2014年1月19日日曜日

読売日本交響楽団第69回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2014-01-19 @みなとみらいホール


下野竜也指揮:読売日本交響楽団

●J.S.バッハ(オネゲル編):前奏曲とフーガ ハ長調 BWV545
●J.S.バッハ(レーガー編):「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」 BWV622
●J.S.バッハ(ホルスト編):ジーグ風フーガ BWV577
●J.S.バッハ(ラフ編):「シャコンヌ」 BWV1004
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●ムソルグスキー(ヘンリー・ウッド編):組曲「展覧会の絵」

アンコール
●J.S.バッハ:G線上のアリア(ストコフスキー編)


今回は「トランスクリプション・プログラム」。つまり、広い意味では「編曲もの」特集。

前半の4曲はいずれもバッハの(そのうち1~3はオルガンやチェンバロ曲を、4のシャコンヌは無伴奏バイオリン組曲第2番の最終曲)を管弦楽に編曲したもの。

そしてアンコールで演奏されたのもバッハの所謂「G線上のアリア」で、この名前でポピュラーになっているけど、原曲は管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068 第2楽章「アリア」だ。

19世紀後半に活躍した某バイオリニストがG線(バイオリンの一番低音の弦)1本で弾けるように編曲したバイオリンとピアノのための「アリア」がとても有名になって「G線上のアリア」という名前の独立曲として広く知られるようになった。

今日、演奏されたのはバッハの編曲を多数手がけているレオポルド・ストコフスキー(映画「オーケストラの少女」、「ファンタジア」にも登場)によるトランスクリプションだが、彼が、元々管弦楽(正確には弦楽合奏)のための作品をなぜ、同じ弦楽合奏に焼き直したのかは知らない。ひょっとして、既にピアノとバイオリンのための作品に編曲されている「G線上のアリア」をベースに再度弦楽合奏に編曲したのかもしれない。

さて、メインディッシュは「展覧会の絵」だが、原曲はムソルグスキーのピアノ曲。しかし、ラヴェルが管弦楽に編曲したものが大成功して、今では「展覧会の絵」と言えばほぼラヴェル版を指しているといえるだろう。

ところが、素材が元々「絵画」的であるから、いろんな色付けが可能なのだろう、後続する作・編曲家が相次いだ。今では一体何十種類の編曲が存在するのか分からない。

ストコフスキーも手がけているし、冨田勲のシンセサイザー版、山下和仁のギター版には驚いたが、もっとびっくりはELPのロック版だ(ずいぶん前に渋谷公会堂で彼らのライブを聴いた。あまりの強烈な爆音に席を立ってしまった!)。もちろん吹奏楽にも編曲されているし、室内楽用もあるらしい。

で、今日の「展覧会の絵」はヘンリー・ウッド編曲版だ。

そんな作曲家がいるとは知らなかったが、むしろ指揮者として名を成した人らしい。
英国の「プロムス」の第1回からの指揮者で、100年余続く世界最大の音楽祭の立役者らしい。

その彼が「展覧会の絵」を管弦楽版に仕立てたのはラヴェルより7年も早かったという。
しかし、上述のように今ではラヴェル版が大勢を占めている。

今日の演奏会では、敢えて珍しい編曲を取り上げたのだろう。

冒頭はトランペットのファンファーレ風でラヴェルと一緒だ。というより、ラヴェルが真似をしたのだろう(因みにストコフスキーは、うろ覚えだが、バイオリンのみで「プロムナード」を演奏させている。)。

しかし、曲がだんだん進むに連れて聴き慣れたラヴェルの編曲とは様子が異なってくる。

もし事情を知らずに一部分だけを聴いたら「展覧会の絵」だとさえ気付かないかもしれないような変わり様もある。

パイプオルガンやハープも入って音色は多彩。

打楽器はその種類が非常に多く、見た目も楽しませる。

管弦楽に編曲するということはこういうことだ、と言わんばかりの派手なオーケストレーションだ。

これまであまりにもラヴェルに馴染んでいるために、全体としては少々の違和感を拭えなかったが、CDを入手して何度も繰り返し聴いて耳に馴染めば、これはこれでラヴェルとは別の面白さを発見できるのだろう。

♪2014-06/♪みなとみらいホール大ホール-04