2014年6月29日日曜日

ビヨンド・ザ・ボーダー音楽祭2014「偉大な芸術家へ捧ぐ」

2014-06-29  @みなとみらいホール


鈴木理恵子(バイオリン)
上村昇(チェロ)
若林顕(ピアノ)

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番Cd BWV1009から
ベートーベン:ピアノソナタ第14番C#m Op27-2 「月光」
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲Am Op50「偉大なる芸術家の思い出に」
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アンコール
ピアノ三重奏曲第2楽章から第6変奏曲ワルツ


僕がピアノトリオの魅力に目覚めたのは、多分、この作品に出会ったからだ。

単純なことだけど、第1楽章の主題が悲劇的に美しい(悲劇的楽章と名付けられている。)。
ピアノのアルペジオに乗ってチェロが歌いだし、バイオリンが引き継ぎ、両者のからみ合いが始まる。そして、ダメ押しのようにピアノが両手を使って力強くこの甘美で悲壮的なメロディーを印象付ける。たいていの人は、この序盤で惹き込まれてしまうと思う。

チャイコフスキーはピアノトリオという編成に違和感を感じて長く作曲しなかったそうだが、急逝したピアニストの友人(ルービンシュタイン)の追悼音楽として思いを新たにして作曲したらしい。


ピアノ三重奏曲としては構成が変則で2楽章しかない。
第1楽章はソナタ形式だが、第2楽章は主題と11の変奏のあと、最終変奏にコーダが付いて終わる。
その第2楽章だけで30分(全体で50分)という長さ。
そのうち最終変奏とコーダは12分位ある。

このような構成は、旧友ルービンシュタインというピアノの名人に手向けた作品だからであろう、とどこかで読んだ覚えがある。

この変奏曲形式の第2楽章こそ、作曲家にとって多彩な技の見せ所であり、変奏のカギを握るピアノが大活躍する仕掛けだ。
ルービンシュタインなら難なく弾きこなしたのだろうが、現代の優れたピアニストにとっても大変な難曲らしい。


さて、チャイコフスキーじゃないけどこの楽器編成というのはなかなかバランスとるのが難しいなあと感じた。
チャイコがこの作品を作曲した頃(1882年)のピアノがどんな性能を持っていたか知らないけど、現代のフルコンサートグランドの音量には遠く及ばないだろう。

よく鳴るピアノがよく響くホールでガンガン歌うとどうもバイオリンがひ弱に聴こえてしまう。そういう部分が何度かあったが、聴き方が悪かったかもしれない。

そういう難点は感じたのだけど、この曲を生で聴く機会はなかなかない(今回初めて)し、あらためてチャイコフスキーの渾身を感ずることができて良い勉強になった。

♪2014-65/♪ @みなとみらいホール-26