2014年10月24日金曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団第303回定期演奏会

2014-10-24 @みなとみらいホール


湯浅卓雄:指揮
石田泰尚:バイオリン【ソロ・コンサートマスター】
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

E.エルガー:弦楽セレナーデ ホ短調Op.20
コルンゴルト:バイオリン協奏曲ニ長調Op.35
エルガー:交響曲第3番ハ短調Op.88(アンソニー・ペイン補筆完成版)


コルンゴルト(オーストリア⇒アメリカ。1897-1957)という作曲家の存在は今年3月の読響の定期でバイオリン協奏曲ニ長調が取り上げられるまでは知らなかったが、オーケストラでは既に人気者のようで、その後も日フィルで聴き、今日が3度目だった。

それまでのほぼ半世紀にわたる我がクラシック音楽愛聴史はなんだったのか、と言われそうだが、日本でコルンゴルトの作品が初演されたのが1989年で(このバイオリン協奏曲)、評価が確立したのは没後50周年(2007年)だというから、聴く機会がなかったのも無理はないかもしれない。

映画音楽を多く手がけた人で、この作品も自作の映画音楽を散りばめているらしいが、そもそもオリジナルを知らないのでよく分からないけど、現代の作品にしてはとても親しみやすい。

神奈川フィルの名物男、石田泰尚がソロを弾くとあってか、普段の定期よりお客の入りがよい。それもおばさまたちが多い。
僕の指定席の近隣はいつも一つ空いていたが、今日は御婦人が埋めておられた。今回だけのチケットを入手されたのだろう。

石田氏はもちろんとても上手なのだけど、力の入ったオーバージェスチャーも一層ファンを沸かせる。



エルガー(英国。1857-1934)の2作品はいずれも初めて聴くものだ。
弦楽セレナーデは文字どおり弦楽器のみで演奏されるが、かなり大きな編成だったので、透明感を持ちながら厚い響が魅力的だった。

音楽はコルンゴルトより40歳も年上、というより40年も前の人だけど、それだけに明確な調性と歌える旋律を持っている点でコルンゴルトより一層親しみやすい。
第1楽章(全3楽章構成)を聴いた時、すぐに加古隆の音楽を思い出した。たとえはあべこべだけどそういう親しみやすさだ。

さて、問題は交響曲第3番。未完成である。
エルガー自身は第1楽章の冒頭部分しか総譜化していないそうだ。ただ、ジグソウパズルのピースのような状態の断片スケッチが遺された。
アンソニー・ペインという人は作曲家であり、研究者でもあったので、BBCの依頼を受け補筆完成させた、というのだけど、補筆部分の方がずっと大きい(長い)ので、エルガーの交響曲第3番というより、エルガーの着想によるペインの交響曲と言った方が正しいのじゃないかという気もする。


因みに、Amazonで調べたらCDは1種類しか出ていないようだが、ジャケットのタイトルが興味深い発見だった。
EDWARD ELGAR / The Sketche for Symphony No.3 / 
Elaborated by ANTHONY PAYNE とある。
「ペインによって綿密に練り上げられたエルガーの交響曲第3番のためのスケッチ集」みたいな意味かな。
補筆完成という訳語よりは誕生の経緯に沿ったものだろう。

この補筆完成版の完成は1997年というから、つい最近のことだ。
どこまでがエルガーの音楽なのか、どこまで真筆に肉薄しているのか、分からないけど、まあ、総じてエルガーの作品がそうであるように、難解さとは無縁だが、特に美しい旋律がちりばめられているとか、聴き覚えのある英国民謡が取り入れられているという訳でもなく、ある程度馴染まないと楽しむまでには至らないのではないか。
ただ、管・打楽器がたくさん配置された大規模なオーケストレーションで、近代的な管弦楽技法が駆使されているから退屈するような作品ではない。
コルンゴルド同様に、今後も多くのオーケストラが取り上げるようになるのかもしれない。


第2楽章と第4楽章の終わり方に興味を持ったが、再確認するすべがない(Youtubeでも見当たらない。楽譜も見当たらない。)ので、機会があれば考えてみよう。
休符で終わるというのは、本当の終曲っていつなんだろう?ということなのだけど。ま、どうでもいいようなことなんだ。

♪2014-96/♪みなとみらいホール大ホール-37