2018-03-16 @新国立劇場
指揮⇒フレデリック・シャスラン
演出⇒チェーザレ・リエヴィ
美術⇒ルイジ・ペーレゴ
衣裳⇒マリーナ・ルクサルド
照明⇒立田雄志
合唱⇒新国立劇場合唱団
管弦楽⇒東京フィルハーモニー交響楽団
アディーナ⇒ルクレツィア・ドレイ
ネモリーノ⇒サイミール・ピルグ
ベルコーレ⇒大沼徹
ドゥルカマーラ⇒レナート・ジローラミ
ジャンネッタ⇒吉原圭子
ガエターノ・ドニゼッティ:全2幕〈イタリア語上演/字幕付〉
予定上演時間:約2時間35分
第Ⅰ幕70分
--休憩25分--
第Ⅱ幕60分
「愛の妙薬」に関してはバーデン・バーデン歌劇場、MET、ミラノ・スカラ座のBDを持っているが、それぞれ演出がまったく異なるけど、それぞれに面白い。特にスカラ座のはミラノの本物の空港のレストランやロビーで旅行客などに混じってオペラを進行させるというとんでもない企画だが、これがちゃんと楽しめる。
やはり、レシタティーヴォ、ソロのアリア、2重唱、3重唱にそれぞれ魅力があり、オペラのアリアというよりカンツォーネのように親しみやすい音楽が溢れていることが、どんなに設定を変えてもこのオペラを楽しめる第一の要素ではないか。そして合唱も大活躍して、明るい雰囲気を大いに盛り上げてくれる。
「愛の妙薬」とは「トリスタンとイゾルデ」にヒントを得た偽の惚れ薬だが、貧乏な青年農夫(ネモリーノ)が村の金持ちで美しい娘アディーナの愛を得ようと実は安物のワインにすぎない「愛の妙薬」を飲んだところ、これまで見向きもしてくれなかった村の娘達に急にちやほやされ始めるのを見て早速クスリが効いたと勘違いするが、それは彼の親戚が亡くなって大金を相続することになったためだったのだが、肝心のアディーナには通用しないなど、一捻りしてあるところも面白い。やがてはネモリーノの誠実さがアディーナにも通じてめでたしめでたし、と丸く収まって分かり易い。
2幕構成で、正味は2時間10分というコンパクトさもいい。主要登場人物は5人(いや、1人は大した役ではないので実質は4人か)なので、役どころにまごつくこともない。
音楽の、一番の聴きどころは2幕終盤のネモリーノのアリア「人知れぬ涙」だ。ドニゼッティの全オペラ作品の中でも一番人気曲だと言われている。非常にメランコリックで切ないメロディだ。そして、数回聴けば憶えられるような簡素な作りだ。
でも、このアリアは、話の脈絡にうまく噛み合わない場違いさがあるのだけど、観客としては、筋は筋、歌は歌、と割り切って、この異次元空間にしばし酔いたいのだから文句を言う人はいないだろう。
新国立劇場では2010年、2013年に続く三演なので、演出や美術なども過去の公演を基本的には踏襲しているのだろう。舞台装置は大きな本(トリスタンとイゾルデ)や大小の本が並び替えられていろんな舞台に早変わりするが、そんなに「本」や「言葉」にこだわるような必然性は無いと思うが、さりとてこれもありか、と思った。
前回の「ホフマン物語」でも衣裳などは原色で派手派手しかったが、今回の「愛の妙薬」も色使いは派手だ。ただ、全体にパステル調で統一されていたので、無用な刺激はなく、なかなかきれいだった。照明も効果的だった。
♪2018-030/♪新国立劇場-04