2014-10-25 @サントリーホール
日本フィルハーモニー交響楽団
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 作品43
昨日も神奈川フィルでエルガーの「弦楽セレナーデ」を聴いたが、今日はあらゆる「弦楽セレナーデ」*の中で、最も有名なチャイコフスキーのものだ。
当然、弦楽器のみ。
それも昨日の神奈川フィルよりやや編成が大きく60人前後いたのではないか。
何しろ、第1楽章冒頭のメロディがあまりに有名だ。
主調はハ長調だが出だしの和音はCではなくAmで非常に甘美で切ない。しかも全楽器の強奏だ。もうそこで気持ちを鷲掴みされてしまう。
第2楽章も耳タコの流れるようなワルツ。
第3楽章が悲愴を思わせるようなエレジー。
第4楽章はロシア民謡を取り入れた緩やかな序奏がアップテンポでリズミカルな形に姿を変えいついには第1楽章冒頭のメロディーに回帰してクライマックスを迎える。
やっぱり、弦楽セレナーデの王様だろうな。
指揮のラザレフはロシア人だからという単純な理由だけではないだろうけど、日フィルの首席指揮者として、「ラザレフが刻むロシアの魂」シリーズと銘打ってロシア人作曲家の作品を定期では多く取り上げている。いわばチャイコフやショスタコは自家薬籠中のものなのだろう。
メインのショスタコの4番は壮大な曲だった。
全部で15曲ある交響曲の中では、先日聴いたばかりの第7番が一番演奏時間が長いようだ(約75分)が、その次のグループに属しておよそ60分。
オーケストラ規模は15曲中最大の130人を要するそうで、これは「千人の交響曲」と同規模だ。
ショスタコは1936年に(交響曲<全15曲>でいえば第3番を作った後)、オペラ作品などでいわゆる「プラウダ批判」を受けた。
そのために、既に完成していたこの第4番交響曲を封印した。
そして共産党受けする第5番で汚名返上・名誉挽回に成功する。
が、しかし、すぐには封印を解かなかったのは、内容の斬新さが再度批判を呼ぶ可能性を恐れたのか、作品に対する自分自身の不満があったのか、その両方なのか、ともかく、実際に初演されるのは四半世紀後の1961年のそれも年末ギリギリになってからだった。
音楽家人生を翻弄されたショスタコを象徴した作品と言える。
放送でも聴いたことがなかったしCDも持っていないので、まるきり初めて聴いた長大音楽だったけど、大オーケストラのハイ・ダイナミックレンジと、ところどころ調性が不明になるいかにもショスタコらしい節回しが断片的に混じっていて、案外、存外楽しめた。
全3楽章で、どの楽章も最弱音で終わる。
最終楽章など、チェレスタが数回弱々しく響き、ついには残響さえも消えてホール全体が完全静寂になっても、なお、指揮者ラザレフのタクトは宙に浮いたまま。
恐竜の完全に息絶えたのを確認するかのように20秒から30秒ちかく時間が止まっていたのではないだろうか。
確かに、現実世界に立ち戻るにはそれくらいの時間を指揮者も必要だったろうし、聴衆にも必要だった。
*参考までにNeverまとめでは、弦楽セレナーデを37曲リストアップしている。
♪2014-97/♪サントリーホール-06