2021年9月11日土曜日

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第371回定期演奏会

2021-09-11 @ミューザ川崎シンフォニーホール



カーチュン・ウォン:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

ピアノ:三浦謙司*

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83*
ベートーベン:交響曲第7番イ長調Op.92
----アンコール------------------
F.モンポウ:前奏曲第5番*


カーチュン・ウォンにハズレなし!といっても彼の指揮で聴くのはまだ4回目だが、いつも満足度が高い。
柔らかく、オケをグリップしているような気がする。

また、今日の神奈川フィルの出来が特に良かった。
昨日、N響の合奏力に感嘆したが、会場の違い(池袋芸劇よりミューザの方が断然良い響)もあるとはいえ、負けず劣らず見事な好演。

前半のブラームス:ピアノ協奏曲第2番では、オケとピアノのシンフォニックなダイナミズムを楽しんだが、とりわけ、ピアノの音の良さを堪能できた。
ミューザとしてはいつもの事なのだけど、低域はジーンと響き、中域はカーンと抜け、高域はコロコロと輝かしい。
この音色があって初めてピアノ協奏曲は面目躍如だ。

後半はベートーベン交響曲第7番。
これがまた格別に良い出来で、神奈川フィルはいつの間にこんなに巧くなったのだろう⁈

普段は気づかなかった処々弱音での弦楽合奏が、毛細血管に生命を満たすように、緊張を維持しながら流れる。

この辺りにカーチュン・ウォンの丁寧な仕事ぶりを感じた。
特に第2楽章は固唾を飲んで聴き惚れた。

♪2021-094/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-030

2021年9月10日金曜日

第1936回 NHK交響楽団 定期公演 池袋C-1

2021-09-10 @東京芸術劇場大ホール


パーヴォ・ヤルヴィ:指揮
NHK交響楽団

バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」
バルトーク:管弦楽のための協奏曲


開演を待つ客席の雰囲気が既に高揚していた。

N響『定期』今季劈頭の回であり、久しぶりのPヤルヴィの登場である。

加えて、コロナ禍が産んだ珍現象?客席全員が”定期会員”のみというのも普段にない心地よい緊張感を漂わせた要因ではないか。


プログラムはバルトーク2本。

「管弦楽のための協奏曲」はしばしば聴くが、「中国の不思議な役人」は生では初聴きだったかもしれない。


いずれも親しみやすい音楽ではないけど、気合十分の優れた演奏家集団の手にかかるとこれが実に面白く聴くことができるのだ。

昨日の某オケがぼんやりしていたので、余計にN響の個人技と合奏能力の高さを思い知った。


池袋C定期は毎回60~80分休憩なしのプログラムだ。

そんな短時間の演奏会の為に横浜から池袋までわざわざゆくかなあとも思っていたけど、今日のような鉄壁のアンサンブルを聴けるなら十分価値がある。


入国後の待機期間が不足したPヤルヴィはその筋のお達しにより格別の感染対策をとることになって、楽団員と極力距離を取らなくてはならない為、従来にない入退場方法が可笑しかった。


♪2021-093/♪東京芸術劇場大ホール-02

ランチタイムコンサート オルガンデュオ 木星がもたらすもの~快楽・夢と神秘の世界~

2021-09-10 @ミューザ川崎シンフォニーホール


三原麻里:オルガン◇
原田真侑:オルガン◆

ホルスト(河野和雄編曲):組曲『惑星』から「木星」◇◆
ラングレ:フェット(祭)◆
ヴィエルヌ:夜の星◇
サン=サーンス:死の舞踏◇◆
コープランド:「アパラチアの春」から◇◆
 1非常に遅く/2速く/7穏やかに、流れるように/8中くらいの速さで、とても穏やかに


オルガン独奏と連弾。

全く初めて聴く作曲家(ラングレ、ヴィエルヌ)もあり。


〜快楽・夢と神秘の世界〜のうち「夢」の世界には易々と入ってゆけたが「快楽」も「神秘」も感じないままに終わってしまった。


「木星」や「死の舞踏」のように馴染んでいる曲ではどうしても原曲と比べて物足りなさを感じ、5千本超のパイプを持つ日本有数の大オルガンならもっと変化に富んだ音色を作れないものだろうかと思いつつ、J.S.バッハの曲のような壮大な響とかお尻が震えるような轟音とかを待っていたのだが、ちょっと軽かったなあ。


会員料金450円で文句言っているよ!

ま、昼時にはこんな感じでいいのかもしれないけど。


♪2021-092/♪ミューザ川崎シンフォニーホール-29

2021年9月9日木曜日

東京都交響楽団 第934回 定期演奏会Bシリーズ

2021-09-09 @サントリーホール


デイヴィッド・レイランド:指揮
東京都交響楽団

北村朋幹:ピアノ*

シューマン:歌劇『ゲノフェーファ』序曲 op.81
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491*
シューマン:交響曲第2番 ハ長調 op.61
----アンコール-----------
シューマン:天使の主題による変奏曲から主題*


良かった!と投稿している人もいるので、気がひけるけど、前半はつまらなかった。

序曲は締まりのない響きだった。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番も大いなる期待が裏切られた。弦12型でも大きすぎたか。

北村君が下手な訳じゃないけど、ピアノがきれいに響かない。これはサントリーホールの欠点だ。ピアノの響きが重く、暗い。


後半のシューマン交響曲第2番。

最近では東響・都響・神奈川フィル、そして再び都響で今日聴いたが、どこが演奏しても冒頭のバラバラ感が拭えないのは、シューマンの管弦楽技法に問題があるように思う。


それでも徐々に響きが厚みを持ってきて、ようやく終楽章に来て音楽に浸れる感じだった。


シューマン自身も自虐的に1-3楽章の出来を病的と言ったそうだ。


ま、最後は都響の力技で盛上がりを見せたので、まずまず良かったか。


それにしても客席は空席が目立った。

少ないお客だけど、客演のDレイランド氏に、精一杯の拍手を送って健闘を称えた。


♪2021-091/♪サントリーホール-10

2021年9月5日日曜日

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年9月公演第Ⅲ部

2021-09-05@国立劇場



●伊賀越道中双六 (いがごえどうちゅうすごろく)
 沼津の段
前 藤太夫/宗助/寛太郎
後 千歳太夫/富助/清方

 伏見北国屋の段
  織太夫/清友

 伊賀上野敵討の段
  南都太夫・津國太夫・亘太夫・文字栄太夫/
  團吾
人形 吉田玉也・吉田玉男・吉田和馬・
   豊松清十郎・吉田玉勢・吉田一輔・
   吉田玉輝・吉田簑悠・桐竹紋吉・
   吉田文司・吉田玉彦・桐竹亀次

この作品も文楽で観るのは初めてだったが、歌舞伎では少なくとも<通し>で3度は観ている。
大部な作品で<通し>といっても幾つかの段の抽出。しかも、毎回構成が異なる。今回の文楽版でも初めて観る段を含む構成だった。が、今回は3段のみ。

一番有名な「沼津」で始まり、中に一段置いて最後はどんな版でも必ず上演される「敵討の段」で終わるので、スッキリと鑑賞できた。

とはいえ、敵討ちという筋立てに若い人達は共感を覚えられないのではないか。
鉢巻に手裏剣を刺した荒木又右衛門の敵討ちの話って、知らないだろうな。

僕が個人的に好きな藤太夫、千歳太夫(沼津の段)、織太夫(伏見北国屋の段)がホンにうまい。

クライマックスの伊賀上野敵討ちの段では太夫が4人揃ってチャンバラを盛り上げるのは爽快なり。

♪2021-090/♪国立劇場-07

国立劇場開場55周年記念 人形浄瑠璃文楽 令和3年9月公演第Ⅱ部

2021-09-05@国立劇場



●卅三間堂棟由来 (さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)
 平太郎住家より木遣音頭の段
中 睦太夫/清志郎
切 咲太夫/燕三
奥 呂勢太夫/清治
人形 吉田和生・桐竹紋臣・吉田簑一郎・
   吉田簑二郎・吉田玉助・桐竹勘次郎

●日高川入相花王 (ひだかがわいりあいざくら)
 渡し場の段
三輪太夫・咲寿太夫/
碩太夫・聖太夫・團七・清𠀋・錦吾_清允・青方
人形 吉田清五郎・吉田勘市


機会の少ない文楽の前回公演を、コロナ拡大中につき弱気にも断念したので、2月公演以来の久しぶりの文楽観賞だった。
客席に座った時に、その場限りにせよ、日常が戻ったなあと嬉しくなった。

「卅三間堂棟由来」は文楽では始めての観賞だが、歌舞伎では数回観ている。

異類婚姻譚の一種。
柳の精・お柳は、平太郎と縁あって結ばれ、子(緑丸)を成す。
平和な暮らしも長くは続かず、ある日、白河法皇の病気平癒のため建てる三十三間堂の棟木に使う柳の大木が切り倒されることに。
その柳の木こそお柳その者なのだ。

切り倒されて都に運ばれる柳の大木は夫と緑丸が見送る場面で動かなくなる。

夫が歌う木遣音頭に合わせて緑丸が綱を曳くと、びくとも動かなかった柳が動き出す。
夫婦・母子の無念の別れが涙を誘う。

豊竹咲太夫・鶴澤清治・吉田和生の人間国宝トリオが結集して、何やらありがたい舞台ではあった。

♪2021-089/♪国立劇場-06

2021年9月3日金曜日

神奈川フィルの名手による室内楽シリーズ《名曲の午後》第15回 「ベートーベンの『幽霊』」

 2021-09-03 @フィリアホール


バイオリン◎崎谷直人
バイオリン◎桜田悟
ビオラ◎高野香子
チェロ◎鈴木秀美
ピアノ◎草冬香

モーツァルト:バイオリン・ソナタ 第22番イ長調 K.305
 ◎崎谷、草
ベートーベン:弦楽四重奏曲第2番ト長調 Op.18-2
 
◎崎谷、桜田、高野、鈴木
ベートーベン:ピアノ三重奏曲第5番ニ長調 Op. 70-1「幽霊」
 
◎崎谷、鈴木、草


このシリーズ、毎回満足度が高い。今回はモーツァルト:バイオリン・ソナタ、べートーベン:弦楽四重奏曲にピアノ三重奏曲。


演奏は相当練習を重ねたか、緻密に組み立てられていて、強音のユニゾンの荒々しさ、弱音の息を潜めて進行する重なりあいなど、息の合った、かつとても穏やかで軽快な演奏だった。


不満もあり。

中途半端な古楽的アプローチ。特にピアノ三重奏では、フォルテピアノではなく、現代のフルコンサートグランドを使っているのだから、弦楽器もモダンに徹した方が良かった。


それにしてもピアノの草嬢は初めてではなかったが、なんて可愛いお嬢さん。写真よりずっと若々しく可愛い。豊かな表情は眼福もの也。これから追っかけてみたくなったよ。


♪2021-088/♪フィリアホール-03