2014-09-20 @みなとみらいホール
キンボー・イシイ指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
三舩優子(ピアノ)
ガーシュイン:キューバ序曲
ガーシュイン:パリのアメリカ人
バーンスタイン:交響曲第2番「不安の時代」
指揮者もピアニストも初めて。
曲目も「パリのアメリカ人」以外は初めて。
厳密には放送などで目にし、耳にしているのかもしれないけど。
ガーシュインの「キューバ序曲」は1932年に作曲された。
キューバ旅行の産物らしい。
元々は「ルンバ」というタイトルで初演されたそうだが、その名の通り、全体はルンバのリズムに乗って、いや~賑やかなこと。陽気なラテン音楽そのものだ。
中間部は様子が変わってスローテンポのジャズというか、ブルースっぽい。
終盤は再びテンポが上がって、ラテン音楽になり、派手に終曲する。
ギロ、マラカス、クラベス、ボンゴなどのラテン・パーカッションが総動員されていた。
後2者はともかく、前2者(ギロやマラカス)の音って、放送やCDでは大抵ほかの楽器の音にかき消されよく聴こえないのだけど、やはり、生の舞台はジージー、チッチッというリズムがしっかり聴こえてくるもいとおかし。
パリのアメリカ人は29年の作曲。シンフォニック・ジャズだ。
こちらは51年に公開されたミュージカル映画「巴里のアメリカ人」でも使われている。
アカデミー賞作品・美術・撮影・作曲・脚本・衣装デザイン賞を受賞した大ヒット作となった。
「パリのアメリカ人」はこの映画のおかげで世界中に知られることになったのではないか。
グロフェの組曲「グランドキャニオン」に感じがよく似ているのは、同じ時代のアメリカ人で共にジャズに通じていたからか、と思っていたが、あれこれ調べていたら、それだけではなく、2人は音楽的に特に深い関係があったようで、ガーシュインの一番有名な作品「ラプソディー・イン・ブルー」のオーケストレーションをしたのが、グロフェで、現在我々が聴いているのはグロフェ版を元にフランク・キャンベル=ワトソンという人が再編集(42年)したものらしい。これは新発見。
グロフェよりガーシュインの方が少し若いけど、2人は互いに影響を与え合っていたのかもしれない。
さて、「パリのアメリカ人」が作曲された翌年が世界大恐慌がスタートした1929年だ。この音楽にはそのような不安感は全くない。「キューバ序曲」の32年もまだまだ、不況のさなかで、アメリカ経済が立ち直り始めるのは第2次世界対戦による戦争特需が始まってからだと言われている。
しかし、この音楽にも不安感は感じられない。
そりゃそうだろう。そんな音楽を作曲しても誰も聴きたくもない。
バーンスタインが交響曲第2番「不安の時代」を初演したのは49年。世界大戦も終わって当面の不安は解消されていた時期だが、バーンスタインがこの作品の題材にしたのは、W・H・オーデンという作家の詩「不安の時代」で、これは47年に発表さた。その詩は第二次世界大戦中の人々の不安を描いている。
何故、バーンスタインがこの詩を元に作曲しようとしたのかは、俄勉強の限りでは分からないけど、世界大戦の悲劇を音楽で総括しておきたかったのかもしれない。
ピアノ協奏曲風で、全6楽章だけど、前半の3楽章と後半の3楽章は続けて演奏されるので、2楽章構成のようにも聴こえる。
2つのパートに分かれていることは事前にプログラムの解説を読んで知っていたが、何しろ初めての曲なので、実際の演奏の形は
見当がつかない。
短い区切りっぽい部分があるので、それが楽章の区切りだったのかもしれないけど、よく分からない。
指揮者の手が休んだところで前半が終わったのだな、ということは分かったが。
構成は分かっているのに、今聴いているのはその中のどの辺に位置するのかが分からないというのはまことに「不安」だ。
交響曲だけど、ピアノ協奏曲風でもある。
このスタイルも変わっているけど、ピアノは舞台中央のフルコンサートグランドだけではなく、舞台奥にはチェレスタとアップライトピアノも登場する。こういう楽器編成の音楽も珍しい。
部分的にはミクロス・ローザの映画音楽を彷彿とさせるが、全体としてやはり「不安感」が漲った音楽である。
今、Youtubeで聴きながら、思い出しながら書いているのだけど、ホンに暗い音楽だ。
それでも、いよいよ最終局面になって、曙光が差してくる。
チューブラベルが希望の鐘を鳴らして幕を閉じる。
元の詩がそのような終わり方をしているのかどうか知らないが、音楽としてはせめて最後に救いがあったようで良かった。
ガーシュインの2曲とは対極に位置するような音楽で、決して楽しい気分では聴けないけれど、馴染んでくれば「面白い」くらい思うゆとりが出てくるのかもしれない。
♪2014-86/♪みなとみらいホール-35