2020年9月26日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第360回横浜定期演奏会

 2020-09-26 @みなとみらいホール


小林研一郎:指揮

日本フィルハーモニー交響楽団

實川風:ピアノ*

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K488*
ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 op.55《英雄》
-----Enc---------------
ショパン:マズルカ Op24-1*
アイルランド民謡:ダニーボーイ(弦楽合奏)


先日の都響+大野ではとても元気の良い「英雄」に感心した。
今日の日フィル+コバケンは非常に濃厚に小林印が押された「英雄」だった。

冒頭の強奏2連発は、都響が拳骨なら今日の日フィルは鋭い鉈の2連発。極めて短く強いTuttiがホールにこだました途端、これは新しい音楽が始まるなという予感。

音楽が進むにつれ細部にコバケン節が顔を出す。
聴き慣れなれないテンポだったり強弱変化など、いわば外連味だ。

度が過ぎると嫌味になるが今日の流れは塀の上を渡り歩くが中には落ちない抑制が効いていた。

特に第2楽章が格別の出来だった。

ゆったりと始まった。実演でこんなに遅いテンポは初めてかも。

どのフレーズもパートも疎かにしない決意が感じられる。遅め故の緊張感が絶えないが、じわじわ湧き上がってくるものは情感がいっぱいに溢れている。第2楽章がかくも情緒的な音楽に成りうるのか、という驚きで心平安ならず。

この楽章が終わって、もうここで全巻の終わりでいいのではないかとさえ思った。

第3・4楽章も随所に小林印が押されていたがアップテンポに救われた。既に膨満感すらあって、じっくりやられたら聴いている方も疲れ切ったろう。


CD朝比奈+新日フ「英雄」を思い起こした。あの感覚に近い。

♪2020-057/♪みなとみらいホール-13

2020年9月23日水曜日

NHK交響楽団 9月公演

 2020-09-23 @サントリーホール

下野竜也:指揮
NHK交響楽団

N響ホルン・セクション*
(福川伸陽、今井仁志、勝俣泰、石山直城)

シューマン:4本のホルンのための小協奏曲ヘ長調 作品86*
コダーイ(下野竜也編):ミゼレーレ
シューマン:交響曲 第4番ニ短調 作品120
------Enc------
ブラームス:子守唄(Hr4重奏版)*



N響は7月にミューザで聴いて以来。サントリーでとなると年末の「第九」以来だ。

シューマンHr4重協奏曲冒頭の強奏に痺れた。N響らしい純度の高いアンサンブルだ。

が、感激は長くは続かない。

某オケのために作曲したと解説にある。

売り込んだのか頼まれたのか不明だがHr4本の協奏曲は音楽的に無理があると思った。Hr単独ならともかく、オケの中にも2本、加えて4本が絶え間無く鳴り続けると暑苦しい。

注文品?ならこれで良いのだろうけど、純粋に音楽を追求するならこういう形は取らなかったのではないか…とまあ、素人の独断。

交響曲4番は中々良かった。


弦編成は10型でコンパクトだから各部が明瞭。それでいてかなりの音圧がある。硬く引き締まった音響が力強くて心地良い。

これでもっとクリアならなあ…。水準は高いとはいえ常のN響レベルだった。


有名人が1人置きの隣と隣に。

気恥ずかしい位だったが来月も同じ良席で楽しみだ。


♪2020-056/♪サントリーホール-03

2020年9月22日火曜日

人形浄瑠璃文楽令和2年9月公演第Ⅲ部

 2020-09-22 @国立劇場


絵本太功記 (えほんたいこうき)
 夕顔棚の段

    睦太夫/清志郎
 尼ヶ崎の段
  前 呂勢太夫/清治
  後 呂太夫/清介

人形役割
 母さつき⇒勘壽
 妻操⇒簑二郎
 嫁初菊⇒一輔
 真柴久吉⇒文昇
 武智光秀⇒玉志
 武智十次郎⇒勘彌
 加藤正清⇒勘次郎
 ほか


「絵本太功記」。これは人気演目で上演機会も多く僕も観ている。が、面白さが分からないのが悲しい。

登場人物の名前はお上の規制のために変えてあるが、要は明智光秀が信長を討ち取った直後の光秀の家族に降りかかる悲劇だ。

1人尼崎で蟄居する光秀の母の元に吸い寄せられるように集まる家族。

光秀の妻、夫妻の息子、その許嫁、謎の旅僧(実は秀吉)、旅僧を追ってきた光秀。

主人殺しを許せない気持ちと我が子可愛さとの思いで、それぞれに引き裂かれそうになっている母と妻。

知ってか知らずか勢いたつ光秀は、風呂に入った旅僧を秀吉と睨んで外から竹槍を。が、中にいたのは身代わりになった母だった。光秀の犯した罪の重さを知らしめ、大罪が少しでも軽くなるようにと身を呈した母。祝言をあげたばかりで初陣した息子は息も絶え絶えに帰参する。


この状況で光秀や如何!


ま、その辺に中々共感できないのだが見所・聴き処は多い。


♪2020-055/♪国立劇場-06

人形浄瑠璃文楽令和2年9月公演第Ⅱ部

 2020-09-22 @国立劇場


鑓の権三重帷子 (やりのごんざかさねかたびら)

   浜の宮馬場の段
    藤太夫/團七
 浅香市之進留守宅の段
    織太夫/藤蔵・清允(琴)
 数寄屋の段
  切 咲太夫/燕三  
 伏見京橋妻敵討の段
    三輪太夫・芳穂太夫・小住太夫・
    亘太夫・碩太夫/清友・團吾・友之助・清公

人形役割
 笹野権三⇒玉男
 川側伴之氶⇒文司
 岩木忠太兵衛⇒玉輝
 女房おさゐ⇒和生
 浅香市之進⇒玉佳
 ほか



2月以来7月ぶりの再開文楽公演は1日4部公演に。第4部は鑑賞教室なので実質は3公演と、まあこれまでも無かった訳ではないが、各部間の待ち時間が1時間以上に延びて、本篇は1時間半〜2時間弱とえらく短くなった。料金は少し安くなったが、時間単価は高くなりぬ。


第2部は「鑓の権三重帷子」で初見。東京では11年ぶりの上演。

近松三大姦通ものの一つだそうな。これは実に面白かった。


そんなつもりは毛頭なけれどちょっとした偶然が重なって、権三と茶道師匠の女房おさゐは姦通を疑われ、疑いを晴らすことなく師匠による妻敵討ちにあう途を選択する。

町は多くの盆踊りに興ずる人たち。祭囃子も賑やかだ。

その喧騒を背景に江戸から帰ったおさゐの夫の手にかかり2人は彼らなりの本望を遂げ、何もなかったかのように祭りは続く。

粋な終わり方にだ。

2人は姦通などしなかった。

が、その後の道行きで両者は深い仲になったのではないか。


それらしき行動も台詞も一切ないが、それを感じさせるところが艶かしい。そうでなくちゃ言い訳もせずに、心中もせずに、おさゐの夫の名誉の為に、妻(め)敵討ち(妻を奪った男を成敗する)を待つなんてたまらないからなあ…と思うのは下衆な感性かな。


♪2020-054/♪国立劇場-05

2020年9月20日日曜日

みなとみらいクラシック・マチネ~名手と楽しむヨコハマの午後〜成田達輝

 2020-09-21 @みなとみらいホール


成田達輝:バイオリン
石川武蔵:ピアノ(第1部のみ)

[ 第1部 ]
サン=サーンス:バイオリン・ソナタ第2番変ホ長調 Op.102
サン=サーンス:バイオリン・ソナタ第1番二短調 Op.75

[第2部]
バルトーク:無伴奏バイオリン・ソナタから“シャコンヌのテンポで”
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン・パルティータ第2番から“シャコンヌ”
ファーニホウ:シャコンヌ風間奏曲
ヴィターリ:シャコンヌ

----ENC----------------

パガニーニ:24のカプリースから第1番
J.S.バッハ:無伴奏バイオリン組曲第1番からサラバンド

成田くんのリサイタルは初めて。以前に東響とチャイコ協を聴いたが、その時のプログラム?に「偉大な名手パガニーニのライバル」と書いてあったのを思い出した。


今日もテクニシャンぶりを発揮したが、この世界に腕自慢は多いし、彼がパガニーニ並みかどうかは?


第1部はサン=サーンス Vnソナタ1番&2番。
1番は生では初聴き。 2番は電気媒介でも多分聴いたことがない。

サン=サーンスには親しみ易い美旋律も多いけど、今日の2本は手強かった。特に2番が没入できなかった。

そもそも馴染んでいないせいもあるけど、基本は僕の受入能力の問題だろうな。


第2部は別公演で、Vn無伴奏曲。

それも「シャコンヌ」関連ばかり4曲。J.S.バッハ以外は初聴き。

ファーニホウ*やヴィターリなんて作曲家の存在自体知らなかった。えらく凝った選曲で成田くんが趣旨を説明したが忘却。

*は存命作家で4分音を含む不快音の連続で、超絶技巧の限界に挑むそうな。


今日のクラ・マチは成田くんの個性が全面に出たのは良かったけど、楽しめるには至らず。


でも、色々と説明もしてくれて、嫌味のない好青年だったし、「パガニーニのライバル」はともかくも、ファーニホウやEncで弾いたパガニーニの24のカプリースなど、ホンに凄腕ぶりを堪能した。


♪2020-053/♪みなとみらいホール-12

2020年9月16日水曜日

東京都交響楽団 都響スペシャル2020

 2020-09-16 @サントリーホール


大野和士:指揮
東京都交響楽団

バイオリン:矢部達哉
チェロ:宮田大
チェロ:小山実稚恵

ベートーベン:ピアノ、バイオリン、チェロのための三重協奏曲 ハ長調 op.56
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 op.55《英雄》


スペシャルと銘打つにふさわしい内容。

スター独奏者3人を揃えたベト三重協奏曲も華やかなものだったが、何といっても弦編成を14型に拡張したベト「英雄」にはワクワクさせられた。

久しぶりの大野・都響はもう完全に燃えていたね。

これぞオーケストラ!これぞベト!そして、これぞ都響!


コロナ再開後、他のオケでは12型までしか聴いていなかったがやってくれたね。

彫琢の行き届いた演奏が高水準だったことが一番だが、やっぱり、サントリーで英雄なら14型で聴きたい。

個人の趣味では、誰1人マスクをしていなかったこと。弦は2人1対という通常配置で、「密」といえば、十分「密」だった。でもオケはかくあるべしだ。

指揮者の前にアクリル板が置いてあった事(コイツも不要だと思うよ。)以外はコロナ前に戻った。


都響は見本となるべきオケだ。

都響が率先垂範、無意味なコロナ対策から卒業したことを非常に喜びたい。

そして、感謝したい。


♪2020-052/♪サントリーホール-02

九月大歌舞伎 第三部

 2020-09-16 @歌舞伎座


双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓

濡髪長五郎⇒吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛⇒菊之助
平岡丹平⇒歌昇
三原伝造⇒種之助
お早⇒雀右衛門
お幸⇒東蔵

訳あって人を殺めた関取・濡髪(吉右衛門)が密かに再婚した母お幸(東蔵)に会いに来るが、再婚相手の義理の息子十次兵衛(菊之助)は十手持ちだった。

既に人相書きが出回り、覚悟を決めた濡髪をお幸が引窓の縄で縛る。

十次兵衛は濡髪が義母の実子と知って、縄を切る。
折しも生き物を放つ「放生会」の夜だった。

…と縮めればかくの如し。人情話である。

吉右衛門・東蔵という人間国宝2人に雀右衛門、菊之助と人気の美形が揃って見応え十分。

本来はもっと長い話だが、「引窓」だけでも成立している。


♪2020-051/♪歌舞伎座-05