2014年8月18日月曜日

みなとみらいクラシック・クルーズ Vol.59 東京フィル首席奏者による室内楽

2014-08-18 @みなとみらいホール


荒井英治(Vn)
戸上眞里(Vn)
須田祥子(Va)
服部誠(Vc)
黒木岩寿(Cb)

ティータイム・クルーズ
~Viva!Rossini!~
G.ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 第3番 ハ長調
G.ロッシーニ:チェロとバスのための二重奏曲から第1楽章
G.ロッシーニ(編曲:荒井英治):ファンタジー 変ホ長調
P.de.サラサーテ:ロッシーニへのオマージュ より
G.ロッシーニ:歌劇<どろぼうかささぎ>序曲(弦楽五重奏用編曲)


お手頃価格で気楽に室内楽を楽しめるみなとみらいホール主催のクルーズ。

今日は、東京フィルの弦の各パートの首席が集まってのロッシーニ特集だった。

1曲だけサラサーテがロッシーニにオマージュを捧げて作曲した作品があったが、それ以外はすべてロッシーニの作品。

ロッシーニについては、オペラ作家という知識(それも「ウィリアム・テル」、「セビリアの理髪師」、「泥棒かささぎ」程度)しかなかったし、現に室内楽などの分野では作品が非常に少なく、CDで聴けるものは限られている。

それで、これまでとても縁が遠かった。

しかし、1曲めに演奏された「弦楽のためのソナタ第3番」にすっかり魅了されてしまった。
実に軽妙だ。

ロッシーニは全部で6曲の「弦楽のためのソナタ」を書いているが、いずれも編成が変わっていて、2つのバイオリン、チェロ、コントラバスで演奏される。通常の弦楽四重奏ならビオラが入り、コンバスは入らない。
また、この日の演奏は四重奏だったが、むしろもう少し規模を大きくした弦楽合奏として演奏されることのほうが多いようで、帰宅後すぐにAmazonでチェックしたが、四重奏のものは見当たらず、イタリア合奏団の全曲盤を購入したが、これはバイオリン3+3、チェロ2、コンバス1という編成らしい(書いてないがジャケットの写真からの判断)。これはこれで楽しめるのだけど、好みで言えば四重奏の方が音楽の輪郭がはっきりして好きなのだけど。


驚くべきは、この6曲を、ロッシーニは12歳の時に3日間で書き上げたということだ。

確かに、この日聴いた第3番も、その後CDで聴いた5曲も、すべて天才の<発明>に溢れているような気がする。ハイドンの初期の交響曲などにも通ずる遊び心、旺盛な実験意欲が感じられる。

音楽的にはまずい部分もあるのかもしれないが、聴いていて楽しい。時々稚気も混じった陽気さがいい。

「チェロとコントラバスのための二重奏曲」も傑作だった。
演奏者のアドリブも入っていたようだけど、何しろ、最後の「~序曲」以外は初めて聴く曲ばかりなので、2人の演奏家が遊びながら弾いているのは分かっても、アドリブかどうかは分からない。
低弦2本の掛け合いが、時には名人芸を要求されるような部分もあって、スリリングであり、かつ、おかしかった。

第一バイオリンの荒井氏(東京フィルコンサートマスター)はバイオリンだけでなくピアノの方も”プロ”で、3、4曲目のビオラとバイオリンの伴奏を受け持っていたが余技とも思えない腕前だった。

神童モーツァルトが亡くなった翌年、ロッシーニはその後を継ぐかのように生まれ、その天才ぶりを遺憾なく発揮して、オペラを39曲も書いたが、37歳で作曲をやめてしまい、44歳で音楽界から引退し、しかし、好きなことをやって76歳まで生きたそうだ。

この日のコンサートは僕にとって「ロッシーニ開眼」記念日となった。

♪2014-78/♪みなとみらいホール-31