが、N響の弦楽合奏は弦楽ならではの共鳴し合うシンフォニックな響が素晴らしい。

メインのショスタコ交響曲10番。長くて意味深で不可解で閉口。
譜面も複雑で、演奏も難しそうだ。流石のN響も弦の高域が長く続くところでは、キンキンと嫌な音を出していた。

ナマで聴く機会も少なく、今日で2回め。作曲家にとっては相当思い入れのある作品らしいが僕がこの音楽を楽しめるようになるには相当時間がかかりそう。

ところで、指揮者がこれをきちんと音楽にまとめ上げるのは大変な力量ではないか、とは思う。篠崎コンマスのリードもあったのだろうが、破綻なく振り終えて客席からもオケからもヤンヤの喝采。
終わり良ければ全て良し。26歳有望新人のデビューに立ち会えて良かったかも。

♪2018-094/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-11

2018年8月3日金曜日

フェスタサマーミューザ2018 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ≪絶品フレンチⅡ〜天才サン=サーンス〜≫

2018-08-03 @ミューザ川崎シンフォニーホール


川瀬賢太郎:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

神尾真由子:バイオリン*
大木麻理:オルガン**

サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」 からバッカナール 作品47
サン=サーンス:バイオリン協奏曲第3番ロ短調 作品61*
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」**

7/24東京フィルの<絶品フレンチ①>を受けて今日の神奈川フィルによる<絶品フレンチ②>は、オール・サン=サーンス集。

「サムソンとデリラ」からバッカナール、バイオリン協奏曲第3番、交響曲3番オルガン付き。
オーケストラの祭典にふさわしい華やかな選曲だ。

バイオリン独奏の押尾真由子は諸肌脱ぎの真紅のドレスで登場。愛器ストラディをガリガリと弾きまくり迫力十分。若いが女王の貫禄。カーテン・コールが多かったがついにアンコールなし。館内深い失望のどよめき。

メインの交響曲第3番は冒頭からクライマックスの連続にもかかわらずメリハリを付け、緊張が持続した。
終盤の各パートが複雑に交錯するところも若き常任指揮者・賢太郎氏が筋を通して見事な棒捌き。
フルサイズの管・弦・打にピアノとパイプオルガンが加わって怒涛のフィナーレに大満足。

近年、神奈川フィルの実力は確実に上がった。
「音楽の友」で好きなオケランキング国内4位、世界15位というのも、今は実力ではないにせよ、そのうち実力が人気に追いついてくるのではないか。

今日のフェスタサマーミューザは、地元オケということもあり満員の館内は大歓声に包まれた。これぞフェスティバル!

♪2018-093/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-10

2018年8月1日水曜日

フェスタサマーミューザ2018 読売日本交響楽団 ≪シネマ&ポップス≫

2018-08-01 @ミューザ川崎シンフォニーホール


渡辺俊幸:指揮
読売日本交響楽団

森山良子:歌*

「ディズニー・ファンタジー」序曲
映画「ゴッド・ファーザー」〜愛のテーマ
もしもモーツァルトがハリウッドの映画音楽家だったら 
(以上、渡辺俊幸編曲による)
映画「スターウォーズ」〜レイア姫のテーマ
映画「スターウォーズ」〜ダース・ベイダーのテーマ 
映画「E.T.」〜フライングテーマ

<森山良子の世界>*
涙そうそう 
家族写真 
エターナリー 
私のお気に入り 
虹の彼方に
あなたと別れるなら

<渡辺俊幸の世界>
森と大地への讃歌
NHKテレビドラマ「大地の子」〜メインテーマ
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アンコール
前田憲男編曲:聖者の行進*

昨年から読響のフェスタサマーミューザ(FSM)は森山良子を迎えてシネマ&ポップスコンサートになった。
構成も演出も同じ。
昨年、森山の歌を生で初めて聴いてその美声と迫力に驚いたが、今年も「涙そうそう」が胸を打った。

もう70歳らしいが、見た目も声質・声量もとてもそうは思えない。
今でも声楽のトレーナーについてレッスンをしているというが、さもありなん。

その森山も読響という実力あるフルオーケストラをバックに歌う機会はめったにないだろうし、めったに聴くこともできない訳で、FSMがこういう機会を提供してくれることはありがたい。

♪2018-092/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-09