2022年11月12日土曜日

名曲全集第181回 次世代を担う2人がベルリオーズ&ラヴェルの傑作を披露

2022-11-12 @ミューザ川崎シンフォニーホール



川瀬賢太郎:指揮
東京交響楽団
三浦謙司:ピアノ*

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」op. 9
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調*
ベルリオーズ:幻想交響曲 op. 14
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ドビュッシー:月の光*


ほぼ1年前にカーチュン・ウォン指揮神奈川フィルとブラームスのピアノ協奏曲を聴いたのが三浦謙司の初聴き。
その時は三者の心地よい緊張感が好印象だった。
その日のピアノの音について、特に美しかった事を感想に記録している。「この音色があって初めてPf協は面目躍如だ。」と。

三浦についてはよく知らなかったけど、最近、クラシック倶楽部が取り上げた際に彼の異色の経歴を知って驚き、今日を楽しみにしていた。

演奏はカチッとして、オケともスリリングなやり取りをしていたと思うが、残念なことに、今日のミューザのピアノの音の重い事には驚いた。

前回、三浦謙司を聴いた時のピアノの印象。
「低域はジーンと響き、中域はカーンと抜け、高域はコロコロと輝かしい。」と書いている。
今日は信じられない事に「ドンドン、コンコン、トントン」だった。

ま、サントリーのピアノ程酷くはないけど。

オケも全体に重い響だったけど、こちらは、メリハリ利かせた演奏で上等。

幻想交響曲でハープ2台を舞台前方に対峙させたのは楽しくなかった。
第2楽章しか出番がないから、出番が終わったら、楽器を舞台に残して(まあ、やむを得ないけど。)2人共退出してしまった。その楽器が視界を遮り邪魔なこと!

みなとみらいホールのバルコニーは舞台上の奏者を輪切りにするが、今日のハープ2台はその奥の奏者を短冊切りにした。

それにせっかくスター扱いなのにマスクするかね…!













♪2022-169/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-39

2022年11月8日火曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2022後期 ドス デル フィドル 石田泰尚 & 﨑谷直人

2022-11-08 @みなとみらいホール


ドス デル フィドル
 石田泰尚:バイオリン
 﨑谷直人:バイオリン
伊藤ハルトシ:チェロ、ギター
園田涼:ピアノ
小山尚希:ベース

フォスター:金髪のジェニー
〜ピアノ interlude
クライスラー:テンポ・ディ・メヌエット
クライスラー:美しきロスマリン
〜ピアノ interlude
ピアソラ(篠田大介編):鮫
ピアソラ(篠田大介編):オプブリビオン
ピアソラ(篠田大介編):ブエノスアイレスの四季から冬
ピアソラ(林そよか):リベルタンゴ
〜ピアノ interlude
ビバルディ(大橋晃一編):四季メドレー夏・秋・冬・春
PENICILIN(大橋晃一編):ロマンス
LUNA SEA(大橋晃一編):END OF SORROW
XJAPAN(篠田大介):ENDLESS RAIN
X JAPAN(大橋晃一編):紅
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TM.Revolution:THUNDERBIRD
仁義なき戦い〜テーマ


バイオリン・デュオに数曲ゲストが入るのかと思っていたが、最初の不似合いな可愛らしい小品以外は5人組だった。

エレキギターにエレキベースが加わるので、バイオリンとピアノもマイクで収音し大きなスピーカーから拡声した。

実は、全編睡魔との戦いだったが、睡魔が負けてくれたのはその拡声に覚醒せざるを得なかったから。

ピアソラの数曲とビバルディの四季を除けば全く知らない曲ばかり。
四季にしても4曲からさわりを集めて極端にコンパクトに編曲してあり、これは何?

この編成、ロックバンドという程でもなく、ジャズでもなく、これをみなとみらいホールで聴くかなあ、と疑問だった。

石田氏もあまりあれこれ広げない方がいいのでは?

♪2022-168/♪みなとみらいホール-04

2022年11月6日日曜日

藤沢市民オペラ:プッチーニ「ラ・ボエーム」

2022-11-06 @藤沢市民会館



園田隆一郎:指揮
伊香修吾:演出

テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
合唱⇒C.ヴィレッジシンガーズ
児童合唱⇒藤沢市合唱連盟、藤沢ジュニア・コーラス、鵠沼ジュニア・コール

ミミ⇒中村恵理
ロドルフォ⇒樋口達哉
ムゼッタ⇒横前奈緒
マルチェッロ⇒大西宇宙
ショナール⇒池内響
コッリーネ⇒デニス・ビシュニャ
ベノア⇒奥秋大樹
アルチンドロ⇒小林由樹

作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
原作:アンリ・ミュルジェール

「ラ・ボエーム」全4幕
(イタリア語上演日本語字幕付)

第1-2幕   60分
   休憩   30分
第3-4幕   60分


体調が頗る悪かった。
席も遠かった(藤沢市民オペラなんて普段チェックしていないので気づいた時は1階中央が無かった。)。
演出にもひとこと言いたい。

にもかかわらず、これまで観たボエーム中、07年藤原歌劇団と並んで、強く気持ちを揺り動かされた。

また、中村恵理はこれまでいろんな演目を聴いてきたが、今日のミミが最高の歌唱ではないか!大いに見直し、聴き直しをした。蝶々夫人より椿姫よりずっといい。

ルドルフォの樋口達哉も朗々と声が伸びて07年版の時よりずっと良かったと思う。

こんなこんな熱演を藤沢市民オペラで聴けるとは!

指揮は園田ちゃん。彼の指揮によるボエムは何度か聴いたな。特に今回演出の伊香修吾と組んだボエムはもう3回目か。手慣れたもので、安心して音楽に身を任せられる。

が、演出は若干問題。1〜4幕通してほとんど場面が変わらないのだから初めての人には混乱させた思う。ミミも冒頭から、男達の部屋にいるのも飲み込み難し。もっと普通にできなかったか?

♪2022-167/♪藤沢市民会館-1

2022年11月5日土曜日

第75回 全日本学生音楽コンクール 全国大会入賞者記念コンサート

2022-11-05 @かなっくホール



●フルート部門
【中学校の部】豊田翼⇒尾高尚忠:フルート協奏曲 Op30bから第2、第3楽章
【高校の部】鈴木義了⇒尾高尚忠:フルート協奏曲 Op.30bから第1、第3楽章
●声楽部門
【高校の部】板戸耀央⇒ヴェルディ:6つのロマンスから「墓に近寄らないでほしい」/モーツァルト:歌劇「フイガロの結婚」から『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』
【大学の部】上村誠一⇒フレスコバルディ : そよ風が吹けば/ヘンデル:《ロンバルディア王妃ロデリンダ》HWV19から「暴君よ、生きろ ! 」
●バイオリン部門
【小学校の部】富樫音葉⇒エルンスト:夏の名残の薔薇<庭の千草>による演奏会用変奏曲
【中学校の部】中原梨衣紗⇒サン=サーンス(イザイ編):ワルツ形式の練習曲による奇想曲 Op52/6
【高校の部】金子芽以⇒フバイ:カルメン・ファンタジー
●チェロ部門
【高校の部】西田翔⇒フランク:バイオリン・ソナタイ長調 FWV8から第3、第4楽章(チェロ版)
【大学の部】井上帆乃香⇒カサド:無伴奏チェロ組曲 第1、第3楽章
●ピアノ部門
【小学校】佐藤史悠⇒ショパン作品2曲(本番で変更。聞き取れず)
【中学校の部】朴沙彩⇒リスト:超絶技巧練習曲第5番「鬼火」、第10番へ短調
【高校の部】大山桃暖⇒ショパン:ポロネーズ第5番嬰ヘ短調 Op 44



全日本学生音楽コンクールの全国大会がみなとみらいホールで行われるようになってから久しいが、66回大会から72大会までは横浜市民賞(聴衆賞)の選定員(応募・抽選)という形で参加していたので、その後開催される1位入賞者の発表会も毎年のように聴きに行った。

近年、忙しいのと体力不足(長時間拘束がツラい)もあって、遠のいていたが、せめて1位の演奏は聴こうと出かけた。
小山実稚恵、千住真理子、諏訪内晶子、神尾真由子、反田恭平などの後継者達だ。

今日は、ほぼ1年前に開催された第75回の全国学コンの1位入賞者が12名、演奏を披露した。

特に演奏曲が、超絶モノばかり?なので、ただびっくりするばかり。
みんな凄いなと感心して聴いたが、特に印象に残ったのは、声楽大学の部は僕の苦手なカウンターテナーだったが、これが美しい。藤木大地もびっくりか。
チェロ部門は2人とも楽器の音に惚れ惚れとした。もちろん演奏も。

それにしても、弦楽器もピアノも、かなっくホールの響の良さをツクヅク味わったよ。休憩も立たず2時間40分座り詰めで、お尻が痛くなった。

♪2022-166/♪かなっくホール-11

2022年11月3日木曜日

横浜みなとみらいホールリニューアル記念事業 井上道義指揮 NHK交響楽団 with 藤木大地

2022-11-03 @みなとみらいホール



井上道義:指揮
NHK交響楽団
カウンターテナー:藤木大地*
オルガン:近藤岳**

J.シュトラウスⅡ:ワルツ《南国のバラ》 Op. 388
マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲*
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 「オルガン付き」Op. 78**


今日のプログラムには祝祭感がほぼなかったな。「オルガン付き」が派手なので、まあ、それらしくもあるけど。

1曲目は「南国のバラ」。ここでやらなきゃやるとこないよ、と思いながら見ていたが、案の定。終盤、ビヤジョッキが登場して飲みながら(フリだけ)指揮した井上センセ。サービス精神健在。

でも前半はあまり聴くべきものがなかった。
悪いけど、カウンターテナーという声質が生理的に苦手だよ。

業界用語で「ガン付き」=「オルガン付き」は「アルプス交響曲」と違って聴く機会が多い。
中で、過去最高は2018年の神フィル@ミューザがベスト。
しかし、本日名誉ある位置を転落した。ミューザには金網が無いからな…。

N響の透明感ある弦に管の乗り方がキレイ。
ルーシーも改修してもらったのかと思うほど、オルガンの存在感が明瞭だ。「アルプス〜」では感じなかったが(音楽の違い)同じ近藤岳によるオルガンが、オケに埋もれることなく、オケもオルガンに埋もれることなく、絶妙のバランスを保ち、クライマックスの快感へ!
サン=サーンスはこんなふうに書いていたのか!という新発見の思い。

やはりみなとみらいホールで聴くN響はピカイチだ。
N響B定期は音の悪いサントリーホールはやめて横浜でやってくれえ。

♪2022-165/♪みなとみらいホール-03

2022年11月2日水曜日

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト 初代国立劇場さよなら公演 “歌舞伎&落語 コラボ忠臣蔵”

2022-11-02 @国立劇場大劇場


春風亭小朝
翁家社中
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早野勘平⇒中村芝翫
女房おかる⇒市川笑也
千崎弥五郎⇒中村歌昇
母おかや⇒中村梅花
判人源六⇒中村松江
一文字屋お才⇒市村萬次郎
斧定九郎/原郷右衛門⇒中村歌六
         ほか

●落語 春風亭小朝
 一 殿中でござる(でんちゅうでござる)
  -太神楽-曲芸 翁家社中
 二 中村仲蔵(なかむらなかぞう)
 
●歌舞伎  仮名手本忠臣蔵 二幕三場
     (かなでほんちゅうしんぐら)
    竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
         国立劇場美術係=美術
    
 五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
 同   二つ玉の場
 六段目 与市兵衛内勘平腹切の場



<歌舞伎&落語>
小朝と芝翫の組合せを繋ぐのは「忠臣蔵」。

企画は良かったが、イマイチの出来。

現存真打の中でも最高ランクの小朝にしては、大劇場の空気を掴み取れなかったか。そもそも寄席の芸を披露する場ではなかったか。

「殿中でござる」は新作だが、忠臣蔵の一つの見方の解説止まり。

1番の楽しみ「中村仲蔵」は志ん朝を愛聴している為にどうしても比較してしまう。小朝も悪か無いけど、気持ちが入っていかん。

音楽でもそうだが、過去に優れたものに接していると、それを超えるもので無い限り、なかなか感動は得られない。寄席で聴けばまた違った味わいがあったかも。残念。

芝翫の早野勘平。これもイケメン過ぎたか。

好感したのは、斧定九郎を演じた歌六だ。
この芝居こそ、中村仲蔵の工夫が今に受け継がれている。
黒の着付けに蛇の目傘。朱鞘の大小。鉄砲に撃たれて着物からはみ出た白塗りの脚に垂れる鮮血。
定九郎の台詞はたった一つ「五十両」だけだが、見事にこの場を引き締めて「千両」役者。

♪2022-164/♪国立劇場-11

2022年11月1日火曜日

横浜みなとみらいホールリニューアル記念事業 ミュージック・イン・ザ・ダークⓇ

2022-11-02 @みなとみらいホール



ソリスト***
 バイオリン:和波孝禧*
 バイオリン:川畠成道**
 バイオリン:成田達輝**
 バイオリン:渡辺玲子

特別編成合奏団
コンサートマスター:三浦章宏
バイオリン:荒木唯子、礒絵里子、臼井麻実、宇根京子、小寺麻由、高井敏弘、徳永希和子、松尾牧子、横島礼理
ビオラ:須田祥子、田辺藤祐、三浦克之
チェロ:新井幸子、高橋純子、山内俊輔
コントラバス:高橋洋太
チェンバロ:小森谷裕子


J.S.バッハ : 無伴奏バイオリン組曲第2番ニ短調 BWV1004から第5曲「シャコンヌ」*
J.S.バッハ:2つのバイオリンのための協奏曲
ニ短調 BWV1043**
ビバルディ:バイオリン協奏曲集《和声と創意の試み》Op.8「四季」***
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J.S.バッハ:G線上のアリア


今年で7回目だそうだ。バリアフリー化も標榜したリニューアルの面目躍如で視覚障害者との共生を意識した演奏会だ。いつになく、白状や盲導犬を連れたお客も多かったし、演奏者(ソロもオケ)にも視覚障害者が少なからず。

音楽は漆黒の闇の中で。

鷗子館長のMCで、見える人にも見えない人にも向けた演奏会の意図や心構えなどから始まり、まず以って「闇」を経験した。
それは善光寺の胎内巡りと同じで、もう、全く何にも見えないのだ。
それは一種恐怖でもあるが、毎日をその世界で暮らしている人達と同じ空間にいるのだと思うと複雑だ。

音楽は、最初は照明の下で始まるが、やがて漆黒に。
ここで感覚の切替が難しい。
音だけという意味ではCDを聴くのも同様だが、生の音楽を音だけで受け止めることの難しさ。

途中、和波氏が鷗子さんとの短い対談の中で、こちらの気持ちを察したかのようにモヤモヤ感について語ってくれたことがむしろ一条の光になった…という倒錯感も。

いや、全てがスッキリした訳ではないが、音の芸術が光を必要とするのか、考える契機となったことは確かだ。

小林美樹が参加できなかったのが残念だが、渡辺玲子に代わったのはとても良かった。鉄壁の技巧を久しく聴いていなかったから。

ソリスト達も豪華だが、特別編成オケ18人も豪華で何気なくコンマスをやっているのは三浦章宏、その対面は同じ東フィルの須田祥子。他にもN響数名、読響、都響で顔馴染みチラホラ。

みんな、当然、何気なく演奏している。

しかし実に楽しそうで、「見える」と「見えない」の心のバリアフリー状態がおそらく、客席にも伝染し、とても心温まる演奏会となった。

♪2022-163/♪みなとみらいホール-02